“停(とゞ)” の例文
夜(よる)の燭火(ともしび)は燃(も)え盡(つ)きて、嬉(うれ)しげな旦(あした)めが霧立(きりた)つ山(やま)の巓(いたゞき)にもう足(あし)を爪立(つまだ)てゝゐる。速(はや)う往(い)ぬれば命(いのち)助(たす)かり、停(とゞ)まれば死(し)なねばならぬ。
停(とゞ)めて川面(かはづら)を見やれば誠に魂を冷す關山とて峻(さか)しき坂あり一人此(こゝ)を守れば萬夫も越えがたしと見ゆる絶所にて景色(けいしよく)もよし車夫いろ/\名所話しを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
博士は中單(チヨキ)の鈕(ボタン)を嵌め掛けた手を停(とゞ)めて、聞耳(きゝみゝ)を立てた。この「どこか徃つてよ」には、博士は懲りてゐる。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
(御機屋の事初編に委しく記せり)手を停(とゞ)め居(を)れば日限に後(おく)る、娘はさらなり、双親(ふたおや)も此事を患(うれ)ひ歎(なげ)きけり。
停(とゞ)め相果(あひはて)たる赴き畢竟(ひつきやう)傍輩(はうばい)の心實より爲したる事實と相聞え加ふるに千太郎實父(じつぷ)吉兵衞外一同よりも助命を願ひ出又其方こと速(すみや)かに自訴(じそ)に及びし段神妙(しんめう)に付死一等を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
川岸端(かしつぷち)を急ぎ足で來たお品は、平次と八五郎の姿を見ると、足を停(とゞ)めて、さすがに胸を押へました。
鴫立沢(しぎたつさは)の夕暮に笻(つゑ)を停(とゞ)めて一人歎き、一人さまよふ武蔵野に千草の露を踏みしだき、果白河の関越えて幾干(いくそ)の山河隔たりし都の方をしのぶの里、おもはくの橋わたり過ぎ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
詩人は努力精進して別に深邃(しんすゐ)なる詩の法門をくゞり、三眛の境地に脚を停(とゞ)めむとして遽(には)かに踵(きびす)をかへされた。吾人は「寂寥」篇一曲を擁(いだ)いて詩人の遺教に泣くものである。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
赤塚氏例のごと見舞ひ給ひ、今日(けふ)陸にての買物のしくじりなど真面目(まじめ)に語られ候(さふらふ)。この夜中(よなか)には船の度度(たびたび)停(とゞ)まれるを感じ申し候(さふらふ)。ゆきちがひになる船のためにか候(さふら)ひけん。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
又泗流の停(とゞ)むるところとならなかつた。その本体は常に金剛不壊の姿を保持してゐた。愛を説きながら、かれは実は愛を離れ、人道を説きながら、実はかれは人道を離れた。
谷合の碧い空 (新字旧仮名) / 田山花袋、田山録弥(著)
かくて當日(このひ)は、二十里(り)近(ちか)く進(すゝ)んで日(ひ)が暮(く)れたので、夜(よる)は鐵車(てつしや)をば一(いち)大樹(だいじゆ)の下蔭(したかげ)に停(とゞ)めて、終夜(しうや)篝火(かゞりび)を焚(た)き、二人(ふたり)宛(づゝ)交代(こうたい)に眠(ねむ)る積(つもり)であつたが、怒(いか)り叫(さけ)ぶ猛獸(まうじう)の聲(こゑ)に妨(さまた)げられて
あゝ幸(さいはひ)ならんため生れながらの身と倶に行く魂よ、しばらく汝の歩履(あゆみ)を停(とゞ)めよ 四六—四八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
歩(ほ)を停(とゞ)めて、力量と堪忍とを楯に直立して、各方面を眺めたり。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
わたしを愛して停(とゞ)まるものであることを知つた。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
此突如たる光明(くわうみやう)に影も停(とゞ)まりつ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
停(とゞ)められたる我なれば
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
(御機屋の事初編に委しく記せり)手を停(とゞ)め居(を)れば日限に後(おく)る、娘はさらなり、双親(ふたおや)も此事を患(うれ)ひ歎(なげ)きけり。
此(この)高山(かうざん)は、風景(ふうけい)極(きわ)めて美(うる)はしく、吾等(われら)の達(たつ)したる頂(いたゞき)は、三方(さんぽう)巖石(がんせき)が削立(せうりつ)して、自然(しぜん)に殿堂(でんどう)の形(かたち)をなし、かゝる紀念塔(きねんたふ)を建(た)つるには恰好(かつこう)の地形(ちけい)だから、遂(つひ)に此處(こゝ)に鐵車(てつしや)を停(とゞ)めた。
停(とゞ)めやうの無い、恐ろしい破局で、平次も手を拱(こまぬ)いて見て居るばかりです。
木村、横山も亦此頃署名す。十六日より与党日々平八郎の家に会す。十七日夜平山陰謀を跡部に告発す。十八日暁(あけ)六時(どき)跡部平山を江戸矢部定謙の許(もと)に遣(や)る。堀と共に次日市内を巡視することを停(とゞ)む。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
不圖(ふと)四面打開きたる一帶の高地に出でゝわれは思はず足を停(とゞ)めぬ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
暫(しばら)く此処(ここ)に停(とゞ)まりつつあり。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
之(これ)からあんな深山幽谷(しんざんいうこく)に進入(しんにふ)するのは、却(かへつ)て危險(きけん)を招(まね)くやうなものだから、島(しま)の探險(たんけん)は一先(ひとま)づ中止(ちうし)して、兎(と)も角(かく)も再(ふたゝ)び海岸(かいがん)に皈(かへ)らんと踵(きびす)を廻(めぐ)らす途端(とたん)、日出雄少年(ひでをせうねん)は急(きふ)に歩(あゆみ)を停(とゞ)めて