“波濤:はとう” の例文
“波濤:はとう”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治7
小栗虫太郎3
ヴィクトル・ユゴー3
小川未明3
橘外男2
“波濤:はとう”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語11.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.7%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
これらの動揺の波濤はとうの中をくぐりぬけて小原は東西にかけずりまわった、かれは帽子をぬいでそれを目標にふりふり叫んだ。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
一種のテンポを取って高くなり低くなりする黒い波濤はとうのかなたには、さらに黒ずんだ波の穂が果てしもなく連なっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そして、この、太鼓の内部のような船室は、皮であるべきサイドの鉄板が、波濤はとうにたたかれてたまらなくとどろくのであった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
黙々は勝った、波濤はとうのごとき喝采が起こった、中立を標榜ひょうぼうしていた師範生はことごとく黙々の味方となった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
一八三〇年七月の革命は、また一八三二年六月の暴動は、底に潜んだ潮の流れの、表面に表われた一つの波濤はとうにすぎなかった。
レ・ミゼラブル:01 序 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
たけりくるうあらしにもまれて黒暗々こくあんあんたる波濤はとうのなかを、さながらの葉のごとくはしりゆく小船がある。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もしマストが折れたら船には一本のマストもなくなる、このまま手をむなしくして、波濤はとうの底にしずむのをまつよりほかはないのだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もっとはっきり言えば、果てしのない波濤はとう彼方かなたに、それにとり囲まれてその位置が見分けられた。
その日は、空が青い光を放ったように思われ、波濤はとうの頂きが、薔薇ばら色のうねりを立てていた。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
事務長のいるのに気づいた瞬間からまた聞こえ出した波濤はとうの音は、前のように音楽的な所は少しもなく、ただ物狂おしい騒音となって船に迫っていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
——今では、船は、断末魔の鯨が、荒狂う波濤はとうの間に身体をのたうっている、そのままだった。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
かれの故郷なる足利町は、その波濤はとうのように起伏したしわの多い山のふもとにあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼女はそういう渦巻の中で、宿命的に持っていた精神上の素質の為に倒れ、歓喜と絶望と信頼と諦観ていかんとのあざなわれた波濤はとうの間に没し去った。
智恵子の半生 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
彼女はさういふ渦巻の中で、宿命的に持つてゐた精神上の素質の為に倒れ、歓喜と絶望と信頼と諦観ていかんとのあざなはれた波濤はとうの間に没し去つた。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
しかしながら、永遠に向かって押し寄せる波濤はとうのうねりの中に、喜びと美しさが存している。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
その二かいから、ガラスまどをとおして、したほうにはるかの町々まちまちまでが、さながら波濤はとうのつづくごとくながめられました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
船全体を、小きざみに震動させる機関の響き、ひっきりなしにふなべりをうつ波濤はとうの音、ふと忘れている頃に襲いかかる大うねりの、すさまじい動揺。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
寒暑と波濤はとうと力わざと荒くれ男らとの交わりは君の筋骨と度胸とを鉄のように鍛え上げた。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
実地の生活の波濤はとうをもぐって来ない学者の概括は中味の性質に頓着とんじゃくなくただ形式的に纏めたような弱点が出てくるのもやむをえない訳であります。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大洋はその波濤はとうの恐るべき一律さのうちに彼を迷わさんとするけれども、彼はその心を、羅針盤らしんばんを有していて、それに助言されて常に北を教わる。
思想とはいかに大なる波濤はとうであるか! 破壊し埋没すべく命ぜられたすべてをいかに早くおおい隠し、恐るべき深淵をいかにたちまちの間にこしらえることか。
二十九年と七カ月の歳月としつきを費やし遥々ようよう万里の波濤はとうを越えて漂着したこの一個の函をめぐって、今や世界学者の論争は白熱化しているということが
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
と目がけられ、遠矢に左肩を射抜かれて、あえなく乱軍の波濤はとうにかき消された。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天をかぎる巨木が青葉の波濤はとうをつくり——それが五月の雨にけぶっていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
その時、上流かみから乗り入れた千余騎は、一団また一団、乱れ合って、波濤はとうとたたかう無数のいかだのように、河面を埋めて、次第に下流へ下流へと流されて来た。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その瞬間一つの恐ろしい観念が、滝人を波濤はとうのように圧倒してしまった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
波田はスカッパーから、太平洋の波濤はとうを目がけて、飛び散って行く、汚物の滝をながめては、誠に、これは便所掃除人以外にだれも、味わえない痛快事であると思うのであった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
水底が浅くなったために無二無三に乱れ立ち騒ぐ波濤はとうの中を、互いにしっかりしがみ合った二そうの船は、半分がた水の中をくぐりながら、半死のありさまで進んで行った。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
万里の波濤はとう俯瞰ふかん睥睨へいげいする大ホテル現出の雄図、むなしく挫折ざせつした石橋弥七郎氏の悲運に同情するもの、ただひとり故柳田青年のみならんや!
