“裃:かみしも” の例文
“裃:かみしも”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治13
野村胡堂12
坂口安吾6
中里介山5
林不忘3
“裃:かみしも”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.6%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
日本の「つばき」の椿は日本製の字すなわち和字でそれはさかきとうげかみしもはたらくなどと同格である。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
羅衣うすものかみしも舶載織はくさいおりはかま、草履も笠も新しいのを出させ、岩間家の仲間ちゅうげんに、
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、一同の前に一つずつ、水をたたえたギヤマンの鉢が配られると、かみしもすがたの愚楽老人が、ちょこちょこ出てきた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
驚いた人々は、口をあいたまま、あっけにとられていたが、しかしまだ平常の謹直と、かみしもを着た気持から解かれることなく、
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時代の出語を見るに富本常磐津とみもとときわず太夫たゆうにはかみしもを着けず荒きしまの羽織を着たるものあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それに従う村じゅうの家々の代表者はみんなかみしもを着て、からかさほどに大きな菅笠すげがさのようなものをかぶっていた。
田園雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かみしもは取りましたが、紋附は血に汚れて、引寄せた一刀にツイ力瘤ちからこぶの入るのも妙に殺氣立つて見えます。
ちんの内から首をのばして、吉宗は、入口の数寄屋廂すきやびさしの下にうずくまっているかみしも姿をちらと見、
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「新調のご紋服や、かみしもが縫えて参りました。一度、お召しになってみるようにと、叔父御おじごや、親類の女どもが申しまする」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現れたところは堂々たるもの、立派なかみしもをつけ、テーブルには豪華な幕をかけて、雲月の幕にもひけをとらない。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
自分の君公くんこうからおふるかみしも頂戴ちょうだいするのは、昔では非常の恩誼おんぎとみなした。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かみしも姿の尾藤内記は、素長すながい顔を真青にしたまま忠之の眼の色を仰ぎ見た。そうして前よりも一層低く頭を板張りに近付けた。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自分等は鼻唄で通り越して置き乍ら、吾儕われ/\にばかりかみしもを着て歩けなんて——はゝゝゝゝ、まあ君、左様さうぢや無いか。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
鏡のような、静かな顔に、蒼白い笑みをうかべた伊賀のあばれン坊、かみしもの肩を片ほうはずして、握り太の鞭を、群衆の頭上にふるう。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
安部は、淋しいなとつぶやいていると、ステージの端のほうへかみしもを着た福助がチョコチョコと出てきて、両手をついてお辞儀をした。
予言 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
棺の中の主人は霰小紋あられこもんかみしもの胸から下が見えて、水晶の念珠が壇のあかりにキラキラと光ります。その時でした。
越前守は、そういって、用部屋へはいった。白洲に出るための制服——かみしも、袴に着更きかえるためであった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何を君は怒ってるんだ。君は日本にもう一度、丁髷ちょんまげかみしもを著せたくてしょうがないんだよ。」
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
口上言ひの玉六は、一寸法師といふほどではありませんが、ひどく小柄な男で福助かつらを冠つて、これもかみしもを着けてをりました。
中肉中背だがかみしもでもつけたように、おそろしく両肩が張っていて、瓢箪のように細長い顔は、へんに青白い。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
