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兜
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かぶと
ふりがな文庫
“
兜
(
かぶと
)” の例文
そのうち、水底にもぐつてゐたお父さんが真珠貝をとつて、
上
(
あが
)
つて来ました。潜水
兜
(
かぶと
)
をまづぬぐと、すぐ大きな亀に目をつけました。
動く海底
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
赤くさびている
兜
(
かぶと
)
の
鉢金
(
はちがね
)
のようなものが透いて見える。ただの鍋かなんぞかも知れないが勘太は、それをさえ足に踏むことを
懼
(
おそ
)
れた。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どうしても目星が附かないので警視庁のパリパリ連中が、みんな
兜
(
かぶと
)
を脱いだ絶対の迷宮事件が一つ在るんだ。
所謂
(
いわゆる
)
、完全犯罪だね。
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして、南田が死んでから、ちょうど三月目に、ふたりは恐怖に耐えられなくなって、とうとう、わたしの前に
兜
(
かぶと
)
をぬいだのです。
妻に失恋した男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
町も
辻
(
つじ
)
も落ち葉が散り敷いて、古い
煉瓦
(
れんが
)
の壁には血の色をした
蔓
(
つた
)
がからみ、あたたかい日光は宮城の番兵の
兜
(
かぶと
)
に光っておりました。
先生への通信
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
その一つは、
萌黄匂
(
もえぎにおい
)
の
鎧
(
よろい
)
で、それに
鍬形
(
くわがた
)
五枚立の
兜
(
かぶと
)
を載せたほか、
毘沙門篠
(
びしゃもんしの
)
の両
籠罩
(
こて
)
、
小袴
(
こばかま
)
、
脛当
(
すねあて
)
、
鞠沓
(
まりぐつ
)
までもつけた本格の武者装束。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
あゝ、老いたくない、
朽
(
く
)
ちたくない、
何時迄
(
いつまで
)
も同じ位置と名誉とを保つて居たい、後進の書生輩などに
兜
(
かぶと
)
を脱いで降参したくない。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
顔つきはどこか
兜
(
かぶと
)
のようにがっしりしているし、鬚が栗いろの強い張りをもって絶えず微動しながら、草の葉と葉のすきまを縫うている。
螽蟖の記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
汗ばんだ
猪首
(
いくび
)
の
兜
(
かぶと
)
、いや、
中折
(
なかおれ
)
の古帽を脱いで、薄くなった折目を気にして、そっと
撫
(
な
)
でて、
杖
(
つえ
)
の
柄
(
え
)
に引っ掛けて、ひょいと、かつぐと
若菜のうち
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それだったら文句なく
兜
(
かぶと
)
をぬぐつもりである。物理学者が文学者と文章を用いて太刀打ちするのは対等の力では問題にならない。
科学と文化
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「……おい隊長、きさま列車の中の元気はどうしたい、もうこのへんで
兜
(
かぶと
)
を脱ぐかね、それとも、いやとにかく腹をこしらえるとしよう」
花咲かぬリラ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
渡辺源三競の滝口、出陣の出立は、
狂紋
(
きょうもん
)
の
狩衣
(
かりぎぬ
)
に大きな
菊綴
(
きくとじ
)
、先祖代々伝わる所の
着長
(
きせなが
)
緋縅
(
ひおどし
)
の
鎧
(
よろい
)
、
兜
(
かぶと
)
は銀の星をいただいている。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
男は
兜
(
かぶと
)
町で激しく働くので時々軽い脳病になり、この病院へ来るのも二十年程前からなので、院内の古い患者とは知り合いが多いと言う。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その
鎧
(
よろい
)
兜
(
かぶと
)
などを念入りに吟味し、更に
松岡緑芽
(
まつおかりょくが
)
に依頼して太刀流しの図を描かせ、奉書刷りの一枚絵にして知己に配ったりした。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼は広い
室
(
へや
)
の片隅にいて真ん向うの
突当
(
つきあた
)
りにある遠い戸口を眺めた。彼は仰向いて
兜
(
かぶと
)
の
鉢金
(
はちがね
)
を伏せたような高い丸天井を眺めた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれどもこれほどのえらい
将軍
(
しょうぐん
)
をただ
葬
(
ほうむ
)
ってしまうのは
惜
(
お
)
しいので、そのなきがらに
鎧
(
よろい
)
を
着
(
き
)
せ、
兜
(
かぶと
)
をかぶせたまま、
棺
(
ひつぎ
)
の中に
立
(
た
)
たせました。
田村将軍
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
それがためには、潜水服に似たものを着、そして潜水
兜
(
かぶと
)
