“敵:かたき” の例文
“敵:かたき”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂41
中里介山22
泉鏡花19
吉川英治14
国枝史郎12
“敵:かたき”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸30.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語6.6%
文学 > 日本文学 > 戯曲4.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
それに其目の怨めしさうなのが段々險しくなつて來て、とう/\かたきの顏をでも睨むやうな、憎々しい目になつてしまひます。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
実之助は、この半死の老僧に接していると、親のかたきに対して懐いていた憎しみが、いつの間にか、消え失せているのを覚えた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ふてえ野郎だ。誰が苛責た。年の若いものつらまえて。よしよしおれが今にかたきを打ってやるから。その代り帰るんだぜ」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は、昔の人間が肉親を殺された場合、かたき打にいでて幾年もの艱苦かんくを忍ぶ心持が充分に解ったように思いました。
ある抗議書 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この世でかたきどうしに生まれて傷つけ合っているものでも、縁という事に気がつけば互いに許す気になるだろうと思います。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
父のかたきを討つまでは、前髪も取らぬと誓い、それを実行している頼母は、この時二十一歳であったが、前髪を立てていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かかる場合にも鴫澤主水、親のかたきの陣十郎とあっては、おろそかにならずそれどころか、討たでは置けない不倶戴天の敵!
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「足しになろうがなるめえがいいやな。おいらはただ、お前のかたきを討ってやりさえすりゃ、それだけで本望ほんもうなんだ」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
こんなに、おとうとをかわいがりましたのにかかわらず、おかあさんは、やはりむすめかたきにしました。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
えつと、あだかたきとが、こうして一つのかまの飯を食う、食うのが、間違っているか、宿命なのか。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたきは討ちすぎるものじゃない。サア、お前の女房の命と五人の命と釣替えだ。この縄を解いてやるから、お前も降りて来い」
たとい貞世と自分とが幸いに生き残ったとしても、貞世はきっと永劫えいごう自分をいのちかたきうらむに違いない。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それまであるじからかたきのように遠ざけられていた三野村は好い物を握ったと小躍こおどりして悦び、早速それを持って往って、
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
これも親のかたきのようなもので、私の尋ねるかたきと他の人の敵とは別人であるように私の書物は私が尋ねるよりほかに道はない。
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
孝助はまだようやく廿二歳、ことに可愛いゝ娘の養子といい、御主おしゅうかたきを打つまでは大事な身の上と
きん「それじゃア直ぐに遠い田舎へいらっしゃいますか、親切にあゝ仰しゃって下さるから、本当にかたきを討ってお出でなさいよ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
自身番の内部へその張紙を持ち込んだ親爺連、額を集めて眼のかたきのようにそれを読みはじめました。その文言はこうであります。
その間にかたきねらう上野介の身に異変でもあったらどうするかと、一に仇討の決行を主張するものとがあって
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
しかのち、われ卿等おんみら悲歎なげきひきゐて、かたきいのちをも取遣とりつかはさん。
わしの手足にまだ力が残っていた間は、いかにもして一度みやこに帰ってかたき一太刀ひとたちむくいる望みがあった。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
(尋常の敵を討つのではなく、親のかたきを討つのであった。子とあってみれば返り討ちも承知で、追いかけ戦うのが本当であろう)
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おい!君、お体裁は止めよう。我々はお互に、どうしたら勝てるかと相争うかたき同士だ。もうお互に敵として談判を始めよう。」
「それをお訴え致そうと存じましたが、今日やッと申上げられます。どうかお露のかたきをお取下さいまし。お願いでござりまする」
丹那山の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
美しいといふ事は、生命いのちがあるといふ事以上に大切だいじなのを思ふと、馬は男と一緒に女にとつては目のかたきである。
「マア!」と言うて人のいい細君は眉をひそめた、私もかたきながらこの話を聞いては、あんまりいい気もしなかった。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
であるから手前には、そんなことはどうでもよいことで、今最も気にかかるのは母のお杉とかたきの武蔵の消息でしかない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隅「本当に有難いこと、さぞ旦那様が草葉の蔭でお喜びでございましょう、関取私は殺されてもいゝから旦那様のかたきを取って」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
侍「蹴躓いたのではない、丁寧に手を突いて、先生わたくしは何をお隠し申しましょう、親のかたきを尋ねる身の上でございます」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おとっさん——問屋や名主を目のかたきにして、一揆の起こるということがあるんでしょうか。」と勝重が言った。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一同があきれ返って、先生を目のかたきにした時分には、先生すましたもので、再び舟を漕ぎはじめているから始末にいけません。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おいら一人を目のかたきにやって来たなら、まだ始末はいいが——この多勢で入乱れて混戦となったら手はつけられねえ。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すると、……二人とも味方なのか、それともかたきなのか、どれが鬼で、いずれが菩薩ぼさつか、ちっとも分りません。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そう云いながら、子爵はポケットから、瑠璃子るりこの手紙を取り出した。丁度かたきから来た投降状でも出すように。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
