花屋はなや)” の例文
真紅まっかなアネモネが、花屋はなやみせならべられてありました。おなつちからまれた、このはなは、いわば兄弟きょうだいともいうようなものでありました。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
花屋はなやへ這入つて、大きな白百合しろゆりはなを沢山つて、それげて、うちかへつた。はなれた儘、ふたつの花瓶くわへいけてした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
參詣人さんけいにんへも愛想あいそよく門前もんぜん花屋はなや口惡くちわかゝ兎角とかく蔭口かげぐちはぬをれば、ふるしの浴衣ゆかた總菜そうざいのおのこりなどおのずからの御恩ごおんかうむるなるべし
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……とほりの花屋はなや花政はなまさでは、きかないぢいさんが、捻鉢卷ねぢはちまきで、お月見つきみのすゝき、紫苑しをん女郎花をみなへし取添とりそへて、おいでなせえと、やつてた。みづもいさぎよい。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おや、花屋はなやさんが來たやうだね。」とおふくろも外をのぞくやうにする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
こううえ空想くうそうしながら、花屋はなや店頭みせさきにあった二鉢ふたはちのアネモネは、ある大学生だいがくせいが、まえって、自分じぶんたちをつめてるのにづきました。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
……ひさしやぶれ、のきるにつけても、ひかりは月影つきかげのなつかしさは、せめてすゝきばかりもそなへようと、大通おほどほりの花屋はなやひにすのに、こんな時節じせつがら、用意よういをしてつてゐるだらうか。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
町内てうないかほいのは花屋はなやのお六さんに、水菓子みずぐわしやのいさん、れよりも、れよりもずんといはおまへとなりすわつておいでなさるのなれど、正太しようたさんはまあれにしようとめてあるえ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二人ふたりは、花屋はなやまえで、しばらくはなて、たのしませると、まどきわからはなれ、かたならべて、ふたたび自動車じどうしゃってはたらくためにったのです。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此雜沓このざつとうなかといひれもおもらぬことなれば日暮ひくれよりはにもつまじと思案しあんして、晝間ひるま花屋はなや女房にようぼう手傳てつだはせ、りては自身みづからをりたちよびたつるに、よくなれやいつしかはづかしさもせて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……覺束おぼつかながると、つかひに女中ぢよちう元氣げんきかほして、花屋はなやになければむか土手どてつて、ばかりでもつぺしよつてませうよ、といつた。いふことが、天變てんぺんによつてきたへられて徹底てつていしてゐる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一人ひとりむすめは、狭苦せまくるしい自動車じどうしゃうちで、きゃくにもまれて、切符きっぷをはさむあいだも、花屋はなやみせさきにあった、水草みずくさ黄色きいろはなこころおもかべていました。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
少年しょうねんは、じっとして、河骨こうほねはなまどからのぞいてていましたが、やがて、花屋はなやにはいると、あたいいて、ちいさな財布さいふをかたむけて、河骨こうほねはちいました。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひろい、往来おうらいかどのところに花屋はなやがありました。温室おんしつなかには、外国がいこく草花くさばなが、みだれていました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ここをがって、ずっといくとやぐらがあるだろう。そのまえ花屋はなやよこはいったところだ。」
野菊の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
えきちかくの花屋はなやでは、はないている、ヒヤシンスのはちが、ならべてありました。
緑色の時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうか、このはなをくださいな。」と、彼女かのじょは、花屋はなや主人しゅじんにいったのです。
花と少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はなは、あの花屋はなや店先みせさきを、どんなにこいしくおもったでしょう。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)