顔は薄皮うすかわ立って色が美しく、いまでも目をそばだたせるが、肩幅が張って上背が増し、キッタリとしてかみしものつきがよくなった。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それから、かみしも紋附の上に荒縄をかけられ、刑場へ引かれたが、この時、松陰は同囚等への告別のつもりで、自筆の「留魂録」の冒頭の歌、
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
昔ははかまかみしも素地きじとして主に織られましたが、今はほとんど皆襖地ふすまじであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
甲斐は頷いて、今日は継ぎかみしもでゆこう、と云った。御書状はこのまま使者に持たせていいか、と惣左衛門が訊き、甲斐は「よし」といった。
私も、いちど聞きに行つたが、まちの旦那たちが、ちやんとかみしもを着て、真面目に義太夫を唸つてゐる。
津軽 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
「いいえ、私が何かしようとすると、時々目の前へ出て来るんです。……かみしもを着た、頭の大きな、おかしな侏儒いっすんぼうしですがね。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
燕尾服えんびふくないしはかみしもという式作法は、最初から多数の参加断念者を予期していたのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夜目よめにもきらやかなかみしもすがた——そして朱房しゅぶさのついた丸紐まるひもを、むねのところでちょうにむすんでいるのは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
整然として薄ら明るく、墨繩すみなわで設計され、あたかもかみしもをつけたようにきちんとしている。
有平糖あるへいたうのやうなかみしもを着て、鼻の下に白粉を塗つたまゝ、手拭を首つ玉に卷いた姿で、ガラツ八の前へヒヨイとお辭儀をしました。
あの又平またへいが、一生懸命になって手水鉢ちょうずばちかみしもをつけた自画像を描きます。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「学校ぢやかみしもを着てゐるやうで、肩が凝つて窮屈でね。書生流にザックバランになりたいやね」
(新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
元来かみしもをつけての上の議論ではないのだから、どうかその心算つもりでお聴きを願ひたい。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
内匠頭はこのときも長かみしもにすべきか烏帽子に大紋にすべきかについて上野介に意見を求めた。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
継ぎかみしもを着た甲斐は、刀を右手に持ってあらわれたが、政右衛門を見ると首を左右に振った。
縫い上がって来たのを見ると、けばけばしい、小袖と、その上になるかみしもはかまは、おあつらえの浅黄繻子あさぎじゅすに金糸のい紋です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かみをチョンまげい、かみしもけ、二本さし、オランダへ行った。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大次郎はすぐに支度をして、さすがにかみしもは着ませんけれども、紋付の羽織袴というこしらえで、干菓子の大きい折をさゝげて、駕籠をよし原へ飛ばさせました。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その当日は数十けんの「筋目の者」たちは十六のきくのご紋章もんしょうの附いたかみしもを着ることを許され、知事代理や郡長等の上席にくのである。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一心斎は麻のかみしも鉄扇てっせんを持って首座の少し前のところへ歩み出る。
彼は草鞋を履き、かみしものやうな古めかしい背広服に顔色の悪い丸顔を載せて、零れた人々を一人づつめるやうな格巧をしながら、よろよろと彼を探し廻つてゐた。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
淺葱あさぎ帷子かたびらかみしも、威儀を正して控へた態度は、なか/\美男と言つてよく、こんな小屋に立たせて、藝當などをさせて置くのは惜しいくらゐです。
私たちはかみしもをつけて、太夫らしく他所よそ行きになって、泣いたり、大声を立てたりして見せる父に対し、一様にきまり悪さと楽しさとの混じった感情を抱いていた。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
