“呟:つぶや” の例文
“呟:つぶや”を含む作品の著者(上位)作品数
太宰治77
泉鏡花53
吉川英治50
海野十三34
芥川竜之介33
“呟:つぶや”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語14.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)2.9%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「この苗字は私の村(奈良県下)では軒並なんですが――」と彼はその時も、ふところの中に顔を埋めるようにしてつぶやいた。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
と私は独言ひとりごとのようにつぶやいた。又も底知れぬ恐怖にとらわれつつ……。しかし若林博士は平気でうなずいた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「親類と云ふものは俺には手足纏ひだ。唯それだけだ。」伯母の病気が危篤だと云ふ代筆の手紙を手にして彼はかうつぶやいた。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
こうつぶやいた遠藤は、その紙切れを、拾い上げながらそっと隠した懐中電燈を出して、まんまるな光に照らして見ました。
アグニの神 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
老師はしばらく廊下にたたず四辺あたりの様子を窺ったが「よし」とつぶやくと左手の方へ静々と廊下を歩いて行った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
つぶやくがごとくにいいて、かかる時、かかる出会の度々なれば、わざとには近寄らで離れたるままに横ぎりて爺は去りたり。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、ひとりつぶやきながら、行水の湯盥ゆだらいひたって、こよいは特別丹念に、黒い襟首えりくびなど洗っていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は身体を起し、寝台から飛び下りた。乱れた毛布を畳むために、毛布の耳をひとつひとつそろえながら、ふとつぶやいた。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
過去のつぶやきであるが故にうれいあるものこれを聞けばかえって無限の興趣と感慨とを催す事あたかも商女不知亡国恨。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「おなじくらいですな。」彼は駒を箱にしまいこみながら、まじめにつぶやいた。「横になりませんか。あああ。疲れましたね。」
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
「どうも赤外線写真というものは、色の具合が、死人の世界を覗いているようだな」判事さんがつぶやきながらている。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「四十になっても五十になっても、くるしさに増減は無いね。」とひとりごとのようにつぶやいた言葉が、どきんと胸にこたえた。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「まさか弟が費消つかいこみをするようなことはありゃしまいと思うがね。」母親は目をこすりながら、傍からつぶやいた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ふゆになつてからもおつぎは十六だといふうちすぐ十七になつてしまふとつぶやいたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すると、清二はかすかに眼にみを浮べながら、ごろりと横になり、「またか、困ったなあ」と軽くつぶやくのであった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
「あなたは、芸術家ですか。」玄関のたたきにつっ立ったまま、そっぽを向いてそうつぶやいた。れいの冷い、高慢な口調である。
水仙 (新字新仮名) / 太宰治(著)
塔のてっぺんにのぼったとき、老教授にふんした戸倉老人は、眼下を見下ろし、思わず感嘆かんたんつぶやきをもらした。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「姉さん、あたし知っているのよ。」妹は、澄んだ声でそうつぶやき、「ありがとう、姉さん、これ、姉さんが書いたのね。」
葉桜と魔笛 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「あの人、もう知ってるんだ。知ってるんだ?」歩きながら、思わずこんな言葉がつぶやかれた。そして彼女はぎょっとした。
窃む女 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
梨地金蒔絵、鋲打びょううちの女乗物。駕籠かごの引戸開けて風を通しながらの高田殿は、又してもここでつぶやかれた。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「サディは利口な奴さ」と彼はつぶやいた。「その上、気が利いていやがる。あれでスラッグ・ドルガンに気がなければなあ」
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
少くともそれは二十世紀の今日こんにち洋服を着て葉巻を吸いながら聞くわれわれの心に響くべき三味線のつぶやきである。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
