問屋とんや)” の例文
問屋とんやって、あのまち袋物屋ふくろものやですか。おおきいみせなのに、そんなかねがないわけでなし、どうしてだろうな。」と、まんきました。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
近所きんじよ子供こどもなかで、あそんでけないのは、問屋とんやの三らうさんに、おとなりのおゆうさんでした。この人達ひとたちとうさんとおなどしでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「いや、うは問屋とんやが卸しません。実用英語ですから、学校でやったのとは勝手が違うんです。半分ぐらいしか分らなくて好い恥をきました」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
大阪へ着いた以上は、もうどうにでもなれというような不貞ふてくされをやったって、そうは問屋とんやおろさねえぞ——というようなのは宅助のつらがまえ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薬の問屋とんやへも払うてしまえば、あの白か銭は、のうなってしまうがの、早よ寝て、早よ起きい、朝いなったら、白かまんまいっぱい食べさすッでなア
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「いやそのことなら、そうは問屋とんやおろしませんよ。ベラン氏はなるほど安全に地球へ戻りましたが、今頃はもう牢獄の一室に収容されている筈です」
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
問屋とんや旦那だんなとかいった種類の男が、俗っぽいものに見え、花柳趣味の愛好者である彼らを飽き足りなく思っていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
御存ごぞんじのとほり、佐賀町さがちやう一廓いつくわくは、ほとんのきならび問屋とんやといつてもよかつた。かまへもほゞおなじやうだとくから、むかしをしのぶよすがに、その時分じぶんいへのさまをすこしいはう。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ここでったが百年目ねんめと、とっつかまえて口説くどこうッたって、そうは問屋とんやでおろしませんや。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
たまたま吾妻橋あずまばしを通り掛って身投げの芸を仕損じた事はあるが、これも熱誠なる青年に有りがちの発作的ほっさてき所為しょいごうも彼が智識の問屋とんやたるにわずらいを及ぼすほどの出来事ではない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
横山町辺よこやまちょうへんのとある路地のなかにはやはり立派に石を敷詰めた両側ともに長門筒ながとつつ袋物ふくろものまた筆なぞ製している問屋とんやばかりが続いているので、路地一帯が倉庫のように思われる処があった。
世にも珍らしい生産の形で、これがどんなに仕事を実着なものにさせているでありましょう。多くの場合工藝の堕落が問屋とんや仲買なかがいの仲介によることは、歴史の示す通りであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
要吉の家では、その桃を、問屋とんやや、かんづめ工場こうじょうなどに売ったお金で一年中のくらしをたてていたのです。夏のさかりになると、紙袋の中で、水蜜桃は、ほんのりとあかく色づいていきます。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
が、しばらくそうしていても、この問屋とんやばかり並んだ横町よこちょうには、人力車じんりきしゃ一台曲らなかった。たまに自動車が来たと思えば、それは空車あきぐるまの札を出した、泥にまみれているタクシイだった。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たづぬるに武州埼玉郡さいたまごほり幸手宿さつてじゆく豪富がうふの聞え高き穀物こくもつ問屋とんやにて穀屋こくや平兵衞と言者あり家内三十餘人のくらしなるが此平兵衞は正直しやうぢき律儀りちぎ生質うまれつきにて情深なさけぶかき者なれば人をあはれたすくることの多きゆゑ人みな其徳そのとく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その頃、私はまあだ問屋とんや糶台ばんだいに座らせられません。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まちはずれの、あるはしのそばで、一人ひとりのおじいさんが、こいをっていました。おじいさんは、今朝けさそのこいを問屋とんやからけてきたのでした。
千代紙の春 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おやおや、そうは問屋とんやでおろさねえときたね。じゃ、やっぱり尋常じんじょうに、あの上のやつをいて引っかえそうか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
問屋とんやの三らうさんは近所きんじよ子供こどもなかでもとうさんとおなどしでして、あそ友達ともだちでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それから鍛冶屋かじやも一軒あった。少し八幡坂はちまんざかの方へ寄った所には、広い土間を屋根の下に囲い込んだやっちゃもあった。私の家のものは、そこの主人を、問屋とんやの仙太郎さんと呼んでいた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
悪い意味で作り方が悧口りこうになったため、正直に手間をかける仕事が少くなってきました。買手にも罪はあるでしょうが、それよりも問屋とんやが粗末なものを強いる結果だと申す方が本当でありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
まち問屋とんやや、工場こうじょうや、会社かいしゃなどでは、まぐるしく、ひとたちがはたらいているあいだかれは、鼻唄はなうたをうたいながら、さもたのしそうに、美人びじん姿すがたいていました。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
といふ伯父おぢさんのこゑきつけました。あのお前達まへたち伯父おぢさんが、とうさんには一番いちばん年長うへにいさんにあたひとです。とうさんは問屋とんやの三らうさんをかせたばつとして、にはたせられました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
問屋とんやは」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まのわるいときというものは、すべて、そういうものさ。のついたときは、もうおそい。しかたがないから、おつるさんは、問屋とんやきかえしたんだよ。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに、まだれないうちは、のりがよくついていないといって、問屋とんやっていってから、ははは、小言こごとかされて、しおしおとかえってきたこともあります。
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんなような、れにおしせまった、あるのこと、できあがった品物しなものってまち問屋とんやへとどけ、おかねをもらってかえりに、そのおかねをみんなとられてしまったんだよ。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あちらの山々やまやまには、しろゆきがきていました。昼過ひるすぎに、トラックは、ちいさなさびしいまち問屋とんやまえまりました。問屋とんやひとたちがてきて、荷物にもつろしました。
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、なんといったかな?」と、そこにあつまった問屋とんやのものは、たがいにかお見合みあわしました。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)