)” の例文
髪も多かったのがさわやいだ程度に減ったらしく裾のほうが見えた。その色は翡翠ひすいがかり、糸をり掛けたように見えるのであった。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ほんとはこの『抒情小曲集』は『愛の詩集』と併せて読んで、僕の心持のたてとよことにれ込んだリズムをほぐして見てほしいのだ。
抒情小曲集:04 抒情小曲集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
この言葉にはわたくしの卒直な感情が一捻じ二捻じ三捻じと切なくり捻じれているのですけれど、それをさとりようもない池上は
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
月はないが、空いちめんにぎだされ、かがやかしい星の光と、ゆるやかに波をる水明りに、湖は、夜明けのようにほの明るかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ならんで吊皮つりかわに手をのばして、私は娘の髪が湿っぽくれているのに気づいた。娘は、防水した小さな手提げ袋も手にしていた。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
うす陽の街上まちに、小さな旋風つむじかぜが起こって、かわいた馬糞の粉が、キリキリとり糸のようにまっすぐに、家のひさしほども高く舞い立っています。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
赤系と白系がりまざってまるで理髪屋の標柱のような哈爾賓ハルビンの社会相が、ここにそのままの縮図を見せているのだった。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
出たぞ、と絲をおろすころには、出るは/\、のろり/\と大きな七五三繩しめなわの繩片のやうな奴がれつもつれつ岩から岩の蔭を傳うて泳ぎ𢌞ります。
樹木とその葉:33 海辺八月 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
その碑の面を、れたりもつれたりしながら、蒼白い、漠とした物が立ち昇って行った。娘が供えた線香の煙りであった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
敬太郎はただ手持無沙汰てもちぶさた徒事いたずらとばかり思って、別段意にもとどめなかったが、婆さんは丹念にそれを五六寸の長さにり上げて、文銭の上にせた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで再び銃をとり直し、慎重の上にも慎重に狙ひを定めて火蓋ひぶたを切つた。何しろこの僕が腕にりをかけた一発だ。頭は三たび丘の蔭に落ちたんだ。
三つの挿話 (新字旧仮名) / 神西清(著)
教育制度と社会の情勢とは、縄のようにり合っている。教育を合理的かつ効果的にするには、社会がそういう教育を受け入れてくれなければならない。
六三制を活かす道 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
二台の人力車がらくに行き違うだけの道を隔てて、向いの家で糸を繅車いとぐるまの音が、ぶうんぶうんと聞える。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
加集の時は、義雄が自分から進んで行つて、お鳥とのりをもどした。今囘は、反對に、お鳥から來たのだ。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
ひょんな昔話をやりだしたので、わしらはすっかり腹の皮をってしまったわい……別しておもしろかったのは、あの人が一人の衰弱した女をなおした話だ
黒い絹糸をり合せて作った一握り程の繩梯子、のこぎりのついた万能ナイフ、指紋検出の用具、手の平に入るライカ写真器、注射器、数個の薬品の小瓶とう、等、等。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
神經は馬の尻つぽの毛をりあはせたほど太く、強靱でなければならない。まして顏の皮は、昔でさへ千枚ばりといつたが、防彈ハガネほどでなければなれない。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
浅緑の糸をって、掛けて、白露を玉にしてつないでいる春の柳、いかにも美しい、というのである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「嘘なら、今日にも伊丹屋の若旦那とりを戻しますよ、——でも、私はもう真っ平御免蒙ります」
そんなことから又少しずつ座談のりが戻って行って、岐阜県下の名所旧蹟の話、日本ライン、下呂げろ温泉、養老の滝の話、昨夜の蛍狩の話など、ぽつぽつと取り交されたが
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だが併し、その後、『朝日新聞』は、ややその本来の面目へりを戻した感がなくはない。
世界の一環としての日本 (新字新仮名) / 戸坂潤(著)
黄色がかった粗末な布のシャツは、ただ首の所で銀の小さな止め金で止めてあるきりなので、そのすきから毛深い胸が見えていた。ネクタイはれてひものようになっている。
れのタオル寝巻の下に折れ曲って、あかだらけの足首をのぞかせている。それだのに右足はいくら探しても無い。タッタ今飛び上るほどいたんだキリ、影も形も無くなっている。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
雲水の僧は身の丈六尺有余、筋骨きんこつ隆々として、手足は古木のようであった。両眼は炬火きょかの如くに燃え、両頬は岩塊の如く、鼻孔びこうは風を吹き、口は荒縄をり合せたようであった。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
また二の後足あとあしれて人の隱すものとなり、幸なき者のは二にわかれぬ 一一五—一一七
