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不忍
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しのばず
ふりがな文庫
“
不忍
(
しのばず
)” の例文
山城屋の夫婦はいつまでも子のないのを悲しんで、近所の
不忍
(
しのばず
)
の弁天堂に
三七日
(
さんしちにち
)
のあいだ
日参
(
にっさん
)
して、初めて儲けたのがお此であった。
半七捕物帳:13 弁天娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
女ノ女郎めが、
不忍
(
しのばず
)
弁天サマ裏ニテ、お参リノ途中、腰ニ結ンデおったる、シゴキを盗み取られたとなり。くやしいが、ベッピンなり。
右門捕物帖:28 お蘭しごきの秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そこから池之端へ出、
不忍
(
しのばず
)
の池の
畔
(
ほとり
)
をまわって、弁天の茶屋のほうへゆくあいだ、新八はうしろから、おみやの姿をつくづくと眺めた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
吹奏
(
なさり
)
まし、吹奏まし。何の貴女、
誰
(
た
)
、誰が咎めるもので。こんな時。……
不忍
(
しのばず
)
の池あたりでお聞き遊ばすばかりでございます。」
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
折柄
(
おりから
)
四時頃の事とて日影も大分
傾
(
かたぶ
)
いた塩梅、
立駢
(
たちなら
)
んだ樹立の影は
古廟
(
こびょう
)
の
築墻
(
ついじ
)
を
斑
(
まだら
)
に染めて、
不忍
(
しのばず
)
の池水は大魚の
鱗
(
うろこ
)
かなぞのように
燦
(
きら
)
めく。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
一、父は
不忍
(
しのばず
)
の某酒亭にて黒田藩の武士と時勢の事に
就
(
つき
)
口論の上、多勢に一人にて
重手
(
おもで
)
負い、無念ながら切腹し
相果
(
あいは
)
つる者也。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
かくして塔は
棟
(
むね
)
に入り、棟は
床
(
とこ
)
に
連
(
つら
)
なって、
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
の、
此方
(
こなた
)
から見渡す
向
(
むこう
)
を、右から左へ
隙間
(
すきま
)
なく埋めて、大いなる火の絵図面が出来た。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
東叡山を
削平
(
さくへい
)
して、
不忍
(
しのばず
)
の池を埋めると意気込み、西洋人の忠告によって思いとまった日本人は、其功利の理想を盛に
上方
(
かみがた
)
に実行して居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
福地源一郎君が
不忍
(
しのばず
)
の池のほとりに別荘を建てて日蓮上人の脚本を書いている。それを他から見るとたいそう風流に見える。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
黒い糸はその辺から右折して、電車通りを避けながら、上野公園
不忍
(
しのばず
)
池のそばを通って、ついに浅草公園裏通りに出た。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
に
泛
(
うか
)
ぶ弁天堂とその前の
石橋
(
いしばし
)
とは、上野の山を
蔽
(
おお
)
う杉と松とに対して、または池一面に咲く
蓮花
(
はすのはな
)
に対して最もよく調和したものではないか。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と
不忍
(
しのばず
)
の
池畔
(
いけのはた
)
へ出る。それから先は町家町で露路や小路が入り組んでいる、自由にまぎれて隠れることができる。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
酔った
紛
(
まぎ
)
れで掛合う積りでいると、其の内八ツの鐘がボーンと
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
に響いて聞えるに、女房は熱いのに戸棚へ入り、
襤褸
(
ぼろ
)
を
被
(
かぶ
)
って小さく成っている。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
父の通夜明けの春の宵に
不忍
(
しのばず
)
の蓮中庵ではじめて会った雛妓かの子とは、
殆
(
ほとん
)
ど見違えるほど身体にしなやかな肉の力が盛り上り、年頃近い本然の
艶
(
いろ
)
めきが
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
岡田の
日々
(
にちにち
)
の散歩は大抵道筋が極まっていた。寂しい無縁坂を降りて、
藍染川
(
あいそめがわ
)
のお歯黒のような水の流れ込む
不忍
(
しのばず
)
の池の北側を廻って、上野の山をぶらつく。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
不忍
(
しのばず
)
の池の
落口
(
おちぐち
)
になった橋の側まで往ったところで、ばかばかしくなって来たので、引返して帰って来た。
妖影
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
不忍
(
しのばず
)
