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白髯
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はくぜん
ふりがな文庫
“
白髯
(
はくぜん
)” の例文
「全くそうじゃ」老翁は
白髯
(
はくぜん
)
を
顫
(
ふる
)
わしながら答えるのだ。「これからは
悪智慧
(
わるぢえ
)
のある奴が益々増えるから、脅迫は増える一方じゃのう」
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
わしもやはり、月のように輝いた魂を自分のものにしたことがある。恋愛は六千歳の子供だ。恋愛は長い
白髯
(
はくぜん
)
をつけてもいい者なんだ。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そこには、おぼろげな電燈の光の中に、
白髪
(
はくはつ
)
、
白髯
(
はくぜん
)
、ロイド眼鏡、寸分違わぬ二人の三笠龍介が、一間とは隔たぬ距離で向き合っていた。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
仲達の
唇
(
くち
)
をつつんでいる
疎々
(
そそ
)
たる
白髯
(
はくぜん
)
はふるえていた。あきらかに彼は
赫怒
(
かくど
)
していた。——がなお、それを手にしたままじっと見ていた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
音楽長は背の曲がった大きな老人で、
白髯
(
はくぜん
)
を
尻尾
(
しっぽ
)
のように
頤
(
あご
)
にたれ、
反
(
そ
)
り返った長い鼻をし、眼鏡をかけて、言語学者のような
風采
(
ふうさい
)
だった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
老人は自分から胸元を見下し、指を拡げて裏から
白髯
(
はくぜん
)
を
扱
(
しご
)
いた。長い白髯は春の光の中で、支那
素麺
(
そうめん
)
のように清らかに輝いた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私の前の席に居る霜降りマントに黒山高の
白髯
(
はくぜん
)
紳士と、左に居る角帽制服のすらりとしたチャップリン髭の青年も大きな声で話を初めたが
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
鶴髪
(
かくはつ
)
白髯
(
はくぜん
)
長身
(
ちょうしん
)
痩躯
(
そうく
)
、眼に不思議な光を宿し、唇に苦笑を漂わせた、神々しくもあれば凄くもある、一人の老人が立っていた。
柳営秘録かつえ蔵
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「どうですい。」と、
白髪
(
はくはつ
)
白髯
(
はくぜん
)
の、そして朱面の、白い麻の支那服の、頑健そのもののN老人が立ちながら、その頭の上の蕗の葉の一つを仰いだ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
この時、よれよれの浴衣に古ぼけた袴といういでたちではあるが、何となく気品のある眼鼻立ちをした
白髯
(
はくぜん
)
の老人が、だしぬけに立ち上って言った。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
老人の
白髯
(
はくぜん
)
を集めて作った
兜
(
かぶと
)
の飾り毛を風に
靡
(
なび
)
かせ、獣歯の
頸掛
(
くびかけ
)
をつけた・身長六
呎
(
フィート
)
五
吋
(
インチ
)
の筋骨隆々たる赤銅色の戦士達の正装姿は、全く圧倒的である。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その先生が今ではこういうとこに隠れて、花を植えて楽んだり鉱泉に老を養ったりするような、
白髯
(
はくぜん
)
の
翁
(
おきな
)
だ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その数カ月前から立派な
白髯
(
はくぜん
)
の老人がいつも大きな花束をかかえて
屡〻
(
しばしば
)
その家に出はいりしていたが、そんなことを好きな一面のあるこの家の夫婦をおだてて
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
七輪の火が風に吹かれてぱっと燃えあがると
白髪
(
はくはつ
)
白髯
(
はくぜん
)
の
黙々
(
もくもく
)
先生の顔とはりさけるようにすずしい目をみひらいた少年の赤い顔とが暗の中に浮きだして見える。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
闇空の下に、細長く、漂亭と、
白髯
(
はくぜん
)
長き老人が、長い杖を突いてすらりと立った立ち姿を、彼は見る——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ふさふさした長い
白髯
(
はくぜん
)
を神々しく顔になびかせて、ひと目にそれと見える神官なのです。いや、神主だったことに不思議はないが、意外だったのはその年齢でした。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
其處
(
そこ
)
に
居合
(
ゐあ
)
はせた
禿頭
(
とくとう
)
白髯
(
