あと)” の例文
山は二段になっていて、頂上に本統の城のあとがあるという話であったが、其処はおそろしくて、とても子供たちの行ける場所ではなかった。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
りや大層たいそう大事だいじにしてあるな」醫者いしやきたな手拭てぬぐひをとつて勘次かんじひぢた。てつ火箸ひばしつたあとゆびごとくほのかにふくれてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あゝピストイアよ、ピストイアよ、汝の惡を行ふことおのが祖先の上に出づるに、何ぞ意を決して己を灰し、あとを世に絶つにいたらざる 一〇—一二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
赤岸坡せきがんはから引っ返して、帰途、孔明の旧陣を見るに、出入りのあと、諸門衙営がえいの名残り、みな整々と法にかなっている。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(余芭蕉年表一名はせを年代記といふものを作せり、書肆しよしこくを乞ども考証未足ゆゑに刻をゆるさず)おきな身を世外せいぐわいおきて四方に雲水うんすゐし、江戸にあとをとゞめず。
城下から西北へ一里、鶴沼川つるぬまがわの近くに神指城趾こうざしじょうしがある、今はあとばかりがそれかと思われるのみ、越後街道えちごかいどうを行く人の眼に、土地の栄枯をわずかに語るに過ぎない。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
大和名所図会などにも、「菜摘の里に花籠はなかごの水とて名水あり、また静御前がしばらく住みし屋敷あとあり」
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すると石塁のあとのところで、とつぜん名を呼ばれ、立停って振返ると、そこにかよがいるので仰天した。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
苗木の城址じょうしはこれに対して高く頂上の岩層にうらびた疎林がある。日本唯一の赤壁せきへきの城のあとがあれだという。この淵のぬしである蟠竜ばんりゅう白堊はくあを嫌ったという伝説がある。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
霜の置いたかと許り明るい月光に、所々樺火かばびあとが黒く残つて、軒々の提灯や行燈は半ば消えた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
長者のむすめはじめ三人の沈んだ処は、福浦と云う処であった。浦戸港の入江に面した田圃たんぼの中には、そのあとだと云うはすの生えた小さな池があって、そこに三人を祭った小社こやしろがあった。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
次ぎに山形県では最上もがみの山寺のふもとに、一つの景政堂があってそこの鳥海とりのうみの柵のあとだといいました。権五郎が眼の傷を洗った池というのがあって、同じく片目の魚が住んでいました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
おもはずこゑだかにまけましよまけましよとあとふやうにりぬ、人波ひとなみにのまれて買手かひてまなこくらみしをりなれば、現在げんざい後世ごせねがひに一昨日おとつひたりし門前もんぜんわすれて、かんざしほん七十五せん懸直かけねすれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
満山隠然として喬木きょうぼく茂り、ふもとには清泉そそげる、村の最奥の家一軒そのあとに立ちて流れには唐碓からうすかけたる、これぞ佐太郎が住居なりき、彼は今朝未明に帰り来たり、夜明けたれど外にも出でず
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
四邊あたりは斷草離離としてあとを着くべき道ありとも覺えず、荒れすさぶ夜々の嵐に、ある程の木々の葉吹き落とされて、山は面痩おもやせ、森は骨立ほねだちて目もあてられぬ悲慘の風景、聞きしに増りて哀れなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
この村の昔の名主の屋敷あとで、かなりに広い平地一面に低い小笹がザワザワと生えかぶさっている。その向うの片隅に屋根が草だらけになって、白壁がボロボロになった土蔵が一戸前、朽ち残っていた。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
敗れたものはあとをとどめず滅び失せてしまう。
進化論と衛生 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
今にそのあとあり云々。
しか熊手くまでつめすみやかに木陰こかげつちあとつける運動うんどうさへ一は一みじかきざんでやうふゆ季節きせつあまりにつめたく彼等かれらこゝろめてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
(余芭蕉年表一名はせを年代記といふものを作せり、書肆しよしこくを乞ども考証未足ゆゑに刻をゆるさず)おきな身を世外せいぐわいおきて四方に雲水うんすゐし、江戸にあとをとゞめず。
斗樽とだるにはにごつたやうな甘酒あまざけがだぶ/\とうごいてる。神官しんくわんしろ指貫さしぬきはかまにはどろねたあとえて隨分ずゐぶんよごれてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞ此かげに遊びて風雨にやぶやすきをあいす「はせを野分のわきしてたらひに雨をきく夜哉」此芭蕉庵の旧蹟きうせきふか清澄町きよすみちやう万年橋の南づめむかひたる今或侯あるこう庭中ていちゆうに在り、古池のあと今に存せりとぞ。
眞急な崖へこぶのやうにいくつもぼくぼく出た所に、草鞋で踏んだ樣に土のついたあとがある。瘤へ手を掛け足を掛け登る。お秋さんはそこの窪みに獨で枯木をいて居た。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞ此かげに遊びて風雨にやぶやすきをあいす「はせを野分のわきしてたらひに雨をきく夜哉」此芭蕉庵の旧蹟きうせきふか清澄町きよすみちやう万年橋の南づめむかひたる今或侯あるこう庭中ていちゆうに在り、古池のあと今に存せりとぞ。