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矜
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ほこ
ふりがな文庫
“
矜
(
ほこ
)” の例文
典型が生れるところには、必ず「
矜
(
ほこ
)
り」がなければなりません。ある種の社会的階級が、嘗ては矜りを無視した時代もありました。
青年の夢と憂欝:――力としての文化 第五話
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
昔しからの古い格を崩さないというような
矜
(
ほこ
)
りをもっているらしい、もの堅いその家の二階の一室へ、私たちはやがて案内された。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
貴族的な名前とそれから来る
矜
(
ほこ
)
りの念とにもかかわらず、彼女は青春の妙齢に達すると、ドイツの小家庭の主婦らしい魂をもっていた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
おのれの愛する女の父に当たる人は、おのれに対して決して他人ではない。マリユスはその名も知らぬ老人について自ら
矜
(
ほこ
)
りを感じた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼女
(
かのぢよ
)
は
喜
(
よろこ
)
びも
心配
(
しんぱい
)
も、たゞそのためにのみして
書
(
か
)
き
入
(
い
)
れた
努力
(
どりよく
)
の
頁
(
ページ
)
をあらためて
繰
(
く
)
つてみて
密
(
ひそ
)
かに
矜
(
ほこ
)
りなきを
得
(
え
)
ないのであつた。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
▼ もっと見る
その苦しみが如何ほど深くとも、それはしかくあるべき事で、それは
些
(
いささ
)
かも
矜
(
ほこ
)
りとす可きでは無い。それはよく知つてゐる。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
が、まけるものか荒びは激しい、血を見なければ納まらないと、それを
矜
(
ほこ
)
りとし名誉として、由緒ある宝物になっている。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あの聡明極まる男のことを、君はなんてことを言う! 吾人の親友、
矜
(
ほこ
)
りある知識人を君は土方にするというのか!」
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
才弁縦横の若い二人を前にして、巧言は徳を紊るという言葉を考え、
矜
(
ほこ
)
らかに我が胸中一片の
氷心
(
ひょうしん
)
を
恃
(
たの
)
むのである。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ただ悪魔が神になれないのは彼は悪を
矜
(
ほこ
)
って、へりくだる貧しき心を欠いているからであろう。私は幾度となく娼婦の姿を胸に抱いたのではなかったか。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
「木牛流馬一千余車。それに積んだ糧米だけでも二万二、三千石は
鹵獲
(
ろかく
)
いたしました。これで当分、軍糧は豊かです」と、各〻、勇み
矜
(
ほこ
)
らぬはなかった。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これは結局は社会改革と男性の
矜
(
ほこ
)
りある自覚とにまたなければならない問題である。母性愛と職業との矛盾は国家の保護政策を抜きにして解決の道はない。
婦人と職業
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
更
(
さら
)
に
蛙
(
かへる
)
はひつそりと
靜
(
しづ
)
かな
夜
(
よる
)
になると
如何
(
いか
)
に
自分
(
じぶん
)
の
聲
(
こゑ
)
が
遠
(
とほ
)
く
且
(
かつ
)
遙
(
はるか
)
に
響
(
ひゞ
)
くかを
矜
(
ほこ
)
るものゝ
如
(
ごと
)
く
力
(
ちから
)
を
極
(
きは
)
めて
鳴
(
な
)
く。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
われら
敢
(
あえ
)
て自ら
矜
(
ほこ
)
るに非ざれどもそれほどまでに西人を崇拝しをらず、それほどまでに日本人を軽蔑しをらず。誤解する
莫
(
なか
)
れ、われらは子の如き西人崇拝にあらず。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
其一に
躯
(
からだ
)
を
凭
(
もた
)
せたまま、眼はいつしか三千米の天空に今年のこの夏の唯一日であるかの如くに今日を
矜
(
ほこ
)
っている高根の花を
趁
(
お
)
うて、その純なる姿にうっとりと見入った。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
一面には報道陣の戦死としての
矜
(
ほこ
)
りから死を突破しようとさえする従軍記者でもない作家、謂わば、命を一つめぐってそれをすてるか守るかしようとする熾烈な目的をも
