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や
ふりがな文庫
“
燬
(
や
)” の例文
燬
(
や
)
く
樣
(
やう
)
な
日
(
ひ
)
の
下
(
した
)
に、
渦
(
うづ
)
を
捲
(
ま
)
いて
狂
(
くる
)
ひ
出
(
だ
)
しさうな
瓦
(
かはら
)
の
色
(
いろ
)
が、
幾里
(
いくり
)
となく
續
(
つゞ
)
く
景色
(
けしき
)
を、
高
(
たか
)
い
所
(
ところ
)
から
眺
(
なが
)
めて、
是
(
これ
)
でこそ
東京
(
とうきやう
)
だと
思
(
おも
)
ふ
事
(
こと
)
さへあつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
『憶得詩』は安政戊午の冬湖山が神田お玉ヶ池の家を
燬
(
や
)
かれた後
躬
(
みずか
)
ら編成した詩集である。その事は第二十七回に述べてある。毅堂は集の終に
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
垢に
塗
(
まみ
)
れて破れ裂け、補給の道もなく、皮膚は一年有余にわたる灼熱の太陽に
燬
(
や
)
かれてアンゴラ土人となんの変わりもないくらいにこげ切っていた。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
三分ののち、海水服に着かへた下山真弓は
燬
(
や
)
けた白砂のうへに細い靴の爪尖をそろへ、その上に彼女の全身をまつ直ぐに伸ばしきつた姿勢で立つた。
水と砂
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
造化広大の恩人も木も石も金もともに
燬
(
や
)
くるかと疑わるる炎暑の候にまたかくの如く無尽の涼味を貯えて人の取るに任すとは有難き事なりと、古人の作中
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
▼ もっと見る
蚯蚓
(
みヽず
)
が土を出て炎天の砂の上をのさばる様に、かんかんと日の照る
中
(
なか
)
を
歩
(
ある
)
いてづぶ濡れに冷え切つた
身体
(
からだ
)
なり心なりを
燬
(
や
)
け
附
(
つ
)
かせ度く成つたので、書院の庭の
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
そのカーテンのかげに、七月のあかるい濃い空が、カッとした、
燬
(
や
)
きつくような感じにひろがっていた。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
晝は足を
燬
(
や
)
く川原の石も、夜露を吸つて心地よく冷えた。處々に咲き亂れた月見草が、闇に仄かに匂うてゐる。その間を縫うて、二人はそこはかとなく
小迷
(
さまよ
)
うた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
身をかねるというような
女々
(
めめ
)
しい態度から小さいながら、弱いながらも胸の焔を吐いて、冷たい
社会
(
よのなか
)
を
燬
(
や
)
きつくしてやろうというような
男々
(
おお
)
しい考えも湧いて来た。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
(
主人
(
あるじ
)
の能因法師、四十餘歳、上のかたの窓より首を出してゐる。その顏は日に
燬
(
や
)
けて眞黒になつてゐる。弟子の良因は庭に降りて落葉をかいてゐる。鳥の聲きこゆ。)
能因法師
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これに名づけて自ら
慊
(
あきたら
)
ざる情ともいふべきか。こは我慾火の勢を得て、我智慧を
燬
(
や
)
くにやあらん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
彼は主人とラザルスをそれからそれへと尋ねあるいて、最後に
燬
(
や
)
くが如くにまばゆい日光を正面に受けながら、二人が黙って坐ったままで、上の方を眺めているのを発見した。
世界怪談名作集:14 ラザルス
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
森の屋根を剥がされた空からは、晃々として
燬
(
や
)
き切るような強い光線を投げつける。
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
さて佐世保出帆後は連日の快晴にて暑気
燬
(
や
)
くがごとく、さすが神州海国男子も少々
辟易
(
へきえき
)
、もっとも同僚士官及び兵のうち八九名日射病に襲われたる者
有之
(
これあり
)
候えども、小生は至極健全
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
夫
(
そ
)
れ真に神を見て信ずるものの信念は、宇宙の中心より
挺出
(
ていしゆつ
)
して三世十方を
蔽
(
おほ
)
ふ人生の大樹なる乎。
生命
(
いのち
)
の枝葉永遠に繁り栄えて、
劫火
(
ごふくわ
)
も之れを
燬
(
や
)
く能はず、劫風も之れを
僵
(
たふ
)
す能はず。
予が見神の実験
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
初
(
はじめ
)
は
朝
(
あさ
)
まだきに
馬
(
うま
)
の
秣
(
まぐさ
)
の一
籠
(
かご
)
を
刈
(
か
)
るに
過
(
すぎ
)
ないけれど、
燬
(
や
)
くやうな
日
(
ひ
)
のもとに
畑
(
はた
)
も
漸
(
やうや
)
く
極
(
きまり
)
がついて
村落
(
むら
)
の
凡
(
すべ
)
てが
皆
(
みな
)
草刈
(
くさかり
)
に
心
(
こゝろ
)
を
注
(
そゝ
)
ぐ
樣
(
やう
)
に
成
(
な
)
れば、
若
(
わか
)
い
同志
(
どうし
)
が
相
(
あひ
)
誘
(
さそ
)
うては
遠
(
とほ
)
く
林
(
はやし
)
の
小徑
(
こみち
)
を
分
(
わけ
)
て
行
(
ゆ
)
く。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼は実にこの
昏迷乱擾
(
こんめいらんじよう
)
せる
一根
(
いつこん
)
の悪障を
抉去
(
くじりさ
)
りて、猛火に
燬
(
や
)
かんことを
冀
(
こひねが
)
へり。その時彼は死ぬべきなり。生か、死か。貫一の
苦悶
(
くもん
)
は
漸
(
やうや
)
く急にして、
終
(
つひ
)
にこの問題の前に
首
(
かうべ
)
を垂るるに至れり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
夢寐
(
むび
)
にも忘れなかった
郷里
(
くに
)
もとに、二年ぶりで、云わば心ときめかして帰って来た彼らは、そこで暮した二三カ月のうちに、今度はあのイシカリの
曠
(
むな
)
しい野を
燬
(
や
)