の池、と或る夜ふと口をついて出て、それから、おや? 可笑しな名詞だな、と気附いた。これには、きっとこんな由来があったのだ。それにちがいない。
懶惰の歌留多
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
不忍
(
しのばず
)
の池へいつたのは知らないと言ひ、駒吉は、お吉が風呂場へ行つたのさへ知らないと言つてをります。
銭形平次捕物控:158 風呂場の秘密
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
どう、ここから池の端へ降りて、
不忍
(
しのばず
)
の池の橋を渡って、医科大学の裏の静かな道を一高の前へ出て、あすこで梅月の蜜豆を喰べて、追分のところで、別れるの。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
鳴き渡る音も
趣味
(
おもむき
)
ある
不忍
(
しのばず
)
の池の景色を
下物
(
さかな
)
のほかの下物にして、客に酒をば亀の子ほど飲まする
蓬莱屋
(
ほうらいや
)
の裏二階に、気持のよさそうな顔して欣然と人を待つ男一人。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そこは、三つばかりある高い
玻璃窓
(
ガラスまど
)
の一つを通して、
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
の方を望むような位置にある。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
大正四年の夏より秋に掛けて上野
不忍
(
しのばず
)
池畔に江戸博覧会なるものが催された。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
花時以外の
物見遊山
(
ものみゆさん
)
、春は亀戸の梅、天神の藤、四つ目の
牡丹
(
ぼたん
)
、夏は
入谷
(
いりや
)
の朝顔、堀切の菖蒲、
不忍
(
しのばず
)
の蓮、大久保の
躑躅
(
つつじ
)
、秋は
団子坂
(
だんござか
)
の菊、滝野川の紅葉、百花園の秋草、冬は枯野に雪見
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
二人の姿は、まもなく、
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
を見晴らした
蓮見
(
はすみ
)
茶屋に上がっていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三十年の新年に初めて新年宴会が
不忍
(
しのばず
)
弁天境内の岡田亭で催おされた。その時居士は車に乗って来会した。其村君が余興として軍談を語った。平生のドンモリに似合わず
黒人
(
くろうと
)
じみて上手に出来た。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そして、上野の
不忍
(
しのばず
)
の池の
畔
(
ほとり
)
に来たときに自然と二人の足は
停
(
と
)
まった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
不忍
(
しのばず
)
の池の溢れた水中をジャブジャブ漕いで、納涼博覧会などを見物し、折から号外号外の声
消魂
(
けたたま
)
しく、今にも東都全市街水中に葬られるかのように人を
嚇
(
おどか
)
す号外を見ながら、午前十一時五十五分
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
そしてこそこそとそこを立ちのいて
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
に出た。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
不忍
(
しのばず
)
ノ池の前に立ちぬ、坊や眺めてありぬ
夏の夜の博覧会は、かなしからずや
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
ここの娘は弁天様の申し子であったそうですが、ちょうど十八の時に
不忍
(
しのばず
)
の池に入って池の主の大蛇になったと言い伝えられています。
江戸の化物
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
連れて
不忍
(
しのばず
)
の
蓮見
(
はすみ
)
から、
入谷
(
いりや
)
の朝顔などというみぎりは、一杯のんだ
片頬
(
かたほお
)
の日影に、揃って
扇子
(
おうぎ
)
をかざしたのである。せずともいい真似をして。
栃の実
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
障子をもう一枚開け
拡
(
ひろ
)
げて、月の出に色も
潤
(
うる
)
みだしたらしい
不忍
(
しのばず
)
の夜の春色でわたくしの傷心を引立たせようとした逸作も
遂
(
つい
)
に
匙
(
さじ
)
を投げたかのように言った。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
に星が映り、絃歌が聞え、根津の裏町に蚊柱の立迷ふ頃、私は全く疲れて
家
(
うち
)
へ歸つて來た。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
雪もよいに曇った、午後の空を映して、
不忍
(
しのばず
)
の池は冷たく、
錆
(
さ
)
びたような光りを湛えている。
雪と泥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夕日は
室
(
へや
)
の
内
(
なか
)
に満ちた。庭に出て遊ぶ人も何時の間にか散って了った。
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
