此様こん)” の例文
旧字:此樣
嗚呼、かる有様では、最早永久に早慶試合の復活は絶望と見るの他はあるまい。嘆又嘆たんまたゝん!学生界の為に此様こん不埒千万ふらちせんばんな事はない。
何の因果で此様こん可厭いやおもいをさせられる事か、其は薩張さっぱり分らないが、唯此可厭いやおもいを忍ばなければ、学年試験に及第させて貰えない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
角「縁は縁だが、此様こんな事になっては悪縁だねえ、さア此処に金が五十両あるから、これで身形みなりを整えて、立派なおさむれえになって下せえ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「私はまた不思議な物でも通るかと思つて悚然ぞっとした、おばあさん、此様こんところに一人で居て、昼間だつておそろしくはないのですか。」
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
遮莫さもあれおれにしたところで、いとおしいもの可愛かわゆいものを残らず振棄てて、山超え川越えて三百里を此様こんなバルガリヤ三がいへ来て、餓えて、こごえて
勧めて無理な勉強をさして、此様こんな事になってしまって、まことにみません、とぶる外に彼等はなぐさめの言を知らなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
唯の風邪でないから此様こんなに長くかかったのだ。忠公が悪い。忠公と釣魚つりに行ったら忠公は游ごうじゃないかと言い出した。乃公は游泳およぎを知らない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『丁度、行違ひに御成おなんなすつたんでせう。』とお志保は少許すこし顔をあかくして、『まあ御上りなすつて下さいませんか、此様こんな見苦しい処で御座ございますけれど。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
此林中には立木と草のあるばかり、流星が此処ここで消えたとて何んの不思議な物が落ちて居るものか、好奇ものずき此様こんな気味の悪い森林に入るよりは此儘このまま此処から家に帰り
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
でも此様こんはずでは無かツたがと、躍起やつきとなツて、とこまでツてる、我慢がまんで行ツて見る。仍且やツぱり駄目だめだ。てん調子てうしが出て來ない。揚句あげく草臥くたびれて了ツて、悲観ひくわん嘆息ためいきだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
とかく此様こんな変な文句が額なんぞには書いてあるものだ、と放下はうげして仕舞つて、又そこらを見ると、床の間では無い、一方の七八尺ばかりの広い壁になつてゐるところに
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
雨季で夕立の多い加減もあらうが、此様こんな好都合づくめの航海は珍らしいと船員が驚いて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此のまれな紀念会を御家の御別荘で開くことが出来、奥様の御出席をも得たと云ふ、此様こんな嬉しいことは覚えませぬので、しんから神様に感謝致すので御座いますよ、ホヽヽヽ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
此様こん不美まずいのを買ツたりして、気の利かないツて無いです。』と罪を細君にす。客は
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
それとも此様こんなのが実際じつさい幸福かうふくなので、わたしかんがへてゐたことが、ぶんぎたのかもれぬ。が、これで一しやうつゞけばまづ無事ぶじだ。あつくもなくつめたくもなし、此処こゝらが所謂いはゆる平温へいおんなのであらう。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「おめへは何だ? 何処のもんだ? 此様こんな帽子を誰にこせへて貰つた?」
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
此様こんな時には、お光の心は如何様に淋しくあわれに感じたであろう。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
恋には人間の真髄が動く、とか聴かされて、又感服した。其他そのたまだ種々いろいろ聴かされて一々感服したが、此様こんな事は皆愚言たわごとだ、世迷言よまいごとだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
長「べらぼうめ、気が違ってたまるもんか、此様こんな下手な親方に附いていちゃア生涯しょうげえ仕事の上りッこがねえから、己の方から断るんだ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「君は命拾いのちびろいをしたぞ! もう大丈夫。あしを一本お貰い申したがね、何の、君、此様こんあしの一本ぐらい、何でもないさねえ。君もう口がけるかい?」
昨年の春頼まれもせぬ葛城家の使者としてお馨さんの実家に約婚の許諾を獲に往った彼は、一年もたゝぬに此様こんな用事で二たび其家を訪おうとは思わなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「阿父様、不思議と云えば不思議でしょう、此様こんな箱が森林の中に落ちて居りました」と答えた。
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
真正に寝かして置く積りと見えて、着物を出してくれないから、乃公は寝衣ねまきの上に敷布をかぶった。下には大勢人が詰めかけているから此様こん風体なりをして行けば直ぐに捉まる。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さてあらためて飲み干したる酒盃とつて源太はし、沈黙だんまりで居る十兵衞に対ひ、十兵衞、先刻に富松を態〻遣つて此様こんな所に来て貰つたは、何でも無い、実は仲直り仕て貰ひたくてだ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
併し、此様こんなのでも、二十枚も挙げると、…………さうですね、一貫目より出ますから、魚籃びくの中は、中々賑かですよ。鮒は全体おとなしい魚で、たとひ鈎に懸ツても、余り暴れんです。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