明日の言葉:ルポルタージュの問題
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
また子供といふものの
如何
(
いか
)
にさかんなる
矜
(
ほこ
)
りに生きて居るかと云ふことを思はしめるのである。
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
怨恨
(
えんこん
)
の毒気のようなものもあった、勝利を
矜
(
ほこ
)
るようなものもあった、冷やかなものもあった、甚だしい
軽蔑
(
けいべつ
)
もあった、軽蔑し
罵倒
(
ばとう
)
し去っての哀れみのようなものもあった
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
細君に対して気の毒というよりもむしろ夫の
矜
(
ほこ
)
りを
傷
(
きずつ
)
けるという意味において彼は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
故郷に援助を求めることも男のいつぱしで出來ないのだ。彼は一切の
矜
(
ほこ
)
りを棄ててゐた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
その第一は舊主の
成敗
(
せいばい
)
を仰ぐべく三成の邸を訪ねて行った時であって、まだそれまでは、一の台の局に同情していたと云っても、一方に武士の
矜
(
ほこ
)
りを捨てゝいなかったと云える。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
斯くて、彼の二つの
矜
(
ほこ
)
りも、単なる矜りの外には出なかった。彼の生活は益々困難になっていった。横田の家から貰う報酬と飜訳の僅かな稿料とでは、どうにも支えようがなかった。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
かれに
香
(
にほひ
)
無くこれに歌無し。かれは
其袍
(
そのうはぎ
)
を、これは其尾を
矜
(
ほこ
)
る。 「珍華園」
欝金草売
(旧字旧仮名)
/
ルイ・ベルトラン
(著)
かくてこそ始めて色に
矜
(
ほこ
)
らず、その徳に
爽
(
そむ
)
かずとも謂ふべきなれ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
実
(
げ
)
に自らを
矜
(
ほこ
)
りつゝ、
将
(
はた
)
、
咀
(
のろ
)
ひぬる、あはれ、人の世。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
其処に陽は、
矜
(
ほこ
)
りかな山の上から
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
お島はその時もそう言って、自分の気働きを
矜
(
ほこ
)
ったが、何の気もなさそうに、それに腰かけている小野田の様子が、間抜らしく見えた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は平和を得て多少
矜
(
ほこ
)
らかな感じがした。そして内心では、ある遺憾の念を覚えた。彼は静寂に驚いた。彼の熱情は眠っていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
が、彼女だけは、鬼頭のこの計ひに対し、ひそかに人格的な偉大さを感じ、
矜
(
ほこ
)
りをもつて彼の前に頭を下げるだらう……。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
中
(
なか
)
には
又
(
また
)
、あの
流
(
ながれ
)
を
邸内
(
ていない
)
へ
引
(
ひ
)
いて、
用水
(
ようすゐ
)
ぐるみ
庭
(
には
)
の
池
(
いけ
)
にして、
筑波
(
つくば
)
の
影
(
かげ
)
を
矜
(
ほこ
)
りとする、
豪農
(
がうのう
)
、
大百姓
(
おほびやくしやう
)
などがあるのです。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
お
祖父様
(
じいさま
)
に言いつけてあげます。私がまたじきに戻ってきてつまらないことをするとお思いなすっては、まちがいですよ。私だって
矜
(
ほこ
)
りは持っています。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
蛙
(
かへる
)
は
愈
(
いよ/\
)
益
(
ます/\
)
鳴
(
な
)
き
矜
(
ほこ
)
つて
樫
(
かし
)
の
木
(
き
)
のやうな
大
(
おほ
)
きな
常緑木
(
ときはぎ
)
の
古葉
(
ふるは
)
をも一
時
(
じ
)
にからりと
落
(
おと
)
させねば
止
(
や
)
まないとする。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
あたかもそれが論理の正確を
矜
(
ほこ
)
るものでもあるように、概念的な言葉によって現わされた上の思想が、真実は純粋な心情に
本
(
もと
)
づけらるべきものであることを示すためにも
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
アイヌは
蘩蔞
(
はこべ
)
で頭を、土で身体を、柳で背骨を創られた。とまたいわれている。アイヌの
眼窩
(
めのくぼ
)
