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媼
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おうな
ふりがな文庫
“
媼
(
おうな
)” の例文
小腰をかがめて
媼
(
おうな
)
の
小舞
(
こまい
)
を舞うているのは、
冴々
(
さえざえ
)
した眼の、白い顔がすこし赤らみを含んで、汗ばんだ耳もとから
頬
(
ほお
)
へ、頬から
頸
(
くび
)
の
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
あの高砂の
媼
(
おうな
)
と翁のように、安らかに、自然に、天命にゆだねて思うことなく静かにともに生きる——それは尊い明け暮れである。
女性の諸問題
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
われら幼き時さえ、隣のおばさん物語りて——片山里にひとり寂しく
棲
(
す
)
む
媼
(
おうな
)
あり。屋根傾き、柱朽ちたるに、細々と
苧
(
お
)
をうみいる。
遠野の奇聞
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
するうちに、かさこそと、
藪隣
(
やぶどな
)
りのあばら家から、一
媼
(
おうな
)
が出て来て「この
庵
(
いお
)
のあるじなら、とうにもう、ここにおいでられませぬ」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
媼
(
おうな
)
は忽ち身を起し、
健
(
すこや
)
かなる歩みざまして我前に來て云ふやう。能くも歌ひて、身のしろを
贏
(
か
)
ち得つるよ。
吭
(
のど
)
の響はやがて
黄金
(
こがね
)
の響ぞ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
年老いた
媼
(
おうな
)
は普通の
土器
(
かわらけ
)
よりも大きい灯火をかかげていることが、奇異であるとすれば、全く奇異に大きい
灯
(
ともし
)
びでございました。
玉章
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
夜が明けると、母親は、この唄の声を聞いた話を近くにいた
蓆織
(
むしろお
)
りの
媼
(
おうな
)
に話した。媼もまたこの唄の声を耳にした一人である。
貉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僅かに
馬士歌
(
まごうた
)
の哀れを止むるのみなるも改まる
御代
(
みよ
)
に余命つなぎ得し白髪の
媼
(
おうな
)
が
囲炉裏
(
いろり
)
のそばに
水洟
(
みずばな
)
すゝりながら孫
玄孫
(
やしゃご
)
への語り草なるべし。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
代つて現れたのは白髮を切つて
撫附
(
なでつけ
)
にした
媼
(
おうな
)
である。「どうぞこちらへ」と云つて、わたくしを
揮
(
さしまね
)
いた。わたくしは媼と
帳場格子
(
ちやうばがうし
)
の
傍
(
そば
)
に對坐した。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
媼
(
おうな
)
の名は、
Marie
(
マリー
)
Hillenbrand
(
ヒルレンブラント
)
といふ。媼がまだ若くて体に弾力のあつた頃から、その母親と共に多勢の日本留学生の世話をした。
日本媼
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
何処のあたりまでぞ、君が薫りを徒らに、
夜毎
(
よごと
)
楽屋の
媼
(
おうな
)
の剥ぎとるべき、作りし
肌
(
はだえ
)
なるべきか。
舞姫
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
寺ずみの二人の
媼
(
おうな
)
さみしからむ眺めては居れど花の向うの空
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
さえもなき、
媼
(
おうな
)
のゑがくすゑものを
益子の絵土瓶
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
背に負へる
痩
(
や
)
せし
媼
(
おうな
)
も
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
家に居て機織る
媼
(
おうな
)
駱駝の瘤にまたがつて
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
媼
(
おうな
)
バウチス
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
と
間
(
あい
)
を
措
(
お
)
いて、
緩
(
ゆる
)
く引張つてくゝめるが如くにいふ、
媼
(
おうな
)
の
言
(
ことば
)
が
断々
(
たえだえ
)
に
幽
(
かすか
)
に聞えて、其の声の遠くなるまで、桂木は
留南木
(
とめぎ
)
の
薫
(
かおり
)
に又
恍惚
(
うっとり
)
。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そしてやっと
