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札
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さつ
ふりがな文庫
“
札
(
さつ
)” の例文
ははあ、こやつも楮幣に不服なのか。ならばなぜ、
折檻
(
せっかん
)
などせず、表向きに、
検非違使
(
けびいし
)
ノ庁へつき出さんか。——この良忠から一
札
(
さつ
)
を
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
信者をだましてまき上げた寄附金をにせ
札
(
さつ
)
とすり替えた奴と、それを盗んだ奴と、どちらが罪が重いか、いわなくても分るだろう。
盗難
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「君を悪物喰といつたのは小生一生の不覚、
自今
(
じこん
)
如何
(
いか
)
やうな事があつても悪物喰などとは決して申すまじ、後日のため一
札
(
さつ
)
仍
(
よつて
)
而如件
(
くだんのごとし
)
。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
お島は時とすると、
札
(
さつ
)
を二三枚ポケットから取出して、彼等の手に渡した。そして学校の事務員にまで取入ることを怠らなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
毎晩、
仮装舞踏会
(
かそうぶとうかい
)
へ出かけたり、お金の
札
(
さつ
)
でたこをこしらえたり、海へ行けば、石のかわりに、金貨で水切りをしてあそんだりしました。
空とぶトランク
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
懐にしてペテルブルグ三界へ来るんだろう? ルーブリ銀貨三つか「お
札
(
さつ
)
」の二枚も持ってか(これはあいつの言い草だ……あの
婆
(
ばば
)
あの)
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
札
(
さつ
)
びら切る人見えず。今の値頃では、とても俸給生活者には駄目。浅草で
札
(
さつ
)
がとんでいるのは、おでん店だけのようである。
海野十三敗戦日記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
藩札は
赭
(
あか
)
き紙ぎれ、皺に
寂
(
さ
)
び
黴
(
かび
)
くさき
札
(
さつ
)
、うち
廃
(
すた
)
り忘られし屑、うち束ね山と積めども、用も無し邪魔ふさげぞと、
放
(
はふ
)
られてあはれや朽ちぬ。
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「その上に斯ういう問題で犬馬の労を執って貰うんだから、僕は将来君に頭の上らないようにして置くのが礼儀だと思うんだ。一
札
(
さつ
)
認
(
したた
)
めよう」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
乞食同様の男に二十銭はちっと多過ぎると思ったが、云わるるままに
札
(
さつ
)
を
掴
(
つか
)
んでその店先へ駈けて行き、男の前に置くや
否
(
いな
)
や
一散
(
いっさん
)
に駈け出した。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
四民同等の今日とて
地下
(
じげ
)
と
雲上
(
うんじょう
)
の
等差
(
ちがい
)
口惜し、珠運を
易
(
やす
)
く見積って何百円にもあれ何万円にもあれ
札
(
さつ
)
で唇にかすがい
膏打
(
こううつ
)
ような処置、遺恨千万
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
という物々しい一
札
(
さつ
)
なのです。まことにどうもこのお墨付の、相当したる挨拶というその挨拶の二字くらい、おびただしく意味深長な文字はない。
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
ボーイが杉川医師の応急手当を受けて
室
(
へや
)
を運び出されると、私は直ぐに金丸刑事を呼んで、ボーイが貰った二十円
札
(
さつ
)
を東洋銀行に持って行かせた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
色の浅黒い
眉毛
(
まみえ
)
の濃い
大柄
(
おおがら
)
な女で、髪を
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しに
結
(
ゆ
)
って、
黒繻子
(
くろじゅす
)
の
半襟
(
はんえり
)
のかかった
素袷
(
すあわせ
)
で、
立膝
(
たてひざ
)
のまま、
札
(
さつ
)
の
勘定
(
かんじょう
)
をしている。札は十円札らしい。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
感情なんて! わたしにはそんなものを持つ時まもなく、機会もありません。わたしは一生、お嬢さん、大きなお
札
(
さつ
)
の
皺伸機
(
しわのし
)
を𢌞して過すのですよ。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
こればかりは何ういう事か解りません、間が
好
(
い
)
いと
好
(
い
)
