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焦
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や
ふりがな文庫
“
焦
(
や
)” の例文
覚海尼公が、子の高時を、どこかで見まもっているように、高時も二児の父として、さっきからここで胸を
焦
(
や
)
かれていたのらしい。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
呟
(
こぼ
)
した事があつた。そして相手の
農夫
(
ひやくしやう
)
が値上げの張本人であるかのやうに
凝
(
じつ
)
とその顔を見つめた。顔は焼栗のやうに日に
焦
(
や
)
けてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
駆け出した、とても歩いたりしてはをられなかつたから——砂が猛々しく
焦
(
や
)
けてゐて誰にも到底素足では踏み
堪
(
こた
)
へられなかつた。
熱い砂の上
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
澁紙
(
しぶがみ
)
色に
焦
(
や
)
けてさへゐなければ、顏立も尋常ですが、手足と顏の外は、寸地も白い皮膚のない大
刺青
(
ほりもの
)
の持主と後でわかりました。
銭形平次捕物控:151 お銀お玉
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
二人は
仄暗
(
ほのぐら
)
い木蔭のベンチを見つけて、そこに暫く腰かけていた。涼しい風が、日に
焦
(
や
)
け疲れた二人の顔に心持よく
戦
(
そよ
)
いだ。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
それは頭をクルクル坊主に刈った……眉毛をツルツルに剃り落した……全体に赤黒く日に
焦
(
や
)
けた五十恰好の紳士であるが
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
酒にあらず、色にあらず、人生憂を鎖するの途、
豈
(
あに
)
少なからんや。炎熱
焦
(
や
)
くが如く樹葉皆な下垂するの時、海に下りて衣を脱すれば涼気先づ来る。
客居偶録
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
ジャネットは思ったよりも大がらで、たくましくて日に
焦
(
や
)
けて男の様な体格をして居るのに
吃驚
(
びっくり
)
しました。ジャネットは英仏語がどちらも
下手
(
へた
)
です。
母と娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
真黒
(
まっくろ
)
く
日
(
ひ
)
に
焦
(
や
)
けた
躯
(
からだ
)
を
躍
(
おど
)
り
狂
(
くる
)
わせて
水
(
みず
)
くぐりをしているところはまるで
河童
(
かっぱ
)
のよう、よくあんなにもふざけられたものだと
感心
(
かんしん
)
される
位
(
くらい
)
でございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
半太郎は、すっかり日に
焦
(
や
)
けた、木綿物の
袷
(
あわせ
)
に小倉の帯、
垢
(
あか
)
まみれの足袋をはき、大きな荷を背負って——額には汗さえ
滲
(
にじ
)
んでいる。茶店の前へかかると
無頼は討たず
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこには大きな
矮
(
ひく
)
い机を横にしてこちらへ
向直
(
むきなお
)
っていた四十ばかりの日に
焦
(
や
)
けて
赭
(
あか
)
い顔の丈夫そうなズク
入
(
にゅう
)
が
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
耳は寒さに凍え、日に
焦
(
や
)
けて、木の葉が虫に食われたというかたちだ。しかし、眼は鋭く、しっかりしている。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
出しかけた途端に将軍が通った。将軍の日に
焦
(
や
)
けた色が見えた。将軍の
髯
(
ひげ
)
の
胡麻塩
(
ごましお
)
なのが見えた。その瞬間に出しかけた万歳がぴたりと中止してしまった。なぜ?
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ちょいと他の男と差向いで話でもして居ると、直ぐ
嫉妬
(
やきもち
)
を
焦
(
や
)
いて、
訝
(
おか
)
しい処置振りをするって怒るんだよ
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし、とうとうヒスパニオーラ号に横附けになり、上ってゆくと、副船長のアローさんが出迎えて挨拶した。日に
焦
(
や
)
けた老海員で、耳に耳環をつけ、
眇
(
すがめ
)
だった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
いや、実際竹馬は、あの日の
焦
(
や
)
けた頬に、もう一すじ
蚯蚓腫
(
みみずばれ
)
の跡を加えたようでございます。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
茸訪問については屡々私は一人の案内者を伴うことがある。案内者の名を仮に粂吉と呼ぶ。幾春秋山中の日に
焦
(
や
)
かれた彼の顔は赤銅色を呈している。
翁
(
おきな
)
の
面
(
めん
)
のようにも見える。
茸をたずねる
(新字新仮名)
/
飯田蛇笏
(著)
シャツの袖もまくし上げてあって、日に
焦
(
や
)
けた腕は肱のところまでむき出しになっていた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
鬼は左の手をもって髪をつかみ、右の手で
踝
(
くるぶし
)
を握って、鼎の中へ投げこんだ。曾の物のかたまりのような小さな体は、油の波の中に浮き沈みした。皮も肉も
焦
(
や
)
けただれて、痛みが心にこたえた。
続黄梁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
フン!
