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頓狂
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とんきょう
ふりがな文庫
“
頓狂
(
とんきょう
)” の例文
直吉は
頓狂
(
とんきょう
)
に呼んだ。しかし、彼の歩いて行く方向は、依然として変らない。従って、次郎の進む方向にも一向変化がないのである。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「ああ、ムーさんだわね、向うから二番目に、キミちゃん、まだ寝ているわ」と女給頭のお富が彼の
膝頭
(
ひざがしら
)
の辺から
頓狂
(
とんきょう
)
な声をあげた。
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
姫君の容貌は、ちょっと人好きのする
愛嬌
(
あいきょう
)
のある顔で、髪もきれいであるが、額の狭いのと
頓狂
(
とんきょう
)
な声とにそこなわれている女である。
源氏物語:26 常夏
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
やがて、
瘤
(
こぶ
)
ヶ
峰
(
みね
)
のてッぺんにある、
天狗
(
てんぐ
)
の
腰掛松
(
こしかけまつ
)
の下にたった
竹童
(
ちくどう
)
は、
素
(
す
)
ッ
頓狂
(
とんきょう
)
な声をだしてキョロキョロあたりを見まわしていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ちょうどその
声
(
こえ
)
は、ぶなの
木
(
き
)
がざわざわと
体
(
からだ
)
を
揺
(
ゆ
)
すって
歌
(
うた
)
うのに、
調子
(
ちょうし
)
を
合
(
あ
)
わせて、
頓狂
(
とんきょう
)
な
拍子
(
ひょうし
)
でも
取
(
と
)
るようにきかれたのでした。
縛られたあひる
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
その街角へ現われて街灯の下へ
辿
(
たど
)
りつくと、まるで自分が
潤
(
うる
)
んだ灯に
縋
(
すが
)
りついた
守宮
(
やもり
)
ででもあるような
頓狂
(
とんきょう
)
な淋しさが湧いてきた。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
子供を寝かしつけていたお銀は、
頓狂
(
とんきょう
)
なその声が耳に入ると、急いで裏へ子供を抱き出したが、小さい枕だけは隠す
隙
(
ひま
)
がなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「あッ、もッちょこい!」沖売の女が
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出して、ハネ上った。「人の
尻
(
しり
)
さ手ばやったりして、いけすかない、この男!」
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
しばらくすると、縁側の方の陽だまりから
頓狂
(
とんきょう
)
な声がして、坊主頭に汚ない
絣
(
かすり
)
を着た若いような、老人のような男があらわれた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
老人はゆっくり首を振った、「げんまも頭六も乱暴者だが、御番頭を射殺するほど
頓狂
(
とんきょう
)
でもないし、そうする
仔細
(
しさい
)
もないだろう」
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
最初に妹がいって見て、どうも様子が変なので、
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出したんだから、そばにいた学生が馳つけて、脈をみると、既に止っている。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「え」西沢は
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出した。「波田君! 僕も、たまにゃ連れて行けよ」そこで、二人は、連れ立って、倉庫へやって来た。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
それがあまり
頓狂
(
とんきょう
)
に聞こえたものですから、その時は大笑いになりましたが、さてそれからというものは、彼はもう凹面鏡で夢中なんです。
鏡地獄
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
久さんは
怪訝
(
けげん
)
な眼を上げて、「え?」と
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出す。「何さ、今しがたお広さんがね、
甜瓜
(
まくわ
)
を
食
(
く
)
ってたて事よ、ふ〻〻〻」
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と笑い笑い言ってからくるりッと葉子のほうに向き直って、田川夫妻には気が付かないように
頓狂
(
とんきょう
)
な顔をちょっとして見せた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
牛小屋の方で、誰かが
頓狂
(
とんきょう
)
な喚きを発している、と、すぐその喚き声があの夜河原で号泣している断末魔の声を
聯想
(
れんそう
)
