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さと
ふりがな文庫
“
覚
(
さと
)” の例文
旧字:
覺
……女がこのウイスキー入りの珈琲を紳士に勧めると、紳士は直ちに毒と
覚
(
さと
)
って引っくり返して、自分の鼻をかむハンカチで拭いた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と
睨
(
ね
)
め廻した時は、さしも戦い
下手
(
べた
)
の同勢も、非を
覚
(
さと
)
って形を変え、五弁の花が
芯
(
しん
)
をつつむように、この敵ひとりを囲み込んでいた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なに金があるばかりじゃない。一つは子供が多いからさ。子供さえあれば、大抵貧乏な
家
(
うち
)
でも陽気になるものだ」と御米を
覚
(
さと
)
した。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その人柄や言葉づかいや、すべての事から想像して、かれらがここらの裏家に住むべく育てられた人たちでないことは誰にも
覚
(
さと
)
られた。
平造とお鶴
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「そればかりは判りませんよ、いつでも手拭で
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして——誰かに後を
跟
(
つ
)
けられたと
覚
(
さと
)
ると、その逃げ足の早いということは——」
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
真暗になった
天
(
そら
)
から、パラパラと雨が落ちて来たのを
覚
(
さと
)
った時分に、船は大きな丘に持ち上げられるような勢いで
辷
(
すべ
)
り出しました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
リルケの「
Requiem
(
レクヰエム
)
」をはじめて手にして、ああ詩というものはこういうものだったのかとしみじみと
覚
(
さと
)
ったことがありました。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
この言葉にはわたくしの卒直な感情が一捻じ二捻じ三捻じと切なく
縒
(
よ
)
り捻じれているのですけれど、それを
覚
(
さと
)
りようもない池上は
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
且つ誤るということの不利損失を
覚
(
さと
)
らしめるのが本来の目的で、つまりは笑われることを
怖
(
おそ
)
れる人情を利用した設計のようである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
言いかえれば、彼女はもうとても私と逢うことは出来ないと
覚
(
さと
)
った。というのは、私が他に心を奪われることが
出来
(
しゅったい
)
していたからである。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
彼
(
かれ
)
は、
家
(
いえ
)
に
帰
(
かえ
)
ってから、
黙
(
だま
)
っている
牛
(
うし
)
が、なんでもよくわかっていることを
覚
(
さと
)
って、
心
(
こころ
)
から
自分
(
じぶん
)
の
悪
(
わる
)
かったことを
牛
(
うし
)
に
謝
(
しゃ
)
したといいます。
ある男と牛の話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
クリストフは少し心が静まると、眼を
拭
(
ふ
)
いて、ゴットフリートを眺めた。ゴットフリートは彼が何か尋ねたがってるのを
覚
(
さと
)
った。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と云われ白翁堂は委細承知と
請
(
うけ
)
をして寺をたち
出
(
い
)
で、
路々
(
みち/\
)
も
何
(
ど
)
うして和尚があの事を早くも
覚
(
さと
)
ったろうと不思議に思いながら帰って来て
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
金山寺屋音松は、忠相の
真意
(
しんい
)
を
覚
(
さと
)
り、人間忠相に触れたような気がして、もし相手がお奉行様でなければ、音松は起って行って
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
目には見えぬが、それと
覚
(
さと
)
られる疑心の渦はひたひたと
拡
(
ひろ
)
がって行った。高倉利吉の自決は云い換れば飢餓の宣言であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
今より
二九七
雄気
(
をとこさび
)
してよく心を
静
(
しづ
)
まりまさば、此らの
邪神
(
あしきかみ
)
を
逐
(
やら
)
はんに翁が力をもかり給はじ。ゆめゆめ心を静まりませとて、
実
(
まめ
)
やかに
覚
(
さと
)
しぬ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