すると私の荷持にもちが「こりゃきっとくれない。今日くれない位ではいよいよあざむかれたに違いない」とつぶやく。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
加奈江は心もち赤くれ上った左の頬を涙で光らしながらうらめしそうに唇をぴくぴく痙攣けいれんさせてつぶやいた。
越年 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その人たちが林の細道からダラダラと竹林の中へ下がってゆくのを見送って、お綱は、ひょっと、こう口のうちつぶやいた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「場所がここでなければ、どんな姿をしていようと、無論、有無うむをいわすのではないが……」と、ひとりがつぶやいた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……さて」と、口のうちでつぶやいたまま、久しい間、秋の空に眼を放ったまま、考えこんでいる面持おももちであった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、蘭丸はひとりつぶやいていた。けれど、こういう機微な心理になると、いくら信長の胸の中に住んでいるような蘭丸でも、
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さいかちの木のやぶへ逃げこんでからくも難をまぬかれた寺僧のひとりは、茫然ぼうぜん、口のなかでつぶやいた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『おれも良き夫であったが――』と悲しみの底で彼はしみじみつぶやきました。『久美子もおれの良き伴侶はんりょだった』
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「今日は雨ですよ。とても帰れやしませんよ」お島はえんはじへ出て、水分の多い曇空を眺めながらつぶやいた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
雪はひくくそうつぶやいてから、ふと立ちどまって泣きだした。「どうせ、私は。でも、でも、たった一度、うん、たった二度よ。」
断崖の錯覚 (新字新仮名) / 太宰治黒木舜平(著)
「おや、この子はまたおしっこ。おしっこをたれるたんびに、この子はわなわなふるえる。」誰かがそうつぶやいたのを覚えている。
玩具 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「大きな蜻蛉だな。一体どうして死んだのだろう……。」とつぶやきながら、彼はそこにしゃがんでその屍をた。
首を失った蜻蛉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
押鐘博士の顔が蒼ざめてみるみる白けていったが、糸――の真相を知らない旗太郎は、不自然な笑を作って、つぶやくように云った。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「……ほんとに済みませんでした。これから気をつけますから、どうか堪忍して下さい。」お銀のつぶやく声が、時々耳元に聞えた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「僕、死ぬのが何んだかこわくなりました。」と梶につぶやくふうだった。梶は栖方の臍も見たと思って眠りについた。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「いろも出来、借金も出来」とつぶやき、それから、ふいと語調をかえて、「何にしますか? よせなべでも作りましょうか?」
ヴィヨンの妻 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「何だろう。あれは機械なのだろうか。それとも生物なのだろうか」片唾かたずをのんでいた敬二少年は、思わずこうつぶやいた。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
日暮れごろ、ロジェエ夫人(七十歳になる病弱な老婦人であった)が「二度とマリーに会えまい」と心配そうにつぶやいた。
海の模様を見るために出ていた、別荘番の老爺おやじは、漆のように暗い戸外から帰って来ると、不安らしくつぶやいた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
瑠璃子は、つぶやくように云った。が、それは美奈子をとがめているとうよりも、自分自身を咎めているような声だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そうつぶやいて立上った。私は彼と並んでいたから、私の耳には、その呟きがきこえた。彼が立ち上って去ろうとするから、
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
つぶやきながら、大岩の前にたたずんだのは、それから三時間も経った後で、永い永い南国の日も今は暮れて夜となっていた。
と、彼女は、しんみりと、彼に寄り添うように、口の中でつぶやいた。そして、自分も下駄をつつかけて門まで送つて出た。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
そうつぶやいて善ニョムさんはまた向き直って、肥料を移した手笊てざるを抱えて、調子よく、ヒョイヒョイと掴んで撒きながら、
麦の芽 (新字新仮名) / 徳永直(著)
少しも早く探索せむずと雪の下に赴きて、赤城家の門前にたたずみつつ云々しかじかつぶやきたるが、第一回の始まりなり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ドアそとでひき呼吸いきつぶやこゑ彈丸だんぐわんごとんでおと
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
咄嗟の処置に迷いながら、小次郎がそうつぶやくと、朱実は、痛そうに眉をしかめ、白いうなじを、うつつにらしながら、
