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竦
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すく
ふりがな文庫
“
竦
(
すく
)” の例文
僕はどうしようかと思って、暫く立ち
竦
(
すく
)
んでいたが、右の方の
唐紙
(
からかみ
)
が明いている、その先きに人声がするので、その方へ行って見た。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
最初の二人は腫れ物にでも触るように、
恟々
(
きょうきょう
)
として立ち向った。が、主君の激しい槍先にたちまちに突き
竦
(
すく
)
められて平伏してしまう。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
身のうちが
竦
(
すく
)
むような恥かしさと同時に、何だか自分の中に今まで隠れていた本性のようなものが呼出されそうな気強い作用がある。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
新九郎は身を
竦
(
すく
)
ませた。するすると闇を探ってきたお延の
温
(
ぬく
)
い——刎ね返されないような魅力の腕が、新九郎の頸を深く抱きしめた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はやがて不意にぶるぶると全身を
顫
(
ふる
)
わして
後退
(
あとじさ
)
りしたが又、
卓子
(
テーブル
)
に両手をかけて女を見入った。女に近づこうとして又立ち
竦
(
すく
)
んだ。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
私の眼は彼の室の中を
一目
(
ひとめ
)
見るや
否
(
いな
)
や、あたかも
硝子
(
ガラス
)
で作った義眼のように、動く能力を失いました。私は
棒立
(
ぼうだ
)
ちに
立
(
た
)
ち
竦
(
すく
)
みました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし春田少年はそんなことで怒るような小胆者ではない。立去って行く刑事の後姿を見送って肩を
竦
(
すく
)
めてふふんと笑いながらいった。
謎の頸飾事件
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
すると、女は首を
竦
(
すく
)
めて、ペロリと舌を出して私の顔を見た。何の意味か私には分らなかった。
擦違
(
すりちが
)
うと、
干鯣
(
ほしするめ
)
のような匂のする女だ。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
人垣を分けて飛込んだ平次も、自分の予想と
寸分
(
すんぶん
)
違わぬ現場の様子に、物をも言わずに立ち
竦
(
すく
)
みました。それは実に恐ろしい暗合です。
銭形平次捕物控:085 瓢箪供養
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
絞
(
しぼ
)
るような
冷汗
(
ひやあせ
)
になる気味の悪さ、足が
竦
(
すく
)
んだというて立っていられる
数
(
すう
)
ではないからびくびくしながら路を急ぐとまたしても居たよ。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と少年は笑って、首を
竦
(
すく
)
めて見せた。レギイネ先生というのは、あの晩遅くまで少年に手伝っていてくれた家庭教師の老婦人であった。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
暗がりの中で菜穂子は思わず身を
竦
(
すく
)
めた。「身体がすっかり好くなってからでなければ、そんな事は考えないことにしていてよ。」
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
大隅学士は、えッと叫んだ儘、その場に立ち
竦
(
すく
)
んだ。それも道理、応接室から姿を現したのは誰あろう。ドクトル、シュワルツコッフ!