かみしもの折目通りに手をつかえた。ジロリと流眄ながしめをくれた忠房は、
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松の内の登城ですから、無論式服、熨斗目のしめかみしも長袴ながばかま、袴のくくりは大玄関の板敷へ上がるとすぐに下ろしてすそを曳くのが通例でした。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
錦襴きんらんかみしもをつけた美しい娘手品師が、手を挙げれば手の先から、足をあげれば足の先から、扇子を開けば扇子から、裃の角からも、袴のひだからも水が吹き出す。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
畳に手を突いて動かない姿……かみしもこそきていないが、あの元日、御番部屋でそうして嘲弄ちょうろうを受けていた神尾喬之助と、その位置、その態度、寸分違わないのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
翌日の夕刻になると、羅門は、常になくいそいそとして、黒龍紋くろりゅうもんかみしもはかま身扮みなりも隙なく、若年寄小笠原左近将監の邸へ出向いて行った。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
館のあるじは正面の玄関に立った。手燭をささげた小間使が両側に控え、式台には、少しかたわらに寄って、かみしもに正装した神山外記が出迎えていた。彼は平伏して云った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
何だか馬鹿らしく滑稽で私はお湯の中で笑い出したけれど、今年の豆撒きにはイギリスとかアメリカの領事館か何かの人がかみしもを着て豆をまきに護国寺へ出かけたのだそうです。
「澤庵石だつて、格式があるんだね。かみしもでなくてまだ幸せだつたよ」
役の出先、かみしもをつけたままで鈴木安芸守が、神尾主膳に対面して、
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
道三は富田の正徳寺へ先着し、わざと古老の威儀いかめしいオヤジどもの侍ばっかり七八百人、いずれも高々とピンと張ったかみしも、袴、いと物々しく、お寺の縁へズラリ並ばせた。
織田信長 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
——なぜならばその人々は皆、白いかみしもを着、白い緒の編笠をかぶり、手に数珠じゅずを持って、まだ野辺の送りをすまして来た涙がかわかないでいる人たちであったから。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに、十七士の部屋は、静かだった。最後の食事をすまし、各〻、越中守の贈り物、自の小袖に、浅黄無垢あさぎむくかみしもをつけ、足袋、帯などつけているところなのである。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、驚愕の余りに、足駄を踏みすべらしてよろよろとなった大月玄蕃は、さすがにさっと血の気をなくして動顛どうてんしたが、咄嗟とっさかみしもの前をばらりッと刎ねて、
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれらの眼の前にはかみしもも見えなかった、大小も見えなかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かみしもの肘を平八文字に張って、忠相のひたいが畳にすりつく。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
——私は見ていたが——妙なもので、ここで鯨を売ればといっても、山車だしに載せてかみしもきもしまいし、あの、おいらんと渾名あだなのある海豚いるかを売ればといって
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一方はかみしもに威儀を正し、一方は振袖に綿帽子を被せました。
私は祖父の古い梨子地なしじかみしもというのも見ました。
虫干し (新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
再び軽い拍子木ひやうしぎおと合図あひづに、黒衣くろごの男が右手のすみに立てた書割かきわりの一部を引取ひきとるとかみしもを着た浄瑠璃語じやうるりかたり三人
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
胴服ともみえ、かみしもともみえ、羽織ともみえる物の上に、腰締こしじめをむすび、麻袴あさばかまをはき、足には、祭礼穿まつりばきの、新しい紙緒かみおのわら草履をはいている。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今の日本の書物はどことなくイギリスやアメリカくさいところがある、そして昔の経書や黄表紙がちょんまげやかみしもに調和しているように今の日本人にはやはりこれがふさわしいような気がする。
