のたま)” の例文
また心き事はべりき、その大臣の娘おわしき、いろかたちめでたく世に双人ならぶひとなかりき、鑑真がんじん和尚の、この人千人の男に逢ひ給ふ相おわすとのたまはせしを
「天子、今ご気息も危うし。枕頭ちんとうに公を召して、漢室の後事を託せんとのたまわる。いそぎ参内あるべし」と、うやうやしくいった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又曰猿の歯白し峰の月といふは其角きかくなり。塩鯛の歯ぐきは我老吟なり。しもを魚の店と唯いひたるもおのづから句なりとのたまへり。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
余輩よはいの村田翁の門下に教を請うや、翁従容しょうようとしてのたまわく、けいらの如き、石仏を麻縄にて縛りたる如き、究屈なる学問をなして、何の効かある。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この時母上通りかゝり給へり。この遊のさまを見て立ちまり、指組みあはせてのたまふやう。汝等はまことの天使なり。
我儕われらの主は、わが軛は易くわが荷はかろしとのたまひて、そのつとめの易く、その荷の軽く、その我儕に為さしむるところの極めて簡易なるを示したまへり。
主のつとめ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
……しゅのたまえり、シオンの娘らは、首をかたくし、眼を動かし、気取りたる小足にて歩み、足の輪を鳴らせばなりと。
十兵衞も見よ源太も見よとのたまひつゝ、江都かうとの住人十兵衞之を造り川越源太郎之を成す、年月日とぞ筆太に記し了られ、満面に笑を湛へて振り顧り玉へば
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
寄せ何か祕々ひそ/\さゝやきければ二人はハツと驚きしが三次はしばし小首をかたむ茶碗ちやわんの酒をぐつと呑干のみほし先生皆迄のたまふな我々が身にかゝる事委細承知と早乘が答へに長庵力を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
し総掛りに軍し給はゞ味方難渋仕り候はんか、今暫時しばらく敵の様を御覧ありて然るべきかと申しけるに、長政のたまふ様、横山の城の軍急なれば、其儘そのままに見合せがたし。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
夜軍よいくさなりて、くらさは暗し、大将軍頭中将重衡、般若寺の門に打立うちたちて『火を出せ』とのたまふ程こそありけれ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
されどかの君は大口開きて笑いたまい、宝丹飲むがさまでつらきかとのたまいつつわれらを見てまた大口に笑いたもう。げに平壌へいじょう攻落せし将軍もかくまでにはおごりたる色を見せざりし。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いやにました人おつに咳払せきばらひして進み出でて曰く両君ののたまふ所おのおの理あり。皆その人とその場合とに因つてこれを施して可なるべし。素人も芸者も元これ女なり。生れて女となる。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
抑々そもそも憲法発布の時の御詔勅ごしょうちょくには何と書いてあったか。臣民の懿徳いとく良能を啓発せねばならぬとのたまわせられたでは無いか。しかるに国務大臣はこの聖旨を奉戴してどれだけの力を尽したか。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
大臣の信用は屋上のとりの如くなりしが、今は稍〻やゝこれを得たるかと思はるゝに、相沢がこの頃の言葉の端に、本国に帰りて後も倶にかくてあらば云々しか/″\といひしは、大臣のかくのたまひしを
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
◯三十八章一節にいう「ここにエホバ大風の中よりヨブに答えてのたまわく」と。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
旅の人は不敵のことをのたまふものかな、此先はかばかり鬼多きを、いかにして無事に行過ぎ玉はんや、きのふも此里の八太郎食はれたり、けふも隣村の九郎助取られたり、あなおそろしと言ひて
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
せめて暑中しよちうは西の京へでも、侍臣斯く申せば、御気色みけしきかはり、のたまひけらく「ちん西京をきらふと思ふか。いな、朕は西の京が大好きなり。さりながら、朕、東の京を去らば、誰か日本のまつりごとを見むものぞ?」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
はてて、『なれゆるす』とのたまはむその一言ひとことを。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「……のたまえり……宣えり……」
反逆 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
されば叔母上ののたまうごとし。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伴天連ばてれんの師ののたまはく
