トップ
>
表面
>
うわべ
ふりがな文庫
“
表面
(
うわべ
)” の例文
擦れ違った幾人かの行員たちの丁寧な会釈に対して
表面
(
うわべ
)
だけはいつもと変らぬ
鷹揚
(
おうよう
)
な会釈を返したことを、覚えているばかりであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その外
面
(
ま
)
のあたり人に
媚
(
こ
)
びて退いて人を
誹
(
そし
)
るとか、
表面
(
うわべ
)
で尊敬して
裏面
(
りめん
)
で
排撃
(
はいげき
)
するとか社会の人に心の礼のない事は歎ずるに余りあり。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
表面
(
うわべ
)
に正義とか人類のためとか云って、蔭では
獣
(
けもの
)
や悪魔の真似をするウルスター・ゴンクールを生きながら殺して
終
(
しま
)
うことでございます
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
表面
(
うわべ
)
は優しく見せかけても内心は
如夜叉
(
にょやしゃ
)
、総領の継子を殺して我が
実子
(
じっし
)
を相続人に据えようという怖しい
巧
(
たく
)
みがあったに相違ないのです。
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「いつまでも過ぎ去ったことにこだわっていて、
表面
(
うわべ
)
だけ平気な顔をしているのは、自分で自分をごまかしてるのと同じだわ。」
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
▼ もっと見る
と
種々
(
いろん
)
なことが
逆上
(
こみあが
)
って、咽喉の奥では
咽
(
むせ
)
ぶような気がするのを
静
(
じっ
)
と
堪
(
こら
)
えながら、
表面
(
うわべ
)
は陽気に面白可笑く、二人のいる前で、
前
(
さっき
)
言った
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
こんな
具合
(
ぐあい
)
で、
敦子
(
あつこ
)
さまは
人妻
(
ひとづま
)
となり、やがて
一人
(
ひとり
)
の
男
(
おとこ
)
の
児
(
こ
)
が
生
(
うま
)
れて、
少
(
すくな
)
くとも
表面
(
うわべ
)
には
大
(
たい
)
そう
幸福
(
こうふく
)
らしい
生活
(
せいかつ
)
を
送
(
おく
)
っていました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
それはただ
表面
(
うわべ
)
から観察しただけでも分るですが、実際は全く妙な事が行われて居ますので、折々嫌な事を沢山耳にしたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
高潔な人間ともてはやすのも
表面
(
うわべ
)
だけで、その実、高潔な人間を尊敬している訳ではない。いや、もうそろそろ悪党を駆りだしてもいい頃だ。
死せる魂:02 または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
彼女が
表面
(
うわべ
)
は偏屈ではあるが、その実は、自分たちが失ってしまった若さに対して、自分たちがかつて持ったことのなかった美しさに対して
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
妾
(
わたくし
)
一人だと買物をするのに何だか
定
(
きま
)
りが付かなくって困りますのよ。
表面
(
うわべ
)
丈
(
だけ
)
でもいゝからいゝとか何とか
合槌
(
あいづち
)
を打って下さる方が欲しいのよ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
何
(
なん
)
でも不器用に造るが
宜
(
い
)
い、見かけが器用に出来た物に
永持
(
ながもち
)
をする物はない、永持をしない物は道具にならないから、
表面
(
うわべ
)
は
不細工
(
ぶざいく
)
に見えても
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この
表面
(
うわべ
)
のにぎやかさにかかわらず、強い
嵐
(
あらし
)
を待ち受けるような気味の悪い静かさが次第に底の方で街道を支配し始めた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
表面
(
うわべ
)
は広がっていて、五六人も乗れるが、底の方はすぼがっていて、そこにたくさんのいもりがおるんだそうですよ。
不思議な国の話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
あんたも社会の
表面
(
うわべ
)
の綺麗ごとばかし見ずに、ああいう男の話を聴いて、裏面も書いて見たらいい小説が生れるがなア
世相
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
そのくせ
表面
(
うわべ
)
では事務長の存在をすら気が付かないように振る舞った。ことに葉子の心を深く傷つけたのは、事務長の
物懶
(
ものう
)
げな無関心な態度だった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その当然の結果として、
表面
(
うわべ
)
には差別的のことが少くなりましたが、しかしそれは多くの場合において、真にこれを理解した結果からではありません。
融和促進
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
浅薄
(