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
電車は
佝僂
(
せむし
)
のやうに首を
竦
(
すく
)
めて走つてゐたが、物の
小半丁
(
こはんちやう
)
も往つたと思ふ頃、
何
(
ど
)
うした
機
(
はず
)
みか、ポオルが
外
(
はづ
)
れてはたと立ち停つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
その時廊下の向こうでどっと
挙
(
あ
)
がる喚声が聞こえて来た。思わず肩を
竦
(
すく
)
めていると、急にばたばたと駈け出す足音が響いて来た。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
そして養父から、善く働く作を自分の婿に
択
(
えら
)
ぼうとしているらしい
意嚮
(
いこう
)
を
洩
(
もら
)
されたときに、彼女は体が
竦
(
すく
)
むほど
厭
(
いや
)
な気持がした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そう思った時、彼はぎょっとして思わず身を
竦
(
すく
)
めた。彼といえども、最初連盟に加わった時から、一死はもとより覚悟していた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
『人のことを、そないに見るのは
厭
(
い
)
や。』と、お光は自身の
身形
(
みなり
)
を見𢌞はしてゐる小池の視線を
眩
(
まぶ
)
しさうにして、
身體
(
からだ
)
を
竦
(
すく
)
めた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
と云うのは、扉の際まで来ると、何故かその場で釘付けされたように立ち
竦
(
すく
)
んでしまい、そこから先へは一歩も進めなくなってしまった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
マッチ売りの娘のような心細さで立ち
竦
(
すく
)
み、これが故郷か、これが、あの故郷か、と煮えくり返る自問自答を試みたのである。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「ま、立腹したもうな。……しかしながら、絲満の加害者が、あんたの血相を見たら、たいてい
竦
(
すく
)
みあがるだろう。なにしろ、凄かったぜ」
金狼
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
(お妙は逃げんとすれど、身が
竦
(
すく
)
みて容易に動き得ず。おいよは両手を地につきて、餌を狙う狼のようにお妙をじっと睨む。)
人狼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
足の
竦
(
すく
)
むような気のする彼は、せめてものお詫びのしるしにと、新らしい
冬菜
(
とうな
)
をたくさん車にのせて、おずおずと出かけて行ったのである。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その有様は後ろから鬼に追われて、足の
竦
(
すく
)
んだ夢を見ているような形でしたけれど、別に何者も追いかけるのではありません。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
長次郎と源次郎が先に立って登り出す、見たところでは格別
疾
(
はや
)
いとも思われないが、足が
竦
(
すく
)
むようで容易に跟いて行かれない。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
女は何気なく黙礼したらしかったが、そこに予期しないお光を見出してはっと
竦
(
すく
)
んだらしかった。赤くなるより青く沈む
質
(
たち
)
であるらしかった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
二人はハッとして顔を見合せて立ち
竦
(
すく
)
んだ。人の声だ。何とも得体の知れぬ喚き声だ。振向くと白々と月光に照らされた洋館の二階があった。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「あのこわい顔!」菊子は真面目にからだを
竦
(
すく
)
ませたが、病んでいる目がこちらを見つめて、やにッぽくしょぼついていた。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
そしてその部屋のドーアを開いて、一歩中へ蹈み込んだ瞬間、私は思わず「あっ」と云ったなり、二の句がつげずに立ち
竦
(
すく
)
んでしまいました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
忠州屋のことを、思って見ただけで、いい年して子供のようにぽっとなり、足もとが乱れ、てもなくおびえ
竦
(
すく
)
んでしまう。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
「約束通りメヂューサの首をお目にかけよう」といひ
様
(
さま
)
、不意に王の目に前に差し出すと、王の五体は立ち所に
竦
(
すく
)
んでそのまゝ石と化して了つた。
毒と迷信
(新字旧仮名)
/
小酒井不木
(著)
「そんな大きな声をなさると、近所のお家に聴えるじゃないの、お呼びになるとわたくし足が
竦
(
すく
)
んで来て、きゅうに、歩けなくなるんですもの。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
私はまだ
燥
(
はしゃ
)
いでる一同の後ろから、この不意な、そして無遠慮な異郷人の闖入行為を立ち
竦
(
すく
)
んで恥じねばならなかった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