は深い。頭髪が深い。神々の髪の毛の人として彼らはその美髪を
矜
(
ほこ
)
っている。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
そういう中にあって、彼は内心の二つの
矜
(
ほこ
)
りをあくまでも把持していった。——一つは、保子の好意を濫用しないことだった。彼は如何に困っても、彼女から決して金を借りなかった。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
矜
(
ほこ
)
りの全部としてゐる隣人に対する偽善的行為に、哀れな売名心に、さうした父の性格の中の嘘をそつくり受け継いでゐて何時も
苛々
(
いら/\
)
してゐる私は、苦もなく
其処
(
そこ
)
に触れて行つて父を衝撃した。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
心は
矜
(
ほこ
)
りに充ちていた。「上級生のおもちゃなんかになるものか」
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
倨傲
(
きょごう
)
というか、不行儀をもってむしろ
矜
(
ほこ
)
るようなところがあった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紫摩金
(
しまごん
)
の
榮
(
はえ
)
を盡して、
紅
(
あけ
)
に
朱
(
しゆ
)
に
矜
(
ほこ
)
り飾るも
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
しかしなおつづけて書いていた。自分の考えを広く人に伝えることは、彼にとっては一つの欲求であり、
矜
(
ほこ
)
らかな喜びだった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
事によると
乱次
(
だらし
)
のない父親の愛情がさうさせたものらしい、子供にしては可愛気のない
矜
(
ほこ
)
りのやうなものが、産れつきの剛情と一つになつて
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼女は彼女のいわゆる雑種の社会たる宮廷から離れて、気高い
矜
(
ほこ
)
らかな貧しい孤立のうちに暮らしていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
男は「男」を磨くことによつて、人間的な高さを
矜
(
ほこ
)
り得るのである。女も亦「女」を磨くことによつてのみ、人間の
位
(
くらゐ
)
があがるのだといふことに気づかねばならぬ。
妻の日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「
※
(
ねえ
)
は
云
(
ゆ
)
はねえ、
※
(
ねえ
)
爺
(
ぢい
)
が
處
(
とこ
)
さ
行
(
え
)
ぐつちとおとつゝあ
怒
(
おこ
)
んだ、さうしたら
※
(
ねえ
)
に
怒
(
おこ
)
らつたんだあ」
與吉
(
よきち
)
は
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こゝろ
)
に
少
(
すこ
)
しの
隔
(
へだ
)
てをも
有
(
いう
)
して
居
(
を
)
らぬ
卯平
(
うへい
)
の
前
(
まへ
)
に
知
(
し
)
つてることを
矜
(
ほこ
)
るやうにいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
……近所に
古狢
(
ふるむじな
)
の居る事を、友だちは
矜
(
ほこ
)
りはしなかったに違いない。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
紫摩金
(
しまごん
)
の
栄
(
はえ
)
を尽して、
紅
(
あけ
)
に
朱
(
しゆ
)
に
矜
(
ほこ
)
り飾るも
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
母親の感化から、これも
動
(
と
)
もすると自分に一種の
軽侮
(
けいぶ
)
を持っている妹に、
半衿
(
はんえり
)
や下駄や、色々の物を買って行って、お辞儀されるのを
矜
(
ほこ
)
りとした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ほとんどすべての人々が、おのが民族に裏切られた魂についての、寂しいかつ
矜
(
ほこ
)
らかな意識をもっていた。そしてそれは、個人的
怨恨
(
えんこん
)
の事柄ではなかった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
コゼットは彼とともに外に出かける時、いつも彼の腕によりかかって、
矜
(
ほこ
)
らかに楽しく心満ち足っていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
自分の
矜
(
ほこ
)
りを自分で傷けるやうなことをしないやうに、それだけのことを云つて置きたいの。
驟雨(一幕)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
矜
漢検1級
部首:⽭
9画
“矜”を含む語句
矜持
矜恃
矜誇
自矜
矜恤
矜羯羅
愛矜
勝矜
矜高
矜羯羅童子
矜疑
驕矜
自矜心
矜驕
矜迦羅
矜負
矜羯羅制吒迦
矜禍羅
矜特
矜持心
...