はくぜん
)
の、
見
(
み
)
も
知
(
し
)
らない
老紳士
(
らうしんし
)
に
聞
(
き
)
く
私
(
わたし
)
の
聲
(
こゑ
)
も
震
(
ふる
)
へれば、
老紳士
(
らうしんし
)
の
脣
(
くちびる
)
の
色
(
いろ
)
も、
尾花
(
をばな
)
の
中
(
なか
)
に、たとへば、なめくぢの
這
(
は
)
ふ
如
(
ごと
)
く
土氣色
(
つちけいろ
)
に
變
(
かは
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
白髪を
後茶筌
(
うしろちゃせん
)
に束ねた
白髯
(
はくぜん
)
の老翁。鼠色の道服を着し、
茯苓
(
ぶくりょう
)
突
(
つ
)
きの金具を杖の代りにして立っていた。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
妙信 (年齢六十に近く
白髯
(
はくぜん
)
を
蓄
(
たくわ
)
え手には珠数を持てり。若僧のものいえる間ようよう上手に進み行きついに肩を並べつつ)今さっき本門の傍で
呻
(
うめ
)
いていると思ったが
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
おやぢ臭く思はれる内地が
目
(
ま
)
のあたり、脊の高い、大きな鼻のさきの赤い、目の鋭い、
巖丈
(
がんぢやう
)
な、
白髯
(
はくぜん
)
の老翁と見えて來て、やがて、義雄を力強くその面前に引きすゑて
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
痩身
白髯
(
はくぜん
)
、
齢
(
よわい
)
古稀に達せる博士は任期すでに満ちて、近く帰国の途に就こうとしていたのであったが、初めは問題をあまり大したことにも考えていなかったのであろう。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そして王子は一生のあいだ、あの
黒
(
くろ
)
い
着物
(
きもの
)
の
白髯
(
はくぜん
)
の
老人
(
ろうじん
)
を、自分の
守護神
(
まもりがみ
)
として
祭
(
まつ
)
りました。
強い賢い王様の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
土器
(
かわらけ
)
のように厚ぼったく節くれだち、そして龍のようにくねった梅の木を想い
描
(
えが
)
くとき、その下に、曲がった腰を杖に支えて引き伸ばし、片手を腰の上に載せた
白髯
(
はくぜん
)
のお爺さんや
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
白髯
(
はくぜん
)
赭顔
(
しゃがん
)
のデビス長老が、質素な黒のガウンを着て、
祭壇
(
さいだん
)
に立ったのです。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
瓶子を片手に、長い
白髯
(
はくぜん
)
を撫でながら堂守の老人は、その後ろをじっとながめました。奥の院から大見晴らしへ通る木の根の高い細道へ、その人は早くも隠れ去って影だに残してはいません。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
胸衣
(
チョッキ
)
の一番下の
釦
(
ぼたん
)
を隠すほどに長い
白髯
(
はくぜん
)
を垂れ、魂の
苦患
(
くげん
)
が心の底で燃え
燻
(
くすぶ
)
っているかのような、憂鬱そうな顔付の老人であるが、検事の視線は、最初からもう一枚の外紙の方に奪われていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と一座を見廻して、静かに
白髯
(
はくぜん
)
を
撫
(
ぶ
)
しながら口を切った。
半化け又平
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いずれもが相当な年配の人々で、幾人かは
白髯
(
はくぜん
)
であった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
自分はさう云つて
白髯
(
はくぜん
)
の父を見た。
新帰朝者日記 拾遺
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
白髯
(
はくぜん
)
の
翁
(
おきな
)
も、はたや
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
四十二、三の好色家らしい
売卜
(
ばいぼく
)
先生は、実に、
白髯
(
はくぜん
)
を剃り落して、
頬綿
(
ほおわた
)
をふくみ、音声まで巧みに変えた
塙江漢
(
はなわこうかん
)
なのであった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見ると大きな木のかげに、乞食のようなボロボロの洋服を着た、白髪
白髯
(
はくぜん
)
の老人が、ニヤニヤ笑いながら立っているのです。
妖怪博士
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ところで又、その医者というのが吾輩の親友で、
鶴髪
(
かくはつ
)
、童顔、
白髯
(
はくぜん
)
という立派な風采の先生だったが、トテモ仕様のない
泥酔漢
(
のんだくれ
)
の貧乏
老爺
(
おやじ
)
なんだ。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