に似たものを頭に被り、空気
槽
(
そう
)
を背負わなければならなかった。それだけではない。
火星探険
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
門々にはもう笹たけが立って、向うの酒屋では積み
樽
(
だる
)
などをして景気を添えていた。
兜
(
かぶと
)
をきめている労働者の姿なども、暮らしく見られた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
鎧
(
よろい
)
、
兜
(
かぶと
)
、兵隊靴、右手に日本刀、左手に槍、背に猟銃、腹巻にはピストルをさしこんでいて勇ましい。あたりをうかがい、誰も見えないと
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
火のような
猩々緋
(
しょうじょうひ
)
の服折を着て、唐冠
纓金
(
えいきん
)
の
兜
(
かぶと
)
をかぶった彼の姿は、敵味方の間に、輝くばかりのあざやかさをもっていた。
形
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
パー先生は
片袖
(
かたそで
)
まくり、布巾に薬をいつぱいひたし、かぶとの上からざぶざぶかけて、両手でそれをゆすぶると、
兜
(
かぶと
)
はすぐにすぱりととれた。
北守将軍と三人兄弟の医者
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
平次は潔よく
兜
(
かぶと
)
を脱ぎました。二間半長柄の大槍で、三寸の狹い隙間から、少くとも二間以上離れて居る人間を突けるわけは無かつたのです。
銭形平次捕物控:282 密室
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
兜
(
かぶと
)
岩、
駱駝
(
らくだ
)
岩、眼鏡岩、ライオン岩、亀岩などの名はあらずもがなである。色を観、形を観、しかして奇に驚き、
神悸
(
しんおのの
)
き、
気眩
(
きげん
)
すべきである。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
それともお前は
俺
(
わ
)
しの眼の前に嘘をせんでいい世の中を作ってみせてくれるか。そしたら
俺
(
わ
)
しもお前に未練なく
兜
(
かぶと
)
を脱ぐがな
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
折紙細工の
鶴
(
つる
)
や舟や
兜
(
かぶと
)
や
股引
(
ももひき
)
や、切紙細工の花や魚やオモチヤや動物など、みんな子供会の手工の時間に作つたものです。
仔猫の裁判
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
「あぶなかッたら人の後に隠れてなるたけ早く逃げるがいいよ」と
兜
(
かぶと
)
の緒を
緊
(
し
)
めてくれる母親が涙を
噛
(
か
)
み
交
(
ま
)
ぜて忠告する。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
菊五郎の光俊は
惣髪
(
そうはつ
)
にて、金の新月の前立物ある
二谷
(
にのたに
)
といふ
兜
(
かぶと
)
を負ひ、紺糸
縅
(
おどし
)
の
鎧
(
よろい
)
、お約束の雲竜の陣羽織にて立派なり。
明治座評:(明治二十九年四月)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
私は谷村を病弱にするのが私の手腕の不足のようで、変にこだわっていたのだが、ハッキリ
兜
(
かぶと
)
をぬいだら、気が楽になったのだ。十三枚書いた。
戯作者文学論:――平野謙へ・手紙に代えて――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
柳葉
(
りゅうよう
)
を射たという
養由基
(
ようゆうき
)
、また
大炊殿
(
おおいでん
)
の夜合戦に兄の
兜
(
かぶと
)
の星を射削ッて、敵軍の
胆
(
きも
)
を冷やさせたという
鎮西
(
ちんぜい
)
八郎の
技倆
(
ぎりょう
)
、その技倆に達しようと
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
朝月は朝月で、近づく敵兵の
肩
(
かた
)
、
腕
(
うで
)
、
兜
(
かぶと
)
のきらいなくかみついてはふりとばし、また、まわりの敵をけちらしふみにじる。
三両清兵衛と名馬朝月
(新字新仮名)
/
安藤盛
(著)
そして、からだを捻じ曲げ、
兜
(
かぶと
)
を脱いで、絶対の幸福に
浸
(
ひた
)
りながら、暖炉の
薪台
(
たきぎだい
)
の上へ、全身を、根こそぎ、叩きつける。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
笑止千万、先方から礼を厚うして、尋ねられた相手に向って、
脆
(
もろ
)
くもこちらが
兜
(
かぶと
)
をぬいで、白旗を立てたような有様で、器量の悪いこと
夥
(
おびただ
)
しい。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし、味はたとえ落ちても、大きいたいの
頭
(
かしら
)
を
兜
(
かぶと
)
蒸しなどに使うのは立派でいいでしょうが、実際からいいますと、やはり、
美味
(
うま
)
くありません。
日本料理の基礎観念
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
若しどちらをとるかと言へば、僕のとりたいのはピカソである。
兜
(
かぶと
)
の毛は炎に焼け、槍の柄は折れたピカソである。……
続文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ああ、そう云えばあなたの家でつかまった帝大生、ここにいる間は珍しい位確りしていたが到頭
