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荒
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すさ
ふりがな文庫
“
荒
(
すさ
)” の例文
荒巻がヒサという女と関係していることは知っているが、ヒサは彼に愛想づかしをしており、そのために彼の気持は一時
荒
(
すさ
)
んでいた。
明治開化 安吾捕物:05 その四 ああ無情
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
樹下石上
(
じゅげせきじょう
)
の人だった。それゆえに、いくら想いを懸けたところで、届き
難
(
がた
)
い心地がして、同時に、自分の
荒
(
すさ
)
びかけた境涯も顧みられ
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
酒がやゝ
荒
(
すさ
)
んで来た頃、その小村は急に改つた調子で、「貴方に伺つたら解るでせう。全体ラブつてどんなものでせう。」と問ふ。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
いつしか気が
静
(
しずま
)
ると見えて、また木枯の吹き
荒
(
すさ
)
ぶ町の中を黒い服を地上に引摺って、蔦の絡んだ白壁の教会堂の方へと帰って行くのだ。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
この世と地獄との間には、
闇穴道
(
あんけつだう
)
といふ道があつて、そこは年中暗い空に、氷のやうな冷たい風がぴゆうぴゆう吹き
荒
(
すさ
)
んでゐるのです。
杜子春
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
吹き
荒
(
すさ
)
んでいた風が突然ピッタリと止んで、ブル・オヤジの大きな怒鳴り声が、五階の上から見下している妾のところまで聞えて来た。
ココナットの実
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
が、その時の事を考へると、『俺は強者だ。勝つたのだ。』といふ淺間しい自負心の滿足が、信吾の眼に
荒
(
すさ
)
んだ輝きを添へる……。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
よれよれに
荒
(
すさ
)
んで来るようだし、男に食わせてもらう事は切ないし、やっぱり本を売っては、
瞬間瞬間
(
そのときどき
)
の私でしかないのであろう。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
複雑な
荒
(
すさ
)
んだ人々の間にばかりくらしてきた私にはあなたが神の使のようにさえ見えます。あなたはそのままで清らかで完全です。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
その日は、ひどく冷たい北風が吹き
荒
(
すさ
)
んで、
公孫樹
(
いちょう
)
の落ち葉や
欅
(
けやき
)
の落ち葉が、雀の群れかなんぞのように、高く高く吹き上げられていた。
再度生老人
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
実際、わたし達はどんなことでもしかねないような
荒
(
すさ
)
んだ気持になっていたので、看護婦が要心したのも無理がないと思います。
二人の母親
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
男たちは
自
(
おのづ
)
から
荒
(
すさ
)
められて、女の
挙
(
こぞ
)
りて
金剛石
(
ダイアモンド
)
に
心牽
(
こころひか
)
さるる
気色
(
けしき
)
なるを、
或
(
あるひ
)
は
妬
(
ねた
)
く、或は浅ましく、多少の興を
冷
(
さま
)
さざるはあらざりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
やや
荒
(
すさ
)
んだ声で言われた下卑たその言葉と、その時渡瀬の眼に映った奥さんの
睫毛
(
まつげ
)
の初々しさとの不調和さが、渡瀬を妙に調子づかせた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
せかせか出て行った今のおゆうの姿や、おゆうを待受けている鶴さんの、この頃の生活に
荒
(
すさ
)
みきった神経質な顔などが、目について来た。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それに、まだ今はいいですが、だんだんと心も
荒
(
すさ
)
んできますよ。何かほかのことをした方がいいですね。もし何なら僕に相談して下さい。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
あの暗い森の下に、やはり温かい何物かがあって、この
荒
(
すさ
)
み果てた自分を迎えてくれようとするその懐し味こそ、なかなかに仇。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
世には切実な愛情の迫力に
依
(
よ
)
って目覚める人間の魂もある。叱正や苛酷に
痩
(
や
)
せ
荒
(
すさ
)
む性情が
却
(
かえ
)
って多いとも云えようではないか。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
君の御馬前に
天晴
(
あつぱれ
)
勇士の名を
昭
(
あらは
)
して
討死
(
うちじに
)
すべき
武士
(
ものゝふ
)
が、何處に二つの命ありて、歌舞優樂の遊に
荒
(
すさ
)
める所存の程こそ知られね。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
それにつれて玄竜の心も益々やけに
荒
(
すさ
)
び、街で一層暴行や恐喝に猥雑な行為を働き廻るようになったが、今度は巡査にとがめたてられても
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
