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薊
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あざみ
ふりがな文庫
“
薊
(
あざみ
)” の例文
「金沢町の江島屋——此間
薊
(
あざみ
)
の三之助が殺された場所、今度は塀の下の、
犬潜
(
いぬくぐ
)
りの穴に首を突っ込んだ伊保木金太郎がやられましたよ」
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
匕首
(
あいくち
)
をつかみ、解けかけた帯の端を左の手で持ちながら、
薊
(
あざみ
)
の芳五郎は、
脱兎
(
だっと
)
のように、
木場
(
きば
)
の材木置場の隅へ逃げこんで行った。
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雲仙には
薊
(
あざみ
)
谷、
鬼神
(
きじん
)
谷のような、上から
見下
(
みおろ
)
して美しい渓谷はあるが、渓谷それ自らの内部にこれほどの美を包容する渓谷はない。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
『潮來出島の眞菰のなかで』といふ眞菰や蒲の青々した蔭にはあやめはやゝ時過ぎてゐたが、
薊
(
あざみ
)
の花の濃紫が雨に濡れて咲き亂れてゐた。
樹木とその葉:08 若葉の頃と旅
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「
爾
(
なんじ
)
我言に背いて禁菓を食ひたれば、土は爾の為に
咀
(
のろ
)
はる。土は爾の為に
荊棘
(
いばら
)
と
薊
(
あざみ
)
を生ずべし。爾は額に汗して苦しみて爾のパンを
食
(
くら
)
はん」
草とり
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
……あなたはここをお立ちになると、もうその時から、私なぞは、山の鳥です、野の
薊
(
あざみ
)
です。
路傍
(
みちばた
)
の
塵
(
ちり
)
なんです。見返りもなさいますまい。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ただ女神にそういわれて撫でさすられた空骸は、土に還ると共に、そこからはこけ桃のような花木、
薊
(
あざみ
)
のような花草が生えた。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
爾
(
なんじ
)
我言に背いて
禁菓
(
きんか
)
を
食
(
く
)
いたれば、土は爾の為に
咀
(
のろ
)
わる。土は爾の為に
荊棘
(
いばら
)
と
薊
(
あざみ
)
を
生
(
しょう
)
ずべし。爾は額に汗して苦しみて爾のパンを
食
(
くら
)
わん」
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
なかの一人は
薊
(
あざみ
)
に這いのぼった、薊はぐるぐる揺れ、その人はぱたんと露の玉のように地におちて、いたそうに泣き出した。
琴
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
クレーヴンは手斧を握りしめて前へ進みよった。
薊
(
あざみ
)
の頭が彼にさわった。またもやはっとした彼は思わずたじたじとなった。
作男・ゴーの名誉
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
薊
(
あざみ
)
も長い間の押し問答の、石に
釘
(
くぎ
)
打つような不快にさっきからよほど
劫
(
ごう
)
が沸いてきてる。もどかしくて堪らず、酔った酒も
醒
(
さ
)
めてしまってる。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そうだ、僕が、生れてはじめて、アテチョック(アルティショー—食用
薊
(
あざみ
)
)ってものを食ったのは、神戸の弘養館だった。
神戸
(新字新仮名)
/
古川緑波
(著)
あらゆる花は皆此處に集まりながら
薊
(
あざみ
)
の缺けたるぞ飽かぬ心地する。赤き薄赤き紫なる薄紫なる、薊程美しき花は無きに。
花枕
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
四隅
(
よすみ
)
に
花壇
(
かだん
)
があって、ゆすらうめ、
鉄線蓮
(
てっせんれん
)
、おんじ、
薊
(
あざみ
)
、ルピナス、
躑躅
(
つつじ
)
、いちはつ、などのようなものが植えてあった。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
大木には蔦が青々と萌え、切株をとりまいて
歯朶
(
しだ
)
が生えている。毛虫だっているのである。そうして
薊
(
あざみ
)
の葉の蔭に、狸が眼を開けているのである。
畳まれた町
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
薊
(
あざみ
)
の咲き出したばかりの紅紫と白の光沢、それらをまた驚き
乍
(
なが
)
ら、時時には籠に入れて、蜜柑を吸ひ吸ひあるいて行く。
蜜柑山散策
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
此辺までは大木が茂って下草は余り生えていなかったが、此処から頭の上が透いて
薊
(
あざみ
)
や
木苺
(
きいちご
)
が所嫌わず生えているので、手足がチクチク刺される。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
錆
(
さ
)
びた針金のように立ち枯れた、