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
埠頭ふとうも、湖上も、波しずかに、月は白く、こうの声しかしなかったが、やがて一時に、波濤はとう天をち、万雷一時に雲を裂くような喊声かんせいが捲き起った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長島における三老職の刺殺事件や、勢州尾州にわたる三城の兵革へいかくなどが、この日の朝になって、初めて大坂にも知れて来たのである。またその一波濤はとうのあとにはすぐ、
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、澎湃ほうはいたる波濤はとうの如く常に身辺に押寄せつつある。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それはまるで千里の波濤はとうを越えて、異境に遊ぶの想いがあった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし、味方は巧妙に舟を操って、あるいは水煙の中に隠れ、滝津瀬のようなとどろきを上げる、波濤はとうの谷底をり進んでは、軍船に近づくまで、いっこうに姿を現わさなかった。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
人の心の底を大きな波濤はとうが過ぎる時こそ、痛烈な時期である。
およそ波濤はとうの健児たるもの、何者か海賊たらざりしものある。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
当然、伊豆に揚がった波濤はとうは、ここの岸へもって来た。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どーンと一つ、今までと違った波濤はとうが胴の間にぶつかる。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当然、波濤はとうの軍勢は、はやっていた。が、尊氏は、
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近い山も、町の中央の城と向合った正面とは違い、場末のこのあたりは、ふもとの迫るすそになり、遠山は波濤はとうのごとくかさっても、奥は時雨の濃い雲の、次第に霧に薄くなって
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暴風雨は、少しも勢いを減じていなかった。岸をんで殺到する波濤はとうの響が、前よりも、もっと恐ろしく聞えて来た。が、相争っている二人の耳には、波の音も風の音も聞えては来なかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
裏に出ると、浅間のけむりが正面に見えて、その左に妙義がちょっと頭を出していて、それから荒船あらふねの連山、北甘楽きたかんらの連山、秩父の連山が波濤はとうのように連なりわたった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
しばし暗黒、寂寞せきばくとして波濤はとうの音聞ゆ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
波濤はとうこる、うみうつります。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一方には波濤はとうがあり、一方には墓穴があった。
東亜の山脈は波濤はとうのごとく日本海よりビスケイ湾に連亘れんこうし、あるいは起き、あるいは伏し、あるいは続き、あるいはえ、逶迤いいとして不規則なる折線をもって二大陸を南北に横截おうせつせり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
伏しておもんみれば関節がゆるんで油気がなくなった老朽の自転車に万里の波濤はとうえて遥々はるばると逢いに来たようなものである、自転車屋には恩給年限がないのか知らんとちょっと不審を起してみる
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
心が波濤はとうのように動揺した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それは或いは証明し難いことであろうが、少なくとも後々は是を波濤はとうの底に隠れて、しかるべき理由のあるごく僅かな人だけが、稀々まれまれにそこを訪い、また戻って来て見聞をかたり、もしくは後より派遣せられて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
こわいとか危険だとか恐ろしいとかいっているものの、万里ばんり波濤はとうをのりこえて恐竜探検にここまでやってきた一行のことであるから、一刻いっこくも早く恐竜にはっきり面会したくてたまらない人々ばかりだった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、今やのあたり伸子の遺骸を見ると、事件の当初から、ファウスト博士の波濤はとうのような魔手にもてあそばれ続けて、とどのつまり生命の断崖から、突き落されたこの今様グレートヘンが……、なんとなく死因に対する
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
暴風が起って、海が荒れて、波濤はとうがあの小家こいえを撃ち、庭の木々がきしめく時、沖を過ぎる舟の中の、心細い舟人は、エルリングが家の窓かられる、小さいともしびの光を慕わしく思って見て通ることであろう。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
越しかたかえりみれば、眼下がんかに展開する十勝の大平野だいへいやは、蒼茫そうぼうとして唯くもの如くまた海の如く、かえって北東の方を望めば、黛色たいしょく連山れんざん波濤はとうの如く起伏して居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ヴィーナスの星(金星)が、天空の偉大な洒落女しゃれおんなが、大洋のセリメーヌが、あらゆるものをおのれの下に静めながら、海の波濤はとうをも一婦人のように物ともしないで、無窮の空に上ってゆくのを、諸君のうちに見られた方がありますか。
無電は破壊せられて利かず——よし利いたからとて、四周敵の重囲下にある孤立無援の独逸駆逐艦が、どこに救援エス・オー・エスを求めることができたであろう——舵機を損じている艦は、三十フィート五十呎もある山のような波濤はとうに翻弄されて
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
奴は咄嗟とっさにあるだけの力を出して、沈んだがまた浮上った夫を背にかけて、波濤はとうをきってこんかぎり岸へ岸へと泳ぎつき、不思議に危難はのがれたが、それがもとで川上は淡路あわじ洲本すもと旗亭きてい呻吟しんぎんする身となってしまった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ただしろ荒寥こうりょうとした鉛色なまりいろひかこおり波濤はとう起伏きふくしていて昼夜ちゅうや区別くべつなく、春夏秋冬はるなつあきふゆなく、ひっきりなしに暴風ぼうふういている光景こうけいかぶのでした。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、待った。その方どもの時代になっては、八幡船もすでに末期、和寇という名ばかり残って、恐らくその魂は失われていたろう。——だが、かつては、その方どもの先祖にはあったものだ。ひとつの信念があったに相違ない。なくて何であんな大胆不敵ができる。生命を波濤はとうなげうてるか。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
倶楽部の人々は二郎が南洋航行の真意を知らず、たれ一人ひとり知らず、ただ倶楽部員のうちにてこれを知る者はわれ一人のみ、人々はみな二郎が産業と二郎が猛気とを知るがゆえに、年若き夢想を波濤はとうに託してしばらく悠々ゆうゆうの月日をバナナ実る島に送ることぞと思えり、百トンの帆船は彼がための墓地たるを知らざるなり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかし、小湊こみなとの浜へ立って見ると、はじめて水が生きている、生きて七情をほしいままに動かしているということを、確実に感受せずにはおられません。まず脈々として遠く寄せて来る大洋の波ですな、あれが生けるものの本体で、突出する岬と、乱立する岩に当って波がくだけると怒ります……波濤はとうの怒りは、この世に見る最も壮観なるものの一つですね。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)