我学問は
荒
(
すさ
)
みぬ。屋根裏の一燈微に燃えて、エリスが劇場よりかへりて、
椅
(
いす
)
に寄りて縫ものなどする側の机にて、余は新聞の原稿を書けり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ただ村民の信仰がおいおいに
荒
(
すさ
)
んできてこういう奇瑞の示された場合にも、
怖畏
(
ふい
)
の情ばかり
独
(
ひと
)
り盛んで、とかくに生まれる子を粗末にした。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼女の心は、その時以来別人のように
荒
(
すさ
)
んだ。
清浄
(
しょうじょう
)
なる処女時代に立ち帰ることは、その肉体は許しても、心が許さなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
痴人夢を説くという言葉がありますが、人生に夢が無かったら、我々の生活は何と
果敢
(
はか
)
なく侘しく、
荒
(
すさ
)
まじきものでしょう。
奇談クラブ〔戦後版〕:14 第四次元の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかしなんとなく生活が殺風景になり、それに外国にしばらくいると、みな気分が
荒
(
すさ
)
んでくるので、とかく索莫たる感じが漂いがちであった。
温泉2
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
わるびれる様子もなく、そうかといって、露悪症みたいな、
荒
(
すさ
)
んだやけくその言いかたでもなく、無心に事実を簡潔に述べている態度である。
新樹の言葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「杉、
爺
(
じい
)
やかい。」とこの時に奥の
方
(
かた
)
から、風こそ
荒
(
すさ
)
べ、雪の
夜
(
よ
)
は天地を沈めて
静
(
しずか
)
に更け
行
(
ゆ
)
く、畳にはらはらと
媚
(
なま
)
めく
跫音
(
あしおと
)
。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
先刻
(
さつき
)
のあの爐の傍で——顫へながら、むか/\しながら、そしてすつかり
蒼褪
(
あをざ
)
めて、
荒
(
すさ
)
んで、雨風に叩きつけられた自分の姿を意識しながら。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
三十分置きに拍子木を叩いて廻る合間にピュウ/\と吹き
荒
(
すさ
)
んでいる嵐にも負けないような
勢
(
いきおい
)
で議論を闘わすのであった。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
予が現住する
田辺
(
たなべ
)
の船頭大波に逢うとオイオイオイと
連呼
(
よびつづ
)
くれば
鎮
(
しず
)
まるといい、町内の男子暴風吹き
荒
(
すさ
)
むと大声挙げて風を制止する俗習がある。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
台湾にも行けば満洲にも行つた。仏の戒めた戒律をわざと破つて行くやうに見えるほどそれほど
荒
(
すさ
)
んだ生活をやつて来た。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
そしてそれが人間の
心境
(
しんきょう
)
に影響すれば、
悪人
(
あくにん
)
も
善人
(
ぜんにん
)
になるであろう。
荒
(
すさ
)
んだ人も
雅
(
みや
)
びな人となるであろう。
罪人
(
ざいにん
)
もその過去を
悔悟
(
かいご
)
するであろう。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
夜は
更
(
ふ
)
けていった。広いバスティーユの広場は
闇
(
やみ
)
におおわれていた。雨を交じえた冬の風は息をついては吹き
荒
(
すさ
)
んでいた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私は予防注射を受けながらも、何となく私の心がだんだん
荒
(
すさ
)
んで行くように思った。若しや狂犬の毒が全身にめぐりかけて居るのではあるまいか。
犬神
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
深谷夫人は頭が痛むと云うので
主館
(
おもや
)
に居止り、東屋氏と私と黒塚、洋吉の両氏、そして署長を加えた五人は、強い疾風の吹き
荒
(
すさ
)
ぶ中庭を横切って
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
ながいあいだの
荒
(
すさ
)
みきった生活が骨の髄まで浸みこんで、人間のもっている思い遣りとか、うるおいとか温かさというものがことごとく喪われている
留さんとその女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
僕の情操はその頃から学校を卒業するまでの間に、近頃の小説に出る主人公のように、まるで
荒
(
すさ
)
み果てたのだろう。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
見られよ、私たちのために形を整え、姿を飾り、模様に身を彩るではないか。私たちの間に
伍
(
ご
)
して悩む時も
荒
(
すさ
)
む時も、生活を
頒
(
わか
)
とうとて交わるのである。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
こんな話から、私は
気拙
(
きまず
)
くなって、鳴海の宅から立去った。そして私は、更に
荒
(
すさ
)
んだ生活の中に落込んでいった。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかし、あの家に吹き
荒
(
すさ
)
んだ冬の風を、誰が一番多く身に受けたろう? 美佐か? 深志か? それとも、母か?
