薄手うすで)” の例文
それをかる薄手うすで上等じょうとうなものとしてあり、それを使つかわなければならぬということは、なんといううるさいばかげたことかとおもわれました。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
少し薄手うすでを負わされた八五郎が、寺本山平を送るとすっかり元気になって、平次と一緒に家路を急ぎながら、相変らず絵解きを迫ります。
「うるさい。薄手うすでな面をしやがって、ペラペラしゃべるない。訊ねたいことがあるから全員全部、明日の午前十時までに憲兵隊司令部へ出頭しろ」
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
宗助そうすけ此間このあひだ公案こうあんたいして、自分じぶんだけ解答かいたふ準備じゆんびしてゐた。けれども、それははなは覺束おぼつかない薄手うすでのものにぎなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
生来薄手うすでに出来た顔が一層今日はやつれたようだった。が、洋一の差しのぞいた顔へそっと熱のある眼をあけると、ふだんの通りかすかに頬笑ほほえんで見せた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
薄あかりのなかに凝視みつむる小さな銀側時計の怪しい數字に苦蓬にがよもぎにほひ沁みわたり、右に持つた薄手うすでの和蘭皿にはまだ眞赤まつかな幼兒の生膽がヒクヒクと息をつく。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
伊達だて停車場ていしやぢやうもなく踏切ふみきりして、しばらくして、一二軒いちにけんむら小家こいへまへに、ほそながれ一際ひときはしげつてたけののびたのがあつて、すつとつゆげて薄手うすでながら
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
上品などこか女性風な優しさがあって、わざが充分でないと出来ない仕事であります。しかし薄手うすでに作るせいか、塗に気を配り過ぎるせいか、どこか弱々しい一面をちます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
窓の下に、黒っぽい粗末な茶箪笥があって、古い鑵を幾つも見せていたが、その上には、紫檀の盆の中に、薄手うすでの上品な茶碗と錫の茶托ちゃたくとが、鬱金色うこんいろの布巾の下から覗いていた。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
薄手うすでのコップにあわを立てて盛られた黄金色こがねいろの酒は葉子の手の中で細かいさざ波を立てた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いまだに彼の目先にちらついている、菜穂子がその絵姿の中心となった、不思議に重厚な感じのする生と死との絨毯じゅうたんの前にあっては、いかに薄手うすでなものであるかを考えたりしていた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
つかさんと娘とで踊つてる組もある。一人紫紺しこん薄手うすで盛衣ロオヴを着て白い胸飾むねかざりをした、ほつそりと瀟洒せうしやなひどく姿のい女が折折をりをり踊場をどりばに出ては相手を求めずに単独で踊のむれを縫ひながら縦横にけ廻る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
4 最上の海苔のり薄手うすでの草をもって厚く作ったもの)
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
われはづ。新しき薄手うすで玻璃はりの鉢を。
そぞろごと (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「すべて陶器とうきは、かるい、薄手うすでのをたっとびます。ちゃわんのおもい、厚手あつでのは、まことにひんのないものでございます。」と、役人やくにんはおこたえしました。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
長唄は六三郎、踊は水木みずき。しみったれたことや薄手うすでなことはなによりきらい、好物はかんのスジと初茸はつだけのつけ焼。
ユモレスク (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
代助は格子のそとから、三千代のきわめて薄手うすでな皮膚を眺めて、戸のくのを静かにつた。三千代は
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いつもときは、しももののそろひで、おとなしづくりのわかをとこで、をんなはう年下とししたくせに、薄手うすで圓髷まげでじみづくりの下町好したまちごのみでをさまつてゐるから、姉女房あねにようばうえるほどなのだが
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
新しい方はロンドン・フィルハーモニック管弦団をバルビロリの指揮したもので(JD九三七—四一S)、録音が鮮麗ではあるが、クライスラーの老は隠す由もなく、管弦楽も薄手うすでで感興が低い。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
われはづ、新しき薄手うすでの白磁の鉢を。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「もう、これよりかるい、薄手うすでにはできないのでございます。」と、主人しゅじんは、うやうやしくあたまげて役人やくにんもうしました。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
柚子が死んでから、手箱の整理をしていると、手帳式の薄手うすでな日記帳が出てきた。柚子の日記というのは、ふしぎなもので、その日の天気のほか、なにも書いていない。
春雪 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
……そして、肩越かたごしに此方こなた見向みむいた、薄手うすでの、なかだかに、すつと鼻筋はなすぢとほつた横顏よこがほ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、それははなはだ覚束おぼつかない薄手うすでのものに過ぎなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
細い薄手うすで硝杯こつぷから
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「そのかんがえは、ぜいたくだろう。なにしろ、あの薄手うすででは、大事だいじにして、しまっておいても保存ほぞんは、容易よういではない。」
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
石田氏は胸もとから手先だけだし、豊かとはいいにくい、薄手うすでな口髭を撫でていたが
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
秋は薄手うすでさかづき
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
利助りすけ陶器とうき特徴とくちょうは、その繊細せんさい美妙びみょうかんじにありました。かれ薄手うすでな、純白じゅんぱく陶器とうきあい金粉きんぷんとで、花鳥かちょうや、動物どうぶつ精細せいさいえがくのにちょうじていたのであります。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はかない、薄手うすでのさかずきが、こんなに完全かんぜん保存ほぞんされたのに、そのあいだに、このまちでも、このなかでも、いくたびか時代じだい変遷へんせんがありました。あるものは、まれました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)