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せいそ
ふりがな文庫
“
清楚
(
せいそ
)” の例文
あたかもどこか上流の礼儀正しい家でも訪問して、
清楚
(
せいそ
)
とした申し分のない印象を与えねばならぬ場合を、控えているかのようだった。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
写生の点において広重の技巧はしばしば北斎より更に綿密なるにかかはらず一見して常に北斎の
草画
(
そうが
)
よりも更に
清楚
(
せいそ
)
軽快の
思
(
おもい
)
あらしむ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
成程ひと目見流しただけでは、どんな変化があるか解らないまでに、絵姿の面貌は相変らず美しく姿は相変らず
清楚
(
せいそ
)
としています。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
黒の
縮緬
(
ちりめん
)
の羽織を着て来た
清楚
(
せいそ
)
な小夜子の姿は、何か薄寒そうでもあったが、彼女はほんのちっとばかし
箸
(
はし
)
をつけただけであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ことに一間ほど
隔
(
へだ
)
てて、二人の横に置かれた
瓦斯煖炉
(
ガスストーブ
)
の火の色が、白いものの目立つ
清楚
(
せいそ
)
な
室
(
へや
)
の空気に、
恰好
(
かっこう
)
な
温
(
ぬく
)
もりを与えた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
遠州流でも古流でも池の坊でもその一流に
拠
(
よ
)
って
清楚
(
せいそ
)
なる花を食卓へ飾ったら葬式の
造花然
(
つくりばなぜん
)
たるこの掴み挿しに勝る事
万々
(
ばんばん
)
だ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
古原草は病
殆
(
ほとん
)
ど
癒
(
い
)
え、油画具など
弄
(
もてあそ
)
び居たり。
風間直得
(
かざまなほえ
)
と落ち合ふ。聖路加病院は病室の設備、看護婦の服装
等
(
とう
)
、
清楚
(
せいそ
)
甚だ愛すべきものあり。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
岸本は節子に
珠数
(
ずず
)
を贈った。幾つかの透明な硝子の
珠
(
たま
)
をつなぎ合せて、青い
清楚
(
せいそ
)
な
細紐
(
ほそひも
)
に
貫通
(
とお
)
したもので、女の持つ物に
適
(
ふさ
)
わしく出来ていた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
姫君はまた
清楚
(
せいそ
)
な
風采
(
ふうさい
)
の大将を
良人
(
おっと
)
にして、これ以上の美男はこの世にないであろうと信じていたのが、どこもどこもきれいでおありになる宮は
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
われわれは「純潔」と「
清楚
(
せいそ
)
」に身をささげる事によってその罪滅ぼしをしよう。こういうふうな論法で、茶人たちは生花の法を定めたのである。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
兄の
了庵
(
りょうあん
)
について、禅門に入った。佳麗な
比丘尼
(
びくに
)
は、
清楚
(
せいそ
)
な梅みたいに鎌倉中の山門を色めかせたにちがいあるまい。
美しい日本の歴史
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
園に達すれば門前に
集
(
つど
)
う車数知れず。小門
清楚
(
せいそ
)
、「春夏秋冬花不断」の掛額もさびたり。門を入れば萩先ず目に赤く、立て並べたる自転車おびたゞし。
半日ある記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
とにかくその障子の色のすがすがしさは、
軒並
(
のきな
)
みの格子や
建具
(
たてぐ
)
の
煤
(
すす
)
ぼけたのを、貧しいながら身だしなみのよい美女のように、
清楚
(
せいそ
)
で品よく見せている。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ぬきえもんに着た
襟
(
えり
)
の
框
(
かまち
)
になっている部分に
愛蘭
(
アイルランド
)
麻
(
あさ
)
のレースの下重ねが
清楚
(
せいそ
)
に
覗
(
のぞ
)
かれ、それからテラコッタ型の完全な
円筒
(
えんとう
)
形の
頸
(
くび
)
のぼんの窪へ移る間に
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
が、
馴
(
な
)
れるに
随
(
したが
)
って、彼のなかの苦しいものは除かれて行ったが、何度逢っても、繊細で
清楚
(
せいそ
)
な鋭い感じは変らなかった。彼はそのことを口に出して
讃
(
ほ
)
めた。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
小春の雲の、あの
青鳶
(
あおとび
)
も、この人のために
方角
(
むき
)
を替えよ。姿も
風采
(
なり
)
も鶴に似て、
清楚
(
せいそ
)
と、端正を兼備えた。襟の
浅葱
(
あさぎ
)
と、薄紅梅。
瞼
(
まぶた
)
もほんのりと
日南
(
ひなた
)
の面影。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ミルトンは
情熱
(
イムパツシヨンド
)
を以て大詩人の一要素としたり。深幽と
清楚
(
せいそ
)
とを備へたるは少なからず、然れどもまことの情熱を具有するは大詩人にあらずんば期すべからず。
情熱