考へて見ると老女おばさん、ほんとに世の中は面白いものねエ、かうした処でお目にかゝつて、此様こんなお世話さまにならうなどとは、夢にも思やしないんですもの、此頃中のわたしの心と云ふものは、老女さん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
うちへ帰るに半月掛る! 何だと云つて此様こんな遠方へ来た事か。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
時々ふと気が変って、此様こんな女に関係しては結果が面白くあるまいと危ぶむ。其側そのそばから直ぐ又今夜こそは是が非でもという気になる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と云いながらプツーリと癇癪紛れに下男の首を討落うちおとしました。奉公人はいゝ面の皮で、悪い所へ奉公をすると此様こんな目に遇います。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ああ此様こんな筈ではなかったものを。戦争にたは別段悪意があったではないものを。れば成程人殺もしようけれど、如何どうしてかそれは忘れていた。
「オヤ不思議だこと、先刻さっきの流星が此様こんな物を落して行ったのではありますまいか、不思議と云えば此箱こそ実に不思議なもの、持って帰って阿父様おとうさまに御覧に入れましょう」
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
此様こんなですから、また御目にかゝる事の出来得る日は近きにある事と思います。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今時分、人一人通ろうようは無い此様こんなところの雪の中を、何処を雪が降っているというように、寒いも淋しいも知らぬげに、昂然こうぜんとして又悠然として田舎の方から歩いて来る者があった。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
主『鮒は、大きくなると、皆此様こんな風になるです。そして、泥川のと違ひ、鱗に胡麻班ごまぶちなど付いてなくて、青白い銀色の光り、そりやア美しいです。話しばかりじやいかんから、君ほぐしてくれ給へ。』
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
如何して此様こんな処へ来る気になつたらう?
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
百両なんてえ金を持ってる気遣きづけえはねえ、彼様な奴が盗賊どろぼうだかんだか知れやアしない、此様こんな大きな石を入れて置きやアがって
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……それが世に無くて、此様こんなところにある、……
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其の容体ようだいすこぶ大柄おおへいですから、長二は此様こんな人に話でもしかけられては面倒だ、此の間に帰ろうと思いまして暇乞いとまごいを致しますと
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此の前に来た時は此様こんなにやせてはいなかったが、何も食べさせはせず、薬一服せんじて呑ませる了簡もなく、出歩いてばっかり居る奴だから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
角「わしも斯ういう事になるんなら話合いにしたものを、打擲ぶちなぐるべえと思ったら此様こんな事になってしまって、誠に気の毒だ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わっちは家根屋の清次と云って、お母さんは御存じでございやすが、此様こんな三尺に広袖ひろそでではきまりが悪いから、明日あしたでも参ってお目にかゝりましょう
此様こんな小せえ子に敵の討てる訳もなしするから、し剣術でも習いてえなら、私の御主人筋の人が剣術がえれえから其処そけへ往って稽古をさせてよ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
毎度またあれ御贔屓ごひいきに遊ばして有難う存じます、宜くまア此様こんな狭い汚ない所へ入らっしゃいました、何時も蔭でおうわさばかり致して居ますの
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ういう訳でそんな軽率かるはずみな事をしたのだえ、無分別の事ではないかえ、私に言いにくければ家内にでも云って呉れゝば此様こんな事にはならないものを
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何うしてお筆さんが泥坊などをする様なでない事は誰でも知ってる、それ此様こんな事になるというのはわしにはちっとも訳が分らねえ、お上は盲目めくらだ。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三「此様こんな物を持って来たって仕様がねえ、買ったって百か二百で買える物を持って来て、是で幾許いくらばかり欲しいのだ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
藤「実はこれ/\の悪党の為にだまされて此様こんな難に遭いましたが、従者とも下婢おんな岩と申すのは、何う致しましたか、何卒どうぞたずねなすって下さいまし」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
兄でもからもう面目次第しでえもねえ、じゃア後でっ付けやしょう、此様こんな嬉しい事アござえやせん……何でえう立って見やアがんな、彼方あっちへ行け
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
右「えゝ、そんなお身形みなりにお成りなさいまして、此様こんな山の中にお出でなさいますか、おなさけない事でございますなア」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
權「それは御免を願いてえもんで、わしには出来ませんよ、へえ、此様こんな窮屈な思いをするのは御免だと初手から断ったら、白酒屋さんの、えゝ……」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)