身軽みがる)” の例文
旧字:身輕
そして両者は、例の破られた窓のところへ近づいたと思うと身軽みがるにそれにとびつき、すばやく外へ出てしまったのであった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いくら、わたしが、身軽みがる方々ほうぼうびまわるからといって、どうして、うちなかのことまでがわかりましょう……。それは、無理むりというものですよ。」
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
身軽みがるくボートをとびおりた富士男は、腰刀を右手にぬき、左手に銃をにぎって、火光をたよりに灌木林かんぼくばやしをわけすすんだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いくらケメトスが身軽みがるだからといって、三百尺の上から飛び下りられるわけはありません。そんなことをしたら体が粉みじんになると言って、人々は口をそろえて止めました。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いつもならば、路銀だけを懐中ふところに残し、後の金は悉皆しっかい、長崎表へ為替かわせに組んで、身軽みがるになって江戸を立つ頃であったが、清吉は、五月になっても、まだ深川に日を暮していた。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えだから枝へうつるときはその羽をひらいたのさえわからないくらい早く、青ぞらをむこうへ飛んで行くときは一つのふるえる点のようだ。それほどこれらの鶯やひわなどは身軽みがるでよく飛ぶ。
その晩、大きな舞踏室ぶとうしつで、王女は影とダンスしました。王女も身が軽いのに、でも影はもっともっと身軽みがるで、こんなに身の軽い人をあいてに、王女はまだおどったことはありませんでした。
うまつたか、身軽みがるになつて、ちひさなつゝみかたにかけて、に一こひの、うろこ金色こんじきなる、溌溂はつらつとしてうごきさうな、あたらしいそのたけじやくばかりなのを、あぎとわらとほして、ぶらりとげてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼の髪の毛は鬘を冠ったように黒く、彼の肌膚はいつも真白で日に焼けると云う事を知りませんでした。彼のスラリとした精悍せいかんな手足は、一見して身軽みがるな運動に適して居る事を想わせました。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
庭の内では、の如く花の様な大小の雪片せっぺんが、んだり、ねたり、くるうたり、筋斗翻とんぼがえりをしたり、ダンスをする様にくるりとまわったり、面白そうにふざけ散らして、身軽みがる気軽きがるに舞うて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
うさぎやくまわかれると、金太郎きんたろう一人ひとりで、また身軽みがるにひょいひょいとたにわたったり、がけつたわったりして、ふかふか山奥やまおくの一軒家けんやはいっていきました。そこいらにはしろくもがわきしていました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
としころは三十ばかりには丸味まるみがかったそで浅黄あさぎ衣服いふくけ、そしてひざあたりでくくった、矢張やは浅黄色あさぎいろはかま穿き、あし草履ぞうり足袋たびった、はなは身軽みがる扮装いでたちでした。頭髪かみ茶筌ちゃせんっていました。
黄金メダルは春木少年の身体をはなれたので、彼は身軽みがるになった。彼は崖の小道を、すべるようにかけ下り、牛丸君の家の方へ走っていった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うしってしまって、百しょうは、まったく身軽みがるでありました。しかし、いままでは、たとえかれみちでないところをいこうとしても、うしあやしんで、まったままあるきませんでした。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
からかさはぐる/\とだんにかゝる、ともなく攀上よぢのぼるに不思議ふしぎはない。こまやかないろだんつゝんで、くもせたやうにすら/\とすべらしげる。はやい、身軽みがるなのが、案山子かゝしなかにもあるにこそ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、同時に、上からも身軽みがるにヒラリヒラリと飛びおりてきた蔦之助。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんなわけで、二つのおともだちは、どこへいったかとおもらしているのですが、あなたは、身軽みがる方々ほうぼうをおあるきなさいますが、おりにはなりませんか……。」と、街燈がいとうは、いいました。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
周到しゅうとう老臣ろうしんが、臨機神速りんきしんそくな手くばりに、石見守いわみのかみざめの驚愕きょうがくもややしずまって、ほッと、そこでむねをなでおろしたかと思うと、何者なにものであろうか、大廂おおびさしのそとがわからクルリと身軽みがるにかげをかすめて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つき光線こうせんは、身軽みがるにどんなせまいところへもくぐりみました。またどんなもののうえへもはいまわりました。こうして乞食こじきは、つきたすけによって、たくさんの宝物たからものひろあつめることができました。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きみたち、いらないものはて、ごく身軽みがるになっていくのだ。」
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)