多摩川たまがわ
あまり暑いので、津田は洗面所へ顏を洗ひに行つた。洗面所には大きい窓があつたが、今日はどんよりして風ひとつない。むしむしした午後である。 「津田さん、お電話ですよ」 津田が呆んやり窓の外を眺めてゐると、女給仕が津田を呼びに來た。オフイスへ戻つ …