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ガラツ八の噛みつくやうな聲と、春松のつぶやくやうな聲が、惱ましい對照で、同じことを際限もなく繰り返してをります。
九十一のおうなが、初めてつぶやくように、云い出したので、何事かと、客の眼はみな、そのくち元へそそがれた。
ガラッ八の噛み付くような声と、春松のつぶやくような声が、悩ましい対照で、同じことを際限もなく繰り返しております。
今日も学校に出なかった! 胃のあたりににがさを感じながら私はつぶやいた。こういう生活を毎日つづけて一体どうなるのだろう。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
無念そうにつぶやいた。その眸を見て、おゆうは、はっと胸をつかれた。なにか、兄はひそかに独り期しているのではあるまいかと。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、つぶやくかのような眼をして、衣服を着、帯をしめた後も、寝床とこをたたんで、しばらくは一室の中に坐っていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを三度、四度ほど繰り返して、身心共に疲れてぐたりとなり、ああ酔った、と力無くつぶやいて帰途につくのである。
禁酒の心 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「あああ。こんな晩に私が笛でも吹けたらなあ。」青扇はひとりごとのようにつぶやきながら縁側へ僕を送って出て来た。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
「はあ、約二十年前の古傷ですか。なるほど」と帆村は病人であることを忘れたように、ひきしまった語調でつぶやいた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「では、その前後に微かな鈴のような音が」と訊ねて、鎮子の否定に遇うと、検事はたばこを抛り出してつぶやいた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
与一は思い出したように指を折って、「三七、二十一日もかかるンかね」一人でつぶやいてうんざりしたかの風であった。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
よく降りますね、今年は雨の豊年でしょうか、――そういう言葉がふと非力な人間のつぶやきとしてよみがえって来るのであった。
秋日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
ぼんやり外の暗闇を見ながら、ひとりごとのようにそうつぶやき、けれども、その男のひとの総身の力は既に抜けてしまっていました。
ヴィヨンの妻 (新字新仮名) / 太宰治(著)
一体みんな何をしてゐるんだらう、まさか軒並みに夜逃げしたわけでもあるまいのに、とつぶやきたくなるほど人の子一人ゐなかつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
そしておもむろに、衣の袖をきあわせ、瞑目めいもく合掌の後、しずかに水晶の数珠をすりあげ、つぶやくようにひくく、
片倉老人は目をとじて、念仏でもつぶやくように口の中で言った。カングリ警部は意外にも深いいたわりをこめて老人を見つめながら、
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その書名を肩越しに見て、「快走艇術ヨッチング」――と、検事は腹立たし気につぶやいたが、そのまま薄暗い室内を歩きはじめた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「この忙しい収穫期とりいれどき、休んだりして……」爺は申しわけのようにつぶやきながら家の中へ這入って行った。
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
往来から路地をはいって来て、ここの袋地内の畑や離屋はなれに、勝手がちがったらしくこうつぶやいているのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「遣ってやれんこともないね」感じが鈍いのか、腹が太いのか解らないような小野田は、にやにやしながらつぶやいた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「よく来たねえ。」まるで意味ないことをつぶやいた。絶えず訪問客になやまされている人の、これが、口癖になっているのかも知れぬ。
花燭 (新字新仮名) / 太宰治(著)
すこぶる不快そうにつぶやき、毛虫でも払いのける時のような手つきで、その写真をほうり投げるかも知れない。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
聞くがごとくんば、伯爵夫人は、意中の秘密を夢現ゆめうつつの間に人につぶやかんことを恐れて、死をもてこれを守ろうとするなり。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、何を思ったか、低い、ややもすると隣の人にさえも聴き取れないような口籠くちごもり方で、女房がつぶやいた。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうつぶやいて復一は皿と拡大鏡とを縁側えんがわほうり出し、無表情のまま仰向あおむけにどたりとねた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
(伝兵衛) お前ひとりのために、お前ひとりのために、この家が、お前ひとりのために、どれだけ、(何かつぶやきながら、泣き出す)
冬の花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と、つぶやきながら、はいって来たのが、今度こそ、たッぷり二升ははいる、貧乏徳利を提げて戻った、島抜け法印――
