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厳
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おごそか
ふりがな文庫
“
厳
(
おごそか
)” の例文
旧字:
嚴
糸車をじい……じい……村も浮世も寒さに
喘息
(
ぜんそく
)
を病んだように響かせながら、猟夫に
真裸
(
まっぱだか
)
になれ、と歯茎を
緊
(
し
)
めて
厳
(
おごそか
)
に言った。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの沙門は悠々と
看督長
(
かどのおさ
)
の拝に答えてから、砂を敷いた御庭の中へ、恐れげもなく進み出て、こう
厳
(
おごそか
)
な声で申しました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
杉の葉の青きを
択
(
えら
)
んで、丸柱の太きを
装
(
よそお
)
い、
頭
(
かしら
)
の上一丈にて二本を左右より
平
(
たいら
)
に曲げて
続
(
つ
)
ぎ合せたるをアーチと云う。杉の葉の青きはあまりに
厳
(
おごそか
)
に過ぐ。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
卒業免状でも渡す時の様に、
声
(
こえ
)
厳
(
おごそか
)
に新郎新婦を呼び出して、テーブルの前に立たせた。
而
(
そう
)
して媒妁は自身愛読する
創世記
(
そうせいき
)
イサク、リベカ結婚の条を
朗々
(
ろうろう
)
と読み上げた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
昔から
厳
(
おごそか
)
に秘せられていた書が、
忽
(
たちま
)
ち目前に出て来た
状
(
さま
)
が、この語で好く
表
(
あらわ
)
されている。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
「いつからともなく柏屋の庭に、開けずの間という建物があって、一切人を内へ入れず、一切人を寄せ付けず、
厳
(
おごそか
)
に鎮座ましますと、世間の噂に立つようになったが、どう考えてもおかしいよ」
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
実
(
げ
)
に彼は火の
如何
(
いか
)
に
焚
(
も
)
え、如何に
燬
(
や
)
くや、と
厳
(
おごそか
)
に
監
(
み
)
るが如く
眥
(
まなじり
)
を裂きて、その立てる処を一歩も移さず、風と烟と
焔
(
ほのほ
)
との
相雑
(
あひまじは
)
り、
相争
(
あひあらそ
)
ひ、
相勢
(
あひきほ
)
ひて、力の限を互に
奮
(
ふる
)
ふをば、
妙
(
いみじ
)
くも
為
(
し
)
たりとや
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
人々は
厳
(
おごそか
)
にして清き父の名の下に
偏奇館吟草
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
と緒を手首に、
可恐
(
おそろし
)
い顔は
俯向
(
うつむ
)
けに、ぶらりと膝に飜ったが、鉄で鋳たらしいその
厳
(
おごそか
)
さ。逞ましい
漢
(
おのこ
)
の手にもずしりとする。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時の良秀には、何故か人間とは思はれない、夢に見る獅子王の怒りに似た、怪しげな
厳
(
おごそか
)
さがございました。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自分は老令嬢の態度が、いかにも、
厳
(
おごそか
)
で、一種重要の気に
充
(
み
)
ちた形式を具えているのに、
尠
(
すくな
)
からず驚かされた。K君は自分の
向
(
むこう
)
に立って、
奇麗
(
きれい
)
な
二重瞼
(
ふたえまぶち
)
の尻に
皺
(
しわ
)
を寄せながら、微笑を
洩
(
も
)
らしていた。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其状鎧を
被
(
かうぶ
)
り
幞頭
(
ぼくとう
)
を
冠
(
くわん
)
し手に
笏
(
こつ
)
を持る、顔貌も甚
厳
(
おごそか
)
ならず。造作の様頗る古色あり。豊岡八幡の社に
詣
(
いた
)
る。境中狭けれども一
茂林
(
もりん
)
なり。
茅茨
(
ばうじ
)
の鐘楼あり。一里卅丁板鼻駅、二里十六丁松井田駅なり。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そして
厳
(
おごそか
)
に冷やかに叫ぶがように云ったのである。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
直道は
先
(
ま
)
づ
厳
(
おごそか
)
に
頭
(
かしら
)
を
掉
(
ふ
)
りて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
第一、しかじかであるからと、
爺
(
じい
)
に聞いた伝説を、先祖の遺言のように
厳
(
おごそか
)
に言って聞かせると、村のものは
哄
(
どっ
)
と笑う。……若いものは無理もない。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やはり薄色の
袿
(
うちぎ
)
を肩にかけて、十文字の護符をかざしたまま、
厳
(
おごそか
)
に立っているあの
沙門
(
しゃもん
)
の異様な姿は、全くどこかの大天狗が、地獄の底から魔軍を率いて
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らして、その
行方
(
ゆくえ
)
を見つめていると、封じ込められた大気の
裡
(
うち