けつくような思いで考えていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
熱帯の太陽が
燬
(
や
)
くやうな光線を水面に射下してゐても好い。風が吠えて檣がきしめいて、波が船を揺つてゐても好い。この室に閉ぢ込められてゐる幾百人は、平気で天気の荒れるのを聞いてゐる。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
めらめらと人馬も草も
燬
(
や
)
きつくす火焔砲とふに冬ひた恐る
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
逭
(
の
)
がれよ、こゝに
萬物
(
ばんぶつ
)
は、
凡
(
す
)
べて
虚
(
うつろ
)
ぞ、日は
燬
(
や
)
かむ。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
沙
(
いさご
)
は
燬
(
や
)
けぬ、
蹠
(
あなうら
)
のやや痛きかな
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
徐福
往
(
ゆ
)
くとき書
未
(
いま
)
だ
燬
(
や
)
けず
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
燬
(
や
)
くような日の下に、
渦
(
うず
)
を
捲
(
ま
)
いて狂い出しそうな
瓦
(
かわら
)
の色が、幾里となく続く
景色
(
けしき
)
を、高い所から眺めて、これでこそ東京だと思う事さえあった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其処
(
そこ
)
は神田区松枝町二十三番地である。大正六年玉池仙館は主人石埭翁の名古屋に
帰臥
(
きが
)
するに臨んで日本橋の富商某氏の有となり、大正十二年九月の大火に
燬
(
や
)
かれた。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
立秋とは名ばかり
燬
(
や
)
くように
烈
(
はげ
)
しい八月末の日は今崖の上の黒い
白樫
(
めがし
)
の森に落ちて、
葎
(
むぐら
)
の葉ごしにもれて来る光が青白く、うす
穢
(
ぎたな
)
い私の制服の上に、小さい
紋波
(
もんぱ
)
を描くのである。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
実
(
げ
)
に彼は火の
如何
(
いか
)
に
焚
(
も
)
え、如何に
燬
(
や
)
くや、と
厳
(
おごそか
)
に
監
(
み
)
るが如く
眥
(
まなじり
)
を裂きて、その立てる処を一歩も移さず、風と烟と
焔
(
ほのほ
)
との
相雑
(
あひまじは
)
り、
相争
(
あひあらそ
)
ひ、
相勢
(
あひきほ
)
ひて、力の限を互に
奮
(
ふる
)
ふをば、
妙
(
いみじ
)
くも
為
(
し
)
たりとや
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
やがて埋葬のあとに来た東京の烈しい夏が、そのやうな私を
燬
(
や
)
いた。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
逭
(
の
)
がれよ、こゝに万物は、
凡
(
す
)
べて
虚
(
うつろ
)
ぞ、日は
燬
(
や
)
かむ。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
地の底の
導火
(
みちび
)
燬
(
や
)
き、ヸオロンぞ狂ひ泣く。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
取り巻く燄の一度にパッと天地を
燬
(
や
)
く時、堞の上に火の如き髪を振り乱して
佇
(
たたず
)
む女がある。「クララ!」とウィリアムが叫ぶ途端に女の影は消える。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
下谷の家は去年
癸亥
(
きがい
)
九月の一日、東京市の大半を灰にした震後の火に
燬
(
や
)
かれてしまった。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
音
(
おと
)
しづまりて、日に
燬
(
や
)
けて、
熟睡
(
うまい
)
の
床
(
とこ
)
に伏す如く
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
瞬間
(
たまゆら
)
の
叫喚
(
さけび
)
燬
(
や
)
き、ヸオロンぞ
盲
(
めし
)
ひたる。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
翌日
(
あくるひ
)
は又
燬
(
や
)
け付く様に日が高く出た。外は猛烈な光で一面にいらいらし始めた。代助は我慢して八時過に漸く起きた。起きるや
否
(
いな
)
や眼がぐらついた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして庭の隅々からは枯草や落葉を
燬
(
や
)
く烟が土臭いにおいを園内に漲らせていた。
百花園
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
音しづまりて、日に
燬
(
や
)
けて、
熟睡
(
うまい
)
の床に伏す如く
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
身をも
燬
(
や
)
くべき
砒素
(
ひそ
)
の
壁
(
かべ
)
夕日さしそふ。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
翌日
(
あくるひ
)
は又
燬
(
や
)
け付く様に
日
(
ひ
)
が高く
出
(
で
)
た。
外
(
そと
)
は猛烈な
光
(
ひかり
)
で一面にいら/\し始めた。代助は我慢して八時
過
(
すぎ
)
に漸く起きた。起きるや否や
眼
(
め
)
がぐらついた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
濃き幻のしたたりに
天
(
そら
)
さへ
燬
(
や
)
けむ。
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
火は都を
燬
(
や
)
きぬ。
偏奇館吟草
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
稜錐塔
(
ピラミッド
)
の空を
燬
(
や
)
く所、
獅身女
(
スフィンクス
)
の砂を抱く所、
長河
(
ちょうが
)
の
鰐魚
(
がくぎょ
)
を蔵する所、二千年の昔
妖姫
(
ようき
)
クレオパトラの
安図尼
(
アントニイ
)
と相擁して、
駝鳥
(
だちょう
)
の
翣箑
(
しょうしょう
)
に軽く
玉肌
(
ぎょっき
)
を払える所、は好画題であるまた好詩料である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
燬
漢検1級
部首:⽕
17画