澤山たんと)” の例文
新字:沢山
これしかしながら汽車きしやがやがて飛行機ひかうきつて、愛宕山あたごやまから大阪おほさかそらかけ前表ぜんぺうであらう。いや、割床わりどこかた、……澤山たんとおしげりなさい。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
久し振でお目にかゝつて何か申たい事は澤山たんとあるやうなれど口へ出ませぬは察して下され、では私は御別れに致します、隨分からだを厭ふて煩らはぬ樣に
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「然うですね、澤山たんとのことは可けませんが……」とシブ/\立起たちあがツて店に下りて來た。額を手に取ツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「む、どこつて、おいらの故郷こきやうへよ。おもしろいことが澤山たんとあるぜ。それからお美味いしいものも——」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
『だが、このしま仲々なか/\面白おもしろいよ、さかな澤山たんとれるし、獅子狩ししがり出來できるし、いまかへりたくくなるよ。』
ロミオ (從者にむかひ)おれには炬火たいまつれ。かる陽氣やうき手合てあひは、舞踏靴をどりぐつかゝと澤山たんと無感覺むかんかく燈心草とうしんぐさこそぐったがよい。おれは、祖父ぢゝい訓言通をしへどほり、蝋燭持らうそくもちをして高見たかみ見物けんぶつ
其麽そんな澤山たんとでも無えす。俺等おら明日あした盛岡さ行ぐども、手さ持つてげば邪魔だです。』
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
押鎭おししづめ誰かと思へば大家おほやさん大層たいそう御機嫌で御座りますねヘイヤ澤山たんともやらねど今其所そこ一寸ちよつと一杯やつたばかりさ夫はさうとお光さん今日新版しんぱんの本が出來できて未だ封切ふうきりもしないのが澤山あるが日がくれたらせめだけも見にお出そして今夜は母親おふくろは大師河原の親類へ泊りがけにと行て留守うちには吾儕わたし一人限ひとりぎりゆゑ必ずお出の色目づかひお光はうらみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひさぶりでおにかゝつてなにまをしたいこと澤山たんとあるやうなれどくちませぬはさつしてくだされ、ではわたし御別おわかれにいたします、隨分ずいぶんからだをいとふてわづらはぬやう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おそらく妙齡としごろむすめ横腹よこばらかゝへながらあるいたのも多度たんとはあるまいし、また帳場ちやうばつてあるいた女房かみさん澤山たんとはあるまい。うしても光景くわうけいが、吉原よしはら大門おほもんなか仕事しごとなんです。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ですから、澤山たんとあがんなさいましよ。」とまたちやかす。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
師走の空に芝居みる人も有るをとお峰はまづ涙ぐまれて、まづ/\風の寒きに寢てお出なされませ、と堅燒に似し薄蒲團を伯父の肩に着せて、さぞさぞ澤山たんとの御苦勞なさりましたろ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おゝ/\わるがきがの……そこが畜生ちくしやうあさましさぢや、澤山たんとうせいよ。ばいて障子しやうじければ、すぐに人間にんげんもどるぞの。」と、ばあさんは、つれ/″\の夜伽よとぎにするで、たくみ
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
師走しはすそら芝居しばゐみるひとるをとおみねはまづなみだぐまれて、まづ/\かぜさむきにておいでなされませ、と堅燒かたやき薄蒲團うすぶとん伯父おぢかたせて、さぞさぞ澤山たんと御苦勞ごくらうなさりましたろ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「またはなりますね……澤山たんとうなさい、中屋なかや小僧こぞうちまふから……」
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お禮は澤山たんと申度なれど、口が廻らねば是れも口惜しくござります、お前樣はいつ/\までも無事に御出世をなされませ、我れは此世には愚人に生れましたれば御爲にとおもふ事も叶はねど
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鸚鵡あうむ多年たねんらしてあつて、土地とち言語げんごもとよりだし、瓜哇ジヤワ勃泥亞ボルネヲなまりから、馬尼剌マニラ錫蘭セイロン澤山たんとだなかつた、英吉利イギリス使つかつて、それは……怜悧りこうむすめをはじめ、だれにも、よくわかるのに
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
保險會社ほけんぐわいしやちふとこは澤山たんとあるで。」
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)