あたかもどこか上流の礼儀正しい家でも訪問して、清楚とした申し分のない印象を与えねばならぬ場合を、控えているかのようだった。
トニオ・クレエゲル (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
大正十二年九月一日の大震に際して (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
われわれは「純潔」と「清楚」に身をささげる事によってその罪滅ぼしをしよう。こういうふうな論法で、茶人たちは生花の法を定めたのである。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心、岡倉覚三(著)
船旅 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
その類型というのは、年若な婦人で、大して背が高くなく、さほど清楚でもなく、しなやかな身体、染めた髪の毛、愛嬌ある顔の上にある、身体不相応に大きな帽子。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
その代わり、全体が光るほど清楚に磨きあげられて、上には高価な草花もたくさんおいてある。しかし、今この部屋でいちばんみごとなのは、立派な器を並べた食卓だけである。
カラマゾフの兄弟:01 上 (新字新仮名) / フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
おどろくべき貞操修業者の告白をきいて、右門はいまさらのごとくにその清楚とした遊君薄雪のあでやかさを見つめていましたが、いつにもないことをふいと感慨深げに漏らしました。
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
だれにもない清楚な身のとりなしの備わっている薫は、これ以上の男がこの世にはあるまいと見えた。
源氏物語:50 早蕨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
私本太平記:09 建武らくがき帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しさいらしく帳簿しらべる銀行員に清楚を感じ、医者の金鎖の重厚に圧倒され、いちどはひそかに高台にのぼり、憂国熱弁の練習をさえしてみたのだが、いまは、すべてをあきらめた。
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
私は遺産を近親の死から十五の年に得て清楚な暮しに一生涯事欠かない孤独な少女学究者なのです。日本語と英語フランス語を読むに欠かないだけの素養があるので別に学校などへは行かない。