それまでの叱責は自分の非力に起因していた。そこで文五郎氏も初めて師匠の偉さ、ありがたさを
覚
(
さと
)
ったというのである。
文楽座の人形芝居
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
恐らく伯父も既に死を
覚
(
さと
)
ったのであろう。そうして同じ死ぬならば、やはり自分の生れた東京で死にたかったのであろう。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
八重が何日も懐の中に入れて考えあぐんだ末のことであろうと
覚
(
さと
)
らされ、いねは瞬間に自分の気持が
不可抗
(
ふかこう
)
な力で決められてゆくように思えた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
とありしは自己の性質能力を
覚
(
さと
)
り、もって自己の使命の何たるを認識することで、世には人を
知
(
し
)
らざるを
患
(
うれ
)
うる者がある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
と安部君は一々材料を
指摘
(
してき
)
してくれたが、自分丈けは全然棚へ上げていた。「平凡人の平凡生活」を説く牧師にして
覚
(
さと
)
らざること尚おこの通りだ。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
肚でさとれ ただ頭で学ぶだけで、
肚
(
はら
)
で
覚
(
さと
)
らないからです。学者であって、覚者でないからです。とかく学者は学んだ智慧に囚われやすいのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
「——課長」吾妻の声は
震
(
ふる
)
へり「川地さん、——
然
(
し
)
かし篠田は
覚
(
さと
)
つて居るらしいのです、
慥
(
たしか
)
に覚つて居るらしいのです」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
肉の世の広きに恐るる事
勿
(
なか
)
れ。一度恐れざれば汝らは神の恩恵によりて心の眼さとく生れたるものなることを
覚
(
さと
)
るべし
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
宮は
忽
(
たちま
)
ち全身の血の氷れるばかりの寒さに
堪
(
た
)
へかねて
打顫
(
うちふる
)
ひしが、この心の中を
覚
(
さと
)
られじと思へば、弱る力を励して
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ジルノルマン老人のひそかな苦しみがいっそう増した
所以
(
ゆえん
)
は、彼がそれを全部胸のうちにしまい込んで少しも人に
覚
(
さと
)
られないようにしたからである。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
頽廃したものは興し、衰微したものは助け、各
檀家
(
だんか
)
のものをして祖先の霊を祭る誠意をいたすべきことを
覚
(
さと
)
らしめた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その間に、私は自分の性質や境遇が、政治的生活を送るに適しないということを
覚
(
さと
)
って、断然年来の志望を
抛
(
なげう
)
った。
「古琉球」自序
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
しかも僕は自分のこころを相手の幽霊に
覚
(
さと
)
らせるにとどまって、それを口へ出して言うわけにはゆかないのである。
世界怪談名作集:17 幽霊の移転
(新字新仮名)
/
フランシス・リチャード・ストックトン
(著)
そもそも俺のような
下品下生
(
げぼんげしょう
)
の男が、実理を
覚
(
さと
)
る手数を
厭
(
いと
)
うて空理を
会
(
え
)
そうなどともがき廻るから間違いが起る。そうだ、帰るのだ、やっと分ったよ。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
とても役にたつまいと
軽
(
かろ
)
しめられていた、宮内はそうした批評が、自分に下されていることを、勿論
覚
(
さと
)
っていた。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
ふとその点に気がついて『玉葉』『風雅』の二集を読まれる人があるならば、この自然の捕え方は、かつてなかった新手であることを
覚
(
さと
)
られるに違いない。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
これはわたくしを
庇
(
かば
)
うのではない。お雪が自らその誤解を
覚
(
さと
)
った時、甚しく失望し、甚しく悲しみはしまいかと云うことをわたくしは恐れて居たからである。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
が、自分は到底お前と別れ別れになっておるに忍びないことを
覚
(
さと
)
った。リッジーに対しても同様である。
臨時急行列車の紛失
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
