はりつけ)” の例文
何のために鶏を殺したかは、後に論ずるとして、鶏に縁厚い酉歳の書き始めに昔の支那人は元日に鶏をはりつけにしたという事を述べ置く。
月夜野橋に到る間に私は土地の義民はりつけ茂左衞門の話を聞いた。徳川時代寛文年間に沼田の城主眞田伊賀守が異常なる虐政を行つた。
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
彼は秋になると、鋭いくちばしをもったもずがやって来て、自分たちを生捕りにして、樹の枝にはりつけにするのを何よりも恐れていました。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
朝靄蒼く立ちこめていて戸外そとは仄々と薄暗かったが、見れば一本のはりつけ柱が気味の悪い十文字の形をして門の前に立っていた。
郷介法師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
モズがかえるやイナゴを捕えて食い、あまったものをとがった樹の枝などに刺してはりつけとしておくことは、あまねく人の知っているところであるが
動物の私有財産 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
なんのために気の毒がることがあるんだ? そうとも! わしを気の毒がるわけなんか毛頭ないとも! わしなんかはりつけにせにゃならん人間だ。
もとよりこの儀造り事ならば、御殿様の御心に御覚えのあろう筈がないで、直ぐ様かたり者と召捕られて、はりつけにもなるは必定。
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
由斎ゆうさいこえきながら、ひとあしずつあとずさりしていたおせんは、いつかはりつけにされたように、雨戸あまどきわちすくんでいた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そうして土山つちやまから出た人物のうちでは、千両函せんりょうばこえてはりつけになったのが一番大きいのだと云う一口話をやはり友達から聞いた通り繰り返した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひしがれたれば如何に強膽がうたんの者なりとも勿々なか/\かくす事能はず立石が家内三人切殺せし事ども殘らず白状なしければ小塚原こづかはらに於てつひはりつけにこそおこなはれけれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
噛めば噛むほど、魂までが、異教の風に化して、はりつけになろうと、首を打たれようと、異教を改めることは致しませぬでな
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勘五郎 一揆もええがのう、後が悪いからのう、あんまり、有頂天になってやっとると、後ではりつけじゃからのう。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
どうかして彼奴きやつの正体を見届けて呉れようと思つたのですが、亡者のはりつけにつかふ釘をつ悪魔そつくりに、顔ぢゆうを煤で塗りたくつてをりますのでして。
ヨハネの母ヨハンナ、妻マグダレナ、養子ルイス(七歳)、シモンの妻イネスははりつけにかけられて殉教した。
そりや御前が何でもでも、鼠小僧だと剛情を張りや、役人始め真実御前が鼠小僧だと思ふかも知れ無え。が、その時にや軽くて獄門、重くてはりつけは逃れ無えぜ。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
親殺しははりつけ、親を毆いた者は磔、たとへ毆かずとも斬りかかり打ちかかりたるものは死罪とあります。
支那の古代法律 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、はりつけになってから、泣いてびたって聞かぬぞ。」
走れメロス (新字新仮名) / 太宰治(著)
各位が、わがために刑を撰んで、その最も酷なのは、はりつけでない、獄門でない、牛裂うしざきの極刑でもない。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
豊臣秀吉とよとみひでよしが織田信孝のぶたかの賊臣桑田彦右衛門くわたひこえもん挙動きょどうよろこばず、不忠不義者、世の見懲みごらしにせよとて、これを信考の墓前ぼぜんはりつけにしたるがごとき、是等これらの事例は実に枚挙まいきょいとまあらず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
高井たかゐ殿に信任せられて、耶蘇やそ教徒を逮捕したり、奸吏かんり糺弾きうだんしたり、破戒僧を羅致らちしたりしてゐながら、老婆豊田貢とよだみつぎはりつけになる所や、両組与力りやうくみよりき弓削新右衛門ゆげしんゑもんの切腹する所や
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
親を殺せばはりつけ火焙ひあぶりでしょう、あなたは自分が密通をしたこと、密通をして産ませた自分の娘が、磔か火焙りになったということ、世間の人たちがそれを知っていることで
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
手前たちのようなはりつけ野郎のお世話になるんじゃあねえ。やい、やい、なんで人の面を睨みやあがるんだ。てめえ達はみんな主殺しの同類だからはりつけ野郎だと云ったのがどうした。
勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
耶蘇ヤソ教は密々に行なはれ、遠野郷にてもこれを奉じてはりつけになりたる者あり。浜に行きたる人の話に、異人はよく抱き合ひてはめ合ふ者なりといふことを、今でも話にする老人あり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
主人半右衞門を殺害せつがいいたさせたる段、主殺しゅうころし同罪、はりつけにも行うべき処、主人柳の頼み是非なく同意いたしたる儀につき、格別の御慈悲ごじひをもって十四ヶ年遠島を申付くる、有難く心得ませい
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この恋が成功さえすれば天地が粉微塵こなみじんコッパイになっても少しも驚きはせぬ。もしまたこの恋がどうしても成功せぬときまった暁にははりつけに逢うが火あぶりに逢うが少しもくやむ処はない。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
