ひょう)” の例文
かの新聞で披露ひろうする、諸種の義捐金ぎえんきんや、建札たてふだひょうに掲示する寄附金の署名が写実である時に、これは理想であるといってもかろう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああ云う質素の家に住んでおられたのも、一つは人望のあった原因になっているのでありましょうとA君は丁寧に敬慕の意をひょうされる。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがてまた、朝廷にひょうを捧げて、中央の曹操そうそうと親交をむすぶなど、外交的にも進出するかたわら、かつて身を寄せていた淮南わいなん袁術えんじゅつ
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしはかれらを見つけて、一度はたいへんびっくりしたが、落ち着くと、わたしはぼうしを取って、かれらの賞賛しょうさん感謝かんしゃの意をひょうした。
「これは青竜王が預けていった答案なのだ。君の答案とピッタリ合った。儂は君にも青竜王にも敬意をひょうする者だ!」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
日をきめて興行物こうぎょうもの一さいをさしひかえ各戸かくこに半旗を上げて、日本の不幸に同情をひょうし、義えん金を集めました。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
米国人の歓迎祝砲海上つつがなく桑港サンフランシスコに着た。着くやいなや土地の重立おもだったる人々は船まで来て祝意をひょうし、これを歓迎の始めとして、陸上の見物人は黒山くろやまの如し。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
吾人は貞淑ていしゅくなる夫人のために満腔まんこうの同情をひょうすると共に、賢明なる三菱みつびし当事者のために夫人の便宜べんぎを考慮するにやぶさかならざらんことを切望するものなり。……
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
食堂にかかってるひょうへみんなが好きで名を書きこんだか?——決してそうじゃねえ。スターリンは、公債を
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
これをきくと、清作せいさくさんは、はじめてるこのひとにたいして、かぎりなきなつかしさと敬意けいいひょうせずにいられません。しぜんとそのひとまえあたまがるのをかんじました。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三国の時代の有名な諸葛孔明しょかつこうめいでございますが、御承知の通り、諸葛孔明様の有名な出師すいしひょうの中に
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
されば王政維新おうせいいしんの後、新政府にては各国公使を大阪に召集しょうしゅうし政府革命かくめいの事を告げて各国の承認しょうにんを求めたるに、もとより異議いぎあるべきにあらず、いずれも同意をひょうしたる中に
この身の周囲まわりの生活が、突然自分を嘲笑あざわらって、敵意をひょうしているように感ぜられて、切なかったのである。女は男の手を引っ張って、大通おおどおりけて静かな横町から内へ帰り掛けた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
ゆえに余は余の日本国を愛すというはこれ決して余の徳を賞讃するにあらずして一人なみの人間として余の真情をひょうするなり、余は米国が日本にまさりて富を有し技芸のさかんなるを知る
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
を説いていうには、「身現円月相、以表諸仏体、説法無其形、用弁非声色」[身に円月相を現じ、以て諸仏の体をひょうす、説法かたち無し、用弁ようべん声色しょうしきに非ず]。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
ね、ひょうによって意欲するなんて、何が面白いものかね。そればかりでない、そのとき人間はさっそく人間でなくなって、手廻しオルガンの釘か、ないしそれに類したものになってしまうだろう。
「ブドリ君だな。すっかりしたくができた。急いで降りてきたまえ。観測の器械は一ぺん調べてそのままにして、ひょうは全部持ってくるのだ。もうその小屋はきょうの午後にはなくなるんだから。」
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
立ちはだかり、睨みすえるようにして、ひょうを見た。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
カロリーひょう 春 第四十五 食餌箋しょくじせん
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
と、心から敬意をひょうした。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
心底しんそこから感謝の意をひょうした上で、自分の考えも少し聞いてもらいたいのは山々であったが、何分にも鼻の奥が詰って不自由である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
神思幾日、彼は一夜、斎戒沐浴さいかいもくよくの後、燭をかかげて、後主劉禅りゅうぜんのぼす文を書いていた。後に有名な前出師ぜんすいしひょうは実にこのときに成ったものである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さてはいかなる医学士も、驚破すわという場合に望みては、さすがに懸念のなからんやと、予は同情をひょうしたりき。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人は、まるで舷門げんもんから上って来た司令官を迎えるように、きわめてげんたる礼をもって金博士に敬意をひょうした。
上役うわやくや同僚は未亡人びぼうじん常子にいずれも深い同情をひょうした。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