我輩はこのカランの逸話を読んで、三十年来の誤信を
覚
(
さと
)
ったとき、つくづく吾人の知識の
恃
(
たの
)
み難きものなることを嘆じ、更に自疑反省の必要の大なること感じた。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
しかし男は
咄嗟
(
とっさ
)
の
間
(
あいだ
)
に、わたしをそこへ蹴倒しました。ちょうどその
途端
(
とたん
)
です。わたしは夫の眼の中に、何とも云いようのない輝きが、宿っているのを
覚
(
さと
)
りました。
藪の中
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ベアトリーチェは敏速な霊感で、彼と自分との間には越えることの出来ない暗い
溝
(
みぞ
)
が横たわっていることを早くも
覚
(
さと
)
った。二人は悲しそうに黙って、一緒に歩いた。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
もっとも謎の中心問題に関しては我々にも意見はあります、すなわち我々は一見して故伯爵には何か故障のようなものがあったんだなということをすぐに
覚
(
さと
)
りました。
作男・ゴーの名誉
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
鏡のことについてよく知っているおやじの奴めが嘲笑的な顔をしているのが、コスモにも
覚
(
さと
)
られた。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
而
(
しか
)
して其由来する所を
繹
(
たずぬ
)
れば、多くは自ら招くものなれど、事
茲
(
ここ
)
に至りては自ら其非を
覚
(
さと
)
ると
雖
(
いえ
)
ども、其非を改むる力なく、或は自暴自棄となりて
益
(
ますます
)
悪事を為すあり
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
その後も、小平太はできるだけ自分の心の
動揺
(
どうよう
)
を同志の前に隠すように
努
(
つと
)
めた。もっとも、彼が同志に心のうちを
覚
(
さと
)
られまいとするには、もう一つほかに理由があった。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
彼は、自分の俊三に対する
嫉妬
(
しっと
)
を恭一に
覚
(
さと
)
られないで、それをどうたずねたらいいかに苦心した。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
妃は従者一同の前で古腰巻を取り出し、これは誰の物と夫に問うと、王子一見して自分の窮状を知られたと
覚
(
さと
)
り、金儲けして帰ったと
詐
(
いつわ
)
りもいえず、大いに恥じ入った。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
人によるとすぐにその見やうを
覚
(
さと
)
る人もあるし、人によると幾度見ても立体的に見得ぬ人がある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
日本人は異人種の鈍い憎悪の為めに、
生命
(
せいめい
)
の貴さを
覚
(
さと
)
らない処から、廉価な戦死をするのだと云っている。
誰
(
たれ
)
の書物をでも見るが
好
(
い
)
い。殆ど皆そんな風に観察している。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
従ってわれらがなお安全と夢みたりしその前々日より大事は早くも破れ居たりしことを
覚
(
さと
)
りぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
労働階級は、君の場合のように、ハッキリ現われた場合だけ、資本制生産のために、その生命の危難に面するということを
覚
(
さと
)
るのだが、それは実はもうおそすぎてるんだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
私は其の男が春画売りか源氏屋に相違無い事を、屡々の経験から
直
(
ただ
)
ちに
覚
(
さと
)
る事が出来ました。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
……二人は雪の中で
素裸体
(
すっぱだか
)
にされて立たせられた。二人は、自分達が、もうすぐ射殺されることを
覚
(
さと
)
った。二三の若者は、ぬがした軍服のポケットをいち/\さぐっていた。
雪のシベリア
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
長順 ふむ、何を隠さう——
徒
(
いたづ
)
らに俗世間の義理人情に囚へられ、新しき教の心もえ
覚
(
さと
)
らぬ俗人
原
(
ばら
)
、あの老耄の痩首
丁切
(
ちよんぎ
)
り、吉利支丹宗へわが入門の
手土産
(
てみやげ
)
にな致さむ所存。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
覚
常用漢字
小4
部首:⾒
12画
“覚”を含む語句
目覚
幻覚
感覚
発覚
寝覚
眼覚
不覚
覚書
正覚坊
御覚
覚束
嗅覚
覚醒
正覚
触覚
覚悟
見覚
錯覚
自覚
覚明
...