お母さまは、シンデレラを目のかたきのようにして、わざとたくさんの用事をいいつけて、朝から晩までこき使いました。
シンデレラ (新字新仮名) / 水谷まさる(著)
ところで一方甚内は、武芸を習う余暇をもって、江戸市中を万遍まんべんなくあるき、目差すかたきを探すことにした。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さあ助太刀をしておくれ! 兄上を討ち果たしたにくいかたきが、同じ宿に泊まっているのだよ。かなわぬまでも切り込んで。……」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
松下のり方は、他人ひとを見ればかたきと思つた封建時代の遺習で、型としてはかびが生えてゐる。
「親分、早くかたきを打つて下さいよ、三人殺したものは、四人目を殺さないとも限らないから、私は怖くなつちやつた」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
兵衛はすでに平太郎へいたろう一人のかたきではなく、左近さこんの敵でもあれば、求馬もとめの敵でもあった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
賢一郎 (なお冷静に)おたあさんは女子やけにどう思っとるか知らんが、俺に父親てておやがあるとしたら、それは俺のかたきじゃ。
父帰る (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「どうしたって、このんで一人坊ひとりぼっちになって、世の中をみんなかたきのように思うんだから、手のつけようがないです」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分のことを眼のかたきにして、手の上げ下しにろくなことを云わない津村にしたところで、腹の中は見え透いている。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
私は斬られたならかたきがあらう、其敵は私がかうして討つと云つて、庭に飛び降りて、木刀で山梔くちなしの枝をたゝき折つた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
と飯島平左衞門は孝心に感じ、おりを見てみずから孝助のかたき名告なのり、討たれてやろうと常に心に掛けて居りました。
「そのことは心得ておりまする、憎むべきかたきなれども、剣を取っては甲源一刀流において並ぶものがござりませぬ」
破れかぶれよ、按摩さん、従兄弟いとこ再従兄弟はとこか、伯父甥おじおいか、親類なら、さあ、かたきを取れ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、あの多血性な恋人は、さうした逃避的な態度を、捨てゝ、その恋のかたきを倒すために、再び風雨の夜に乗じて迫つたのであらうか。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
自分に氣の向いた事をさせるとさうでもなかつたが、寺の用となれば、目のかたきのやうにして打ツちやらかして置く。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「待て待て。いぶかしいな。張飛はこの呂布を目のかたきにしているおとこだ。俺に対して油断するわけはないが」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その方を親の敵と狙う、万田龍之助まんだりゅうのすけは父祖由緒の地に其方を迎えて、かたき名乗をあげるだろう。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
亭主のかたきを強いおかみに取って貰わなければならないから、何うぞわたくしを吉原へ女郎に売って下さい
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は、母親の入って来たのを見ると、まるでかたき同士なので、ぷいと立ってそこをはずそうとすると、主人は、
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
兵馬は計らずして、かたき行方ゆくえ一縷いちるの光明を認めたと共に、思い設けぬ富有の身となりました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「よろしい、そのお覚悟なら、それでよろしうございます、拙者もこれから、あなたをかたきの片われと見ましょう」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼はずっと前から何かかたきを討ってやろうと待ち構えているのだから、この好機会を見のがすことはできなかった。
「じゃなぜ、お前さんは、鮎川部屋であの人に会った時、かたきなら、敵といって、討ってしまわなかったんですか」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それを話してくれ。何でも知っていることを、みんなぶちまけてくれさえすれば、棟梁のかたきは俺が討ってやる」
「殿貝の旦那から聞くと、こちらへお泊りになった若いお侍は、あれはかたきをさがしにおいでなすったんだとさ」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この時また、転ぶ様に馳けつけて来た女、この二日間小田島に纏り続け、彼の前でイベットを目のかたきののしり通して居たあの女だ。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
このかたきはきっとせがれに討たしてくれよ、と一言いい して、船艙キャアルの口から飛び込んで船底に頭を打ちつけてごねやした。
その間、「門閥は親のかたきでござる」と心に叫びはしてもついぞ陽に「門閥」と闘ったことのない、固く抑制され、韜晦された魂であった。
福沢諭吉 (新字新仮名) / 服部之総(著)
「あのおこもは、村の者はよく知ってるがそんな悪人じゃねえ。かたきなんか討ったってつまらねえ話だ。堪忍かんにんしてやんねえ」
下頭橋由来 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたきを討つのが、武士さむらいの商売なら、こちとらにも、かせがざ飯にならねえ商売があるんだ。邪魔だから、退いてくれ」
下頭橋由来 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ざすかたき正太しようたえねば、何處どこかくした、何處どこげた、さあはぬか、はぬか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「この悪党に義理を立てて死ぬことがあるものか、本当の親の周助を殺したかたきだ、そのうえ放っておいたら、お澪は骨までしゃぶられる」
