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覚束
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おぼつか
ふりがな文庫
“
覚束
(
おぼつか
)” の例文
旧字:
覺束
「
先達
(
せんだって
)
、佐渡殿も云われた通り、この病体では、とても御奉公は
覚束
(
おぼつか
)
ないようじゃ。ついては、身共もいっそ隠居しようかと思う。」
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
凡
(
およ
)
そ外交問題ほど国民の元気を煥発するものはあらざる也。之なければ放縦懶惰安逸虚礼等に流れて、
覚束
(
おぼつか
)
なき運命に陥るものなり。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
……お前さんに漕げるかい、と
覚束
(
おぼつか
)
なさに念を押すと、浅くて
棹
(
さお
)
が届くのだから仔細ない。
但
(
ただ
)
、一ヶ所
底
(
そこ
)
の知れない
深水
(
ふかみず
)
の穴がある。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
これではとても文学でパンを得る事は
覚束
(
おぼつか
)
ないと
将来
(
ゆくすえ
)
を
掛念
(
けねん
)
したばかりでなく、実は『浮雲』で多少の収入を得たをさえ恥じていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
かの宗教改革を
唱
(
とな
)
えたルターが始めてその新説を発表し旧教家の反対を受けたときは、その
生命
(
いのち
)
の安全さえもはなはだ
覚束
(
おぼつか
)
なかった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
▼ もっと見る
そして、厚く褒美をやれと命じ、その
覚束
(
おぼつか
)
ない敵状資料をつぶさに
含味
(
がんみ
)
して、何か、彼としては充分に、得るところはあったらしい。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、十九や、そこいらではとうてい
覚束
(
おぼつか
)
ない芸だから、自分はやむを得ず。前記の通りいろいろ馬鹿な
真似
(
まね
)
をしていると、突然
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ある日、庭で
覚束
(
おぼつか
)
ない手つきをして小麦を
扱
(
こ
)
いて居ると、入口で車を下りて洋装の紳士が入って来た。余は眼を挙げて安達君を見た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
幾度
(
いくたび
)
幾通
(
いくつう
)
の
御文
(
おんふみ
)
を拝見だにせぬ我れ、いかばかり憎くしと
思
(
おぼ
)
しめすらん。
拝
(
はい
)
さばこの
胸
(
むね
)
寸断になりて、常の決心の消えうせん
覚束
(
おぼつか
)
なさ。
軒もる月
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
その直前にどんなことを考えていたかと思って
聊
(
いささ
)
か
覚束
(
おぼつか
)
ない寝覚めの記憶を逆に追跡したが、どうもその前の連鎖が見付からない。
KからQまで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それを見ると、切角青山博士の詞を基礎にして築き上げた
楼閣
(
ろうかく
)
が、
覚束
(
おぼつか
)
なくぐらついて来るので、奥さんは又心配をし出すのであった。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
物を言ふ口付きが
覚束
(
おぼつか
)
なくて眼はどこを見てゐるかはっきりしないで黒くてうるんでゐる。今はそれがうしろの横でちらっと光る。
台川
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
鼻にぬけた
胴間声
(
どうまごえ
)
で、しゃべるわしゃべるわ、
而
(
しか
)
も山岳に対しては、Mönch の発音さえ
覚束
(
おぼつか
)
ないしろ者なんだからあきれかえる。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
たるんだ声で答えながら、足許も
覚束
(
おぼつか
)
なく出て来たのは、茶の
単衣
(
ひとえ
)
に、山の出た
黒繻子
(
くろじゅす
)
の帯をしめた、召使いらしい老婆であった。
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「出来るだけお力になりましょう。……併し果たしてこの私に、貴女をお救いする力があるか何うか、これが実は
覚束
(
おぼつか
)
ないのです」
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ですから……これでは人類の共同的文化生活は永久に
覚束
(
おぼつか
)
ない……とあって発明されたのが儀礼とかお世辞とかいう奴であります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
地理測量のまだ
覚束
(
おぼつか
)
ない世の中では原は木がなくてもなお一つの障壁であり、これを