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
男に対する感情も、わたくしの口から出まかせに言う事すら、其まま疑わずに聴き取るところを見ても、まだ全く
荒
(
すさ
)
みきってしまわない事は確かである。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
次第に重吉は
荒
(
すさ
)
んで行った。
賭博
(
ばくち
)
をして、とうとう金鵄勲章を取りあげられた。それから
人力俥夫
(
じんりきしゃふ
)
になり、馬丁になり、しまいにルンペンにまで零落した。
日清戦争異聞:(原田重吉の夢)
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そんな事に自分の
筆
(
ペン
)
を
荒
(
すさ
)
ませるくらゐなら、もつと他の
筆
(
ペン
)
の仕事で金錢といふ事を考へて見る、とさへ思つた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
そのときはなんだか
荒
(
すさ
)
んだ、古墳らしい印象を受けただけのように思っていましたが、だんだん月日が立って何かの折にそれを思い出したりしているうちに
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
僕の胸があまり
荒
(
すさ
)
んでいて、——僕自身もあんまり疲れているので、——単純な精神上のまよわしや、たわいもない言語上のよろこばせやで満足が出来ない。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
だがな紅丸、福島の人気、どうも昔より
荒
(
すさ
)
んだなあ。幾十年昔になるだろう、何んでも
私
(
わし
)
の青春の頃だ、一年近くも住んで見たが、その頃の福島はよかったよ。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
開戦以来
草忙
(
さうばう
)
として久しく学に
荒
(
すさ
)
める余に
取
(
とつ
)
ては、真に休養の恩典と云ふべし、両兄曰く果して然るか
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
煩雜と抵抗の刺戟から逃れて温泉地へでも行けと云つた。
之等
(
これら
)
の默止すべからざる温情が亨一の
荒
(
すさ
)
んだ心に
霑
(
うるほ
)
ひを與へた。三月の初めに東京を逃れて此地に來た。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
陰惨な
荒
(
すさ
)
み切った淫売宿の内儀が此の位の
啖呵
(
たんか
)
を切ったからとて些も不思議は無いので、私とても是迄場数を踏んで居りまして所謂殺伐には馴れて居りますから
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
私は首を
反
(
そ
)
らして、壁に頭をもたせかけ、そして眼をつむった。頭の中で、蝉が鳴いている。幾千匹とも知れぬ蝉の大群が、頭の壁の内側で、鳴き
荒
(
すさ
)
んでいる——
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
一国の代議士と言われる人で
平生
(
へいぜい
)
盛
(
さかん
)
に立憲論を唱えながら家にあっては酒道楽に
耽
(
ふけ
)
り女道楽に
荒
(
すさ
)
み
言語同断
(
ごんごどうだん
)
乱暴狼藉
(
らんぼうろうぜき
)
朝から晩まで我が家庭に対して非立憲の行為を
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
荒
常用漢字
中学
部首:⾋
9画
“荒”を含む語句
荒廃
荒野
荒海
荒男
荒神
荒磯
荒涼
荒寥
荒地
荒魂
吹荒
荒蕪地
荒増
荒凉
荒立
荒熊
荒天
荒庭
荒甲
荒唐無稽
...