床の上に長くなっている父親は、いつか学校で見たはりつけされるキリストみたいなひげ面で、眼ばかり異様に蒼光あおびからせていた。富次はぎょろりと動いたその眼にあわてて視線を壁に移した。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
あさ子はその藁人形を、左の手で老松にぴったりあてながら、右手で袂から一本の銀色に光る釘を取り出した。いう迄もなく良雄になぞらえた藁人形を松の木にはりつけにしようとするのである。
血の盃 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
よって甚内が日頃所持していた槍を取寄せてはりつけにかけてしまった。——その後、引廻しの者の先へ抜身の槍を二本立てる。その一筋の槍は、高坂甚内をはりつけにかけた槍であると言い伝えられている。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
主人公ヂックが牧師の内にって、牧師夫婦と話をしているうちに、牧師が余所よそへ出てしまう。そこへ敵兵が来て牧師を縛ろうとする。縛られて行けば、見せしめにはりつけか何かにせられてしまうのです。
そう云う人達ははりつけにせられたり、焼き殺されたりした。
昔から幾千の思想家がはりつけにせられ
先駆者 (新字新仮名) / 中山啓(著)
これで基督キリストはりつけになりながら
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
月夜野橋に到る間に私は土地の義民はりつけ茂左衛門の話を聞いた。徳川時代寛文年間に沼田の城主真田伊賀守が異常なる虐政を行った。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
さうして土山つちやまから人物じんぶつうちでは、千兩凾せんりやうばこへてはりつけになつたのが一番いちばんおほきいのだと一口話ひとくちばなし矢張やは友達ともだちからいたとほかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其方儀主人の金子を盜みとりあまつさへ主人悴五郎藏を殺害致し候段重々不屆に付江戸中引廻しのうへ淺草に於てはりつけに申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし、これとて、その釉薬ゆうやく築窯ちくよう火法かほう、みな厳秘げんぴらすまじきものとなって、洩らしたものははりつけおきてである。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉「汝は、京に上せはりつけにかけんと思いしが、わが面前に壮語して主家を恥しめざるは、い奴かな」
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
買いたるは手品師にて、観世物みせものはりつけにするなりき。身体からだは利かでもし、やりにて突く時、手と足もがきて、と苦痛の声絞らするまでなれば。これにぞ銀六の泣きしなる。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その日彼は町中まちじゅうを引き廻された上、さんと・もんたにの下の刑場で、無残にもはりつけに懸けられた。
じゅりあの・吉助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
始めのころは斬首やはりつけであつたが、その立派な死に方に感動して首斬りの役人まで却つて切支丹になる者がある始末、そこで火炙りを用ひるやうになり、それも直接火をかけず
文学と国民生活 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
耶蘇ヤソ教は密々に行われ、遠野郷にてもこれを奉じてはりつけになりたる者あり。浜に行きたる人の話に、異人はよく抱き合いてはめ合う者なりなどいうことを、今でも話にする老人あり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それから返忠かへりちゆうをし掛けて遅疑ちぎした弓奉行組ゆみぶぎやうぐみ同心小頭どうしんこがしら竹上たけがみ万太郎ははりつけになつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「郷介の父の郷左衛門を船山城の大手へ連れ行き、はりつけ柱へ付けてしまえ!」
郷介法師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
打首うちくびはりつけ、二日にわたって、おびただしい血が、大賀一個の叛心のために、士気粛正の犠牲にされた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天主てんしゅのおん教を奉ずるものは、その頃でももう見つかり次第、火炙ひあぶりやはりつけわされていた。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
秀吉その答を壮とし「汝は京都に送りはりつけにしようと思っていたが」と云って許してやった。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
……さて波斯人はどうかと申しますとこれもやはり処刑にははりつけを用いたようでございます。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はりつけめ。」と角目立つのめだってあられもない、手先の突合つつきあいが腕の掴合つかみあいとなって、頬の引掻競ひっかきくら
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平八郎の妾ゆう薙髪ちはつす。十二月五日邪宗門事件落着す。貢、きぬ、さの、外三人はりつけに処せらる。きぬ、さのはしかばねを磔す。是年宮脇いく生る。上田孝太郎入門す。木村司馬之助、横山文哉まじはりていす。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
なせしならんと思ひ早速立歸りて右の趣き巨細こさいに申し立てければ大岡殿然らば文藏夫婦の者外に惡事もあらざるゆゑ助け遣さんと思はれけれども關所破せきしよやぶりと言てははりつけに成べき大法ゆゑ種々いろ/\に工夫ありて又々文藏夫婦を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)