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
宅悦は猫を追った。其の途端に欄間の上から大きな鼠が猫をくわえて出て来たが、すぐ畳の上へ落とした。宅悦は嬰児を寝かすなり表へ走り出た。門の外には伊右衛門がかみしもをつけて立っていた。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
問屋といや九太夫くだゆうをはじめ、桝田屋ますだやの儀助、蓬莱屋ほうらいやの新七、梅屋の与次衛門よじえもん、いずれもかみしも着用に雨傘あまがさをさしかけて松雲の一行を迎えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
武家の着こんだかみしも、長袴をみごとに「野暮」と捨て去って、幡随院長兵衛のように鎗のふすまの中に、裸一貫でとび込んでいくあの意気、あれが新しき町人の人間像、一つの美の類型となっていくのである。
美学入門 (新字新仮名) / 中井正一(著)
おなじくお帳番ちょうばんのひとりとして、出仕しゅっしして間もない若侍わかざむらいである。かみしもの肩先が細かく震えているのは、武士らしくもない、泣いてでもいるのか、喬之助は顔も上げ得ない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
面白いのは、こういう黝んだ問屋の間に、汚点しみ抜き、染め更えしの染物店が混り、そこのショウウヰンドウには、流行の子供の袖無しちゃん/\こが飾ってあるかと思えば義太夫用のかみしもが飾ってあります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「あ、かみしもを着ていやがるぞ!」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
残ったのは、虫の食った挟箱はさみばこや、手文庫、軸の曲った燭台しょくだい、古風な長提灯ながちょうちん、色のせたかみしもといったような、いかにもがらくたという感じのするものばかりであった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それで見ると少年は、まだほんの十三、四さい、それでいて礼儀れいぎことばはまことに正しく、かみしもにみじかいかたなを二本しているすがたは、ゆめの国からきた使者ししゃのようである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
理由はいろいろありますが、その第一番に挙げられるのは、染五郎は跡取りには相違ないにしても、六兵衛のほんとうの子ではなく、わらの上から引取ったおいで、情愛の上にいくらかかみしもを着たものがあり
つまり雨宮紅庵のある隠された心の奥では、自分のこのたびの恋情が如何様いかように熾烈の度を加へるにしても、自分と女との交渉がこれまでのところあたかかみしもをつけた道学者の如く四角張つた身構えにあり
雨宮紅庵 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
学校へ行って文明を教わっている村の青年たちには、かみしもをつけて菅笠すげがさをかむって、無意味なような「ナーンモーンデー」を唱える事は、堪え難い屈辱であり、自己を野蛮化する所行のように思われたのである。
田園雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
見上げるような屋の棟や、そのいらかの上におおいかぶさった深い杉の森といい、昔かみしもを着けた御先祖が奥方や腰元や若党たちに見送られて供回り美々びびしく登城する姿なぞもそぞろにしのばれましたが
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
とくに息子らしい若衆は、髪をつややかなまげに結って、後世のかみしもに似る腰みじかな役者羽織を着、いうならば水もしたたる美貌の青年であったが、それも幾人かの目あきの者だけに、目をみはらせたのみである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
理由はいろ/\ありますが、その第一番に擧げられるのは、染五郎は跡取には相違ないにしても、六兵衞の本當の子ではなく、わらの上から引取つたおひで、情愛の上にいくらかかみしもを着たものがあり、第二番の直接原因は
それは障子の外に、物のくまのようにうずくまった総髪の中老人、霰小紋あられこもんかみしもを着て、折目正しく両手をついておりますが、前夜怪奇な行法をした、この薬園の預り主、峠宗寿軒に違いありません。
謹厳方直容易に笑顔を見せた事がないという含雪将軍が緋縅ひおどしの鎧に大身おおみの槍を横たえて天晴あっぱれな武者ぶりを示せば、重厚沈毅な大山将軍ですらが丁髷ちょんまげの鬘にかみしもを着けて踊り出すという騒ぎだ。