跋渉
(
ばっしょう
)
することは湖を渡るほどの困難であった。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
しかしいくら
不死身
(
ふじみ
)
の痣蟹でも、そんな高空に吹きとばされてしまったのでは、とても無事に生還することは
覚束
(
おぼつか
)
なかろうと思われた。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は既に読みたいと思うかずかずの書籍を
有
(
も
)
っていたが、
覚束
(
おぼつか
)
ない彼の語学の知識では多くはまだ書架の飾り物であるに過ぎなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
斯
(
かか
)
る始末となって
多勢
(
たぜい
)
に
取巻
(
とりまか
)
れては、
到底
(
とても
)
本意
(
ほんい
)
を遂げることは
覚束
(
おぼつか
)
ない。一旦はここを逃げ去って、二度の復讐を計る方が無事である。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
が、悪人のあせりようも一段猛烈をきわめて、その三日を無事に暮せるかどうか、はなはだ
覚束
(
おぼつか
)
ない有様になっていることも事実でした。
銭形平次捕物控:138 第廿七吉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
眠りの幕がいつの間にか考えている頭の中を周囲から絞り狭めて行って、考えは暗中ただ一点の吸殻の火のように
覚束
(
おぼつか
)
なくなる。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
僅かに七里半とはいえ、天下の難工事であって、当時の土木力では成功が
覚束
(
おぼつか
)
ないという理由の下に、いつも中止の運命となる。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
左
(
さ
)
候わば幕府諸藩一人も服さざるはこれ有るまじくと存じ
奉
(
たてまつ
)
り候。幕府諸藩心服
仕
(
つかまつ
)
らずては
曠代
(
こうだい
)
の大業は恐れながら
覚束
(
おぼつか
)
なく存じ奉り候。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
とても自分などが
太刀打
(
たちう
)
ちできる相手ではないと思うと、心が
萎
(
な
)
えたようになって、何をいうのも
覚束
(
おぼつか
)
ない気がするのだった。
キャラコさん:02 雪の山小屋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その事業が自分に
覚束
(
おぼつか
)
ない事を思ふが故に、その空虚をまぎらさうとして無理にあんな空な享楽主義を肯定したかつたからの事だと思つた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
しかしそれはいずれも三十前後の時の
戯
(
たわむ
)
れで、当時の記憶も今は
覚束
(
おぼつか
)
なく、ここに識す地名にも誤謬がなければ幸である。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
三、四十分も掛かって
漸
(
ようや
)
く
天幕
(
てんと
)
を張り終り、
筵
(
むしろ
)
を敷いてそこへ
覚束
(
おぼつか
)
なくも焚火を始めた頃、水汲み隊は息を切らしヘトヘトになって帰って来た。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
夫
(
そ
)
れ
是
(
こ
)
れで政府も余程
困
(
こまっ
)
た様子でありしが、
到頭
(
とうとう
)
ソレを無理
圧付
(
おしつ
)
けにして同船させたのは、政府の長老も内実は日本士官の
伎倆
(
ぎりょう
)
を
覚束
(
おぼつか
)
なく思い
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
妙子を
飜意
(
ほんい
)
させるのにも、自分一人の力では
覚束
(
おぼつか
)
ないので、貞之助と、雪子と、三人で代る代る
諭
(
さと
)
して見たら
利
(
き
)
き目がありそうにも考えられた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「
亜細亜
(
アジア
)
人種……
阿弗利加
(
アフリカ
)
人種……。」と生徒達の読本朗読の声を聞き覚えに私は
覚束
(
おぼつか
)
なくも
口真似
(
くちまね
)
をしたりしてゐた幼ない頃の自分を思ひ出す。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
道も漸く
覚束
(
おぼつか
)
なく、終には草ばかりになってしまう、帰りの時間も
気遣
(
きづか
)
われる、足も痛み出した、山の見えぬのは残念だが終に引返すことにした。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
かかる
放蕩
(
ほうとう
)
者の
行末
(
ゆくすえ
)
ぞ
覚束
(
おぼつか
)
なき、勘当せんと
敦圉
(
いきま
)
き給えるよし聞きたれば、心ならずも再びかの国に渡航して身を終らんと覚悟せるなりと物語る。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