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
黒い垢が、れて出る。窓は開いているが、浴室の温気のため、私の肌に汗がにじむ。
日を愛しむ (新字新仮名) / 外村繁(著)
その男も今は旦那だんなが死んで、堅いのを見込まれて、婿むこ養子としてあとわって、采配さいはいを振るっているという訳で、ちょっと悪くないから私もその気で、再びりが戻ったんですの。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
脂や汚れをおとすのだろう、煮あげたぼろは陽に干したうえ、二センチ幅くらいに裂き、それをって、——自分で工作したらしい原始的な織り機にかけ、丹念にマットレスを編みあげる。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
片辺かたえ引添ひっそい、米は前へ立ってすらすらと入るのを、蔵屋の床几しょうぎに居た両人、島野と義作がこれを差覗さしのぞいて、あわただしくひょいと立って、体と体がれるように並んで、急足いそぎあしにつかつかと出た。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
┌雀が二羽れて羽ばたく美しさ落ちむとしてはまた飛びあがる (原作)
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
丁度義雄兄は郷里の方へ出掛けて留守の時であった。節子は叔父の骨の折れるのを見兼ねたかして、子供を呼び起しに来てくれたことがあった。その日から両人ふたりの間のりが戻ってしまった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
茎を折っては、繊維を引き出し、其片糸を幾筋も合せては、糸にる。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
なれた、おきさきのぞまれるところでございます。どうか、千にんわかおんなかみったつなをもってかねをつるしてもらいたい。そうでなければ、けっして、うえへは、からぬとのことでございます。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう春が白樺の梢に色糸をり掛けている。3845
おもしろの釁隙きんげきよ り戻す糸あるほど
独楽 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
れて亂るるすぢの色、あるは叫びぬ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
毛氈まうせん唐草からくさからみてるゝ夢心地ゆめごゝち
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
と、そのり糸を正確に答えた。
赤いステッキ (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ねては、はぢも葉こそ
茴香 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
腕にりをかけてかかる。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
秋の風にやれたらん
帝の剛毅は、ここでも一こう萎縮いしゅくしていない。或る折にはお腕の垢をりながら、こういって呵々かかと大笑されたことなどある。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敷き物のある一所の端が少しれたようになっている下から、薄緑の薄様うすようの紙に書いた手紙の巻いたのがのぞいていた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
あれほど葛岡のためにとほぞを固めた殻の厚さも、りをかけた女の技倆というものも、女の情にすか/\に浸潤み通されて、それに呆れ返った自分は結局
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
こうして公私をわけながら一つにって、何もかも知りつくした二つの胸に智略戦法の橋を渡す——虚々実々きょきょじつじつ烏鷺談議うろだんぎがくりひろげられてゆくのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そうして先刻さっき裁縫しごとをしていた時に散らばした糸屑いとくずを拾って、その中からこんと赤の絹糸のかなり長いのをり出して、敬太郎の見ている前で、それを綺麗きれいり始めた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
清二郎の出ようとするをとどめるは兼吉、胸のみしきりに騒がれて、昨夕ゆうべからんだ酒のにわかに頭にのぼる心地、切角せっかくこれまでり掛けながら、日頃の願の縁の糸が結ばれようか切れようか
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼が其処そこに走りついた時にも、火の手は背後にも、前にも幾層となく縞目しまめって追っていた。わずかなすすきかやの節々の燃えはじける音は、一つの交響的なほどばしりになって寄せた。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
妙子が早晩第二の板倉のようなものをこしらえずにはくまいと思って、懸念けねんしていたのであるが、又しても感心しない相手が選ばれるくらいなら、奥畑との間にりが戻ってくれた方が
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
撲られる苦痛で、典膳とお浦とは身悶えし、身悶えするごとに、二人の体は、宙で、じれたりじれたりし、額や頤をぶっつけ合わせた。そういう二人の顔は、窓の高さに存在った。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)