他人
(
フト
)
に
辛口
(
カラグヂ
)
きグ
隙
(
シマ
)
ネ自分の
飯
(
めし
)
の上の
蠅
(
ハイ
)
ホロガネガ。十年も後家立デデ、
彼方
(
アヂ
)
の
阿母
(
オガ
)
だの
此方
(
コヂ
)
の
阿母
(
オガ
)
だのガラ
姦男
(
マオドコ
)
したの、
夫
(
オド
)
ゴト
盜
(
ト
)
たド
抗議
(
ボコ
)
まれデ、年ガラ年中
肝
(
きも
)
焦
(
や
)
ガヘデだエ何なるバ。
地方主義篇:(散文詩)
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
武蔵は、理においても、返す言葉がなかったし、情熱においては、なおさら
焦
(
や
)
き立てられて、自分の眼まで熱いものになってしまった。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
筵
(
むしろ
)
を剥ぐと、五十五六の立派な體格で、顏はセピヤ色に
焦
(
や
)
けて居りますが、眼鼻立も見事、小鼻の脇の
黒子
(
ほくろ
)
が妙に氣になります。
銭形平次捕物控:319 真珠太夫
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして其処に若い男が
浴衣
(
ゆかた
)
がけで、机に坐つて読書に
耽
(
ふけ
)
つてゐた。顔は
焦
(
や
)
けてゐたが、それは疑ひもなく彼であつた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
繃帯
(
ほうたい
)
を除くとレントゲンの光線
焦
(
や
)
けと塗り薬とで
鰐皮色
(
わにがわいろ
)
になっている
堆
(
うずたか
)
いものの中には
執拗
(
しつよう
)
な反人間の意志の固りが秘められているように思われる。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その顔は真黒く秋日に
焦
(
や
)
けている上に、連日の労働に疲れ切っているらしく、見違えるほど
窶
(
やつ
)
れてしまって、眼ばかりがギョロギョロと光っている。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
日盛りになると彼の
焦
(
や
)
けた背中は、塩煎餠のやうにビリビリと干からびて水に浸さずには居られなくもあつた。
スプリングコート
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
イズレール・ハンズは、舷牆に倚りかかっていて、頤を胸につけ、両手は前へ投げて甲板に投げ出し、顔は、日に
焦
(
や
)
けた表皮の下が、脂蝋燭のように蒼白かった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
焦
(
や
)
け
爛
(
ただ
)
れたる高櫓の、機熟してか、吹く風に
逆
(
さから
)
いてしばらくは燄と共に傾くと見えしが、奈落までも落ち入らでやはと、三分二を岩に残して、
倒
(
さか
)
しまに崩れかかる。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
顔色は日に
焦
(
や
)
けて黒く、髭を生やしている。ちょっと鼻にかかった声で、大変にのろくさく話した。
黒襟飾組の魔手
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
或
(
ある
)
人は某地にその人が日に
焦
(
や
)
けきったただの農夫となっているのを見たということであった。大噐
不成
(
ふせい
)
なのか、大噐
既成
(
きせい
)
なのか、そんな事は先生の問題ではなくなったのであろう。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
日に
焦
(
や
)
けて真黒になり
日向臭
(
ひなたくさ
)
い、又丹三郎は江戸育ちのお侍で男振も好く小綺麗でございますから、猶更多助が厭で実に邪見にする事
全
(
まる
)
一年、その間一つ寝もせず振付けられても
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一
頻
(
しき
)
りお説教がすむと(説教好きな高木氏は、
聴衆
(
きゝて
)
が居なかつたら、椅子を相手にでも麦飯のお説教をし兼ねない)高木氏は焼栗のやうに日に
焦
(
や
)
けた子供達の顔を見ながら言つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
こういうすべての凝視と咆哮との対象というのは、日に
焦
(
や
)
けた頬と黒眼がちな眼とをした、体格もよく容貌もよい、二十五歳ばかりの青年であった。彼の身分で言えば青年紳士であった。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
頷
(
うなず
)
きながら、文覚は、てくてくと後からついてゆく。牛の
糞
(
ふん
)
と、白い土が、ぽくぽくと乾いて、足の裏を
焦
(
や
)
くような、京の大路であった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
水泳の練習から帰って来た健一は、よく陽に
焦
(
や
)
けた、素晴しい
身体
(
からだ
)
に、大急ぎで
浴衣
(
ゆかた
)
を引っかけてヴェランダに出てきました。
水中の宮殿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その男は日に