兜
(
かぶと
)
をぬいだそうだよ」
刻々
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
雪の降る時は好んで
棕櫚
(
しゅろ
)
で編んだ、まるで
兜
(
かぶと
)
のような笠を
被
(
かぶ
)
ります。深い形で頭のみならず
襟
(
えり
)
まで
総々
(
ふさふさ
)
した棕櫚毛で
被
(
おお
)
うように作られてあります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
一人の侍に蒲生重代の銀の
鯰
(
なまず
)
の
兜
(
かぶと
)
を持たせて置いたところ、氏郷自身先陣より後陣まで見廻ったとき、此処に居よというところに其侍が居なかった。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
羽毛を飾った
兜
(
かぶと
)
を冠って人間の歯の頸飾りをかけ、磨ぎ澄ました槍を手に提げ宴会の庭へ下り立って戦勝祝いの武者踊りをさも勇猛に踊ってくれた。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
突きでているがっしりした煖炉の上に、
鎧
(
よろい
)
を着て、白い馬のかたわらに立った武士の肖像がかかっており、反対側の壁には
兜
(
かぶと
)
や
楯
(
たて
)
や
槍
(
やり
)
が掛けてあった。
クリスマス・イーヴ
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
これじゃア自分は
潔
(
いさぎよ
)
く
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
ごうという正直な
謙遜心
(
けんそんしん
)
を起して、「そうしてその俳優はそれからどういたしました」
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
我が早稲田大学の野球団が過般渡米したとき、このホブソン大佐に日米戦争論に関する討論を求め、ついに大佐をして
兜
(
かぶと
)
を脱がさしめたとの事である。
世界平和の趨勢
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
大袈裟
(
おおげさ
)
な言葉や羽根飾り、ブリキの剣と厚紙の
兜
(
かぶと
)
とをつけた芝居がかりの
空威張
(
からいば
)
り、そういう
扮装
(
ふんそう
)
の下にはいつも
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
たしかにあのときの勝って
兜
(
かぶと
)
の緒をしめたあの苦しみが今日二倍三倍ものをいって日本人全体の血肉となって、こんなにめざましい働きをしたんでさあ。
初看板
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
老人の
白髯
(
はくぜん
)
を集めて作った
兜
(
かぶと
)
の飾り毛を風に
靡
(
なび
)
かせ、獣歯の
頸掛
(
くびかけ
)
をつけた・身長六
呎
(
フィート
)
五
吋
(
インチ
)
の筋骨隆々たる赤銅色の戦士達の正装姿は、全く圧倒的である。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それは一人の胸甲騎兵であって、将校であり、しかも相当の階級のものらしかった。大きな金の肩章が胸甲の下からのぞいていた。もう
兜
(
かぶと
)
は失っていた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「なるほど。ちっとこわれましたね、しかし、こういう大入り繁昌の人込みなんだからね。こわれてわるい髪なら、
兜
(
かぶと
)
でもやっていらっしゃることですよ」
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
万年博士が『
天網島
(
てんのあみじま
)
』を持って来て、「さんじやうばつからうんころとつころ」とは何の事だと質問した時は、
有繋
(
さすが
)
の緑雨も閉口して
兜
(
かぶと
)
を
抜
(
ぬ
)
いで降参した。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
だからすべての哲学者は、彼らの窮理の最後に来て、いつも詩人の前に
兜
(
かぶと
)
を脱いでる。詩人の直覚する超常識の宇宙だけが、真のメタフィジックの実在なのだ。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
美容院の前を通ると、女たちが白い
兜
(
かぶと
)
のようなドライヤーをかぶっている。五郎はすぐにそれを連想した。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
また
翅
(
つばさ
)
ある草履と、魔法袋と冥界王ハデースの
兜
(
かぶと
)
を得、これを
冒
(
かぶ
)
ると自分全体が他人に見えなくなる。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
“兜”の意味
《名詞》
(かぶと)頭を保護するための武具。
(出典:Wiktionary)
“兜”の解説
兜(かぶと、冑)は、打撃・斬撃や飛来・落下物などから頭部を守るための防具。
本項目では、古代から近世にかけてに戦争に用いられた頭部防具のことを指す。近代以降のものについては戦闘用ヘルメット
(出典:Wikipedia)
兜
漢検準1級
部首:⼉
11画
“兜”を含む語句
兜町
衣兜
兜率天宮
鎧兜
内兜
兜形
馬兜鈴
内衣兜
兜背形
兜巾
鉄兜
鳥兜
兜首
兜率天
大兜
鉢兜
兜帽
兜虫
兜頭巾
潜水兜
...