絶望ぜつぼう)” の例文
金持かねもちは、金色こんじきうおべれば、この病気びょうきがなおるということをきますと、絶望ぜつぼうのうちにかすかな希望きぼうみとめたのであります。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人びとが絶望ぜつぼうのさけび声を立てるのを聞きながら、「先生」は平気な、しかしみんなを傾聴けいちょうさせずにおかないような声で言った。
陸との交通は、まったく絶望ぜつぼうにおわった。しかも正午ひるすぎになると、潮は見る見るさしはじめて、波はますますあらくなった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
おかあさんの心は、絶望ぜつぼうのあまり、いまにもはりさけそうです。両手りょうてをふりしぼりながら、うったえるように、わが子の名まえを大きな声で呼びあるきました。
三人は、ときどき、ちっとも近くならない土手の方に、ちらっちらっと、絶望ぜつぼうしたような目をなげました。
いぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そう思うと自分はまったく絶望ぜつぼうしてしまった。——それでも自分は、ガラスのかけらで手をらないように用心ようじんしながら、そろそろとあたりをかきさがしてみた。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
「あゝ、僕あもう絶望ぜつぼうだよ!」投出なげだすやうな調子てうしで友は云ツた。私の胸はなまりのやうにおもくなツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いよいよ絶望ぜつぼうきままったときに、わたくしもと夢中むちゅうけつけたのが、れいのおつき女中じょちゅうでございました。
『いや、けつしてわらふのではないが、其事そのこと心配しんぱいするにはおよばぬよ、奧樣おくさま日出雄少年ひでをせうねんも、わたし生命いのちにかけて保護ほごしてげる。』とつたが、亞尼アンニーほとんど絶望ぜつぼうきはまりなきかほ
いまはもう四めん楚歌そかだ。絶望ぜつぼうの胸をいだいて、立ちすくんでしまうよりほかなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わたしはしんぜんについてかいています。けれどだれもそんなことに耳をかたむけてはくれないので、わたしはまったく絶望ぜつぼうしていますよ。なにしろこれはわたしにはだいじなことなので。」
けれどもそれは「あのひとさへも——?」といふ絶望ぜつぼう意味いみしてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
絶望ぜつぼうそこ
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
票数ひょうすうがよみあげられ、大統領は富士男と決定した、ドノバンは絶望ぜつぼうのあまり面色めんしょくを土のごとくになしてくちびるをかんでいた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
自分じぶんからだは、どうなってもいいというように、ちょうは、絶望ぜつぼうのあまり、ふかかんがえはなしに、空高そらたかく、たかく、どこまでもたかがりました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かの女は絶望ぜつぼう表情ひょうじょうで、自分のうちのけ落ちるのを目の前に見ている人のように、ひょうのるのをながめていた。
しかし、昨夜さくや海嘯つなみは、吾等われら一同いちどう希望きぼう天上てんじやうより、絶望ぜつぼう谷底たにそこ蹴落けおとしたとおもはれます。』
絶望ぜつぼう! 三人は馬から落ちるように草原へおりて、よろよろとこしをついてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
島のいちばん高いところにひとりの巨人きょじんが立って、じぶんと島とにふりかかってくるおそろしいわざわいに絶望ぜつぼうしてでもいるように、両腕りょううでを高くあげているのが、はっきりと見えたからです。
下男げなん絶望ぜつぼうのあまりしたくなりました。またいといて、そこからあてなく、すごすごとあるきはじめました。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
一ヵ月後にサクラ号としるした船尾せんびの板が、ある海岸に漂着ひょうちゃくしたので、父兄たちはもう捜索の絶望ぜつぼうを感じた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
このふゆかいな出来事で、しばらくわたしたちの気を転じさせたが、それがすむとまた圧迫あっぱく絶望ぜつぼうにおそわれた。それとともに死が近づいたという考えがのしかかってきた。
しかし、何事なにごと天命てんめいです。けれどきみよ、けつして絶望ぜつぼうたまふな。吾等われら何時いつか、非常ひじやう幸福かうふくて、ふたゝ芙蓉ふようみねのぞこと出來できませう——イヤ確信くわくしんします、いまより三年さんねんのち屹度きつと其時そのときです。
民部のかんがえかたは、どういう絶望ぜつぼうへきつかっても、けっしてくるうことがなかった。情熱じょうねつの一方に走りがちな蔦之助つたのすけ小文治こぶんじは、それに、反省はんせいされはげまされて、ふたたび馬のにとび乗った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いまさらどうしようもない。このふゆうみふねされるものでなし、あとうこともできないではないか。」と、あるものは、絶望ぜつぼうしながらいいました。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
絶望ぜつぼう絶叫ぜっきょう
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このもっともらしくこえた、先生せんせい言葉ことばは、秀吉ひできちくら絶望ぜつぼうへつきとしました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そんなら、どこへいったられましょうか。」と、下男げなんは、絶望ぜつぼうしていました。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうして、こんなところへ、だれがはしらてたろう。」と、おとうとは、感心かんしんしながら、すごすごといえかえってきました。すると、あにが、やはりほしかぞえることに絶望ぜつぼうをして、ためいきをもらしていました。
星と柱を数えたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうかんがえると、かれは、絶望ぜつぼうかんずるより、ほかにはないのでした。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やせたおんなは、絶望ぜつぼうして、ためいきをついていました。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)