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倦
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あ
ふりがな文庫
“
倦
(
あ
)” の例文
定雄は次男の足の届かぬように屏風を遠のけると、また
倦
(
あ
)
かず眺めていた。しかし、
火鉢
(
ひばち
)
に火のあるのに、ひどくそこは寒かった。
比叡
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
彼はいつも、頭というものが、彼自身よりも賢いことを知って、感心するのであった。又、彼は何をやってもすぐ
倦
(
あ
)
いてしまった。
死の接吻
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
私は
倦
(
あ
)
くことのない彼の熱情とその生涯とに
驚畏
(
きょうい
)
の念を感じる。ラスキンはモリスにおいて彼のよき継承者と実現者とを得たのである。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
隱れんぼをする子供が、見つかりさうになりながら急に逃げ出すといふ刹那の心理を以て、彼は
倦
(
あ
)
かず此青年の擧動を視察した。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
彼らは小さなクリストフを愛し、小さなクリストフも彼らを愛する。彼は彼らの声を聞いて眼に涙をためる。幾度呼び出しても
倦
(
あ
)
きない。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
二人は、黙って
対
(
むか
)
い合っていた。——そして馬陸は、靴針のように童子の足跡を辿って、幾重にも縫糸をかがって
倦
(
あ
)
くことを知らなかった。
後の日の童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
が、
暫
(
しばら
)
くすると
中根
(
なかね
)
の
話
(
はなし
)
にも
倦
(
あ
)
きが
來
(
き
)
た。そして、三十
分
(
ぷん
)
も
經
(
た
)
たない
内
(
うち
)
にまた
兵士達
(
へいしたち
)
の
歩調
(
ほてう
)
は
亂
(
みだ
)
れて
來
(
き
)
た。ゐ
眠
(
ねむ
)
りが
始
(
はじ
)
まつた。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
諸君も
倦
(
あ
)
きてくるであろう。しかしとにかくに、朝といわず、夕といわず、わたしと人力車の幽霊とはいつも一緒にシムラをさまよい歩いた。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
京子はもう疲れ切り、眼星の幻像にこだわるのも
倦
(
あ
)
いて、すっかり無気力に成り果てたようだ。黒眼鏡もいつか
外
(
はず
)
して居る。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「ところが、今やそのやむを得ざることが、得られなくなってしまった——おれはもう、こうして旅から旅の亡者歩きに大抵
倦
(
あ
)
きてしまったよ」
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
時々は、姉のエルネスチイヌも兄貴のフェリックスも、遊び
倦
(
あ
)
きると、自分たちの
玩具
(
おもちゃ
)
を気前よくにんじんに貸してやる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
追って来る連中ももう
倦
(
あ
)
きたと見えて、途中からだんだんに減ってしまって、池の端まで来る頃には誰も付いて来ない。
半七捕物帳:58 菊人形の昔
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お前は、俺達を、一様に搾取するだけで
倦
(
あ
)
き足りないで、そういう風にして、個々の俺達の仲間までも堕落させるんだ。
牢獄の半日
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
「そうさねえ。金を賭けるのも、もう
倦
(
あ
)
きたねえ」と蟹江は並べ終ってじろりと猿沢の顔を見ました。「今夜はなにか変ったものでも賭けようか」
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
いえ
私
(
わたくし
)
が
倦
(
あ
)
きっぽいのではございませんが、私はどうぞして武家奉公が致したいと思い、其の訳を叔父に頼みましても
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お話しでないもんだから
此方
(
こっち
)
はそんな事とは夢にも知らず、お弁当のお
菜
(
かず
)
も毎日おんなじ
物
(
もん
)
ばッかりでもお
倦
(
あ
)
きだろう
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
その人達は自分のお金で生活をしてましたけど、どうも
倦
(
あ
)
きっぽい怠け者でしたわ、しかも大変におしゃれでしたの。
見えざる人
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