河村さんの書いてくれたひょうを見ると、娯楽機関という題目のもとに、倶楽部クラブとか会とか名のつくものが十ばかり並べてある。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つたえ聞くに、尊氏は先の月、違勅のおそれをいって諸政を弟の直義に託し、身は謹慎をひょうするため、浄光明寺に入ったままふかくつつしんでいると申す。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よりてここに本官は戦死認定通知書を送付そうふし、その忠烈ちゅうれつに対し深厚しんこうなる敬意をひょうするものなり。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
代助は慎重な態度で、聴いていた。けれども、父の言葉が切れた時も、依然として許諾の意をひょうさなかった。すると父はわざと抑えた調子で
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、肚とはまったく反対なことばを勅使に答えて、うやうやしくも王朝にひょうを書かせ、一たん玉璽を返し奉った。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主席は、心の中で、すこぶる満足の意をひょうするのであった。
岡崎にある中堅たちは、ひょうを書いて、連署した。しかし、その連名の中にも、石川数正の名だけはなかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余は大連で見物すべき満鉄の事業その他を、ここで河村さんと股野に、ひょうのような形にこしらえてもらった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ミミが賛意をひょうした。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
孔明は、夜、中流に船を浮かべ、諸天をまつひょうを書いて、幾万の鬼霊に祈り、これを戦の魂魄こんぱくに捧げてその冥福を祈ると唱えて、供え物と共に河水へ流した。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と穏かに同意の意をひょうした。なるほど危ないはずだ。九十度の角度で切っ立った、屏風びょうぶのような穴を真直に下りるんだから、猿の仕事である。梯子はしごかかってる。勾配こうばいも何にもない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
後軍の陸遜りくそんひょうを孫権にささげて、敵のうしろへ大迂回だいうかいを計ったもののようでしたが、この計もまた、事前に魏へ洩れたため、機謀ことごとく敵に裏を掻かれ
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしこの布団が勧められたまま、ぬしなくして春風の吹くに任せてあったなら、鈴木君はわざと謙遜けんそんの意をひょうして、主人がさあどうぞと云うまでは堅い畳の上で我慢していたかも知れない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
という一文を草して、ひょうを朝廷にさし出し、つぶさに、吉水の罪状というものをかぞえ上げたものである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅井君の結婚問題に関する意見は大道易者のごとく容易である。女の未来や生涯しょうがいの幸福についてはあまり同情をひょうしておらん。ただ頼まれたから頼まれたなりに事を運べば好いものと心得ている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
に心からな回向えこうをささげている姿にみえる。また心から朝廷へも恭順きょうじゅんの意をひょうしている彼かに見える。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど孔明以下、法正も張飛も趙雲もたびたび、進言して、玄徳の積極性をうながしたため、ついに彼もそれを許容することになり、ここに文官の譙周しょうしゅうひょうを作った。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むむ、雑訴決断所なら郁芳門いくほうもんのそばではないか。あそこへ行ってみよう。あそこの外記げき蔵人くろうどでもつかまえて、論功ノひょう内見ないけんさせろといったら、見せぬともこばめまい。
彼は、それらの検見帳けみちょうから、領下の戸帳こちょう蓄備倉ちくびそうひょう年貢控ねんぐひかえなどを克明こくめいに見終っての後。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孫策の「漢帝にたてまつるのひょう」を捧げて行ったり、また朝延へのみつぎ物を持って行ったのである。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明がかつて、後主こうしゅ劉禅りゅうぜんへささげたひょうの中にも、日頃の生活態度を、こう述べている。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陸遜りくそんは、ひょうを以て、呉帝に奏した。それは今、新城へ攻めかかっている味方をして、魏軍のうしろへ迂回うかいさせ、敵曹叡そうえいの本軍を、大きな包囲環のうちに取り囲もうという秘策だった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「元々、尊氏は朝廷を敵とする意志でない。さればこそ、恭順の意をひょうし、戦は、義貞との対決として、直義以下のそちたちにまかせたのだ。敗れてからの泣き言などは聞きぐるしいぞ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この道誉も、兼好坊主の言い草に、そっくり、まずは賛意をひょうしておく」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょうにない小事件になると、すくいきれない河砂ほどもなおあるのだった。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)