すると、急に甲谷の足は立ち
竦
(
すく
)
んだ。壁にぶらりと下った幾つもの白い骨の下で、一人の支那人が
刷毛
(
はけ
)
でアルコールの中のち切れた足を洗っていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
私は内心非常に恥しく、まる裸にされて
竦
(
すく
)
んでいる哀れな女を頭に描いていた。そのまる裸の女を前にして、彼は小気味よそうに笑っているのである。
曲者
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
と仲人屋の宮地さんは禿げ上った額を叩いて首を
竦
(
すく
)
めた。西川家へ報告に罷り出たのである。
事後
(
じご
)
即夜
(
そくや
)
だから、運びの思わしかったほどが察しられる。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
彼は往来に立ち
竦
(
すく
)
んだ。十三年前の自分が往来を走っている! ——その子供は何も知らないで、町角を曲って見えなくなってしまった。彼は
泪
(
なみだ
)
ぐんだ。
過古
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
傷
(
いた
)
められ
竦
(
すく
)
められた半生の姿をまざまざとかへりみながら、焦燥や怒りや悲しみを始めて痛切に感じたのだつた。
狼園
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
源次郎は一刀の
鍔前
(
つばまえ
)
に手を掛けてはいるものゝ、
気憶
(
きおく
)
れがいたし刃向う事は出来ませんで
竦
(
すく
)
んで仕舞いました。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
欝金草賣は謹んで無言のままに
頭
(
くび
)
を
俛
(
た
)
れた。壁際高くホルバインの傑作、アルバ公爵の肖像畫が掛けてあつて、そこより
瞰
(
にら
)
む糺問法官の眼光に
竦
(
すく
)
んで了つた。
欝金草売
(旧字旧仮名)
/
ルイ・ベルトラン
(著)
スパイダーは彼女の眼を見ると何か責められる様な気がして
竦
(
すく
)
んでしまった。彼は壜からもう一杯酒を
注
(
つ
)
いだ。彼はサディに卑怯者と云われるのが辛かった。
赤い手
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼等はその無分別を
慙
(
は
)
ぢたりとよりは、この
死失
(
しにぞこな
)
ひし見苦しさを、天にも地にも
曝
(
さら
)
しかねて、
俯
(
ふ
)
しも仰ぎも得ざる
項
(
うなじ
)
を
竦
(
すく
)
め、
尚
(
なほ
)
も為ん方無さの目を閉ぢたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「あっ、幽霊だ!」と一人は覚えず叫んで、其処に腰を
抜
(
ぬか
)
した。同じくこれを見た一同は満身に水を浴せられたようにぶるぶると手足が
戦
(
ふる
)
えて
竦
(
すく
)
んでしまった。
北の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
波瑠子はその時、数間先の自動車の
傍
(
そば
)
に立っている人影を見て、いまいましげに肩を
竦
(
すく
)
めた。そこにはまた、ハルピンから来た男の蛇のような目が光っていた。
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
私が上から聲をかけると、ユキは鐵板の急な梯子を半分あがつたあたりで、足に痙攣が來て立ち
竦
(
すく
)
んだ。
滑川畔にて
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
心配なのは、
嚔
(
くさめ
)
と
咳
(
せき
)
をすることだ。彼は息をころす。そして、目をあげると、戸の上の小さな窓から、星が三つ四つ見える。
冴
(
さ
)
え渡った
煌
(
きらめ
)
きに、彼は
竦
(
すく
)
みあがる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
からだに注がれた半ば呆けた視線を感じたとしゑは、ふっと身の
竦
(
すく
)
みを覚えて思わず前をかき合わせた。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
「どうしたんだんべ、おとつゝあ」おつぎは
戸
(
と
)
の
隙間
(
すきま
)
から
射
(
さ
)
す
明
(
あか
)
りを
見
(
み
)
て
俄
(
にはか
)
に
立
(
た
)
ち
止
(
どま
)
つていつた。
勘次
(
かんじ
)
は
竦
(
すく
)
んだやうに
成
(
な
)
つて
默
(
だま
)
つた。おつぎは
戸
(
と
)
の
隙間
(
すきま
)
から
覗
(
のぞ
)
いて
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
線路のある
突堤埠頭
(
ビヤー
)
の先端に、朝の微光を背に受けて、凝然と立
竦
(
すく
)
んでいた私達の眼の前には、片腕の駅長の復讐を受けた73号を深々と呑み込んだドス黒い海が
気狂い機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
そしていつもの
軽
(
かろ
)
らかな足取と違つた地響のする歩き振をして返つて来る。年の寄つた奴隷と物を言はぬ
童
(
わらべ
)
とが土の上にすわつてゐて主人の足音のする度に身を
竦
(
すく
)
める。
フロルスと賊と
(新字旧仮名)
/
ミカイル・アレクセーヴィチ・クスミン
(著)
竦
漢検1級
部首:⽴
12画
“竦”を含む語句
竦然
立竦
居竦
射竦
竦立
一竦
竦毛
悪竦
抱竦
花竦薑
気竦
槎枿竦樛
掻竦
打竦
恐竦
局竦
寒毛竦立
三竦