早くいえば、不良少年あがりの万吉郎にとっては、ヒルミ夫人一人を守っていることに
倦
(
あ
)
き
倦
(
あ
)
きしてきたのであった。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
その時のことを想い出して
信神
(
しんじん
)
も信神であるが、これだけのことを
倦
(
あ
)
きず
撓
(
たわ
)
まず、毎日々々やり透すということは普通のものに出来ることではない。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
『だがね、お前様だって、ずいぶんお目出たいやな、よくもまあ
倦
(
あ
)
きもしねえで、おんなじことを繰り返し繰り返し、四十遍も言ってなさるだ……』
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
甲板球戯
(
デツキビリヤアド
)
は
我我
(
われわれ
)
に最も好く時間を費させ
且
(
か
)
つ運動にもなるが、
昼間
(
ひるま
)
に限られた遊戯であつて其れも
倦
(
あ
)
き易い日本人には二時間以上続け得ない様である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
が、しまいにはそれにも
倦
(
あ
)
いて来た。何にもしたくなかった。で、原稿を枕元から押しやって静かに目をつぶった。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
こっそりあの子に会いに来る
小
(
ちい
)
ちゃな子もございます。それから、その子よりは大きい子で、あの子の話を
倦
(
あ
)
きもせず聞いている子も一人ございます。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
だから、日本の現在の状態に
倦
(
あ
)
き足らない者はあくまで反抗して戦えばいいのである。また、戦うのが嫌なら社会から引退すればいいではないかと思う。
国民性の問題
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
僕なんぞはもういい加減耳に
胼胝
(
たこ
)
が出来てもよさそうな筈だが、一向聞き
倦
(
あ
)
きもせずに、にこにこしながら
会槌
(
あいづち
)
を打っているのだから、これも不思議だ。
雉子日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
土間つづきのきたない部屋に、もう酒にも
倦
(
あ
)
いてぼんやり坐っていると、破障子の間からツイ裏木戸の所に積んである薪が見え、それに夕日が当っている。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
私の体験からいえば、うなぎを食うなら、毎日食っては
倦
(
あ
)
きるので、三日に一ぺんぐらい食うのがよいだろう。
鰻の話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
所謂
(
いはゆる
)
生活力と云ふものは実は動物力の異名に過ぎない。僕も亦人間獣の一匹である。しかし食色にも
倦
(
あ
)
いた所を見ると、次第に動物力を失つてゐるであらう。
或旧友へ送る手記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして「殺人」の魅惑は、この刺戟に
倦
(
あ
)
きた人形国の主に、新らたなる、強烈な刺戟を与えたのに違いない。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
次第に
倦
(
あ
)
きられて、やがて、その作品の商品としての価値をも低下させることはきまっているからである。
文芸は進化するか、その他
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
私ね、もうあなたに
倦
(
あ
)
きたの。昨夜もあなたいってたわね。ぼくたち、結婚しよう、そして、新しく出発しよう、君もやり直すべきだ、なんて。……よしてよ。
はやい秋
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
ル氏は毎日馬に
騎
(
の
)
つて役所に出掛けたものだが、
農夫爺
(
ひやくしやうおやぢ
)
の
家
(
うち
)
はその途中にあるので、馬に
騎
(
の
)
り
倦
(
あ
)
いたル氏は、時々鞍から下りて爺さんの家で休んだりしたものだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
作者自身すら
倦
(
あ
)
きたやうなものを何遍も何遍も繰返して書いて見たところで、人を動かすわけがない。
批評的精神を難ず
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
養子に貰ったヒポサツポにもルビナオイは間もなく
倦
(
あ
)
きがきた。そして、遂いには離縁してしまった。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
何故なら妻の死とはそこにもここにも
倦
(
あ
)
きはてる程
夥
(
おびただ
)
しくある事柄の一つに過ぎないからだ。そんな事を重大視する程世の中の人は閑散でない。それは確かにそうだ。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
新高って言う人は青バスにいるうちに幾人も幾人も女車掌を引っかけて内縁を結んで、その人に