あさはか
)
な
表面
(
うわべ
)
の装飾や
衒
(
てら
)
いでなく、全人格を挙げて立派に装飾し、それを女子の誇とするように
力
(
つと
)
めねばなりません。
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
表面
(
うわべ
)
は円転滑脱の八方美人らしく見えて、その実椿岳は容易に人に
下
(
くだ
)
るを好まない
傲岸
(
ごうがん
)
不屈の
利
(
き
)
かん
坊
(
ぼう
)
であった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
と宵よりありし事柄を落も無くいうてのくれば、銀平はしてやったりと
肚
(
はら
)
に笑みて、
表面
(
うわべ
)
にますます容体を飾り
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
室の中の物音や、煩わしい注意や、
表面
(
うわべ
)
ばかりの悲嘆や……
厭
(
いや
)
ですわ。一人ぽっちで死ぬほうがましですわ。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
近頃の三人の心は、次第次第に離れて行くことを意識しながらも、妙な我慢と意地で、子供の時からの仲を
表面
(
うわべ
)
だけ続けているといった方がよかったでしょう。
銭形平次捕物控:086 縁結び
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
されども世俗の
見解
(
けんげ
)
には
堕
(
お
)
ちぬ心の明鏡に照らしてかれこれともに愛し、
表面
(
うわべ
)
の美醜に露
泥
(
なず
)
まれざる上人のかえっていずれをとも昨日までは
択
(
えら
)
びかねられしが
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
僕はそのほうが嬉しいくらいですよ……あなたは
表面
(
うわべ
)
こそ小さな女の子のように笑っていられるが、心のなかには
殉教者
(
じゅんきょうしゃ
)
の考えをもっていられるのだからね……
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「いや、たつてといふわけぢやないんだ」と、紅庵は再び
表面
(
うわべ
)
だけもぢ/\とためらふ
気振
(
けぶり
)
をみせたが
雨宮紅庵
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
……都の
人間
(
ひと
)
達がどんなに汚れ切っているか。
表面
(
うわべ
)
ばかり華かな文化に飾られ、
優雅
(
ゆうが
)
な装いに塗りかくされてはいるけれど、人間達はみな
我利私慾
(
がりしよく
)
に
惑
(
まよ
)
っている。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
私はその
返辞
(
へんじ
)
を見て、コリャどうも
仕様
(
しよう
)
がない、
表面
(
うわべ
)
には開国を装うて居るも、幕府は真実自分も攘夷が
為
(
し
)
たくて
堪
(
たま
)
らないのだ、
迚
(
とて
)
もモウ手の
着
(
つ
)
けようのない政府だと
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
表面
(
うわべ
)
にあらわれたことだけで世の中は簡単に解釈されていく。打ち明けて心の底を語らなければ、——いや心の底をくわしく語っても、他人はその真相を容易に解さない。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
おさよが私を抱いて
赤児
(
あかんぼ
)
扱いにするのを私は
表面
(
うわべ
)
で嫌がりながら内々はうれしく思い、その温たかな柔らかい
肌
(
はだ
)
で押しつけられた時の心持は今でも忘れないのでございます。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それでいて、また、子路ほど全身的に孔子に
凭
(
よ
)
り掛かっている者もないのである。どしどし問返すのは、心から
納得
(
なっとく
)
出来ないものを
表面
(
うわべ
)
だけ
諾
(
うべな
)
うことの出来ぬ性分だからだ。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
お前は己が愛をも
憎
(
にくみ
)
をも
閲
(
けみ
)
して来たように思うであろうが、己はただの一
度
(
ど
)
もその味を真から
嘗
(
な
)
めた事がない。つい
表面
(
うわべ
)
の見えや様子や、空々しい
詞
(
ことば
)
を交して来たばかりだ。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
「しかし三郎への手前があるから、
表面
(
うわべ
)
は少しも動じない積りだったが、争われないものさ。通り過ぎると間もなく、足がガクッとして、すんでのことに転ぶところだった」
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
女給さんの方がとにかく
表面
(
うわべ
)
だけは
素人
(
しろうと
)
なんですからね。何をするにも
胡麻化
(
ごまか
)
しがききますよ。わたし、つくづくそう思っているのよ。わたしの家のすぐ
隣
(
となり
)
が待合さんなのよ。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
金は時たま三十四十と
攫
(
つか
)
んでは来るが、
表面
(
うわべ
)