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
きれいにかりこんだ
灌木林
(
かんぼくりん
)
や緑色の芝生のなかに点在する
清楚
(
せいそ
)
な百姓家を、あきもせず眺め、楽しんだ。
船旅
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
竹簾
(
たけすだれ
)
が上った。その向うになよたけが立っている。田舎娘だが、天使のごとき
清楚
(
せいそ
)
な美しい少女である。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
この新人ピアニストの古典には、古い伝統の
穀
(
から
)
を破った、新しいリアリズムの生命があるのであろう。
清楚
(
せいそ
)
なうちに情熱を盛った、不思議なモーツァルトである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
病院は松林に囲まれて小高い丘の上の
清楚
(
せいそ
)
な白塗りの建物です。そこから海岸まで
緩
(
ゆる
)
やかな傾斜になっていて両側の松林では淡日がさして小鳥などよく
啼
(
な
)
いています。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
その類型というのは、年若な婦人で、大して背が高くなく、さほど
清楚
(
せいそ
)
でもなく、しなやかな身体、染めた髪の毛、愛嬌ある顔の上にある、身体不相応に大きな帽子。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
白粉
(
おしろい
)
気がなく、癖のない潤沢な黒髪を、無造作に束ねているので、たいへん
清楚
(
せいそ
)
な感じがした。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
太郎が一任されて買ってきたその花は今も心に残っているほど美しく
清楚
(
せいそ
)
で、花嫁のひろみを引き立たせた。そんな思いにつながったフリージヤだったかもしれない。……
日めくり
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
下界の動乱の
亡者
(
もうじゃ
)
たちに何かを投げつけるような、おおらかな身振りをしていて、若い小さい処女のままの
清楚
(
せいそ
)
の母は、その美しく勇敢な全裸の
御子
(
みこ
)
に初い初いしく寄り添い
俗天使
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一見
清楚
(
せいそ
)
な娘であったが、壊れそうな危なさがあり
真逆様
(
まっさかさま
)
に地獄へ
堕
(
お
)
ちる不安を感じさせるところがあって、その一生を正視するに堪えないような気がしていたからであった。
堕落論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
お化粧のことも、娘さんはなるべく
清楚
(
せいそ
)
にと思います。映画の真似なのか、
剃
(
そ
)
った
眉
(
まゆ
)
の上に眉を描いていて、四本の眉を持った女のひとに時々会いますがぞっとしてしまいます。
着物雑考
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その代わり、全体が光るほど
清楚
(
せいそ
)
に磨きあげられて、上には高価な草花もたくさんおいてある。しかし、今この部屋でいちばんみごとなのは、立派な器を並べた食卓だけである。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
天蓋
(
てんがい
)
、
笙
(
しょう
)
、
篳篥
(
ひちりき
)
、女たちは
白無垢
(
しろむく
)
、男は編笠をかぶって——
清楚
(
せいそ
)
な寝棺は一代の麗人か聖人の
遺骸
(
いがい
)
をおさめたように、みずみずしい白絹におおわれ、白蓮の花が四方の角を飾って
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
タッタ今まで新婚匆々時代の紅い服を着ていた黛子さんが、今度は今一つ昔の、可憐な宮女時代の姿に若返って、白い
裳
(
もすそ
)
を長々と引きはえている。
鬢鬟
(
びんかん
)
雲の如く、
清楚
(
せいそ
)
新花
(
しんか
)
に似たり。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
おどろくべき貞操修業者の告白をきいて、右門はいまさらのごとくにその
清楚
(
せいそ
)
とした遊君薄雪のあでやかさを見つめていましたが、いつにもないことをふいと感慨深げに漏らしました。
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
彼は映画のタイトルを読むような
気忙
(
きぜわ
)
しさで、この三つのうちから、最も
清楚
(
せいそ
)
な感じの、最も高価な指環を選んだ。それは素晴らしく大きな青光りのダイヤと、黄金の薔薇の花束から出来ていた。
指と指環
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
シカシ
人足
(
ひとあし
)
の留まるは
衣裳附
(
いしょうづけ
)
よりは
寧
(
むし
)
ろその態度で、髪も
例
(
いつも
)
の束髪ながら何とか結びとかいう手のこんだ束ね方で、大形の
薔薇
(
ばら
)
の
花挿頭
(
はなかんざし
)
を
挿
(
さ
)
し、本化粧は自然に
背
(
そむ
)
くとか云ッて薄化粧の
清楚
(
せいそ
)
な作り
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
建物の裏からは満開を過ぎた梅の蒸すやうな匂が漂つてゐた。それはしかし、あの
四君子
(
しくんし
)
に
喩
(
たと
)
へられてゐるやうな
清楚
(
せいそ
)
なものではなく、
何処
(
どこ
)
か梅自身
欝々
(
うつ/\
)
と病んでゐるかのやうな、重たい