焦
(
や
)
けた顔にチョッピリと黒い
髭
(
ひげ
)
を生やして、薄鼠色のインバネスを着ていたが、新しい
麦稈帽
(
むぎわらぼう
)
を
阿弥陀
(
あみだ
)
に冠り直しながら、昂作の顔を覗き込んだ。
童貞
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
どこを見ても
焦
(
や
)
け爛れたやうに醜い山の地肌は露出されて、青いものゝ影は殆んど見られなかつた。
籠の小鳥
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼の皮膚は、むき出しになっているところはどこも、日に
焦
(
や
)
けていた。唇までが黒くなっていた。そして碧い眼はそのようなどす黒い顔の中でまったく際立っていた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
その声の切れるか切れぬうちに一人の将軍が挙手の礼を施しながら余の前を通り過ぎた。色の
焦
(
や
)
けた、
胡麻塩髯
(
ごましおひげ
)
の
小作
(
こづく
)
りな人である。左右の人は将軍の
後
(
あと
)
を見送りながらまた万歳を
唱
(
とな
)
える。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
灰色の薄くなった髪のほつれたのが、行燈の光をうけてきらきらと
顫
(
ふる
)
えている、苦しかった六十七年の風霜を刻みつけたような
皺
(
しわ
)
の多い日に
焦
(
や
)
けた渋色の顔は、そのときの回想の辛さに
歪
(
ゆが
)
んだ。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
心の中の感情は体のどんな覆いを通しても必ず現れ出ると同様に、彼の今の立場が生んだ蒼白い顔色は彼の頬の日に
焦
(
や
)
けた鳶色を通して現れていて、精神が太陽よりも力強いことを示していた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
わけて、お燕が、ふと「父」ということばでも洩らそうものなら、かの女の、呪咀の
埋
(
うず
)
み
火
(
び
)
は、すぐ炎になって、全身を
焦
(
や
)
いた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それに本當の跡取なら、少々陽に
焦
(
や
)
けて居ても、言葉遣ひや
折屈
(
をりかゞ
)
みが下手でも、すぐ小松屋へ伴れ込むのが本當ぢやないか。
銭形平次捕物控:168 詭計の豆
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
野獣のような彼女の体に抑えることが出来ない狂暴の血が
焦
(
や
)
けただれたように渦をまいていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
半刻
(
はんとき
)
の余も、泳いでは河原に上がって、太陽に肌を
焦
(
や
)
き、また、川へ躍り入っては、
河童
(
かっぱ
)
のように、存分水と
戯
(
たわむ
)
れていた信長は
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
少し
焦
(
や
)
けた真珠色の皮膚の色も、糸を引いた三白眼も、絵に描いた若衆に袢纏を着せたようで、
界隈
(
かいわい
)
の娘達に騒がれるのも無理のないことです。
銭形平次捕物控:095 南蛮仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
顔や手首が日に
焦
(
や
)
けて、肉も
緊
(
しま
)
って来たようだったが、健康は
優
(
すぐ
)
れた方ではなかった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
という辱に、体じゅうを
焦
(
や
)
かれていた。この汚れた母の体で、何でふたたび不知哉丸を膝に抱けようかと、一
途
(
ず
)
に思いつめているのらしい。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
精々二十八九、まだ若くて眼鼻立も立派な男ですが、恐ろしく陽に
焦
(
や
)
けて、手足も節くれ立ち、着て居るものも、
木綿布子
(
もめんぬのこ
)
の至つて粗末なものです。
銭形平次捕物控:142 権八の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は分け目もわからぬ
蓬々
(
ぼうぼう
)
した髪を
被
(
かぶ
)
り、顔も手も
赤銅色
(
しゃくどういろ
)
に南洋の日に
焦
(
や
)
け、
開襟
(
かいきん
)
シャツにざぐりとした麻織の
上衣
(
うわぎ
)
をつけ、海の労働者にふさわしい
逞
(
たくま
)
しい大きな体格の持主だが
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
“焦”の解説
焦(しょう)は、西周時代の諸侯国。
『史記』周本紀によると周の武王は神農氏の末裔を焦(現在の河南省三門峡市陝州区)に封じたとある。
『竹書紀年』の記載によると、周の幽王七年(紀元前775年)焦は虢によって滅亡した。
(出典:Wikipedia)
焦
常用漢字
中学
部首:⽕
12画
“焦”を含む語句
焦燥
焦慮
焦躁
焦心
焦点
焦立
焦々
焦眉
焦土
焦熱
焼焦
焦死
黒焦
焦茶
日焦
焦茶色
焦臭
焦熱地獄
小焦
麦焦
...