に見せているほど、内面は気楽でなかった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いかなる詩聖の言葉のかげにも又いかばかり偉大な音楽家の韻律のかげにもたとえ
表面
(
うわべ
)
は舞い狂う——笑いさざめく
華
(
はなや
)
かさがあってもその見えない影にひそむ尊い悲しみが人の心を
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
悲しさ怕さ口惜しさの乙女心に染こみて、よしさらば我れも父の子やりてのくべし、惡ならば惡にてもよし、善とはもとより言はれまじき素性の
表面
(
うわべ
)
を温和につゝんでいざ一と働き
暗夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
自制していて
表面
(
うわべ
)
だけはあくまでも冷静で、この人の心には何を思っているのかとうかがうのに苦しむほどであったが、感情に負けるところがあって、あまりに彼は弱い男であった
源氏物語:36 柏木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
しかも、そのくせ
表面
(
うわべ
)
はと云えば、いかにも美しくいかにも
華麗
(
はなやか
)
に、質朴で正直な田舎の人を誘惑するように出来ております。……それに反してこの笹の平は何んという結構な所でしょう
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
事実、重要なほうの知識となると、それはいつも
表面
(
うわべ
)
にあるものだと僕は信じる。深さは、真理を探し求める渓谷にあるのであって、その真理が見出される
山巓
(
さんてん
)
にあるのではない
(11)
。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
孔夫子はふだん彼を他の門人なみに取扱っているように見えるが、それは恐らく
表面
(
うわべ
)
だけのことだろう。かげではきっと、他の門人たちに教えないことを、彼にだけ教えているに相違ない。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「そいつは
表面
(
うわべ
)
のことなんだ、内実は
穢多
(
えた
)
のために生捕られたという評判よ」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いいえ、僕の頭は、足と少しも変りがない程俗物です。僕は、それだから、ただ
表面
(
うわべ
)
だけのことで、他人からロマンティストとして見て貰えるような、或る種の作法とでも云ったようなものを
浪漫趣味者として:―― Ibi omnis effusus labor ! ――
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
お前と私の似ているのはほんの
表面
(
うわべ
)
だけで、私たちの意見が一致する時でも、私が主として感情からはいって行っているのに、お前の方はいつも理性から来ていると云う相違に気がつきだした。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
仏教は、この隠れていても実は私達の日常見聞する現実のあらゆるものをあやつっている根本をも、一緒にくっつけて現実を見詰めるのですから、
表面
(
うわべ
)
だけの変化や矛盾撞着に
瞞着
(
だま
)
されません。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
文明や権威の土台をほじくり返す、他人の祭壇の下をほじくり返す、泥をはねかす、おどけた横眼を使って見せる。それもただ、自分の懦弱さや
精神
(
モラル
)
の貧窮を押し匿し
表面
(
うわべ
)
を繕いたいばかりにね。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
黒っぽい地色に、三十六、七の女でも着るような柄のわるい地味な
格子縞
(
こうしじま
)
であった。それを見て私はがっかりした。けれど
表面
(
うわべ
)
ではやはり「ありがとう」というお礼を言わなければならなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
ああいう人たちは
表面
(
うわべ
)
だけ変なことをしてみたがるものだ。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「
表面
(
うわべ
)
は癒ったようでも、しんに悪い所があって、それが一度にどっとひどくなることがあるものですよ。注意してあげなければいけません。」
変な男
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
そうして大神宮のお
札
(
ふだ
)
売りか、大道易者にでも捕まったように、
表面
(
うわべ
)
では尊敬して、内心では大いに軽蔑した表情をする。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
こういう混雑の
最中
(
さなか
)
ですから随分
喧嘩
(
けんか
)
が起らなくてはならんはずですが、
奇態
(
きたい
)
にこの場合には喧嘩をしない。
表面
(
うわべ
)
だけは誠におとなしくやって居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
“表面”の解説
表面(ひょうめん、en: surface)は、
物体の内部と外部との境界をなす面。
表裏がある物体について、表側の面。
(出典:Wikipedia)
表
常用漢字
小3
部首:⾐
8画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“表面”で始まる語句
表面採集
表面近