私は想像する——あの窓からこの広場の鳩と子供のむれを見おろしながら、
覚束
(
おぼつか
)
ない指さきで細工物にいそしむ、やっと生きているような老人たち。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
私は八方
摸索
(
もさく
)
の結果、すがり附くべき一茎の
藁
(
わら
)
をも見出し得ないで、
已
(
や
)
むことなく
覚束
(
おぼつか
)
ない私の個性——それは私自身にすら他の人のそれに比して
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
しかしその時日本人固有の
稟性
(
ひんせい
)
のうまみは存して居るであらうか、何だか
覚束
(
おぼつか
)
ないやうにも思はれる。(六月十三日)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
こういう風に経済の保障が確立している夫婦生活の中でなければ、母性の順当な実現は
覚束
(
おぼつか
)
ないことだと思います。
平塚さんと私の論争
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
食うや食わずで
逼塞
(
ひっそく
)
している俺の両親は、俺の成業を首を長くして待っているのだ。ここを追われると、俺のこの身体で食っていくことさえ
覚束
(
おぼつか
)
ない。
青木の出京
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「殊ニ身ニシムヤウニ聞ユルハ、御謀反ノ志ヲモ聞セ給フベケレバ、事ノ
成
(
なり
)
ナラズモ
覚束
(
おぼつか
)
ナク、又ノ対面モ如何ナラムト
思召
(
おぼしめす
)
御胸ヨリ出レバナルベシ」
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
どこか知らん大国に頼らなくてはその国が立行かぬように思うて居る人間ばかりですからもちろん独立は
覚束
(
おぼつか
)
ない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
翌日の
糧
(
かて
)
を
稼
(
かせ
)
ぎ出さんがために
覚束
(
おぼつか
)
ない努力をしていた、あの悲しい年月の思い出を、急いで遠ざけたのだった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
お辰
素性
(
すじょう
)
のあらまし
慄
(
ふる
)
う筆のにじむ墨に
覚束
(
おぼつか
)
なく
認
(
したた
)
めて守り袋に父が書き
捨
(
すて
)
の
短冊
(
たんざく
)
一
(
ひ
)
トひらと共に
蔵
(
おさ
)
めやりて、明日をもしれぬ
我
(
わ
)
がなき後頼りなき
此子
(
このこ
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私の持っている筆の力くらいでは到底この驚異の万分の一をも紙の上に写し出すことは
覚束
(
おぼつか
)
ないかも知れません。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
『一代女』五、一夜を銀六匁にて呼子鳥、これ伝受女なり、
覚束
(
おぼつか
)
なくて尋ねけるに、風呂者を猿というなるべし。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その
覚束
(
おぼつか
)
ない
騒
(
ざわ
)
めきが、次第に柔かでもある深みを持った重い確かさで、前の緬羊舎の戸口から、緑の濡れしずくの草っ原へもこりもこりと動いて来た。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
亭主が何しろ半兵衛で
鐚銭
(
びたせん
)
一文持たないごろつきであるから、入院などとても
覚束
(
おぼつか
)
ない、助けると思ってここに治るまで寝かせてくれとすがり附いて頼んだ。
光の中に
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
独りとぼとぼと月の光りを頼りに
覚束
(
おぼつか
)
なげな道を辿った。天地は
寂然
(
ひっそり
)
として、草木も息を潜めている。ただ青い輝く月光が雨のように降って来るのを眺めた。
薔薇と巫女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
型の小さい安いオルガンで、音もそうたいしてよくはなかったが、みずから
好奇
(
ものずき
)
に歌などを作って、
覚束
(
おぼつか
)
ない音楽の知識で、譜を合わせてみたりなんかする。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
そうすると、趙一人おいて向うにいた趙の父親が私の肩先を軽く叩いて、
覚束
(
おぼつか
)
ない日本語で、笑いながら、「虎よりも風邪の方がこわいよ」と注意してくれた。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
又言うまでもないことだが、
吾々
(
われわれ
)
の記憶というものも本当の事実に正確であるかどうかも甚だ
覚束
(
おぼつか
)
ない。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
覚
常用漢字
小4
部首:⾒
12画
束
常用漢字
小4
部首:⽊
7画
“覚束”で始まる語句
覚束無