媼
(
おうな
)
の家来らしき者が出て来たが、一こうその男も無口で何の受け答えも通じない。そこで浄明は言ってみたのである。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こゝの景色はカムパニアの景色とは全く殊なるに、いかなれば吾胸中には、少時の住家の事、ドメニカの
媼
(
おうな
)
の事など浮び出でけん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
わたくしが光照院の墓の文字を讀んでゐるうちに、日は
漸
(
やうや
)
く暮れむとした。わたくしのために香華を墓に供へた
媼
(
おうな
)
は、「
蝋燭
(
らうそく
)
を
點
(
とぼ
)
してまゐりませうか」
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
この「頂上」は、風が強く、未だ九月下旬というに僕は冬の外套を
著
(
き
)
ていた。その丘に三、四人の女が物を売っていた。多くは
媼
(
おうな
)
で渋い模様のある布をかぶっている。
リギ山上の一夜
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
袴野ノ麿は草根木皮をあつめてこれを煮てすすめたが、
験
(
しるし
)
はなかった。
物忌
(
ものい
)
みや
憑
(
つ
)
き者のせいかと、袴野は都はずれに出掛け、医術の心得のある
媼
(
おうな
)
をさがして歩いた。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
かくてはわが熱心の先生に通ぜん日まで
幾度
(
いくたび
)
となく尋ね行くより外に道なしと翌日の夕暮再び案内を乞ひしにこの度は女中らしき
媼
(
おうな
)
取次に出でて
直
(
ただち
)
に
此方
(
こなた
)
へと奥の間に通されぬ。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
菜売
(
なうり
)
の
媼
(
おうな
)
いやいや、
難有
(
ありがた
)
い
御上人
(
おしやうにん
)
かも知れぬ。
私
(
わたし
)
は今の
間
(
ま
)
に拝んで置かう。
往生絵巻
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
木がらしに
白髪
(
しらが
)
かきたれ
来
(
く
)
る
媼
(
おうな
)
負へる赤子は石の如しも
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
媼
(
おうな
)
の聲の
短歌集 日まはり
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
縁側もない
破屋
(
あばらや
)
の、横に長いのを
二室
(
ふたま
)
にした、古び
曲
(
ゆが
)
んだ柱の根に、
齢
(
よわい
)
七十路
(
ななそじ
)
に余る一人の
媼
(
おうな
)
、糸を
繰
(
く
)
つて車をぶう/\、
静
(
しずか
)
にぶう/\。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ついぞ見かけたことのないもので、ひとりは四十がらみの
媼
(
おうな
)
、気の狂うた方は、まだ二十歳にもみたぬ
嫋女
(
たおやめ
)
でございますが」
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戸の外にて家の
媼
(
おうな
)
に出で逢ひ、心の常ならぬけにやありけむ、われその手を取りて接吻せしに、これは善き
性
(
さが
)
の人なるよとつぶやくを聞きつ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
媼
(
おうな
)
名は
石
(
いし
)
、高野氏、御家人の
女
(
むすめ
)
である。弘化三年生で、大正五年には七十一歳になつてゐる。
少
(
わか
)
うして御家人
師岡
(
もろをか
)
久次郎に嫁した。久次郎には二人の兄があつた。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
或る日袴野は一人の年古びた
媼
(
おうな
)
をつれて、すての容態を見せた。すてはこの媼の顔をみると、人間が次第に古びて行った
処
(
ところ
)
で厳しい表情になるものだということを知った。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
この砂がき婆さんは
一目眇
(
すがめ
)
の小さな
媼
(
おうな
)
であったが、五、六種の色の粉末を袋に持っていて人だかりの前で、
祐天和尚
(
ゆうてんおしょう
)
だの、
信田
(
しのだ
)
の森だの、安珍清姫だの、観世音霊験記だのを
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ひとり坐りし
留守番
(
るすばん
)
のその
媼
(
おうな
)
こそさみしけれ。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
検非違使に問われたる
媼
(
おうな
)
の物語
藪の中
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
然
(
そ
)
うぢやろ、然うぢやろ。」と
媼
(
おうな
)
はまた
頷
(
うなず
)
いたが、
