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遽
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にはか
ふりがな文庫
“
遽
(
にはか
)” の例文
是が自分等の預つて居る生徒の父兄であるかと考へると、
浅猿
(
あさま
)
しくもあり、腹立たしくもあり、
遽
(
にはか
)
に不愉快になつてすたすた歩き初めた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
満庭の樹影
青苔
(
せいたい
)
の上によこたはりて清夏の逸興
遽
(
にはか
)
に
来
(
きた
)
るを覚ゆる時、われ年々来青花のほとりに先考所蔵の
唐本
(
たうほん
)
を曝して誦読日の傾くを忘る。
来青花
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
『まだ/\もつと
多
(
おほ
)
くの
證據
(
しようこ
)
が
御座
(
ござ
)
います、
陛下
(
へいか
)
よ』と
云
(
い
)
つて
白兎
(
しろうさぎ
)
は、
遽
(
にはか
)
に
跳
(
と
)
び
上
(
あが
)
り、『
此
(
こ
)
の
文書
(
もんじよ
)
は
只今
(
たゞいま
)
拾
(
ひろ
)
ひましたのです』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
チチヤノの絵に見る様な若い女が寝巻の上に
遽
(
にはか
)
に着けたらしい赤い格子縞の
前掛
(
まへかけ
)
姿で白い蝋燭を手にして門を
開
(
あ
)
けて
呉
(
く
)
れた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
遂
(
つひ
)
に彼はこの
苦
(
くるしみ
)
を両親に訴へしにやあらん、
一日
(
あるひ
)
母と娘とは
遽
(
にはか
)
に身支度して、
忙々
(
いそがはし
)
く車に乗りて出でぬ。彼等は
小
(
ちひさ
)
からぬ
一個
(
ひとつ
)
の
旅鞄
(
たびかばん
)
を携へたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
▼ もっと見る
遽
(
にはか
)
にトラックの響きがして、やがて前に止まつた。
性急
(
せつかち
)
な父の声もした。晴代はぎよつとしたが、もう追つかなかつた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
又武鑑を検するに、麹町の元泰、三十間堀の元春、木挽町の芸庵がある。皆同族なるが如くであるが、今
遽
(
にはか
)
に其親属関係を詳にすることを得ない。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
自分
(
じぶん
)
も
恁
(
か
)
く
枷
(
かせ
)
を
箝
(
は
)
められて、
同
(
おな
)
じ
姿
(
すがた
)
に
泥濘
(
ぬかるみ
)
の
中
(
なか
)
を
引
(
ひ
)
かれて、
獄
(
ごく
)
に
入
(
いれ
)
られはせぬかと、
遽
(
にはか
)
に
思
(
おも
)
はれて
慄然
(
ぞつ
)
とした。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
身のめぐりは
遽
(
にはか
)
に寂しくなりぬ。書を讀みても物足らぬ心地して、胸の中には遺るに由なき
悶
(
もだえ
)
を覺えき。さて
如何
(
いかに
)
してこれを散ずべき。唯だ音樂あるのみ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
遽
(
にはか
)
にそれを長々と巻き納めると、不興極まる顔をして、その吐息を彼に吹きかけでもするかのやうに彼をまともに見上げて、涙で光らせた
瞳
(
ひとみ
)
で彼を見上げた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
寶暦九年
(
ほうれきくねん
)
七月二十八日
(
しちがつにじゆうはちにち
)
弘前
(
ひろさき
)
に
於
(
おい
)
て
西北方
(
せいほくほう
)
遽
(
にはか
)
に
曇
(
くも
)
り
灰
(
はひ
)
を
降
(
ふ
)
らしたが、その
中
(
なか
)
には
獸毛
(
じゆうもう
)
の
如
(
ごと
)
きものも
含
(
ふく
)
まれてゐたといふ。これは
渡島
(
おしま
)
大島
(
おほしま
)
の
噴火
(
ふんか
)
に
因
(
よ
)
つたものである。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
くしや、この黄昏の空より吹きおろす秋風は
遽
(
にはか
)
に万点の火を松浦富士(
越岳
(
こしだけ
)
)の裾野に燃しいでたる。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
およそ我に遇ふ者我を殺さむといひ、雲
遽
(
にはか
)
に裂くれば
音
(
おと
)
細
(
ほそ
)
りてきゆる
雷
(
いかづち
)
のごとく過ぐ 一三三—一三五
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
陽春の訪れと共に
狹隘
(
せゝつこま
)
しい崖の下も
遽
(
にはか
)
に活氣づいて來た。大きな
斑猫
(
ぶちねこ
)
はのそ/\歩き廻つた。澁紙色をした裏の菊作りの爺さんは菊の苗の手入れや施肥に餘念がなかつた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
それと
遽
(
にはか
)
に
心着
(
こゝろづ
)
けば、
天窓
(
あたま
)
より爪先まで氷を浴ぶる心地して、歯の根も合はず
戦
(
わなゝ
)
きつゝ、不気味に
堪
(
た
)
へぬ顔を
擡
(
あ
)
げて、
手燭
(
ぼんぼり
)
の影
幽
(
かすか
)
に血の
足痕
(
あしあと
)
を
仰見
(
あふぎみ
)
る時しも、天井より糸を引きて
一疋
(
いつぴき
)
の蜘蛛
垂下
(
たれさが
)
り
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
御殿の中の空氣は
遽
(
にはか
)
に緊張して
