食卓しよくたく)” の例文
「あゝ奇麗きれいになつた。うもつたあときたないものでね」と宗助そうすけまつた食卓しよくたく未練みれんのないかほをした。勝手かつてはうきよがしきりにわらつてゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ロチスター氏が云つたやうに、お客は皆んな食堂で夕食ゆふしよくをとつてゐた。彼等はしかし食卓しよくたくには着いてゐなかつた——夕食は食器棚の上に並べてあつた。
がツかりしてかへつて、食卓しよくたくにつきながら、把手とつて一箇ひとつ家人かじんしめして、これがめて土偶どぐうかほでもつたら、昨日きのふ敗軍はいぐん盛返もりかへすものをとつぶやくと
のぱつちりしたうつくしい一おんなわたし食卓しよくたく向側むこうかわへ「どうぞ」とつて案内あんないしてくれたが、たれもまだはいつてこないので躊躇ちうちよしてゐるうちに、此方側こつちかわ左手ひだりて椅子いすることになつて
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
『イヤ、左樣さうではいです、秘密造船所ひみつざうせんじよ仕事しごとわたくし必要ひつえういなら、料理方れうりかたでもやります/\。』と决然けつぜん言放いひはなつと、此時このときまで食卓しよくたく一方いつぽうに、だまつてわたくしかほながめてつた武村兵曹たけむらへいそう
印度いんどうみけふもわたりて食卓しよくたく薯蕷汁とろろいひを人々たのしむ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
兄弟きやうだいくつろいでぜんいた。御米およね遠慮ゑんりよなく食卓しよくたく一隅ひとすみりやうした。宗助そうすけ小六ころく猪口ちよくを二三ばいづゝした。めしゝるまへに、宗助そうすけわらひながら
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二個の長い食卓しよくたくには、何かしらあたゝかい物のはひつてゐる鉢から煙が出てゐた。ところが、面喰めんくらつたことには、食慾を起させるどころか、大變な臭氣を發してゐた。
このにち運動うんどうは、ほねずいまで疲勞ひろうするやうかんじるのであるが、そのあらげたる破片はへん食卓しよくたくの一ぐうならべて、うして、一ぱいやるとき心持こゝろもちといふものは、んともはれぬ愉快ゆくわいである。
少年せうねんにまで寢太郎ねたらうられたかと、わたくしいそ清水しみづかほきよめ、兵曹へいそう案内あんないしたがつて用意ようゐ一室ひとまると、食卓しよくたく一端いつたんには、櫻木大佐さくらぎたいさは二三の重立おもだつた水兵すいへい相手あひてに、談話はなしふけつてつたが
臺所だいどころからきよて、らした皿小鉢さらこばち食卓しよくたくごといてつたあとで、御米およねちやへるために、つぎつたから、兄弟きやうだい差向さしむかひになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ミラア先生ではなく、上席の先生の一人で背の低い髮の毛の黒い人で、きちんとした服裝をしてゐたが、氣むづかしい顏付で、一つの食卓しよくたくの上座に坐つてゐた。
『や、寢※ねすぎたぞ。』といそ飛起とびおき、衣服ゐふくあらため、櫛髮くしけづりをはつて、急足いそぎあし食堂しよくどうると、壯麗さうれいなる食卓しよくたく正面しようめんにはふね規則きそくとしてれいのビールだる船長せんちやう威儀ゐぎたゞして着席ちやくせきし、それより左右さゆう兩側りやうがわ
自分はたゞ是等のひとと同じ食卓しよくたくで、うまさうに午餐ごさんあぢはつて見せれば、社交上の義務は其所そこに終るものと考へた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
食卓しよくたくは、人数にんず人数にんずだけに、左程大きくはなかつた。部屋のひろさに比例して、むしすぎる位であつたが、純白じゆんぱくな卓布を、取り集めた花でつゞつて、其中そのなか肉刀ナイフ肉匙フオークいろえてかゞやいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)