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痒
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がゆ
ふりがな文庫
“
痒
(
がゆ
)” の例文
それを感じた時のむづ
痒
(
がゆ
)
いやうな一種の
戦慄
(
せんりつ
)
は、到底形容する
語
(
ことば
)
がない。私は唯、それを私自身の動作に飜訳する事が出来るだけだ。
世之助の話
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と
独
(
ひとり
)
で
苦笑
(
くせう
)
する。
其
(
そ
)
のうちに、
何故
(
なぜ
)
か、バスケツトを
開
(
あ
)
けて、
鍋
(
なべ
)
を
出
(
だ
)
して、
窓
(
まど
)
へ
衝
(
つ
)
と
照
(
て
)
らして
見
(
み
)
たくてならない。
指
(
ゆび
)
さきがむづ
痒
(
がゆ
)
い。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
肱
(
ひじ
)
をしっかり鉄の棒の上に支え、前腕がしびれても気がつかず、指の先までむず
痒
(
がゆ
)
くなっていても、それはいっこう平気なのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
村松金之助は奥庭の芝生の上で、十幾人の腰元の、小意地の悪い、その癖申分なくムズ
痒
(
がゆ
)
い、不思議な責めを味わわされたのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:06 夢幻の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
なぜかそうすることに
羞
(
はずか
)
しさを感じた。そして彼女はたえず彼の眼が遠くから自分の脊中に向けられているのをすこしむず
痒
(
がゆ
)
く感じていた。
ルウベンスの偽画
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
▼ もっと見る
そのような僅かな胸さわぎがいかに彼にとって珍しく、むず
痒
(
がゆ
)
い快感によって思わず知らず
微笑
(
ほほえ
)
みを
泛
(
うか
)
ばせたことであろう。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ひどいしゃがれ声で、こっちの
喉
(
のど
)
がむず
痒
(
がゆ
)
くなるようだったが、……堰とは要するに
田圃
(
たんぼ
)
へ水を引く用水堀のことで断じて「川」ではなかった。
半之助祝言
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
幅の厚い西洋
髪剃
(
かみそり
)
で、顎と頬を剃る段になって、その鋭どい刃が、鏡の裏で
閃
(
ひらめ
)
く色が、一種むず
痒
(
がゆ
)
い様な気持を起さした。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
野
(
や
)
にあって腕のムズ
痒
(
がゆ
)
さに堪えぬ
者共
(
ものども
)
を幕府が召し集めて、最も好むところの腕立てに任せる役目ですから、毒を以て毒を制すると
謂
(
いい
)
つべきものです。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
また堪えられなく全身をムズ
痒
(
がゆ
)
くさせてくるような……この時ほどスパセニアが帰って来てくれなければいいと、
肚
(
はら
)
の中で思っていたことはないのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それを考えると、むず
痒
(
がゆ
)
いような愛着をおぼえるのだ。胎児ははじめから男ときめて、これで玉目の家も相続されたと何か肩の荷がおりる思いであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼はほろ酔い機嫌で町なかを歩いていると、垣根の下の日当りに
王鬍
(
ワンウー
)
がもろ肌ぬいで
虱
(
しらみ
)
を取っているのを見た。たちまち感じて彼も身体がむず
痒
(
がゆ
)
くなった。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
お秀は、何だか身体のしんからむず
痒
(
がゆ
)
いものを感じたように自分の乳房が
蠢
(
うご
)
めくらしいのを掌で押えました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
既に恍惚たる精神は更に
淘々然
(
とうとうぜん
)
とし、入湯して柔かくなった身体は足の指手の指の先まで何処ということなく一体にむず
痒
(
がゆ
)
いように慾情の震動を伝え出すので
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
だから、鼻の穴が微妙にムズ
痒
(
がゆ
)
くなって、今くさめが出るのだなと分ると、それを実に大切にするんだ。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
会う人、会う人から、祝福されたり虎退治を
賞
(
ほ
)
めそやされる。そのたび彼はむず
痒
(
がゆ
)
そうな顔をして
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「とっても、我慢ができないの。私まで、むず
