修繕しゅうぜん)” の例文
ふたりはわくわくして修繕しゅうぜんにとりかかった。まったくゆめのような気持ちだ。自転車をなおしたことのない人にはとてもわかるまい。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
網は時々風にやぶれたりごろつきのかぶとむしにこわされたりしましたけれどもくもはすぐすうすう糸をはいて修繕しゅうぜんしました。
蜘蛛となめくじと狸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「いったい、だれが、修繕しゅうぜんしなければならぬのだろうかね。」と、清吉せいきちは、いいました。責任せきにんをもつものの怠慢たいまんがはらだたしかったのです。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
もしそうだとすると、修繕しゅうぜんの方法がないのだ。どうして外廓にひびがはいったのだろうか。やはり、あのときにちがいない。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
三人は修繕しゅうぜん中のサン・ドニの門をくぐって町の光のなかに出た。リゼットの疲れた胃袋に葡萄酒ワインがだぶついて意地の悪い吐気はきけが胴を逆にしごいた。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
地代だって先月からまた少しあがったし、それに税金やら保険料やら修繕しゅうぜん費用なんかで相当の金をとられているのだ。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
こうして、人のいやがる日光修繕しゅうぜんをしょわされちまった柳生藩、剣なら柳生一刀流でお手のものだが、これには殿様はじめ重役連中、額をあつめて
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
農閑のうかんなので、青年の夜学がはじまる。井浚いどざらえ、木小屋の作事さくじ、屋根のき更え、農具の修繕しゅうぜんなども、此すきにする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「遅い——といえば、ついどうも、仰せつけの鎧小貫よろいこざね修繕しゅうぜん、だんだん延び延びになりまして。何せい、このところ職人どもも手不足でございまして」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし出来るならば自分はこの楽器を修繕しゅうぜんさせ、母の命日にだれしかるべき人をたのんで「狐噲」の曲を弾かせてみたい、と、その時から津村はそう思いついた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ぼくらは船をたいせつにした、ただ一つの修繕しゅうぜん道具があれば、船はよういに手入れができ、いつでも島を去ることができるのだからね、船は命の親だからね
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「それはいけない。馬の脚だけはよしてくれ給え。第一僕の承認をずに僕の脚を修繕しゅうぜんする法はない。……」
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
農場のうじょうのせわもしなくなりましたし、なにもかも、ほったらかしておきました。家もれはてるにまかせて、修繕しゅうぜんもしませんでした。牝牛めうし牡牛おうしも売ってしまいました。
そして私が老らくの余生を生きるとき、ラジオや電蓄やテレビは一手で修繕しゅうぜんして貰いたい。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
勿論もちろんこれは雑作ぞうさいことですが、それには別室べっしつ修繕しゅうぜんようするとうそのことです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
別館の方への私の引越ひっこし、(今まで私の一人ひとりで暮らしていた、古いはなれが修繕しゅうぜんされ始めるので——)その次ぎの日の、その少女の父の出発、それからほかにはまだ一人も滞在客たいざいきゃくのないそんな別館での
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
二人ふたりが、はらっぱで、こんなはなしをしていたときでした。ちょうど達吉たつきち伯父おじさんは、まちの一けんいえへいって、こわれたといを修繕しゅうぜんしていました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてどこを修繕しゅうぜんすると住めるか、それもしらべて県へ報告しようじゃないですか、そうすれば、あの屋敷一軒だけで、県からこの村へ割当てしてきた部屋の広さは十分にあると思う
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
巨熊岩おおくまいわの下、砂場の上に、セルベン号の伝馬船てんませんがひきあげてある。これはいうまでもなく、海蛇うみへびらの船である。三人は船を検査するに、修繕しゅうぜんを加えれば、十分用にたえうるものであった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
左様さよう修繕しゅうぜんいたさなければならんでしょう。』と、院長いんちょうかんがえながらう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もはや修繕しゅうぜんの仕様も無い。時計のガラスなんか、どこにも売ってやしない。
薄明 (新字新仮名) / 太宰治(著)
『気に入らずば、修繕しゅうぜんの金はとらせる。そう怒るな。文句は、こうじゃ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
修繕しゅうぜんしたのか。うな、時計たな。」のそばの年った農夫がいました。わかい農夫は、も一度自分の腕時計に柱時計の針を合せて、安心あんしんしたようにふたをしめ、ぴょんと土間にはねりました。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
せい一のおかあさんは、よくこのみせへきて、せい一の洋服ようふく修繕しゅうぜんをおたのみになりました。ちょうど、その晩方ばんがたのことです。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)
片方は糸で修繕しゅうぜんした鉄ぶちの眼がねをかけ、スナップ三つあまくなった革のカバンをひざに乗せ、電車で、多少の猫背つかって、二日すらないあごの下のひげを手さぐり雨のちまたを、ぼんやり見ている。
HUMAN LOST (新字新仮名) / 太宰治(著)
ふたりは船へ帰って、一同にこのことをかたり、それから急に、修繕しゅうぜんにとりかかった。船はキールをくだかれ、そのうえに船体ががっくりと傾斜けいしゃしたものの、しかし風雨をふせぐには十分であった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
線路せんろ修繕しゅうぜんされて、やがて列車れっしゃは、いままでのように往復おうふくするようになりました。そのになって、ふたたびおなじような事件じけんかえされました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
工夫こうふは、野原のはらなかっている、電信柱でんしんばしらうえ仕事しごとをしていました。故障こしょうのある箇所かしょ修繕しゅうぜんしたのです。
頭をはなれた帽子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、そのおりのことです。ビルディングのエレベーターに故障こしょうができて、まってしまった。その修繕しゅうぜんには、五、六日間にちかんかかるそうです。やとにんたちは、あたまあつめて
夏とおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
輪車りんしゃ修繕しゅうぜんもしてもらえば、ゴムまりのパンクしたのをなおしてもくれました。また、そのいえゆうちゃんとはおともだちでもありました。おじさんは、いぬや、ねこがきでした。
海が呼んだ話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
またおとひとつこえてこない寂然しんとしたまちであります。また建物たてものといっては、いずれもふるびていて、こわれたところも修繕しゅうぜんするではなく、けむりひとつがっているのがえません。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに、この時分じぶん年寄としよりたちは、みんなんでしまいました。そして、わかひとたちの時代じだいになったとき、かねつきどう修繕しゅうぜんして、供養くようをし、おおぜいの人々ひとびとかねうごかしました。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もんのすきまからのぞくと、いえのほかに土蔵どぞうもあったけれど、ところどころ壁板しとみがはずれて、修繕しゅうぜんするでもなく、竹林ちくりんしたには、がうずたかくなって、くものもないとみえました。
武ちゃんと昔話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんどこれがれたら、あたらしくなさいと、ねんれて修繕しゅうぜんしてくださったおしりのところが、こんなにやぶれましたし、それに、きゅうからだおおきくなりましたので、あたらしくこしらえてやろうとおもいます。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)