させた。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
カンテラの光の届かない部屋の一隅から、急にカラ/\と
頓狂
(
とんきょう
)
に笑い出す声を聴くと、元気のある度胸の据った喜太郎
迄
(
まで
)
が、ハッと色を変えた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「おやおや本当に
憤
(
おこ
)
ったのかえ? こいつは仕損じ。謝った謝った」人丸左陣は
頓狂
(
とんきょう
)
に、ポカリ額を叩いたものである。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
発車まぎわに
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出して駆け込んで来て、いきなり
肌
(
はだ
)
をぬいだと思ったら背中にお
灸
(
きゅう
)
のあとがいっぱいあったので、
三四郎
(
さんしろう
)
の記憶に残っている。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ガラッ八か冗談の題目にしたのも、平次がすっ
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出したのも、
掛合噺
(
かけあいばなし
)
程度以上のものではなかったのです。
銭形平次捕物控:077 八五郎の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし、子供達は餅をもらってしまうと、そんな
愚痴
(
ぐち
)
など聞いてはいなかった。
頓狂
(
とんきょう
)
な声を上げながら戸外に待っている
悪垂
(
あくたれ
)
仲間の方へ飛んで行った。
手品
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
子馬の声に音を合わせる娯楽場の音楽、退屈してる金持の
馬鹿
(
ばか
)
者どもを
嫌
(
いや
)
な
頓狂
(
とんきょう
)
声で喜ばせる
賤
(
いや
)
しいイタリー
道化
(
どうけ
)
役者、または、商店の陳列品の低劣さ
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
などと
頓狂
(
とんきょう
)
声を上げる商人風の男もあつた。中でも一ばん熱心に観戦してゐたのは、一人の海軍下士官だつた。
三つの挿話
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
前に鼻歌をうたった男が、
頓狂
(
とんきょう
)
な声で、こう言った。それにつれて、一同が、傷も忘れたように、どっと笑う。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その隣の
檻
(
おり
)
の金網の中には
嬉戯
(
きぎ
)
する小猿が幾匹となく、
頓狂
(
とんきょう
)
に、その桃色の眼のまわりを動かすのである。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
「これこれ、
何
(
な
)
んでそんな
頓狂
(
とんきょう
)
な
声
(
こえ
)
を
出
(
だ
)
すんだ。いくら
雨
(
あめ
)
の
中
(
なか
)
でも、
人様
(
ひとさま
)
に
聞
(
き
)
かれたら
事
(
こと
)
じゃァないか」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「あ! これか」と与吉は
頓狂
(
とんきょう
)
に頭をかいて、「これあ、なんだ、私が
味噌
(
みそ
)
をしぼった化けこみなんだ。 ...
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と横合いから青木が
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出した。すると出て行きかけた看護婦がツンとしたまま振り返った。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
雪子は
被皮
(
ひふ
)
を着て、物に驚いたような
頓狂
(
とんきょう
)
な顔をしていた。それに引きかえて、美穂子は明るい眼と眉とをはっきりと見せて、
愛嬌
(
あいきょう
)
のある
微笑
(
びしょう
)
を
口元
(
くちもと
)
にたたえていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
日当りのいい縁側には
縮緬
(
ちりめん
)
の夜具
羽二重
(
はぶたえ
)
の
座布団
(
ざぶとん
)
や
母子
(
おやこ
)
二人の着物が干される。軒先には翼と尾との紫に首と腹との
真赤
(
まっか
)
な
鸚哥
(
いんこ
)
が青い
籠
(
かご
)
の内から
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出して
啼
(
な
)
く。
寐顔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
座のなかから「——とっても、いけねえや」という
頓狂
(
とんきょう
)
な、やや
卑猥
(
ひわい
)
な調子をこめた声が
挙
(
あが
)
った。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
三太が子供部屋で積木細工をして遊んでいると、中庭から源吉爺さんの
頓狂
(
とんきょう
)
な声が聞えてきた。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
一番
頓狂
(
とんきょう
)
な
乾物屋
(
かんぶつや
)
