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芳
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かんば
ふりがな文庫
“
芳
(
かんば
)” の例文
穂麦
(
ほむぎ
)
の
芳
(
かんば
)
しい匂がした。蒼白い光を明滅させて、螢が行手を横切って飛んだが、月があんまり明るいので、その螢火は
映
(
は
)
えなかった。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
金銀
(
きんぎん
)
珠玉
(
しゆぎよく
)
巧
(
たくみ
)
を
極
(
きは
)
め、
喬木
(
けうぼく
)
高樓
(
かうろう
)
は
家々
(
かゝ
)
に
築
(
きづ
)
き、
花林曲池
(
くわりんきよくち
)
は
戸々
(
こゝ
)
に
穿
(
うが
)
つ。さるほどに
桃李
(
たうり
)
夏
(
なつ
)
緑
(
みどり
)
にして
竹柏
(
ちくはく
)
冬
(
ふゆ
)
青
(
あを
)
く、
霧
(
きり
)
芳
(
かんば
)
しく
風
(
かぜ
)
薫
(
かを
)
る。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
兎
(
と
)
ても角ても叶はぬ命ならば、御所の
礎
(
いしずゑ
)
枕
(
まくら
)
にして、
魚山
(
ぎよさん
)
の
夜嵐
(
よあらし
)
に
屍
(
かばね
)
を吹かせてこそ、
散
(
ち
)
りても
芳
(
かんば
)
しき
天晴
(
あつぱれ
)
名門
(
めいもん
)
の
末路
(
まつろ
)
なれ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
なぜならば、鎌倉同僚間の彼の不人望がそれを
証
(
あか
)
しているし、頼朝が死んだ後の彼の行いも
芳
(
かんば
)
しいものではなかった。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鎌倉時代から室町の頃にかけては、前期の女性を
緋桜
(
ひざくら
)
、または藤の花にたとうれば、梅の
芳
(
かんば
)
しさと、山桜の、無情を観じた
風情
(
ふぜい
)
を見出すことが出来る。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
いずれも、せんだんは双葉より
芳
(
かんば
)
しく、強烈な腕ッ節に物をいわせて、いじめっ子の特権を誇示していた。私にとって、苦難時代は、二年か三年つづいた。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
もしも自分の推量のように、妙子の評判の
芳
(
かんば
)
しからぬことが雪子の縁談を妨害しているのであるとすれば、自分にも一半の責任があること、等々を考えると
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこに小さな偽善が存していた。その偽善は、鋭敏な
嗅覚
(
きゅうかく
)
にとってはあまり
芳
(
かんば
)
しいものではなく、もし
真面目
(
まじめ
)
に取られたら、実際胸悪いものともなるべきはずであった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
鴎外の旗色はあまり
芳
(
かんば
)
しくなく、もっぱら守勢であったように見えるが、しかし、庭に落ちて左手に傷を負うてからは「僕には、此時始めて攻勢を取ろうという考が出た。」
花吹雪
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
なお、そこで、
二網
(
ふたあみ
)
ほど入れたが、成績が
芳
(
かんば
)
しくないので、場所を変えることにした。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
子分の者を呼び集めて
評定
(
ひょうじょう
)
を開いてみましたけれど、いずれ、道庵の子分になるくらいのものだから、資力においても知恵袋においても、そんなに
芳
(
かんば
)
しいものばかりありませんでしょう。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こゝにこの水流るゝがために、水を好む
野茨
(
のばら
)
も
心地
(
ここち
)
よく其の
涯
(
ほとり
)
に茂って、麦が
熟
(
う
)
れる頃は枝も
撓
(
たわ
)
に
芳
(
かんば
)
しい白い花を
被
(
かぶ
)
る。薄紫の
嫁菜
(
よめな
)
の花や、薄紅の
犬蓼
(
いぬたで
)
や、いろ/\の秋の草花も美しい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
つまんでぬけばすぽっとぬけて、しかも一種の
芳
(
かんば
)
しい
香
(
か
)
を放つ草もある。此辺で
鹹草
(
しょつぱぐさ
)
と云ふ。
丈矮
(
たけひく
)
く茎
紅
(
あか
)
ぶとりして、頑固らしく
蹯
(
わだかま
)
つて居ても、根は案外浅くして、一挙手に亡ぼさるゝ草もある。
草とり
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
僕はこの頃矢野目源一氏の訳した、やはりフアレエルの「静寂の外に」を読み、もう一度この煙に触れることになつた。
尤
(
もつと
)
もこの「静寂の外に」は
芳
(
かんば
)
しい鴉片の匂の外にも死人の匂をも漂はせてゐる。
鴉片
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
われは愛する者と偕に
芳
(
かんば
)
しき
乾草
(
ほしぐさ
)
に坐らばや。
佐藤春夫詩集
(旧字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
羅馬の春の印象は概して
芳
(
かんば
)
しくなかつた。
或外国の公園で
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
芳葩及外仮
芳
(
かんば
)
しき
葩
(
はな
)
は
及
(
とも
)
に
外仮
(
げけ
)
なり
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
褪色
(
たいしよく
)
したしかし
芳
(
かんば
)
しい
午前
(
ひるまへ
)
の香ひが
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
この不思議な
芳
(
かんば