倦
(
あ
)
きると片端から殺して、何処かへ棄てて来るらしいんですって……。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
先刻は
貴君
(
あなた
)
を試したのよ。
妾
(
わたくし
)
の客間へ、妾と
戯恋
(
フラート
)
しに来る多くの男性と貴君が、違っているか
何
(
ど
)
うかを試したのですわ。妾は戯恋することには
倦
(
あ
)
き/\しましたのよ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ポオル叔父さんの姪や甥達は、アムブロアジヌお
婆
(
ば
)
あさんのお伽話には
倦
(
あ
)
きてしまひましたが、ポオル叔父さんの本当の事についての話には倦く事を知りませんでした。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
「私はどこへも逃げはせぬ。酒宴の席にも
倦
(
あ
)
いたので、自分の部屋へ帰るまでじゃ」鳰鳥はさり気なくこう云った。しかし彼女のそういう声は怪しく
顫
(
ふる
)
えを帯びていた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これに対してヨブはまず十六章の一節—五節において、友の忠言の無価値なることを主張する。「かかる事は我れ多く聞けり」は、
汝
(
なんじ
)
らの反覆語に
倦
(
あ
)
きたとの意である。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
凜々
(
りんりん
)
とした声ではないが、低いうちにも一念の
倦
(
あ
)
くことなき
三昧
(
さんまい
)
が感じられる念仏の声であった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ことに白人や印度人の顔はいつまで見ていても
倦
(
あ
)
きませんね。そこへ持って行くと、日本人の顔は未製品です。深味がない。日本人の顔よりまだ支那人の顔の方が面白い。
凍るアラベスク
(新字新仮名)
/
妹尾アキ夫
(著)
動揺の乏しい単調な生活であったなら自分らはあるいは早く
倦
(
あ
)
いてしまっていたかも知れない。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
二人は何の妨げも無しに、粗末な客間で狭い庭前で、
倦
(
あ
)
むことを知らない会見を続けました。
奇談クラブ〔戦後版〕:14 第四次元の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
飲
(
のま
)
ず
食
(
くわ
)
ずですじかいに障子へ凭れかゝって居るので、婢はしきりに話懸けて自分から笑って見せたが、一向返しの詞がないのに
倦
(
あ
)
ぐね、誰か呼びにお遣り遊ばすのと云うを
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
白じらとした月明りに
罩
(
こ
)
もって、それはさながら冥府の
妓女
(
うたいめ
)
の座興のよう——藤吉勘次は思わず顔を見合せた。拳にも
倦
(
あ
)
きてか、もう縁台の人影もいつとはなしに薄れていた。
釘抜藤吉捕物覚書:05 お茶漬音頭
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
造物の傀儡となり、蒭狗となつて、
倦
(
あ
)
きられた時投げ出されて死するのが凡人なのである。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
ある
日
(
ひ
)
私
(
わたくし
)
がいつになく
統一
(
とういつ
)
の
修行
(
しゅぎょう
)
に
倦
(
あ
)
きて、
岩屋
(
いわや
)
の
入口
(
いりぐち
)
まで
何
(
なん
)
とはなしに
歩
(
あゆ
)
み
出
(
で
)
た
時
(
とき
)
のことでございました。ひょっくりそこへ
現
(
あら
)
われたのが
例
(
れい
)
の
指導役
(
しどうやく
)
のお
爺
(
じい
)
さんでした。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
そうした村のなかでは、溪間からは高く一日日の当るこの平地の眺めほど心を休めるものはなかった。私にとってはその終日日に
倦
(
あ
)
いた眺めが悲しいまでノスタルジックだった。
蒼穹
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
お
廢
(
よ
)
しよ、
斷
(
ことわ
)
つてお
仕舞
(
しまひ
)
なと
言
(
い
)
へば、
困
(
こま
)
つたねとお
京
(
きやう
)
は
立止
(
たちど
)
まつて、それでも
吉
(
きつ
)
ちやん
私
(
わたし
)
は
洗
(
あら
)
ひ
張
(
はり
)
に
倦
(
あ
)
きが
來
(
き
)
て、もうお
妾
(
めかけ
)
でも
何
(
なん
)
でも
宜
(
よ
)
い、
何
(
ど
)
うで
此樣
(
こん
)
な
詰
(
つま
)
らないづくめだから
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
倦
漢検準1級
部首:⼈
10画
“倦”を含む語句
倦怠
倦果
倦厭
気倦
飽倦
倦怠期
厭倦
見倦
物倦
待飽倦
倦々
倦怠感
倦怠相
早倦
魂倦
仕倦
附倦
遊倦
責倦
倦労
...