みつ)” の例文
嫡子ちゃくし六丸は六年前に元服して将軍家からみつの字を賜わり、光貞みつさだと名のって、従四位下侍従じじゅう肥後守ひごのかみにせられている。今年十七歳である。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
(高松のお藤さん)(長江のお園さん、おみつさん)医師いしゃの娘が三人揃って、(百合さん)(婦美ふみさん)(皐月さつきさん)歯を染めたのでは
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三輪田みわたのおみつさんと同じ色である。国を立つまぎわまでは、お光さんは、うるさい女であった。そばを離れるのが大いにありがたかった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「妻ア——ウワア。なンみンだンにイ——。か——き——くンるえ——テヘヘヘヘ。ショレみたんよ……みつひでエどンの……」
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
みつなどのように兵隊の気嫌まで取て漸々御飯をいただいていく女もあるから、お前さんなんぞ決して不足に思っちゃなりませんよ
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
つまはおみつつて、今歳ことし二十になる。なにかとふものゝ、綺緻きりやうまづ不足ふそくのないはうで、からだ発育はついく申分まをしぶんなく、どうや四釣合つりあひほとん理想りさうちかい。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
『來月の六日むいかだすがな。』と、おみつ先刻さつきから昔の祭の日の記憶を辿たどつて、さま/″\の追懷つゐくわいふけつてゐたらしく思はれた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
アアおみつどの、と呟いてふたりは足を止め、道場の内にいた人々も、どやどやとそこへ出て、彼女のけたたましい声を、騒ぐ胸へ、受け取った。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みつ此間こなひだ機械體操とかで右の足に怪我をしたのだけど、これつぱかりのことで休んでなるものかなんて、繃帶はうたいして跛足びつこ引き/\學校へ行つてゐるよ。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
お向うのおみつさんなんざ半歳前あねが嫁に来た時は藁人形わらにんぎょうを持出す騒ぎをやりましたぜ。そいつを五寸釘でどこかの杉かなんかに打ち付けるつもりのを
しかし其れよりも著しいしるしがある。は此の蘆の中から湧いて来る歌の声——万作の娘おみつが歌う歌であった。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
きいて下されかしもと吾儕それがしは有馬家にて祿ろく五百石を頂戴なし小姓頭をつとめたる大藤武左衞門と云者なるが夫婦ふうふなかに子と言は是なるおみつたゞ一人しかるに妻は七年前
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
陽子やみつちやんなどは、とても待つて、毎日交代に停車場へ出張してゐたのですよ。おしまひには、怒つて、もう来たつて知らない、と言つてゐた人もありました。
津軽 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
妹のおみつの給仕で夕飯を食ってしまうと、高い空には青ざめた冷たい星が二つ三つ光って、ここらの武家屋敷も寺も百姓家も、みんな冬の夜の暗闇くらやみの底に沈んでしまった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「いま宗ちゃんは相談ごとの集まりだって云った、おれんところへ来たのろは、死んだおみつぼうのことで話があるって云ってたぜ、いってえどういうことなんだい、これは」
源蔵ヶ原 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女の子の二人は元園町へ遊びに行つた。送つて行つたひいづは帰つて来るとまたぐ藤島さんへ行くみつと、水道橋の停車ぢやうまで一緒に行つた。天野さんが来てそれからおてるさんが来た。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
光蔵みつぞうという語音が呼びにくいのでみつこうに通わせて幸吉と呼ばれていました。
多くの話のうちに明日行くべきおみつさんに関しての話はこうであった。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「おみつ、お前はそんなこと云うけれども、まアまア、」
洋灯 (新字新仮名) / 横光利一(著)
みつ! まだ泣いてるか——黙つて寝なさい」
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
みつちゃんもかわへおはいりよ。」
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とむらむらとして、どうしたんですか、じりじり胸が煮え返るようでめつけますと、そっ跫音あしおとを忍んで、みつやは、二階を下りましたっけ。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此羽織は、三輪田の御光さんの御母おつかさんが織つて呉れたのを、紋付もんつきに染めて、御みつさんが縫ひげたものだと、はゝの手紙に長い説明がある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みつはと振り返へると、横のこみちからくはかついで來た百姓に小腰をかゞめつゝ、物をいてゐたが、やがて嬉しさうな顏をして小走りに小池に追ひ付き
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
申すのもチト失禮しつれいでは有りますが常におやさしいおみつさん吾儕わたしは自分の子の樣に思つてゐませば營業しやうばいを休んでなりと駈歩行かけあるき御用を達てあげますよ是といふのも親孝行おやかうかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あのおみつの場合は、ぬかよろこびであったのだし、あんな事もあるのだから、やっと百五十一枚を書き上げたくらいで、気もいそいその馬鹿騒ぎは慎しまなければならぬ。
鉄面皮 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「そうきまれば——何もかも水に流して、一こんみ交わして戴きたい。——みつっ、光っ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みつが煮しめばかり食べてうをを余り食べなかつたからソツプを飲ませた。玄関の土間の暗くなつた頃に平野さんが来た。これから暁星の夜学にくのだと云つて腰を掛けた儘で話した。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
妹のおみつと二人で下谷したや大音寺だいおんじ前に小さい家を借りて、小鼓指南こづつみしなんという看板をかけていたが、弟子入りする者などほとんど一人もなかった。八橋は素人しろうとの時から栄之丞を識っていた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
島か、みつか、はたきを掛けて——お待ちよ、いいえう/\……矢張やっぱりこれは、此の話の中で、わにに片足食切くいきられたと云ふ土人か。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三輪田みわたのおみつさんがあゆをくれたけれども、東京へ送ると途中で腐ってしまうから、家内うちで食べてしまった、等である。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それで足の速度をゆるめて、おみつの歩き易いやうにしてやりながら、手でも引いてやりたいといふ氣がして來た。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
使つかふは勿論もちろんなる可く金はまたみつ親子おやこと共に親類しんるゐ方へ預け置き爾來じらいみつが召使いとして一生を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しまか、みつか、はたきけて——おちよ、いゝえう/\……矢張やつぱりこれは、はなしなかで、わに片足かたあし食切くひきられたと土人どじんか。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なるべくみんなを枕元まくらもとへ集めておきたがった。気のたしかな時はしきりにさびしがる病人にもそれが希望らしく見えた。ことにへやうち見廻みまわして母の影が見えないと、父は必ず「おみつは」と聞いた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「四谷へ縁附かたづいております、せんのおみつをお連れなさいまして、縁日へ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みちか、おみつか、女の名前。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みつかい、光や、)
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)