見失みうしな)” の例文
だが、かれはこのあいだの戦争せんそうんだのではなかったかとがついたので、やすんだらこうとおもっているうち、その姿すがた見失みうしなってしまった。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
たうとう盲目めくらになつたペンペは、ラランの姿すがた見失みうしなひ、方角ほうがくなにもわからなくなつて、あわてはじめたがもうをそかつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
保名やすなはいつのにかきつね行方ゆくえ見失みうしなってしまって、心細こころぼそおもいながら、もりの中のみちをとぼとぼとあるいて行きました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おおぜいの人が通り道をふさいでつかまえようとしているのも見えた。わたしたちは牛を見失みうしなう気づかいはないと思ったので、すこし速力そくりょくをゆるめた。
男気おとこけのない奥庭おくにわに、次第しだいかずした女中達じょちゅうたちは、おれん姿すがた見失みうしなっては一大事だいじおもったのであろう。おいわかきもおしなべて、にわ木戸きどへとみだした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
きつて早くも人込ひとごみの中へ迯込にげこんだり軍平もあとより追駈おつかけけれども終に見失みうしなひ切たる片袖は軍平が手にのこりければ奧田が前へ持出もちいでて只今火附を捕へんとせし處斯の如く袖を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かばん脊負しよつてたのは木樵きこり権七ごんしちで、をとこは、おうら見失みうしなつた当時たうじ、うか/\城趾しろあと徉徜さまよつたのを宿やどつれられてから、一寸々々ちよい/\ては記憶きおくうちかげあらはす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
堂上どうじょう、世上の人々が、まったく義経の本心を見失みうしなって、ただ血眼ちまなこに騒いでいるのもむりなかった。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ポムペイの遺跡いせきやま中央ちゆうおうから南東なんとう九粁くきろめーとる遠距離えんきよりにあるが、これはそのときりつづいた降灰こうはひによつて全部ぜんぶ埋沒まいぼつせられ、その幾百年いくひやくねんあひだその所在地しよざいち見失みうしなはれてゐたが
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「よし、見失みうしなわないように追掛おっかけよう。……この潜水服は勿体ないが、ここに捨てておけ」
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「わしら、その子供こども見失みうしなってこまっております。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ケーは、このいぬはきっと旅人たびびとれてきたいぬであろう、それがこのまちなか主人しゅじん見失みうしなって、こうしてうろついているのであろうとおもいました。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おい、気をつけて、わたしの姿すたが見失みうしなわないように」と親方が注意した。けれどかれの注意は必要ひつようがなかった。
『お城趾しろあとはうつてはんねえだ。』とつてをとこ引取ひきとめました……わたくし家内かない姿すがたたかやま見失みうしなつたが、うも、むかふがそらあがつたのではなく、自分じぶん谷底たにそこちてたらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こうおもいながら、かたから、鉄砲てっぽうをはずして、弾丸たまをこめて、その足跡あしあと見失みうしなわないようにして、ついてゆきました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
にじつた中年増ちうどしまくもなか見失みうしなつたやうな、蒋生しやうせいとき顏色がんしよくで、黄昏たそがれかゝるもんそとに、とぼんとしてつてたり、くびだけしてのぞいたり、ひよいととびらかくれたり、しやつきりとつて引返ひつかへしたり
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すずめは、にものぐるいにんで、すいとくろくしげったかしのなかりると、もずはついにその姿すがた見失みうしなってしまったので、そばのたかいすぎのいただきりてまりました。
もずとすぎの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あのは、なんでいていたのだろう。母親ははおやにでもまぐれたのか、それとも、ともだちを見失みうしなったのか。よくそばへいって、いてみればよかった。」と、おじいさんは、ごろ
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、二人ふたりは、どこへいったものか、おじいさんは、見失みうしなってしまいました。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)