の方ではちらちら
灯
(
あかり
)
が
点
(
つ
)
く。私達は、半分死んでいる子供の傍で、この静かな夕方を送った。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「股を縛つた
扱帶
(
しごき
)
を搜せ。それから
遺書
(
かきおき
)
くらゐはあつたかも知れない、——
不忍
(
しのばず
)
の池が眼の前にあるんだ、石でも縛つて投り込まれた日にはちよいとすぐ見付けるわけにも行くまい」
銭形平次捕物控:158 風呂場の秘密
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
不忍
(
しのばず
)
の池を拭って吹いて来る風は、なまぬるく、どぶ臭く、池の
蓮
(
はす
)
も、伸び切ったままで腐り、むざんの醜骸をとどめ、ぞろぞろ通る夕涼みの人も間抜け顔して、疲労
困憊
(
こんぱい
)
の色が深くて
座興に非ず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
上野の山を黙々として歩いていた省三は、
不忍
(
しのばず
)
の弁天と向き合った石段をおり、ちょうど
動坂
(
どうざか
)
の方へ往こうとする電車の往き過ぎるのを待って、電車
路
(
みち
)
をのそりと横切り弁天の方へ往きかけた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
五月三十一日
紅緑
(
こうろく
)
上京。肋骨、
鼠骨
(
そこつ
)
と四人、
不忍
(
しのばず
)
、笑福亭に会す。
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
で
懸賞
(
けんしやう
)
づきの
不思議
(
ふしぎ
)
な
競爭
(
きやうさう
)
があつて、
滿都
(
まんと
)
を
騷
(
さわ
)
がせた
事
(
こと
)
がある。
彼
(
あ
)
の
池
(
いけ
)
は
内端
(
うちわ
)
に
𢌞
(
まは
)
つて、
一周圍
(
ひとまはり
)
一里強
(
いちりきやう
)
だと
言
(
い
)
ふ。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そうして江戸の客から聴いたことのある浅草の観音さまや、上野の桜や、
不忍
(
しのばず
)
の弁天さまや、そんな江戸名所のうわさなどを面白そうに男に話して聞かせた。
心中浪華の春雨
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
わたくしがこの言葉を逸作の口から
不忍
(
しのばず
)
の蓮中庵で解説されたときは、左程のこととも思わなかった。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その頃の
不忍
(
しのばず
)
の池は、月雪花の名所で、江戸の一角の別天地として知られました。
銭形平次捕物控:158 風呂場の秘密
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
不忍
(
しのばず
)
の弁天社へ橋が架ってから、
参詣
(
さんけい
)
人がふえたので、掛け茶屋の店を出したのが、しだいに大きくなり、家数も増して、いまではどの店にも若い女を置き、飲み食いもできるようになっていた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
すると、その憎らしい
幹
(
みき
)
の間から、向うに
見下
(
みおろ
)
す
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
一面に浮いている
破
(
や
)
れ
蓮
(
はす
)
の
眺望
(
ながめ
)
が、その場の対照として何とも云えず物哀れに、すなわち、何とも云えず
懐
(
なつか
)
しく、自分の眼に映じたのである。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そんなことが
不忍
(
しのばず
)
の池の
畔
(
ほとり
)
を歩いて行く彼の心を楽しくした。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その日より、人呼んで、
不忍
(
しのばず
)
の池。味気ない世の中である。
懶惰の歌留多
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「
其處
(
そこ
)
に
居
(
ゐ
)
る、……
其
(
そ
)
の
百日紅
(
さるすべり
)
の
左
(
ひだり
)
の
枝
(
えだ
)
だ。」
上野
(
うへの
)
の
東照宮
(
とうせうぐう
)
の
石段
(
いしだん
)
から、
不忍
(
しのばず
)
の
池
(
いけ
)
を
遙
(
はるか
)
に、
大學
(
だいがく
)
の
大時計
(
おほどけい
)
の
針
(
はり
)
が
分明
(
ぶんめい
)
に
見
(
み
)
えた
瞳
(
ひとみ
)
である。かゝる
時
(
とき
)
にも
鋭
(
するど
)
かつた。
湯どうふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その頃、下谷の
不忍
(
しのばず
)
の池浚いが始まっていて、大きな鯉や鮒が捕れるので、見物人が毎日出かけていた。
鯉
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
早瀬 ああ、行くが
可
(
い
)
い、ついで、と云っては失礼だが、お前
不忍
(
しのばず
)
まで行ってはどうだ。一所に行こうよ。
湯島の境内
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
不
常用漢字
小4
部首:⼀
4画
忍
常用漢字
中学
部首:⼼
7画
“不忍”で始まる語句
不忍池
不忍池畔
不忍弁天
不忍池漁