痒
(
がゆ
)
くなって」家内は、ときどき私に相談する。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鏡子は自身でも歯
痒
(
がゆ
)
く思ふやうなぐずぐずした挨拶をして居たが、急に晴やかな声を出して
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
身体は崖の方にズリ下る、ズッてズッてそのまま早川渓へ
堕
(
お
)
ち込むような気がして、夢はいく度となく破れる。何やら虫がいて、襟から手元から、そこらあたりがむず
痒
(
がゆ
)
い。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
笹村は
拙
(
まず
)
いその手蹟や、署名のある一枚の葉書に、血のむず
痒
(
がゆ
)
いようななつかしさを覚えた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
悪い
請求
(
たのみ
)
をさえすらりと
聴
(
き
)
いてくれし上、胸にわだかまりなくさっぱりと
平日
(
つね
)
のごとく
仕做
(
しな
)
されては、清吉かえって
心羞
(
うらはず
)
かしく、どうやら
魂魄
(
たましい
)
の底の方がむず
痒
(
がゆ
)
いように覚えられ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
葉書へいたずら書きをした彼の気持も、その変てこなむず
痒
(
がゆ
)
さから来ているのだった。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
宇宙万象も何もかもから切り離された
亡者
(
もうじゃ
)
みたようになって、グッタリと椅子に
凭
(
も
)
たれ込んで底も
涯
(
はて
)
しもないムズ
痒
(
がゆ
)
さを、ドン底まで掻き廻わされる快感を、全身の毛穴の一ツ一ツから
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
博士は巻を
掩
(
おほ
)
うて、隣の女の髪を見た。薄暗い電気燈で横文を読んだので、目が少しむづ
痒
(
がゆ
)
くなつた。向うを見れば、サンドヰツチの男は口を開いて
鼾
(
いびき
)
をかいてゐる。窓の外は鼠色である。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そんな山歩きの間に、漆かはぜにでも触れたと見えて、急に手や顔が
腫
(
は
)
れてむず
痒
(
がゆ
)
く、ひどく気分が重くなつた。丁度その少し前、ある日表の窓から往来を見ると、寂しい葬列が下を通つて居た。
野の墓
(新字旧仮名)
/
岩本素白
(著)
ダラリと袖を欄干へ垂らし、ぼんやり
河面
(
かわも
)
を眺めやった。やはり都鳥が浮かんでいた。やはり舟がとおっていた。皆々他人であった。急に
眼頭
(
めがしら
)
がむず
痒
(
がゆ
)
くなった。眼尻がにわかに熱を持って来た。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
むず
痒
(
がゆ
)
く握りしめるのであった。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その間の長さと申しましたら、橋の下の私の
甥
(
おい
)
には、体中の
筋骨
(
すじぼね
)
が妙にむず
痒
(
がゆ
)
くなったくらい、待ち遠しかったそうでございます。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幅の
厚
(
あつ
)
い西洋
髪剃
(
かみそり
)
で、
顎
(
あご
)
と頬を
剃
(
そ
)
る
段
(
だん
)
になつて、其
鋭
(
する
)
どい
刃
(
は
)
が、
鏡
(
かゞみ
)
の
裏
(
うら
)
で
閃
(
ひらめ
)
く色が、一種むづ
痒
(
がゆ
)
い様な気持を
起
(
おこ
)
さした。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
袂
(
たもと
)
のちり
打
(
うち
)
はらいて空を仰げば、日脚やや
斜
(
ななめ
)
になりぬ。ほかほかとかおあつき
日向
(
ひなた
)
に唇かわきて、眼のふちより頬のあたりむず
痒
(
がゆ
)
きこと限りなかりき。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
茫然となすことを知らざる余りに不意な出来事に、袴野はいまさらすてのすべすべしたからだを、殆ど全身にむず
痒
(
がゆ
)
く感じながら物ほしげに見送った。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
まもなく、
櫓太鼓
(
やぐらだいこ
)
の勇ましい音。お角の鼓膜にこたえて、感興をそそり、腕がむず
痒
(
がゆ
)
いような気持がしました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
手のひらや足の裏に、むず
痒
(
がゆ
)
いような、するどくこころよい感覚が起こり、躯じゅうが
痺
(
しび
)
れたようになった。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
レートベルクがそんなにうまいわけではないが、この人のリリー・レーマンの系統を引くらしい、妖艶苦渋な歌い方には、一種のむず
痒
(
がゆ
)