薊
(
あざみ
)
や灌木の棘が、冷たい脛をさいなむ。大井川の椹島に下る道も荒れるにまかせて、ところどころ形を失っている。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
土手にはやはり発戸
河岸
(
がし
)
のようにところどころに赤松が生えていた。しの竹も茂っていた。朝露のしとどに置いた草原の中に
薊
(
あざみ
)
やら
撫子
(
なでしこ
)
やらが咲いた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
たとえば山口県の
柳井
(
やない
)
では
薊
(
あざみ
)
をウサギグサ。これは福島県の
相馬
(
そうま
)
地方でも、野薊を馬の
牡丹餅
(
ぼたもち
)
というから、多分は兎が
悦
(
よろこ
)
んで食べる草という意であろう。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
見上げるような両側の
崖
(
がけ
)
からは、
芒
(
すすき
)
と
野萩
(
のはぎ
)
が列車の窓を
撫
(
な
)
でるばかりに
生
(
お
)
い茂って、
薊
(
あざみ
)
や、
姫紫苑
(
ひめじおん
)
や、
螢草
(
ほたるぐさ
)
や、
草藤
(
ベッチ
)
の花が目さむるばかりに咲き
繚
(
みだ
)
れている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
メアリーの大理石の像は墓の上に横たわり、そのまわりには鉄の手摺りがあるが、ひどく
銹
(
さ
)
びていて、彼女の国スコットランドの国花、
薊
(
あざみ
)
の紋がついている。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
しかし其処を通り抜けると、
薊
(
あざみ
)
や除虫菊の咲いた中に、うつ木も水々しい花をつけた、広い草原が展開した。
長江游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
畑の中を、
畦
(
うね
)
から畦へ、土くれから土くれへと、踏みつけ踏みつけ、
耙
(
まぐわ
)
のように、
固
(
かた
)
め、
平
(
な
)
らして行く。鉄砲で、
生籬
(
いけがき
)
や
灌木
(
かんぼく
)
の茂みや、
薊
(
あざみ
)
の
叢
(
くさむら
)
をひっぱたく。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
その一歩を敢然と踏み出すためには、われわれは悪魔を呼ばなければならないだろう。
裸足
(
はだし
)
で
薊
(
あざみ
)
を踏んづける! その絶望への情熱がなくてはならないのである。
闇の絵巻
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
安芸子は茄子紺の地に
薊
(
あざみ
)
を白く抜いたシュミジェの長い裾をつまみながら二人の間に割りこんでくると
雪間
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
巨人の
椎
(
つい
)
を下すや四たび、四たび目に巨人の足は、血を含む泥を
蹴
(
け
)
て、木枯の
天狗
(
てんぐ
)
の杉を倒すが如く、
薊
(
あざみ
)
の花のゆらぐ中に、落雷も
耻
(
は
)
じよとばかり
鞺
(
どう
)
と横たわる。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれども、正門までは手入れの行届いた自動車路が作られていて、
破墻挺崩
(
はしょうていくず
)
しと云われる切り取り壁が出張った主楼の下には、
薊
(
あざみ
)
と葡萄の葉文が鉄扉を作っていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
柊
(
ひいらぎ
)
や
蕁麻
(
いらぐさ
)
や
山査子
(
さんざし
)
や
野薔薇
(
のばら
)
や
薊
(
あざみ
)
や気短かな
茨
(
いばら
)
などと戦わなければならなかった。非常な
掻傷
(
そうしょう
)
を受けた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
次に上帝
驢
(
ろ
)
を招き、汝は苦労せにゃならぬ、すなわち、常に重荷を負い運び、不断
笞
(
むち
)
うたれ叱られ、休息は
些
(
ちと
)
の間で
薊
(
あざみ
)
や
荊
(
いばら
)
の粗食に安んずべく、寿命は五十歳と宣う。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
薊
(
あざみ
)
の花は、野道にはどこにでも咲いてゐた。人に顧みられない事が幸で野生のままでゐられるのだ。花や蕾にうつかり戯れたらひどい仕返しにあはねばならなかつた。
雑草雑語
(新字旧仮名)
/
河井寛次郎
(著)
青い
薊
(
あざみ
)
の花や赤い
伏牛花
(
へびのぼうず
)
や緑色の実のなってる樅の小枝などを、それに突きさした。まるで野蛮国の小さな女王みたいだった。そしてただ一人で、噴水のまわりを
跳
(
は
)
ねた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
どうかすると
薊
(
あざみ
)
の
刺
(
とげ
)
のようなものの刺さって来るのを、いかんともすることができなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そのときの私の眼には、隣村の森ちかくの電燈の光が
薊
(
あざみ
)
の花に似ていたのを記憶して居る。
めくら草紙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そして彼女の真紅な着物の