い事ばかりで、間が悪いと悪い事ばかりあるもので、運のいゝ方は
顛
(
ころ
)
んだかと思えば
札
(
さつ
)
を拾い
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
必ず大きな
札
(
さつ
)
を出しておつりを勘定させる、その上に押し合いへし合いお互いに運動を妨害するから、どうしても一人
宛
(
あて
)
平均三十秒はかかるであろう。
マーカス・ショーとレビュー式教育
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
あたしが、それでも、そんな筈はないと思つて、よく地べたの上をみますと、まあ、どうしたと云ふんでせう、道いつぱいに、お
札
(
さつ
)
が積つてるんですわ。
雅俗貧困譜
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
たててゐて困る。たいこもちのやうな男が出て来て、このなつめは五万円だとか、この建水は二万円、茶碗がいくら、うるさいことぢや、あれならいつそ
札
(
さつ
)
を
愛情
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
偽
(
に
)
せ
札
(
さつ
)
を作り出せるような気の利いた、男ではなかった。自分でも偽せ札を
拵
(
こしら
)
えた覚えはなかった。そういうあやしい者から五円札を受取った記憶もなかった。
穴
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
伯母は
懷
(
ふところ
)
から私の書いた一
札
(
さつ
)
を出してそれをお時のに重ねました。そしてそれを又懷に入れながら
反古
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
「………お金と云ったってほんとうのお金じゃアないんだよう。にせのお
札
(
さつ
)
なんだってば、………」
小さな王国
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
八兄哥、頼むぜ、——今まで泥棒は、
札
(
さつ
)
旦那(客)や御用聞や医者に化けて、見張の中を大手を
銭形平次捕物控:046 双生児の呪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
山西は手を
顫
(
ふる
)
わして
蟇口
(
がまぐち
)
から十銭
札
(
さつ
)
を二枚出すと、投げるように置いてあたふたと逃げだした。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「へえ、三番の野呂さんの財布の中から五圓の御
札
(
さつ
)
に羽が生えて飛びましてん。あたしとこではついぞ其樣な事はおまへんのでしたが、不思議な事があるもんですなあ。」
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
猶
種々
(
さま/″\
)
詫言
(
わびごと
)
なし漸々にして追々に償ふ事を
免
(
ゆる
)
されしかば
直樣
(
すぐさま
)
引取の一
札
(
さつ
)
を
指出
(
さしいだ
)
し久八を連歸りけるは
無慈悲
(
むじひ
)
なりける有樣なり久八は
子供
(
こども
)
の時より主人を大切と我が身の
苦患
(
くげん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
日によると黄いろや緑いろのお
札
(
さつ
)
が、香水だの、酢だの、抹香だの、肝油だのとりどりの匂いを発散させながら、方々のポケットに七十ルーブルから詰まっていることがあった。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
氷の上にきた物売りが戦争未亡人だというので、ドブロクを買って
札
(
さつ
)
を渡すと、その札が風にさらわれて、どこかへ飛んで行ってしまった。渡したあとで、つり銭も受け取っていない。
江戸前の釣り
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
廣い天の空氣が吸ひたいのですよ! あなたのお
札
(
さつ
)
が墓場へ持つて行けますか? どのくらゐ私たちは生きられるものだとお思ひなすつて?(間をおいて、考へ込んで)生きる?——私
『人形の家』解説
(旧字旧仮名)
/
島村抱月
(著)
スルとこんな物があると
札
(
さつ
)
を
検
(
あらた
)
める邪魔になると
云
(
いっ
)
て、
態
(
わざ
)
と上包を
還
(
かえ
)
して遣るなどは
随分
(
ずいぶん
)
殺風景なことで、世間の人の驚いたのも無理はないが、今日それが日本国中の風俗習慣になって
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
払戻
(
はらいもどし
)
の窓口へさし込んだ手へ、無造作に
札
(
さつ
)
を
載
(
の
)
せられた時の快感は、はじめて想いを
遂
(
と
)
げた一代の
肌
(
はだ
)
よりもスリルがあり、その馬を教えてくれた作家にふと女心めいた頼もしさを感じながら
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「うんもっともだ。さあこれだけやろう。つりは
酒代
(
さかだい
)
だ。」と云いながらいくらだかわけのわからない大きな
札
(
さつ
)
を一
枚
(
まい
)
出してすたすた玄関にのぼりました。みんなははあっとおじぎをしました。
紫紺染について