い美しさがあったものだ。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
単衣
(
ひとえ
)
のすそはびっしょり濡れて足に巻きつき、草の実がたかって、
脛
(
すね
)
がむず
痒
(
がゆ
)
い。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心臓がむず
痒
(
がゆ
)
くなるような白熱の明るさです。あゝ、また其処を見る眼が身に伝えて来て袂の端に重たく感じる。
訣
(
わか
)
れて来た男の二本の腕の重み。それを振り切ったときの
微
(
かす
)
かな
眩暈
(
めま
)
い。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
妾は寒い往来を辷りまわる自動車を、あとからあとから見送っているうちに、鼻の穴がムズ
痒
(
がゆ
)
くなって来た。今にもクシャミが出そうになったから、慌てて窓から首を引っこめようとした。
ココナットの実
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
銀子は
梳
(
す
)
いた髪をいぼじり
捲
(
ま
)
きにしてもらい、少しはせいせいして、何か胸がむず
痒
(
がゆ
)
いような感じで
膝
(
ひざ
)
のうえで雑誌をめくったりしていたが、小谷さんは新聞にたまった
雲脂
(
ふけ
)
と落ち毛を寄せて
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と、すぐに膝から股、腰から腹までムズ
痒
(
がゆ
)
くなった。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
袂
(
たもと
)
のちり
打
(
うち
)
はらひて空を
仰
(
あお
)
げば、
日脚
(
ひあし
)
やや
斜
(
ななめ
)
になりぬ。ほかほかとかほあつき
日向
(
ひなた
)
に唇かわきて、眼のふちより頬のあたりむず
痒
(
がゆ
)
きこと限りなかりき。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
恵印
(
えいん
)
はどうやら赤鼻の奥がむず
痒
(
がゆ
)
いような心もちがして、しかつめらしく
南大門
(
なんだいもん
)
の石段を上って行く中にも、思わず吹き出さずには居られませんでした。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
むず
痒
(
がゆ
)
いような、じれったくなるような痛さで、ときにわれ知らずぎゅっと押しつけ、そうするとやはり刺すように痛むので、声をあげてとびあがることもあった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
残りなく聞いてくれぬ上に、
呑気
(
のんき
)
な
慰藉
(
いしゃ
)
をかぶせられるのはなおさら残念だ。
膿
(
うみ
)
を出してくれと頼んだ
腫物
(
しゅもつ
)
を、いい加減の
真綿
(
まわた
)
で、
撫
(
な
)
で廻わされたってむず
痒
(
がゆ
)
いばかりである。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでいささかむず
痒
(
がゆ
)
くなって、せせら笑ってみたまでのことです。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
武蔵は、彼のことばが、誇張に聞えて、少しむず
痒
(
がゆ
)
く思いながら
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
痛いのかと思うとそうでもなしに、むず
痒
(
がゆ
)
い、
頼
(
たより
)
ない、もので
圧
(
おさ
)
えつけると
動気
(
どうき
)
が
跳
(
おど
)
る
様
(
よう
)
で切なくッて
可
(
い
)
けません。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
赤鼻の五位は、それを
真
(
ま
)
にうけた。久しく湯にはいらないので、体中がこの間からむづ
痒
(
がゆ
)
い。芋粥の馳走になつた上に、入湯が出来れば、願つてもない仕合せである。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
恐ろしく反り返っているのでこっちからは
顎
(
あご
)
だけしか見えないくらいだった、千蔵は頭がじいんと
痺
(
しび
)
れた、
臍
(
へそ
)
のあたりがむず
痒
(
がゆ
)
くなり、それが胃の
腑
(
ふ
)
のところへ移行して来た
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
姉が余り
饒舌
(
しゃべ
)
るので、彼は何時までも自分のいいたい事がいえなかった。
訊
(
き
)
きたい問題を持っていながら、こう受身な会話ばかりしているのが、彼には段々むず
痒
(
がゆ
)
くなって来た。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼の右の手には、
悪血
(
あくち
)
がむず
痒
(
がゆ
)
いほどに湧き上って来る。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
痒
漢検1級
部首:⽧
11画
“痒”を含む語句
痛痒
歯痒
羞痒
齒痒
隔靴掻痒
痛痒相冒
齒痒相
齋痒
閔致痒
薄痒
羽痒
痾痒
催痒性
痒序
擽痒感覚
擽痒
揩磨苛痒風助威
掻痒記
掻痒
奇痒