の子は、ありあわせの竹の棒にまたがって、そこいら中をかけずり廻った。
大人の眼と子供の眼
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
過般
(
こないだ
)
も
宴会
(
えんかい
)
の席で
頓狂
(
とんきょう
)
な
雛妓
(
おしゃく
)
めが、あなたのお
頭顱
(
つむり
)
とかけてお
恰好
(
かっこう
)
の
紅絹
(
もみ
)
と
解
(
と
)
きますよ、というから、その心はと聞いたら、地が
透
(
す
)
いて赤く見えますと云って笑い
転
(
ころ
)
げたが
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は
咄嗟
(
とっさ
)
に廻れ右をして、
間髪
(
かんぱつ
)
を入れず、親爺の頬っぺたを殴りつけた。親爺は眼をぱちくりさせ、「あ、ぶった。ぶった。」と
頓狂
(
とんきょう
)
な悲鳴をあげて、私の胸倉に取りついた。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
伊勢
(
いせ
)
の
荒木田守武
(
あらきだもりたけ
)
のように、徹頭徹尾
戯
(
ざ
)
れの句ばかりを続けた人も無いではないが、本来は長ったらしい連歌の間へ、時々
頓狂
(
とんきょう
)
な俗な句や言葉を挟むのが興味であったことは
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
或
(
あるい
)
は高く或は低く絶えずかちかちと
鉄槌
(
かなづち
)
の音を響かせている細工場の中から、(父は
屡〻
(
しばしば
)
留守だった……)、よく
頓狂
(
とんきょう
)
な奴だとみんなから叱られてばかりいた佐吉という小僧が
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
などゝ、薄気味の悪い目を輝かして、
頓狂
(
とんきょう
)
な声で云ったが、一人も応ずる者はなかった。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
京子は、
頓狂
(
とんきょう
)
に言って鏡を持たないあいている方の手の指で、
眼瞼
(
まぶた
)
を弾く。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「お経の文句!」と旅人は
頓狂
(
とんきょう
)
な声でいいました。
何故
(
なぜ
)
頓狂な声でいったかというと、旅人は
生憎
(
あいにく
)
お経の文句なぞ少しも知らなかったからでした。おばあさんはそんなこととは知りませんから
でたらめ経
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
頓狂
(
とんきょう
)
な声に驚いた小西警部が、
覗
(
のぞ
)
き
込
(
こ
)
むようにして訊くと
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
会話の時間に
頓狂
(
とんきょう
)
ものゝニコル先生が赤羽君の名を
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と
頓狂
(
とんきょう
)
な声でいいますので、私はびっくりして
幕末維新懐古談:25 初めて博覧会の開かれた当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
眼も少々
上
(
うわ
)
ずっていた高萩が
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出して
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それから
頓狂
(
とんきょう
)
な声を出したわ。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
と署長の頭の上で、
頓狂
(
とんきょう
)
な声がした。
駭
(
おどろ
)
いて署長がうしろを向くと、そこには彼と
犬猿
(
けんえん
)
の間にあるK新報社長の田熊氏が
嘲笑
(
あざわら
)
っていた。
人間灰
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
源造の口から、思わず
頓狂
(
とんきょう
)
な
叫声
(
さけびごえ
)
がほとばしる。その男は三次ではなかった。服装は三次のものだが、中味が違っていたのだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
隣の部屋をノックして急な帰京を知らせると、そこにい合わせた三人は等しく立ち上って、少し
頓狂
(
とんきょう
)
なほど興奮して園を玄関まで送ってきた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「——やっ」突然、こう
頓狂
(
とんきょう
)
なさけび声を揚げて、平次郎は、すべての人が頭を下げている中から、たった一人、発狂したように飛び上がった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかも、数日の後には、次郎は、
下肥
(
しもごえ
)
を汲んでいた直吉の
頓狂
(
とんきょう
)
な叫び声で、大まごつきをしなければならなかった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
“頓狂”の意味
《名詞》
頓狂(とんきょう)
調子はずれなさま。出し抜けなさま。
(出典:Wiktionary)
頓
常用漢字
中学
部首:⾴
13画
狂
常用漢字
中学
部首:⽝
7画
“頓狂”で始まる語句
頓狂声
頓狂者
頓狂聲