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
『はあ。』と答へた時は若々しい血潮が
遽
(
にはか
)
にお志保の頬に上つた。そのすこし
羞恥
(
はぢ
)
を含んだ色は
一層
(
ひとしほ
)
容貌
(
おもばせ
)
を娘らしくして見せた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
この時彼の
小
(
ちひさ
)
き胸は破れんとするばかり
轟
(
とどろ
)
けり。
半
(
なかば
)
は
曾
(
かつ
)
て覚えざる
可羞
(
はづかしさ
)
の為に、半は
遽
(
にはか
)
に
大
(
おほい
)
なる
希望
(
のぞみ
)
の宿りたるが為に。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
是れ
或
(
あるひ
)
は眞理に近からむかは知らねど、われ未だ
遽
(
にはか
)
に同意することを得ずと。(國民新聞)これを一人の
蜘蟵者
(
ちちゆしや
)
とす。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
死は
遽
(
にはか
)
に襲ひ至りて、アヌンチヤタはわが面をまもりつゝこときれ
侍
(
はべ
)
りと、語りもあへず、マリアは泣き伏したり。われは詞はあらで、マリアの手を握りつ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
然
(
さ
)
れば園丁の云ふところ亦
遽
(
にはか
)
に信ずるに足らず。余
屡
(
しば/\
)
先考の詩稿を反復すれども詠吟いまだ一首としてこの花に及べるものを見ず。母に問ふと
雖
(
いへども
)
また其の名を知るによしなし。
来青花
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
僕達は
遽
(
にはか
)
に子供らしくなつてロダン翁の庭の
薔薇
(
ばら
)
を馬車の上で嗅ぎ合ふのであつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
圭子の傍に坐つてゐた咲子は、
遽
(
にはか
)
にえへゝと笑ひ出した。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は二人を導きて内格子を開きける時、彼の美き妻は
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
りて、伴へる客あるを見て
稍
(
やや
)
打惑へる
気色
(
けしき
)
なりしが、
遽
(
にはか
)
に
笑
(
ゑみ
)
を含みて常の如く迎へたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
わたくしは
偶
(
たま/\
)
その何巻なるを註せなかつたので、今
遽
(
にはか
)
に刊本の詩話を検することを得ない。其文はかうである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
友は
遽
(
にはか
)
に我
臂
(
ひぢ
)
を
把
(
と
)
りて、人にも聞ゆべき程なる聲していはく。アントニオよ。あれこそ例の少女なれ、飛び去りたる例の鳥なれ、その姿をば忘るべくもあらず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
いつもより早く日は暮れるらしい。
遽
(
にはか
)
に
道路
(
みち
)
も薄暗くなつた。まだ
灯
(
あかり
)
を
点
(
つ
)
ける時刻でもあるまいに、もう一軒点けた
家
(
うち
)
さへある。其軒先には三浦屋の文字が
明白
(
あり/\
)
と読まれるのであつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
同門の塩田
良三
(
りやうさん
)
の如きは其適材である。塩田が侍してゐれば、先生は手を袖にして事を辨ずることが出来る。わたくしはそこへ
遽
(
にはか
)
に志村を薦むることの難きを思つた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
に
來
(
きた
)
りたる
頃
(
ころ
)
、
魔風
(
まふう
)
遽
(
にはか
)
に
颯々
(
さつ/\
)
と
吹荒
(
ふきすさ
)
鬼桃太郎
(旧字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
淨本は文化十三年六月二十九日に歿した人、了蓮は寛政八年七月六日に歿した人である。今
遽
(
にはか
)
に
孰
(
いづ
)
れを是なりとも定め難いが、要するに九代十代の間に不明な處がある。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
幕府の蒔繪師に
新銀町
(
しんしろかねちやう
)
と皆川町との鈴木がある。此兩家と
氏
(
うぢ
)
を同じうしてゐるのは、或は故あることかと思ふが、今
遽
(
にはか
)
に尋ねることは出來ない。次で師岡は兄に此技を學んだ。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
こゝは
湯気
(
ゆげ
)
が一ぱい
籠
(
こ
)
もつてゐて、
遽
(
にはか
)
に
這入
(
はひ
)
つて
見
(
み
)
ると、しかと
物
(
もの
)
を
見定
(
みさだ
)
めることも
出來
(
でき
)
ぬ
位
(
くらゐ
)
である。その
灰色
(
はひいろ
)
の
中
(
なか
)
に
大
(
おほ
)
きい
竈
(
かまど
)
が三つあつて、どれにも
殘
(
のこ
)
つた
薪
(
まき
)
が
眞赤
(
まつか
)
に
燃
(
も
)
えてゐる。
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
遽
(
にはか
)
に沒字に附するに沒却の義を以てしたるものとするが如きことなしとも言ひ難し。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
また
遽
(
にはか
)
に心づきたる様にて物を探り
討
(
もと
)
めたり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
遽
漢検1級
部首:⾡
17画
“遽”を含む語句
急遽
遽然
遽々然
其遽
大遽
遽伯玉
遽色
遽雨
遽驚