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
酒に酔いしれて、ほとんど我をうしなっているように見えるときでも、もし誰かに殴られたなら、落ちついてつぶやく。
猿面冠者 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と云われて相川は意地の悪い和尚だとつぶやきながら、挨拶もそわ/\孝助と共に幡随院の門を立出たちいでました。
「早く車を雇わっしゃれ。手荷物はあり、勝手知れぬ町の中を、何をあてにぶらつこうで。」と口叱言くちこごとで半ばつぶやく。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここに老人がつぶやいた、大沼勘六、その名を聞け、彼は名取なとりの狂言師、鷺流さぎりゅう当代の家元である。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つぶやきながら桟橋へ出て見ますと血が垂れて、其処におりゅうの寝衣ねまき浴衣と扱きが落ちてあったのを取上げすかし見て、
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
傍の男がこのくらいすくない方がかえっていいとつぶやいていたから、花盛りにはよほど大ぜい踊っていたものらしい。
祇園の枝垂桜 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
見ても分る。清葉のその土地子とちっこに対して、徳と位と可懐味なつかしみの有るのに対して、お孝は口のうちつぶやいた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最後の金砂子きんすなごきおえた時融川は思わずつぶやいたが、つまりそれほどその八景は彼には満足に思われたのであった。
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
フィールス このかたは、復活祭の時おいでになって、キュウリを半たる召し上がりましたよ……(ぶつぶつつぶやく)
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「よく降る雨だ。まだやまぬの」丈左衛門は所在なさに空を見上げてつぶやいた。「この雨の中を逃げた鷹はどこにどうしておることぞ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『ウム。怪しいぞ』とつぶやきつつれは第二の封筒の封を切った。中には一枚の紙片かみきれに楷書で筆太に、
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「別に入用なものでもありませんから……。」つぶやきながらわたくしは紙入をしまい風呂敷包をもとのように結んだ。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お延は妖婦に似もやらず、いつにない仏心ほとけごころを起して、しみじみとつぶやいていた。小六はせせら笑って、
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてしばらくして「殺されなくても皆死んで行く」宇治はこの言葉を自分に言いきかせるようにつぶやいていた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
と、秀吉は東浅井の半ばにもわたる辺土のいちめんな濛煙もうえんを見て、ふとくちをかむかの如くつぶやいて、
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「失恋したくらいで、気が違うものかな。」と、独り語のようにつぶやいた。と、辰子は静に眼を俊助の顔へ移して、
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「やあ、こんなところにいたのか。しょげちゃいけねえ。」とあの人の優しくつぶやく声がして、「どうなんだ。少しは、よくなったか?」
皮膚と心 (新字新仮名) / 太宰治(著)
三郎はその支那の君子人の言葉を水洟みずばなすすりあげながらつぶやき呟き、部屋部屋の柱や壁のくぎをぷすぷすと抜いて歩いた。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
けれども咽頭奥のどおくつぶやくような声がしているので鼈四郎べつしろうが耳を近付けてみると、うたを唄っているのだった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
バスは、ときどき揺れて、つぶやき声や、笑い声を乗客に立てさせながら、停留場毎に几帳面きちょうめんに、客を乗り降りさせて行く。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と私はひとりごとのようにつぶやき、やっと窓のカアテンに触って、それを排して窓を少しあけ、流水の音をたてた。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
父親はなんでもなさそうにつぶやきながら滝を見上げるのだ。それから二人して店の品物をまた手籠へしまい込んで、炭小屋へひきあげる。
魚服記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
資生堂でコーヒーを飲みながら兄さんは、「芹川の家には、淫蕩いんとうの血が流れているらしい。」とつぶやいたので、ぎょっとした。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「叔父さんに急いで来てもらうように、電話でそう言ってね……。」と、患者は囈言うわごとのようにつぶやいた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)