トップ
>
真向
>
まっこう
ふりがな文庫
“
真向
(
まっこう
)” の例文
旧字:
眞向
一日の行楽に遊び疲れたらしい人の群れにまじってふきげんそうに顔をしかめた倉地は
真向
(
まっこう
)
に坂の頂上を見つめながら近づいて来た。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
今にも
真向
(
まっこう
)
から跳りかからんばかりの気勢を示したが、フェミストクリュスが『パリ』と答えたので、やっと安心して、首を頷けた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
しかも、もりで撃った生々しい
裂傷
(
さききず
)
の、肉のはぜて、
真向
(
まっこう
)
、
腮
(
あご
)
、
鰭
(
ひれ
)
の下から、たらたらと流るる
鮮血
(
なまち
)
が、
雨路
(
あまみち
)
に滴って、草に赤い。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いきなり
真向
(
まっこう
)
をなぐられたので、
額
(
ひたい
)
ぎわの左から
顳顬
(
こめかみ
)
へかけて随分ひどく打ち割られて、顔じゅうが血だらけになってしまったのです。
半七捕物帳:48 ズウフラ怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
思いつめたような彼の目は
真向
(
まっこう
)
からぼくをみつめ、
貼
(
は
)
りついたような
頬
(
ほお
)
の青白い
翳
(
かげ
)
りが、唇の赤さを際立たせてふだんよりも濃かった。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
▼ もっと見る
力持のおせいさんはこれに励まされて、持っていた莚を
抛
(
ほう
)
り出し、
素手
(
すで
)
になって、登り来る折助
輩
(
ばら
)
の
鼻向
(
はなむき
)
、
眉間
(
みけん
)
、
真向
(
まっこう
)
を突き落し撲り落す。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私どもには常識に近いこの考えを、
真向
(
まっこう
)
から反対されたので、私たちはそれをよい機会に一つの文化問題として取上げ、公開状を発しました。
沖縄の思い出
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
示したものだから気力ある若い人々が世間へ出る始めにこの話を額の立て物と
戴
(
いただ
)
き
真向
(
まっこう
)
に保持して進撃すべしと西洋でいう。
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
自殺をするならそれはそれで仕方がない、とにかく
真向
(
まっこう
)
から漠然たる悲願に組みついてあくまで執拗に突きつめてゐる彼の態度には貴いものがある。
悲願に就て:――「文芸」の作品批評に関聯して――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
伏見稲荷の前まで来ると、風は路地の奥とはちがって、表通から
真向
(
まっこう
)
に突き入りいきなりわたくしの髪を吹乱した。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「そんな忘れっぽい人に、いくら
実
(
じつ
)
をつくしても駄目ですわねえ」と
嘲
(
あざ
)
けるごとく、
恨
(
うら
)
むがごとく、また
真向
(
まっこう
)
から切りつけるがごとく二の矢をついだ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
K君はまた、朝海の
真向
(
まっこう
)
から昇る太陽の光で作ったのだという、等身のシルウェットを幾枚か持っていました。
Kの昇天:或はKの溺死
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
真に民本主義に忠ならんと欲する者は須らく代議政治を
真向
(
まっこう
)
に否認せざるべからずと論ずるに至ったのである。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
医学
(
いがく
)
の
原則
(
げんそく
)
は、
医者等
(
いしやら
)
をして
貴方
(
あなた
)
に
実
(
じつ
)
を
云
(
い
)
わしめたのです。しかしながら
私
(
わたし
)
は
軍人風
(
ぐんじんふう
)
に
真向
(
まっこう
)
に
切出
(
きりだ
)
します。
貴方
(
あなた
)
に
打明
(
うちあ
)
けて
云
(
い
)
います、
即
(
すなわ
)
ち
貴方
(
あなた
)
は
病気
(
びょうき
)
なのです。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
吉信はとくと見さだめてからふたたび馬にとび乗り、追いこんで来る甲州勢の
真向
(
まっこう
)
へ突っかけながら
死処
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
若太夫は、座興の
積
(
つもり
)
で云った
諧謔
(
たわむれ
)
を、
真向
(
まっこう
)
から突き飛ばされて、興ざめ顔に黙ってしまった。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
刀を
真向
(
まっこう
)
にふりかぶり、倒れている職人風の男の背をめがけ、お斬りつけなさいました。
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
恒川氏は、またしても、
真向
(
まっこう
)