)
しい酒となり
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
父は夢だ、と云って笑った、……祖母もともに起きて
出
(
い
)
で、火鉢の上には、再び
芳
(
かんば
)
しい
香
(
かおり
)
が満つる、餅網がかかったのである。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
余り同業者間の評判の
芳
(
かんば
)
しくない医師であったことが後に知れたのであるが、いったい、土地の一流の外科医が二人迄も絶望と認めて手術を拒否した病人を
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この度の
戦
(
いくさ
)
は、いずれにしても
芳
(
かんば
)
しからず、ここは御退陣に
如
(
し
)
くはなしと、一にも二にも、不戦主義を唱えられて、いっこう積極的なお考えを持たれぬが——かつて信玄公御在世以来
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
柘榴
(
ざくろ
)
色をした真紅のくちびる! その間からのぞいたのは、磁器のように
艶
(
つや
)
のある真っ白の歯! ムッと感じられる肌のにおい! だが室の中を充たしているのは、
芳
(
かんば
)
しい
蘭
(
らん
)
のかおりである。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
つまんでぬけばすぽっとぬけて、しかも一種の
芳
(
かんば
)
しい
香
(
か
)
を放つ草もある。此辺で
鹹草
(
しょっぱぐさ
)
と云う、
丈
(
たけ
)
矮
(
ひく
)
く
茎
(
くき
)
紅
(
あか
)
ぶとりして、頑固らしく
蹯
(
わだかま
)
って居ても、根は案外浅くして、一挙手に亡ぼさるゝ草もある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
父
(
ちゝ
)
は
夢
(
ゆめ
)
だ、と
云
(
い
)
つて
笑
(
わら
)
つた、……
祖母
(
そぼ
)
もともに
起
(
お
)
きて
出
(
い
)
で、
火鉢
(
ひばち
)
の
上
(
うへ
)
には、
再
(
ふたゝ
)
び
芳
(
かんば
)
しい
香
(
かをり
)
が
滿
(
み
)
つる、
餅網
(
もちあみ
)
がかゝつたのである。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
今日の午後四時から五時までの間、己は全く此の世の物としも思われない夢の国に居た。其れは今考えても、体中が戦慄する程に
芳
(
かんば
)
しい、甘い想像の世界であった。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
詩人が歌う
緑蔭
(
りょくいん
)
幽草
(
ゆうそう
)
白花
(
はくか
)
を点ずるの時節となって、
畑
(
はたけ
)
の境には雪の様に
卯
(
う
)
の花が咲きこぼれる。
林端
(
りんたん
)
には白いエゴの花がこぼれる。田川の
畔
(
くろ
)
には、
花茨
(
はないばら
)
が
芳
(
かんば
)
しく咲き乱れる。然し見かえる者はない。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
(ただ一口試みられよ、
爽
(
さわやか
)
な涼しい
芳
(
かんば
)
しい酒の味がする、)と云うに因って、客僧、
御身
(
おんみ
)
はなおさら
猶予
(
ためら
)
う、手が出ぬわ。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
容貌ばかりでなく、あの男は中学時代に病気したので上の学校へ這入らなかったと云っていたが、実際は中学校の成績が
芳
(
かんば
)
しくなかったことが分ったので、いよいよ厭気がさしたのであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
皿
(
さら
)
についたのは、このあたりで
佳品
(
かひん
)
と聞く、
鶫
(
つぐみ
)
を、何と、
頭
(
かしら
)
を
猪口
(
ちょく
)
に、
股
(
また
)
をふっくり、胸を開いて、五羽、ほとんど丸焼にして
芳
(
かんば
)
しくつけてあった。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一時の迷いに過ぎないことを悟るようになる、そして、今まで恋しい/\と思っていた人も恋しくなくなり、見て美しいとか、食べておいしいとか、
嗅
(
か
)
いで
芳
(
かんば
)
しいとか感じた物が、実は美しくも
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
……
芳
(
かんば
)
しい落葉の香のする日の影を、まともに吸って、くしゃみが出そうなのを
獅噛面
(
しかみづら
)
で
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
棺
(
ひつぎ
)
の
前
(
まへ
)
に
銀樽
(
ぎんそん
)
一個
(
いつか
)
。
兇賊等
(
きようぞくら
)
爭
(
あらそ
)
つてこれを
飮
(
の
)
むに、
甘
(
あま
)
く
芳
(
かんば
)
しきこと
人界
(
じんかい
)
を
絶
(
ぜつ
)
す。
錦綵寶珠
(
きんさいはうじゆ
)
、
賊等
(
ぞくら
)
やがて
意
(
こゝろ
)
のまゝに
取出
(
とりい
)
だしぬ。さて
見
(
み
)
るに、
玉女
(
ぎよくぢよ
)
が
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
のくすり
指
(
ゆび
)
に
小
(
ちひ
)
さき
玉
(
たま
)
の
鐶
(
わ
)
を
嵌
(
は
)
めたり。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
恍惚
(
うっとり
)
となるような、まあ例えて言えば、
芳
(
かんば
)
しい清らかな乳を含みながら、生れない
前
(
さき
)
に腹の中で、美しい母の胸を見るような心持の——唄なんですが、その文句を忘れたので、命にかけて、
憧憬
(
あこが
)
れて
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
芳
常用漢字
中学
部首:⾋
7画
“芳”を含む語句
梅蘭芳
芳香
蘇芳
芳紀
芳志
芳芬
蘇芳染
御芳志
芳町
芳年
芳野
芳原
大蘇芳年
落合芳幾
芳川
周芳
堤下摘芳草
五姓田芳梅
芳醇
芳賀
...