)
に、
鴎
(
かもめ
)
が夢のように
微
(
かす
)
かに飛んでいた。その時頭の上でビッグベンが
厳
(
おごそか
)
に十時を打ち出した。仰ぐと空の中でただ
音
(
おん
)
だけがする。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其
(
そ
)
の
形
(
かたち
)
の
厳
(
おごそか
)
なるは、
白銀
(
しろがね
)
の
鎧
(
よろひ
)
して
彼
(
かれ
)
を
守護
(
しゆご
)
する
勇士
(
いうし
)
の
如
(
ごと
)
く、
其
(
そ
)
の
姿
(
すがた
)
の
優
(
やさ
)
しいのは、
姫
(
ひめ
)
に
斉眉
(
かしづ
)
く
侍女
(
じぢよ
)
かと
見
(
み
)
える。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
日頃から老実な彼が、つつましく伏眼になつて、何やらかすかに口の中で
誦
(
ず
)
しながら、静に師匠の唇を
沾
(
うるほ
)
してゐる姿は、恐らく誰の見た眼にも
厳
(
おごそか
)
だつたのに相違ない。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「もしお前が黙つてゐたら——」と鉄冠子は急に
厳
(
おごそか
)
な顔になつて、ぢつと杜子春を見つめました。
杜子春
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蒸しものの菓子を紙に包んで、ちょっと頂いた処は
慇懃
(
いんぎん
)
で却って恐縮。納めた袋の緒を占めるのが
兜
(
かぶと
)
を取ったようで、
厳
(
おごそか
)
に居直って、
正午頃
(
ひるごろ
)
までに、見舞う約束が一軒。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「もしお前が黙っていたら——」と鉄冠子は急に
厳
(
おごそか
)
な顔になって、じっと杜子春を見つめました。
杜子春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この写真が、いま言った百人一首の歌留多のように見えるまで、御堂は、
金碧蒼然
(
きんぺきそうぜん
)
としつつ、漆と朱の光を沈めて、月影に青い
錦
(
にしき
)
を見るばかり、
厳
(
おごそか
)
に
端
(
ただ
)
しく、清らかである。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
緑青
(
ろくしょう
)
に
錆
(
さ
)
びたのがなお
厳
(
おごそか
)
に美しい、その翼を——ぱらぱらとたたいて、ちらちらと床にこぼれかかる……と宙で、
黄金
(
きん
)
の
巻柱
(
まきばしら
)
の光をうけて、ぱっと
金色
(
こんじき
)
に
飜
(
ひるがえ
)
るのを見た時は
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と同時に一瞬間、
厳
(
おごそか
)
な権威の
閃
(
ひらめ
)
きが彼の
醜
(
みにく
)
い眉目の間に
磅礴
(
ぼうはく
)
したように思われた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
威儀いかめしく
太刀
(
たち
)
を
佩
(
は
)
き、盛装して
出
(
い
)
づ。仕丁相従い
床几
(
しょうぎ
)
を
提
(
ひっさ
)
げ
出
(
い
)
づ。神職。
厳
(
おごそか
)
に床几に
掛
(
かか
)
る。
傍
(
かたわら
)
に仕丁
踞居
(
つくばい
)
て、
棹尖
(
さおさき
)
に
剣
(
けん
)
の輝ける一流の旗を
捧
(
ささ
)
ぐ。——別に老いたる仕丁。一人。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼が死んだ兄に似ていると思った眼で、
厳
(
おごそか
)
にじっと見たのである。
さまよえる猶太人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
片手を
膝
(
ひざ
)
に垂れた時、
早
(
は
)
や其の襖際に
気勢
(
けはい
)
した
資治
(
やすはる
)
卿の
跫音
(
あしおと
)
の遠ざかるのが、
静
(
しずか
)
に聞えて、もとの
脇廊下
(
わきろうか
)
の
其方
(
そなた
)
に、
厳
(
おごそか
)
な
衣冠束帯
(
いかんそくたい
)
の姿が——其の頃の
御館
(
みたち
)
の
状
(
さま
)
も
偲
(
しの
)
ばれる——
襖
(
ふすま
)
の
羽目
(
はめ
)
から
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
われ、その時、宗門の戒法を説き、かつ
厳
(
おごそか
)
に
警
(
いまし
)
めけるは
るしへる
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
礎
(
いしずえ
)
が動いたか、
四辺
(
あたり
)
の地勢が
露出
(
むきだ
)
しになったためか、向う上りに、ずずんと傾き、大船を取って一
艘
(
そう
)
頂に据えたるごとく、
厳
(
おごそか
)
にかつ寂しく、
片廂
(
かたびさし
)
をぐいと、山の
端
(
は
)
から空へ離して、
舳
(
みよし
)
の立った形して
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
厳
(
おごそか
)
に袖に
笏
(
しゃく
)
を立てて
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“厳(厳(姓))”の解説
厳(げん)は、漢姓の一つ。
(出典:Wikipedia)
厳
常用漢字
小6
部首:⼚
17画
“厳”を含む語句
荘厳
森厳
厳格
厳粛
厳重
厳寒
厳乎
端厳微妙
威厳
厳然
端厳
壮厳
厳冬
荘厳弥撒
峻厳
手厳
華厳経
崇厳
厳丈
宗厳
...