それは障子の外に、物のくまのやうに踞まつた總髮の中老人、霰小紋あられこもんかみしもを着て、折目正しく兩手をついて居りますが、前夜怪奇な行法をした、この藥園の預主、峠宗壽軒たうげそうじゆけんに違ひありません。
芝居道でいえば、「寺子屋」の春藤玄蕃しゅんどうげんばが赤いかみしもを着て威張ったり、「鎌倉三代記」の時姫がお振り袖をジャラジャラさせ、「妹背山いもせやま」の鱶七ふかしちが長裃を着けるのと、同じ筆法と御許しを願いたい。
ひょう、虎の革の半袴はんばかまは捨てて、正式の折目袴に、白綾しろあやの小袖、金糸の縫紋ぬいもん、そして濃い紫地に桐もようのかみしもを着け、帯びた小さ刀も、提げた太刀も、華奢きゃしゃ風雅男みやびおのすがただった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まことに能は、われ/\同胞の男性の美を最高潮の形において示しているので、その昔戦場往来の古武士が、風雨に曝された、顴骨の飛び出た、真っ黒な赭顔にあゝ云う地色や光沢の素襖や大紋やかみしもを着けていた姿は、いかに凜々しくも厳かであっただろうか。
陰翳礼讃 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あながかみしもを付けた四角四面の切口上きりこうじょうで応接するというわけではなかったが、態度が何となく余所々々よそよそしくて、自分では打解けてるツモリだったかも知れぬが、ひとには何時いつでも城府じょうふを設けてるように見えた。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そのとき玄関では、——かみしもの肩をはね、袴の股立をしぼった河内守忠挙が、片手にさやをはらった薙刀なぎなたを持ち、両足を踏みひらいた颯爽さっそうたる姿で、玄関の外へ詰めかけている伊達家の供の者たちに向かって、よくひびく高い声で叫んでいた。
それも大ありだが、私は二ツの屍体が天狗の面をかぶされていたのが奇妙だと気がついたね。天狗の奴は大きなドテラにかみしもの肩をつけたようなダブダブの変った着物をきていたがあの着物をきて、猿田の面をつけて、総髪にすれば、天狗の女房が亭主に化けていても分りやしないね。
舞台には華やかな牡丹燈籠が、二基がところ立ててあり、その背後うしろには季節にかなわせた、八橋の景が飾ってあり、その前に若い娘太夫が、薄紫熨斗目のしめの振袖で、金糸銀糸の刺繍をしたかみしも福草履ふくぞうりを穿いたおきまりの姿で、巧みに縄をさばいていた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「その藤六が、毎日見世物小屋へ来て、看板になっているんだが——何にも物を言わねえ、もっとも漁師の藤六に器用な口上は言えっこはないが、——金の茶釜を飾った舞台へ出て、かみしもを着て、あちらへ行ったり、こちらへ来たり、かごの中の軍鶏しゃもみたいに歩いてばかりいる」
再び軽い拍子木の音を合図に、黒衣くろごの男が右手の隅に立てた書割の一部を引取るとかみしもを着た浄瑠璃語じょうるりかたり三人、三味線弾しゃみせんひき二人が、窮屈そうに狭い台の上に並んでいて、ぐに弾出ひきだす三味線からつづいて太夫たゆうが声をあわしてかたり出した。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
第二図は頭巾ずきんかぶりしかみしもさむらい、町人、棟梁とうりょう、子供つれし女房、振袖ふりそでの娘、ものになふ下男など渡舟わたしぶね乗合のりあいたるを、船頭二人ふたり大きなる煙草入たばこいれをぶらさげへさきともに立ちさおさしゐる佃の渡しなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それが、——金ずくで動きの取れないようにされたとは言いながら、親孝行の見世物にまでされて、——私はなぶり殺しにされるようなおもいでしたよ、親分。——生れて始めてのかみしもなんか着せられて、猿芝居のお猿のように、百人千人の見物の前に、親孝行はこうでございと、この顔をさらす辛さを考えて下さい」
鼠木戸ねずみきどを二カ所につくって三方に桟敷をしつらえ、まンなかの空地へ鯨をころがしてこれを鯨幕で四方からかこい、いよいよ客がつまると一挙にぱッと幕を取りのけ、黒天鵞絨くろびろうど金糸きんし銀糸ぎんし鯨波げいはを刺繍したかみしもを着た美しい女の口上つかいが鯨の背に乗って口上をのべる。
高いところへ登って片足を撞木しゅもくにかけて逆さにぶらさがっているところ、かみしもを着て高足駄を穿いて、三宝さんぽうを積み重ねた上に立っている娘の頭から水が吹き出す、力持の女の便々べんべんたる腹の上で大の男が立臼たちうすを据えて餅を搗く、そんなような絵が幾枚も幾枚も並べられてある真中のところに、
イヤ実際、五百や六百石のこぼれまいを貰って朝夕糊付のりづけのかみしもで、寒中に足袋たび一つはくのにも、奉書のお届を出さなければ足袋がはけないなんていうような幕府勤めはまッぴらでござるよ。アハハハハハ。おう、それはさておき、法月氏のりづきうじ、江戸へお帰りになったからには、さだめし、お千絵殿とお逢いであろう。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)