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
われと畫工とは幾時も立たぬに中善くなりぬ。われは畫工を愛しき。母上もをり/\かれは善き人なりとのたまひき。
帝は、そうのたまいながら、みずから上の御衣を脱いで、玉帯をそれに添え、御手ずから董承に下賜かしされた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この少女はわが子なり奇稲田姫くしいなだひめという。さきに八箇やたりの少女あり年ごとに八岐やまた大蛇おろちのために呑まれて今このおとめまた呑まれんとすと申しければ、尊われにくれんやとのたまう。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
帝、今後はたゞ師弟をもって称し、必ずしも主臣の礼にかかわらざるべしとのたまう。諸臣泣いて諾す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と案じける時、前句に声の字ありて、音の字ならず、依て作りかへたり、須磨の鼠とまでは気をめぐらし侍れども、一句連続せざるとのたまへり。予が云、是須磨の鼠よりはるかにまされり。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
庶幾こいねがうところなりとて、すでに、軍、立つを大国に聞き付けて万が一の勢なるが故に軽しめ嘲りて、手捕てどりにせんとするを聞きて、大臣公卿にのたまわく、合戦の時多くの人死せんとす。
「否、かく衣をあらため玉ふを見れば、何となくわが豐太郎の君とは見えず。」又た少し考へて。「縱令富貴になり玉ふ日はありとも、われをば見棄て玉はじ。我病は母ののたまふ如くならずとも。」
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
のたまわせられました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はた妻のやうに怜悧なる人ともならざるならん。されど君が如き性もまた世の中になくて協はぬものぞとのたまふ。
やがて蜀四十一州を取ったら返すなどとのたまいながら、いま蜀をお手に入れても実行なさらず、わずかに荊州の内三郡だけを返すといわれたかと思えば、羽将軍がさまたげて
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じだらくに居れば涼しきゆふべかな。宗次そうじ。猿みの撰の時、宗次今一句の入集を願ひて数句吟じ侍れどとるべき句なし。一夕いつせき、翁のかたはらに侍りけるに、いざくつろぎ給へ、我もふしなんとのたまふ。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
高帝こうてい升遐しょうかしたもう時、遺篋いきょうあり、大難に臨まばあばくべしとのたまいぬ。謹んで奉先殿ほうせんでんの左に収め奉れりと。羣臣ぐんしん口々に、いだすべしという。宦者かんじゃたちまちにして一のくれないなるかたみきたりぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「否、かく衣を更め玉ふを見れば、何となくわが豊太郎の君とは見えず。」又た少し考へて。「縦令よしや富貴になり玉ふ日はありとも、われをば見棄て玉はじ。我病は母ののたまふ如くならずとも。」
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
封演の『聞見記』を引き、唐朝大赦ある時、闕下けっかに黄金の首ある鶏を高橦こうとうの下に立て、宮城門の左に鼓を置き、囚徒至るを見てこれを打ち、赦をのたまえおわりて金鶏を除く、この事魏晋已前いぜん聞えず
大臣の信用は屋上のとりのごとくなりしが、今はややこれを得たるかと思わるるに、相沢がこの頃の言葉のはしに、本国に帰りてのちもともにかくてあらば云々しかじかといいしは、大臣のかくのたまいしを
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
我この塔に銘じて得させん、十兵衛も見よ源太も見よとのたまいつつ、江都の住人十兵衛これを造り川越源太郎これを成す、年月日とぞ筆太にしるしおわられ、満面に笑みをたたえて振りかえりたまえば
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
勅使は、綸言りんげんを伝えていう。今日の事、叡覧えいらんあって龍顔りゅうがん殊のほか御うるわしく、上古末代の見もの、本朝のみか、異国にもかほどのさまはあるべからずとのたまわせ、斜めならぬ御気色みけしきに仰がれた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太祖これを見たまいて、なんじまことに純孝なり、たゞ子をうしないて孫を頼む老いたる我をもおもわぬことあらじ、とのたまいて、過哀に身をやぶらぬよう愛撫あいぶせられたりという。其の性質の美、推して知るべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「丞相がこの城を託して都へ帰らるる時、何とのたまわれましたか」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち法を説いてのたまわく
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)