薊
(
あざみ
)
の模様が、ふっくらとした胸のところで、激しい匂いを
撒
(
ま
)
き散らしながら、揺れて揺れて、……こんなことを想いだしていたとてしかたがなかった。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
その巨大な縦隊にたくみに喰い込む
楔
(
くさび
)
を打ちこんでそれを裂き、小さく分けてそれを打敗る才覚がなく——
薊
(
あざみ
)
をもみつぶすように手荒くあつかおうとばかり考えているのである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
キヤベツや薔薇の藪にたかつてゐる木虱は緑色をしてゐるし、接骨木や、豆や、けしや、
蕁麻
(
いらくさ
)
や、柳、ポプラのは黒、樫と
薊
(
あざみ
)
のは青銅色、夾竹桃や
胡桃
(
くるみ
)
とか
榛
(
はんのき
)
とかにつくのは黄色だ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
醜恠
(
しゅうかい
)
に
赭
(
あか
)
っちゃけて、ササラのように擦り減らされた薄っぺらの岩角を、天に投げかけている、細い石渓の窪地や、
薊
(
あざみ
)
がところ嫌わずチクチクやる石原の中を、押し分けてというより
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
空地には、もう青い草が伸び、
薊
(
あざみ
)
が咲き、立ち枯れの薄の穂が軽く頬を撫でた。
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
何故
(
なぜ
)
というに崖には野笹や
芒
(
すすき
)
に
交
(
まじ
)
って
薊
(
あざみ
)
、
藪枯
(
やぶから
)
しを始めありとあらゆる雑草の繁茂した間から場所によると清水が湧いたり、
下水
(
したみず
)
が谷川のように
潺々
(
せんせん
)
と音して流れたりしている処がある。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「加川夫人には昔から
薊
(
あざみ
)
の花という
仇名
(
あだな
)
があったそうです」と岡野は続けた
薊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
第一、
薊
(
あざみ
)
があんまり沢山ありましたし、それに草の底にさっき無かった岩かけが、度々ころがってゐました。そしてたうとう聞いたこともない大きな谷が、いきなり眼の前に現はれました。
種山ヶ原
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
三尺の床に袋戸棚が隣ってそこから
座蒲団
(
ざぶとん
)
が引出され、
掛花活
(
かけはないけ
)
の
薊
(
あざみ
)
は大方萎れて、無頓着が売物の小座敷だ、婢は云う御酒は、小歌は云うあがらないの、だけれども印しにと貞之進に向い
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
カムパニアの野には
薊
(
あざみ
)
生ふといへど、その薊には尚紅の花咲くことあり。富貴の家なる、
滑
(
なめらか
)
なる床には、一
本
(
もと
)
の草だに生ひず。その滑なる上を行くものは、
蹉
(
つまづ
)
き易しと聞く。アントニオよ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
薊
(
あざみ
)
の花や白い山百合の花の咲いている
叢
(
くさむら
)
の中の、心持ちくだりになっている細道を、
煙草
(
たばこ
)
を吸いながら下りて行くと、水面が鏡の面のように静かな古池があって、岸からは雑草が
掩
(
おお
)
いかかり
首を失った蜻蛉
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
他の人々が遙かに前進している後方に私は強力と共に遅々として歩いた。足許には所々に
薊
(
あざみ
)
の花が咲いていた。二合半以上にはもう草も木も絶無であったが唯此の薊だけを見ることが出来た。
富士登山
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
綿と
棘
(
いばら
)
とに身よそおいした
薊
(
あざみ
)
の
亡骸
(
なきがら
)
、針金のように地にのたばった霜枯れの蔓草、風にからからと鳴るその実、糞尿に汚れ返ったエイシャー種の九頭の乳牛、飴のような色に氷った水たまり
フランセスの顔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
乃
(
そこ
)
で
愛
(
あい
)
ちやんは
跳
(
と
)
びつかれては
大變
(
たいへん
)
だと
大
(
おほ
)
きな
薊
(
あざみ
)
の
後
(
うしろ
)
へ
身
(
み
)
をかはしました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
山面を遠くから雲のやうに白く棚曳き降りて來た
獨活
(
うど
)
の花の大群生が、湖面にまで雪崩れ込んでゐる裾を、黄白の野菊や萩、肉色の
虎杖
(
いたどり
)
の花、女郎花と、それに混じた淡紫の一群の花の、うるひ、
薊
(
あざみ
)
榛名
(旧字旧仮名)
/
横光利一
(著)
白リネンの小布を持ち上げて、縫かけの
薊
(
あざみ
)
の図案を見せる。
明るい海浜
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
薊
漢検1級
部首:⾋
16画
“薊”を含む語句
鬼薊
野薊
薊州
仏蘭西薊
大薊
姫薊
富士薊
小袖曽我薊色縫
手薊
浜薊
薊州管下