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ぽつりと言い、彼は立ってミチに背中を見せて、棚の上に手を延ばし、小さな
柳行李
(
やなぎごうり
)
を引き降ろすと、腹の処で蓋を取り、
札
(
さつ
)
を
勘定
(
かんじょう
)
し始めた。銀行や郵便局の嫌いな彼は現金をいつも持って居た。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
強盗
(
ごうとう
)
は、地主さんから
札
(
さつ
)
たばをうけとると、こんどはげんかんから出ていきましたが、そこで地主さんのゆうかんな番犬、ナハトに見つかってほえつかれたので、すっかりあわててにげ出しました。
丘の銅像
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
二百円、左様、手の切れる
様
(
よう
)
な十円
札
(
さつ
)
でした、二百円呉れました
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
が、腹の胴巻には
札
(
さつ
)
らしい形がムックリ盛り上っている。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そういって、新しい
札
(
さつ
)
をぽんとなげだす人もあります。
水菓子屋の要吉
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
と
紙入
(
かみいれ
)
から
札
(
さつ
)
を
出
(
だし
)
て
静
(
しづ
)
に渡した。
節操
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「それはお
札
(
さつ
)
なの?」
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
札
(
さつ
)
を三枚出した。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
毎晩、
仮装舞踏会
(
かそうぶとうかい
)
へでかけたり、お
札
(
さつ
)
でたこをはってあげたり、小石の代りに、金貨で海の水を打ってあそんだりしました。
ひこうかばん
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ある時私の女房が——こちらへ来てからもらったのです——その中の一枚をにせ
札
(
さつ
)
と知らずに月末の支払いに使ったのです。
盗難
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「さあ、二十カペイカは君にチップだ。どうだ、大した金じゃありませんか!」と彼は
札
(
さつ
)
を持った震える手をザミョートフの前へ差し伸べた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「そのはずさ。いくらでも後から後から紙の
札
(
さつ
)
が出て来るうえに、銭の“
乾坤通宝
(
けんこんつうほう
)
”も
鋳直
(
いなお
)
したので、いぜんの物よりまるで銭の質が悪くなった」
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その男は芸者は
幇間
(
ほうかん
)
を大勢集めて、
鞄
(
かばん
)
の中から出した
札
(
さつ
)
の
束
(
たば
)
を、その前でずたずたに裂いて、それを
御祝儀
(
ごしゅうぎ
)
とか
称
(
とな
)
えて、みんなにやるのだそうです。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
事情斯くの如くに御座候間小生は御貴殿様に頭の上らぬ
代物
(
しろもの
)
に御座候。万一にも御恩を忘れ候節は此証文を取引所前にて御公表も
不苦
(
くるしからず
)
、
依而
(
よって
)
一
札
(
さつ
)
如件
(
くだんのごとし
)
。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
憲作はポケットから新しい
札
(
さつ
)
の束を出して机の上に積んでトンとたたいた。徳市の顔をグッと見込んで笑った。
黒白ストーリー
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
昼間来て晩方引き揚げるのだったが、この男が帰ると彼女はいつも
貰
(
もら
)
ったお
札
(
さつ
)
の勘定をするのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さ、諸君は、其処にさうして
起
(
た
)
つてゐる必要はない。それとも、押川の
懐
(
ふところ
)
へ、天から
札
(
さつ
)
が降つて来るとでも思つてるのか。が、待ち給へ。僕が一つ、名案を授けよう。
雅俗貧困譜
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
僕の懐に
若
(
も
)
し其の証書があれば、千や二千の破れ
札
(
さつ
)
を欲しがって
来
(
き
)
やアしねえ、助右衞門は僕が殺したのではねえ、君が殺したのだから、君が重罪で僕も同類だけれど
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
札
常用漢字
小4
部首:⽊
5画
“札”を含む語句
入札
守札
高札
札幌
門札
標札
花札
表札
落札
青札
札差
貼札
木札
一札
迷子札
引札
札所
捨札
下足札
神札
...