長い
白髯
(
はくぜん
)
を引っ張るやら、
皺
(
しわ
)
くちゃの乳房にかじりつくやら、ひとしきり困らしていたようだが、いつの間にかぐっすりと眠りこけてしまったらしいのだ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
老いたる
白髯
(
はくぜん
)
の観相家は、自ら阿部流と誇称する通り、あたかも阿部の晴明の再来ででもあるかのごとく、いとも厳粛に威容を取り
繕
(
つくろ
)
って、気取りに気取りながら
旗本退屈男:04 第四話 京へ上った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
と、むかしをしのぶように、和尚さんは
白髯
(
はくぜん
)
をしごきながらじっと目をとじられました。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
葛
(
くず
)
の衣裳を身に纏い、
自然木
(
じねんぼく
)
の杖をつき、長い
白髯
(
はくぜん
)
を胸へ垂れた、
飄逸洒落
(
ひょういつしゃらく
)
な老人と、その侍童の菊丸とが、富士山麓鍵手ヶ原の、直江
蔵人
(
くらんど
)
の古館へ、一夜のやどりを乞うた晩
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
老人は、細長い身を、まっすぐに、
左手
(
ゆんで
)
で、しずかに、
白髯
(
はくぜん
)
をまさぐったが
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
白髯
(
はくぜん
)
の間からのぞいている頬が、いつもより赤味を帯びて光っていた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
気負い立つ紀昌を
迎
(
むか
)
えたのは、羊のような
柔和
(
にゅうわ
)
な目をした、しかし
酷
(
ひど
)
くよぼよぼの
爺
(
じい
)
さんである。年齢は百歳をも
超
(
こ
)
えていよう。
腰
(
こし
)
の曲っているせいもあって、
白髯
(
はくぜん
)
は歩く時も地に
曳
(
ひ
)
きずっている。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
伸子は二人の間のもつれを、
白髯
(
はくぜん
)
のたれた七十近い老人に知らせるのを気の毒に思った。一つ燈の下に、老父と佃と三人で、話という話もなく、毎晩をすごす気づまりから、伸子は編物を思いついた。
二つの庭
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
老人は
白髯
(
はくぜん
)
を左右に振分けて易の講釈をつづけます。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼のきれいな
白髯
(
はくぜん
)
は、負傷者の血しおに染み、彼の懸命な
面
(
おもて
)
には、空腹を
喞
(
かこ
)
つ
容子
(
ようす
)
もなく、また、天下の大乱すら知らないもののようだった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
白髯
(
はくぜん
)
にうずまった
息子
(
むすこ
)
と同じようにドス黒い顔が、サッと赤らんだかと思われた。だが、彼はあくまでも
白
(
しら
)
を切って
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
三本並んだ太い
生木
(
なまき
)
の柱の中央に、白髪、
白髯
(
はくぜん
)
の神々しい老人が、高々と
括
(
くく
)
り付けられている。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「仏が何んだ、仏教が何んだ。要するに
夷狄
(
いてき
)
の宗教じゃないか。日本には日本の宗教がある。
神
(
かん
)
ながらの神道じゃ! 我輩の奉ずる古神道じゃ!」——それは
白髯
(
はくぜん
)
の老人であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
雪のような白い眉の下に
瞼
(
まぶた
)
重げに見開いた穏やかな慈眼の中に、そして胸に垂れた
白髯
(
はくぜん
)
のそよぎにもそれと推し量られ、我ら一同なんと慰める言葉もなく、顔うな垂れて腰かけていたのであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
二尺近くも
白髯
(
はくぜん
)
を貯えて隠者のように暮していた。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
寒
(
かん
)
かぜに赤くひき
緊
(
しま
)
っている顔は、どこか
大人
(
たいじん
)
の
相
(
そう
)
をそなえ、大きくて高い鼻ばしらから
顎
(
あぎと
)
にかけての
白髯
(
はくぜん
)
も雪の眉も、為によけい美しくさえあった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
老師は急に指を引っ込ませて
白髯
(
はくぜん
)
の生えた
神々
(
こうごう
)
しい顔を静かに彼の前へ差し出した。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
白
常用漢字
小1
部首:⽩
5画
髯
漢検1級
部首:⾽
15画
“白髯”で始まる語句
白髯橋
白髯痩躯