香
(
かを
)
りだつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
こんなことを
言
(
い
)
って
袖子
(
そでこ
)
を
庇護
(
かば
)
うようにする
婦人
(
ふじん
)
の
客
(
きゃく
)
なぞがないでもなかったが、しかし
父
(
とう
)
さんは
聞
(
き
)
き
入
(
い
)
れなかった。
娘
(
むすめ
)
の
風俗
(
なり
)
はなるべく
清楚
(
せいそ
)
に。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
此
(
かく
)
の如く
脆弱
(
ぜいじゃく
)
にして
清楚
(
せいそ
)
なる家屋と此の如く湿気に満ち変化に富める気候の
中
(
うち
)
に
棲息
(
せいそく
)
すれば、かつて広大堅固なる西洋の居室に直立
闊歩
(
かっぽ
)
したりし時とは
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
だれにもない
清楚
(
せいそ
)
な身のとりなしの備わっている薫は、これ以上の男がこの世にはあるまいと見えた。
源氏物語:50 早蕨
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
その先生の
清楚
(
せいそ
)
な姿はまだ私の目さきにはっきりと描かれた。用件があって、先生の処へ行くと、彼女はかすかに混乱しているような
貌
(
かお
)
で、乱暴な字を書いて私に渡した。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
けれどその草心尼の
清楚
(
せいそ
)
な美しさも、年とすれば、もう
四十路
(
よそじ
)
にとどいていたはずである。かつてのような濡れ濡れしい若後家の尼とはおのずから落ちつきも違っていた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清楚
(
せいそ
)
な八畳、すみに小さな仏壇がある。床に
一枚
(
いちまい
)
起請文
(
きしょうもん
)
を書いた軸が掛かっている。寝床のそばに机、その上に開いた本、他のすみに
行灯
(
あんどん
)
がある。庭には秋草が茂っている。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
それに葉子は部屋を楽しくする
術
(
すべ
)
を知っていて、文学少女らしい好みで、
籐椅子
(
とういす
)
を縁側においてみたり、
清楚
(
せいそ
)
なシェドウのスタンドを机にすえたりして、色チョオク画のように
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その
年紀
(
としごろ
)
は二十三、四、姿はしいて満開の花の色を洗いて、
清楚
(
せいそ
)
たる葉桜の緑浅し。色白く、鼻筋通り、
眉
(
まゆ
)
に力みありて、
眼色
(
めざし
)
にいくぶんのすごみを帯び、見るだに涼しき美人なり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しさいらしく帳簿しらべる銀行員に
清楚
(
せいそ
)
を感じ、医者の金鎖の重厚に圧倒され、いちどはひそかに高台にのぼり、憂国熱弁の練習をさえしてみたのだが、いまは、すべてをあきらめた。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その滑かな
清楚
(
せいそ
)
な皮膚は、私に取ってはただ遠くから眺めるだけで十分でした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
普通一般の
清楚
(
せいそ
)
とかすがすがしさといったすがすがしさではなく、
艶
(
えん
)
を含んでかつ清楚——といったような美しさのうえに、そったばかりの青まゆはほのぼのとして、その富士額の下に白い
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
鼻は太く、歯並みや
賤
(
いや
)
しく、
清楚
(
せいそ
)
なところが少なく、ただ眼だけは生き生きとしてかなり
敏捷
(
びんしょう
)
で、また
仇気
(
あどけ
)
ない微笑をもっていた。彼女は
鵲
(
かささぎ
)
のようによくしゃべった。彼も快活に答えをした。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は遺産を近親の死から十五の年に得て
清楚
(
せいそ
)
な暮しに一生涯事欠かない孤独な少女学究者なのです。日本語と英語フランス語を読むに欠かないだけの素養があるので別に学校などへは行かない。
智慧に埋れて
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
細かな花模樣の青い着物に、白博多の帶が
清楚
(
せいそ
)
にぱつとまばゆかつた。
多摩川
(旧字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
窓の中を覗いて見ると、
几
(
つくえ
)
の上の
古銅瓶
(
こどうへい
)
に、
孔雀
(
くじゃく
)
の尾が何本も
挿
(
さ
)
してある。その側にある
筆硯類
(
ひっけんるい
)
は、いずれも
清楚
(
せいそ
)
と云うほかはない。と思うとまた人を待つように、碧玉の
簫
(
しょう
)
などもかかっている。
奇遇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
清楚
(
せいそ
)
な感じのする食堂で窓から降りそそぐ正午の空の光を浴びながらひとり静かに食事をして最後にサーヴされたコーヒーに砂糖をそっと入れ、さじでゆるやかにかき交ぜておいて一口だけすする。
詩と官能
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
清
常用漢字
小4
部首:⽔
11画
楚
漢検準1級
部首:⽊
13画
“清楚”で始まる語句
清楚閑雅