単
(
ただ
)
然
(
そ
)
うであらうではなく、
正
(
まさ
)
に
然
(
そ
)
うなくてはかなはぬと言つたやうな語気であつた。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
媼
(
おうな
)
や
田老
(
でんろう
)
が、餅だの、麺類など、献上に来るし——まるで、祭の日みたいだ。古雅な太鼓や笛の音も、どこかで、している。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小家には崖に面する窓があって、窓の
裡
(
うち
)
にはいつも円頂の
媼
(
おうな
)
がいた。「綺麗な
比丘尼
(
びくに
)
」と父は云った。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
春近くふたたび
媼
(
おうな
)
が登山して来た時、袴野は媼を
塞
(
とりで
)
の外に連れ出してきびしい質問を続け、媼は懐妊に不思議のないことを告げた、袴野はそれが
孕
(
はら
)
んだ月をつぶさに聞き取り
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
仙台から湯治に来てゐる
媼
(
おうな
)
なども交つて芝居をした。その時父はひよつとこになつた。それから、そのひよつとこの
面
(
めん
)
をはづして、
囃子手
(
はやして
)
のところで笛を吹いてゐたことをおぼえてゐる。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
日は永し巡礼講の
寄合
(
よりあひ
)
の
媼
(
おうな
)
が
念仏
(
ねぶつ
)
山ざくら花
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
また、古い鈴を持った
媼
(
おうな
)
が、めでたい舞とか、土俗的な舞いぶりにつれて唱歌したり——村中をあげての歓待であった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朦朧
(
もうろう
)
と立ったり、間近な崖へ影が
射
(
さ
)
したり、
背後
(
うしろ
)
からざわざわと
芒
(
すすき
)
を
掻分
(
かきわ
)
ける音がしたり、どうやら、
件
(
くだん
)
の二人の
媼
(
おうな
)
が、
附絡
(
つきまと
)
っているような
思
(
おもい
)
がした。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この醜悪な、いつも不機嫌な
媼
(
おうな
)
はほとんど人に物を言うこともないので、観内の状況は世間に知られることが少く、玄機と陳とは余り人に
煩聒
(
はんかつ
)
せられずにいることが出来た。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その四人のほかに黒い蔽衣で頭まで蔽うた
媼
(
おうな
)
がゐる。それは接吻を見ない振してゐる。左方に若い男が右手に籠をさげ左の肩に何か鍬のやうなものを担いでゐる。これもやはり微笑してゐる。
接吻
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
見る眼さへ鄙の
媼
(
おうな
)
の歯ぐきあらはに。
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
または
酢
(
す
)
売り、
白粉
(
おしろい
)
売り、
麹
(
こうじ
)
売りなどの
販
(
ひさ
)
ぎ
女
(
め
)
から、一服一銭の茶売り
媼
(
おうな
)
までが“不毛を食う”散所民のうちだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつなりけん、
途
(
みち
)
すがら立寄りて尋ねし時は、
東家
(
とうか
)
の
媼
(
おうな
)
、
機
(
はた
)
織りつつ納戸の障子より、
西家
(
さいか
)
の子、
犬張子
(
いぬはりこ
)
を
弄
(
もてあそ
)
びながら、
日向
(
ひなた
)
の縁より、人懐しげに
瞻
(
みまも
)
りぬ。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十二月十三日に蘭軒の姉
幾勢
(
きせ
)
、黒田家の奥に仕へた時の名
世代
(
せよ
)
、
薙染
(
ちぜん
)
後の称正宗院が八十一歳を以て丸山の家に歿した。前年庚戌十二月の寿筵は此
媼
(
おうな
)
をしていたく疲れしめた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
僂麻質斯
(
リユーマチス
)
病みをる
媼
(
おうな
)
等にあひ
交
(
まじ
)
り日ねもす多く言ふこともなし
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
柩
(
ひつぎ
)
まうけの
媼
(
おうな
)
さび、
白髪
(
しらが
)
まじりの
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
“媼”の意味
《名詞》
(おうな、古語)老齢の女性、老婆。
(出典:Wiktionary)
媼
漢検1級
部首:⼥
13画
“媼”を含む語句
老媼
翁媼
乳媼
中臣志斐媼
当麻語部媼
老媼茶話
爺媼
媼巫女
日本媼
當麻語部媼
韓媼
茸媼
置目老媼
白媼
村媼
媼達
媼様
媼内
周旋老媼
傭媼