行水ぎやうずゐ)” の例文
けると、多勢おほぜい通學生つうがくせいをつかまへて、山田やまだその吹聽ふいちやうといつたらない。ぬえいけ行水ぎやうずゐ使つかつたほどに、こと大袈裟おほげさ立到たちいたる。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
馬方うまかたひますと、うま片足かたあしづゝたらひなかれます。うま行水ぎやうずゐわらでもつて、びつしよりあせになつた身體からだながしてやるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
夕方ゆふかたになると竹垣たけがきに朝顔のからんだ勝手口で行水ぎやうずゐをつかつたのちのまゝ真裸体まつぱだか晩酌ばんしやくを傾けやつとの事ぜんを離れると、夏の黄昏たそがれ家々いへ/\蚊遣かやりけむりと共にいつか夜となり
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「はつと思つたが、あの蝠女ふくぢよといふのが見張つて居て、暫らく動けやしません。我慢をして、ヂツと物蔭から見て居ると、大膳坊は引つ込んで、今度は蝠女の行水ぎやうずゐが始まつた」
はやくお這入はいりといふに太吉たきちさきてゝ源七げんしち元氣げんきなくぬつとあがる、おやおまへさんおかへりか、今日けふんなにあつかつたでせう、さだめてかへりがはやからうとおもうて行水ぎやうずゐかしておきました
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二時やつさがりに松葉まつばこぼれて、ゆめめて蜻蛉とんぼはねかゞやとき心太ところてんおきなこゑは、いち名劍めいけんひさぐにて、打水うちみづ胡蝶てふ/\おどろく。行水ぎやうずゐはな夕顏ゆふがほ納涼臺すゞみだい縁臺えんだい月見草つきみさう
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とうさんは馬方うまかたうちまへつて、たのしさうに行水ぎやうずゐをつかつてもらつてうまながめました。そして、うま行水ぎやうずゐはじまる時分じぶんにはやまなかむら夕方ゆふがたることをりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それうち竹垣たけがきあひだからは夕月ゆふづき行水ぎやうずゐをつかつてゐる女の姿すがたの見える事もあつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「いえ早い方で、毎晩入るから。——俺のはからす行水ぎやうずゐだ——と申して居りました」
もツとのこれからふゆになりましてやま宛然まるでこほつてしまひ、かはがけ不残のこらずゆきになりましても、貴僧あなた行水ぎやうずゐあそばした彼処あすこばかりはみづかくれません、うしていきりがちます。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬方うまかたうまめまして、うま脊中せなかにあるくらをはづしてやつたりうまかほでゝやつたりしました。それから馬方うまかたおほきなたらひつてまして、うま行水ぎやうずゐをつかはせました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
南冥なんめいへ行くんだ。天池てんちともいふ。——其處にほうといふ鳥が行水ぎやうずゐを使つてゐる」
一人ひとりはふしていたところで、留守るすやまからさるて、沸湯にえゆ行水ぎやうずゐ使つかはせる憂慮きづかひけつしてないのに、たれかついてらねばとなさけから、家中うちぢう野良のらところを、よめ一人ひとりあとへのこして
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天上てんじやうか、奈落ならくか、山懷やまふところ大釜おほがまのまゝに、すごいほど色白いろじろをんな行水ぎやうずゐする姿すがたた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
臺所だいどころせま張出はりだしで、おさんはれてから自分じぶん行水ぎやうずゐ使つかつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)