彼はついにまくらみながら、彼自身の快癒を祈ると共に、併せてかたき瀬沼兵衛せぬまひょうえの快癒も祈らざるを得なかった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
実之助は、馴れぬ旅路に、多くの艱難を苦しみながら、諸国を遍歴して、ひたすらかたき市九郎の所在を求めた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かつてマルクス主義者は、口を開けばすぐブルジョアがいけないと、まるでかたきのようにののしりました。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「そうして見ると、わたしたちには親のかたきがありますね。いつかいさんと一しょにかたきを討とうではありませんか」といった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
従来の客に対して、どうも気に食わない、気に食わないと、仏頂寺らが口癖のように言っている。尺八の音までも目のかたきにしている様子だ。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
生命とも、女房とも思う女を引奪ひったくられた恋のかたきに、俺の口から切れてくれ頼むと云うは、これ、よくよくの事だ思わんですだか。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さう云ひながら、子爵はポケットから、瑠璃子の手紙を取り出した。丁度かたきから来た投降状でも出すやうに。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
乳母 はロミオとうて、おうちとはかたきどうしのモンタギューわかぢゃといな。
「その上、かたきの娘お清に夢中になつて、自分の女房——あの貞節ていせつなお初までも殺してしまつたのは、何んといふ人非人の仕業だ」
すると新六郎樣も、お銀さんの言ふことを聽き、親のかたきを討つ氣になり、その手始めに、お銀さんのすゝめで
しかし新五郎とは、かたき同士が此処こゝへ寄合ったので有りますが、互にそういう事とは知りません。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かうして親友のかたきに逢うてからに、指も差さずに別るる、これが荒尾の貴方に対する寸志と思うて下さい。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「これも運命なら、仕方がありません。しかし母は知っているでしょうか。僕はきっとこのかたきをうちます」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
其上、今度主君のあだを討った功労者は、秀吉である、只今の場合、先ず聴くべきは先君のかたきを打った功労の者の言ではあるまいか、と。
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
——あきれもしない、目ざすかたきは、喫茶店、カフェーなんだから、めぐり合うも捜すもない、すぐ目前めのまえあらわれました。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あぶく、泡、泡……あわんぶく、おお泡んぶく、かたきを取ってくりょう、泡んぶく、お前敵を取ってくりょう、敵を取ってくりょう」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
単にこの長い刀を眼のかたきにするのみではない、自分の歩きっぷりがギスギスしているといって、あとで指差して笑っているような気持がする。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それでおかみさんは、だんだんおにのようなこころになって、いつもこのかたきにして、ったり、たたいたり
「お前さんは実に偉い。智慧者ちえしゃだねえ。そうすればお玉さんは松五郎の子で無いのだから、かたき同士の悪縁という方は消えて了うね」
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
おどけてはいるが、どこかおかがたいところのあるかおかたちは、かたき武家ぶけ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そんならどうでも助からぬか、末期いまわの際に次三郎さんにお目にかかって、おのれの悪事をお知らせ申しかたきが討って貰いたい。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人間は、お前達が、畠のものを食べるといって、目のかたきにするけれど、同じく地から産れたものでないか。
文化線の低下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「親分さん、娘を殺したのは、その男に間違いありません。どうぞ、かたきを討って下さい、お願い申します」
「結局僕とお姉さんとはかたき同士にさされてるのんですが、僕が負けるのんにきまってます」いいますよって
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「さりながら、聴かれよ、御内儀、あれもかたきの片われ、どうも、お言葉にしたがうわけにはなりませぬ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「親方、茶かさずにさ、全くだね、私あ何だ、演劇しばいでするかたきッてものはちょうどこんなものだろうと思いますぜ、ほんとうに親の敵。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その上お前、ここいらの者に似合わねえ、俳優やくしゃというと目のかたきにして嫌うから、そこで何だ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「——何ですえ、このざまは! かたきの女を、無理に、自分のものにして、それが何で面白い? ……。犬畜生も同じことだ、武士らしくもない」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「銭形の親分さん、——早く娘のかたきを討って下さい。いくらお吉が可愛いからって、お菊の葬式も済まないのに、うちの人まで自訴なんかして」
「支配人さん、とんだことだったね。娘さんのかたきはきっと討ってやるが、——私の訊くことに、何事も隠さずに話して貰いたいが、どうだろう」
「さて合戦はじまらば、かたき大勢ありとても、一番に割って入り、思う敵とよりあいて、死なんこの身の」
あくる日まで生きていた道斎は重い手傷にも屈せず「かたき河井龍之介かわいりゅうのすけ、敵は河井龍之介」と言い続けて命を落しました。
「おおお父つぁん。誰かに殺されてやったかしらへんけれど、きっと私がかたきを取ったげるしい。迷わんと、成仏しとくれやす。南無阿弥陀仏。——」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それではここまで追蒐おっかけて来て刺違えたのか、ともかくも当のかたきを仕留めたものと見える。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
公子 決していつわりは申しませぬ。紫の袍を着て桂の冠をかむり、銀の竪琴を持っている騎士姿の音楽家なら間違いなく母のかたきでござります。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)