から一太刀浴びせられた感じで、しどろもどろにたずねる。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と
真向
(
まっこう
)
から細君に同情を寄せるのだった。そうして厳父逝去後は晩酌の折に触れて
小問題大問題
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
又は一点の機微に転身をやしたりけむ、
忽然
(
こつぜん
)
衝天
(
しょうてん
)
の勇を
奮
(
ふる
)
ひ起して大刀を上段
真向
(
まっこう
)
に振り
冠
(
かむ
)
り、精鋭
一呵
(
いっか
)
、電光の如く斬り込み来るを
飜
(
ひら
)
りと避けつゝ
礑
(
はた
)
と打つ。竹杖の
冴
(
さ
)
え
過
(
あや
)
またず。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
自力難行の従来の道にある人が、いちばん怠っているその自力を出すことと難行を嫌うことでした。それへあなたは
真向
(
まっこう
)
にぶつかって行った。そして当然な矛盾につき当ったのです。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
左手に刀を持ちかえたところを、
真向
(
まっこう
)
額を割りつけられ、うむといって絶命する。
無惨やな
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
初めの内こそ
御法度
(
ごはっと
)
を
真向
(
まっこう
)
に、横に首を振り続けている清二郎も、古傷まで知らせた上は返答によって生命をもらうという仙太郎の脅しと、なによりもたんまり謝礼の約束に眼が
晦
(
くら
)
んで
釘抜藤吉捕物覚書:10 宇治の茶箱
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
刀は額の真中から鼻の上にかけて
真向
(
まっこう
)
に入ったが、すこしも血が出なかった。女は
両眼
(
りょうがん
)
を
静
(
しずか
)
に開けて太郎左衛門を見た。彼はその顔を見定める間もなく、二の刀で乳母の首に切りつけた。
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
さては
此奴
(
こやつ
)
が
噬
(
か
)
みしならんト、思ひ
僻
(
ひが
)
めつ
大
(
おおい
)
に
怒
(
いかっ
)
て、あり合ふ手頃の棒おつとり、黄金丸の
真向
(
まっこう
)
より、骨も砕けと打ちおろすに、さしもの黄金丸肩を打たれて、「
呀
(
あっ
)
」ト一声叫びもあへず
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
あくまで
真向
(
まっこう
)
微塵
(
みじん
)
とみせて、ヒラリと返すのだから一流に達した腕でないと出来ない芸当である。初太刀は大抵受けられるが、後の先といってすぐの斬返しにまで備えるのは余程の腕が要る。
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
元来
箏
(
こと
)
という楽器は日本の楽器中でも一番凄みのあるものだ、私がまだ幼い時に見た
草艸紙
(
くさぞうし
)
の中に
豊國
(
とよくに
)
だか誰だったか
一寸
(
ちょっと
)
忘れたが、何でも美しいお姫様を一人の
悪徒
(
わるもの
)
が白刃で
真向
(
まっこう
)
から切付ける。
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
私はこの男がすくなくとも頸部か胸部の
孰方
(
いずれ
)
かに放射線をあびているらしく、ひどくひふが焼けていることを知ったが、ぎょろりとした眼に人を怖れる容子もなく私の
真向
(
まっこう
)
から視線をあびせてかかり
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
吉は客にかまわず、舟をそっちへ持って行くと、丁度
途端
(
とたん
)
にその細長いものが
勢
(
いきおい
)
よく大きく出て、吉の
真向
(
まっこう
)
を打たんばかりに現われた。吉はチャッと片手に
受留
(
うけと
)
めたが、シブキがサッと顔へかかった。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
文治が蛇の目の傘を以て一人の
膝
(
ひざ
)
を打ちますと、前へドーンと倒れるのを見て、一人の士は
真向
(
まっこう
)
上段に一刀を振りかざして、今打ちおろそうとする奴を
突然
(
いきなり
)
傘の
轆轤
(
ろくろ
)
で眼と鼻の間へ突きをいれまして
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と、飛びついて来たと思うと、闇太郎の
真向
(
まっこう
)
めがけて
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
とて、
真向
(
まっこう
)
から否定して来たのであった。
鬼仏洞事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
僕は必然性に、
真向
(
まっこう
)
から、ひらき直る。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
得ずと思い出したる俊雄は早や
友仙
(
ゆうぜん
)
の
袖
(
そで
)
や
袂
(
たもと
)
が
眼前
(
めさき
)
に
隠顕
(
ちらつ
)
き賛否いずれとも決しかねたる
真向
(
まっこう
)
からまんざら小春が憎いでもあるまいと遠慮なく
発議者
(
ほつぎしゃ
)
に
斬
(
き
)
り込まれそれ知られては行くも
憂
(
う
)
し行かぬも憂しと
肚
(
はら
)
のうちは一上一下虚々実々
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
神経の興奮している彼は、浄瑠璃の文句にもかまわずに前後左右を
滅多
(
めった
)
やたら斬りまくった。兵助の刀は又もや水右衛門の
真向
(
まっこう
)
を打った。
半七捕物帳:38 人形使い
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼女はそれでも
真向
(
まっこう
)
にフランシスを見守る事をやめなかった。こうしてまたいくらかの時が過ぎた。クララはただ黙ったままで坐っていた。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
百日紅
(
さるすべり
)
の
燃残
(
もえのこ
)
りを、
真向
(
まっこう
)
に仰いで、日影を吸うと、出損なった
嚔
(
くさめ
)
をウッと吸って、扇子の隙なく袖を
圧
(
おさ
)
える。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と米友が、まず断案を頭から、たずねた人の
真向
(
まっこう
)
へおろしてしまったには、お雪ちゃんも面喰いました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ニキタはぱッと
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けるより、
阿修羅王
(
あしゅらおう
)
の
荒
(
あ
)
れたる
如
(
ごと
)
く、
両手
(
りょうて
)
と
膝
(
ひざ
)
でアンドレイ、エヒミチを
突飛
(
つきとば
)
し、
骨
(
ほね
)
も
砕
(
くだ
)
けよとその
鉄拳
(
てっけん
)
を
真向
(
まっこう
)
に、
健
(
したた
)
か
彼
(
かれ
)
の
顔
(
かお
)
を
敲
(
たた
)
き
据
(
す
)
えた。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
真向
(
まっこう
)
から左の胴へ切返すもので、彼のもっとも得意な手であった。だが幹太郎はその逆をいった。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
真向
(
まっこう
)
から吹きつけてくる青く透きとおった風を感じながら、耳のなかに、かつて通った神宮球場の歓声や選手たちの掛声をよみがえらせ、怒ったように力いっぱいぼくは投げつづけた。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
逸
(
いち
)
はやく二人の奴隷によって彼の手から
捥
(
も
)
ぎ取られてしまったので、今や彼は観念の眼をつぶって、生きた心地もなく、この家の主人のチェルケス製の
煙管
(
パイプ
)
を
真向
(
まっこう
)
から受けようと待ち構えていた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
次の男は額と
眉
(
まゆ
)
の半分に光が落ちた。残る一人は総体にぼんやりしている。ただ自分の持っていた、カンテラを四五尺手前から
真向
(
まっこう
)
に浴びただけである。——三人はこの姿勢で、ぎろりと眼を
据
(
す
)
えた。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はそれを
逆手
(
さかて
)
に持って起ちあがろうとする時、半七のつかんでいる南京玉は、青も緑も白も一度にみだれて彼の
真向
(
まっこう
)
へさっと飛んで来た。
半七捕物帳:28 雪達磨
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
飲みかけた茶碗を下へ置いて、つと
猿臂
(
えんぴ
)
を伸ばして、その蓋をいったん宙に浮かせ、それから横の方へとり除けて、座右の
真向
(
まっこう
)
のところへ上向きに置いたのです。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
太平丸の探照灯を
真向
(
まっこう
)
から浴びたこれらの船員たちはみんな赤髭の外人だった。
流血船西へ行く
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
びん
掻
(
かき
)
に、当代の名匠が
本質
(
きじ
)
へ、肉筆で葉を
黒漆
(
くろうるし
)
一面に、
緋
(
ひ
)
の一輪椿の
櫛
(
くし
)
をさしたのが、したたるばかり色に立って、かえって打仰いだ按摩の化ものの
真向
(
まっこう
)
に、一太刀、血を浴びせた趣があった。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
秩序と云う事を
真向
(
まっこう
)
に
振翳
(
ふりかざ
)
さなければできない話である。
中味と形式
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
両側の店屋では皆あれあれと立ち騒いでいたが、一方の相手が朝日にひかる刃物を
真向
(
まっこう
)
にかざしているので、
迂闊
(
うかつ
)
に近寄ることも出来なかった。
半七捕物帳:31 張子の虎
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そこで一刀にズバリと一頭の犬をまたも
真向
(
まっこう
)
から斬って落すと、また一時姿が見えなくなりました。同時にくぐりの小門にはさまれて頭蓋骨を
微塵
(
みじん
)
に砕かれた一頭がある。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“真向”で始まる語句
真向浴
真向額
真向梨割