“混沌:こんとん” の例文
“混沌:こんとん”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治13
太宰治4
ヴィクトル・ユゴー4
長谷川時雨4
ロマン・ロラン3
“混沌:こんとん”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語21.2%
歴史 > 伝記 > 日本16.7%
文学 > 英米文学 > 小説 物語6.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
混沌こんとんとしてくるつたゆきのあとのはれ空位そらぐらひまたなくうるはしいものはない。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
唯私にわかつてゐる範囲で答へれば、私の頭の中に何か混沌こんとんたるものがあつて、それがはつきりした形をとりたがるのです。
もし予にして、たとい一瞬たりとも活動を止めなば、世界は混沌こんとんのうちに陥りて、予は人生を滅ぼすものとならん……。
医学と文芸と革命と、言いかえれば、科学と芸術と政治と、彼はこの三者の混沌こんとんうずに巻き込まれたのではあるまいか。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この民族の力強い混沌こんとんたる思想は、音楽や詩の大河となって逆巻さかまき、全ヨーロッパはその河水を飲みに来る。
ぐら/\する、そしてあのはてしのない混沌こんとん眞中まんなかへ、まつさかさまに落ちる、さう思つたとき、心は震へ上つた。
そんな事を、混沌こんとんと、めまいの頭で描いている間に、小溝に沿った粗土あらつちの土塀が、駕籠の外に、ちらと見えた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼等の批判は賢明なのか、愚かしいのか? 混沌こんとんの中からイリアッドやエネイドを選び残した彼等は、賢いといわねばなるまい。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
彼は怒りの念もなく、古文書を判読する言語学者のごとき目をもって、自然のうちになお存する多くの混沌こんとんたるものを観察した。
は、誰もまだ混沌こんとんとして、明らかに帰趨きすうを見とおしている者は、ほとんどないような有様としかいえない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美の形式はあらゆる種類のものが認識され、その奔放な心持ちは、ゆきつくところを知らずにいまもなお混沌こんとんとしてつづいている。
明治大正美人追憶 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
とはいえ、あの混沌こんとんたる天上の闇、昼の日なかに忍び寄るこの真夜中が、彼らを逆上させ、にんじんをちぢみ上がらせたのだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
だが僕は相変らず、妄想もうそうと幻影の混沌こんとんのなかをふらついて、一体それが誰に、なんのために必要なのかわからずにいる。
精神の混沌こんとんとしている広巳にはものを考える力がなかった。広巳はばかのように女の顔を見た。お鶴がそれをもどかしがった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかるに、この混沌こんとんたる有様ありさまのなかにも、おのずから輪廓りんかくだけはぼんやりと現れている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
白昼凝って、ことごとく太陽の黄なるを包む、混沌こんとんたる雲の凝固かたまりとならんず光景ありさま
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
沈黙した精神を、あらゆる汚穢おわいと非礼と、無節度との混沌こんとんの中から洗い上げて立ち上がらせること。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
其方そちの心の奥にも、このあらゆる無意味な物事の混沌こんとんたる中へ関係の息を吹込む霊魂は据えてあった。
誇大な形容詞を用いると混沌こんとんとして黒眼と白眼が剖判ほうはんしないくらい漠然ばくぜんとしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
博士はまだ意識混沌こんとんとしているので、あのような恰好をしているのであろうが、両眼を大きく明けているのが、ちとに落ちかねる。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大菩薩は半空に腰をかがめて、まだ半ば混沌こんとんたる地上の雲をき分けると、二ツの山は躍起となって、
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あの混沌こんとんとした建武中興瓦解がかい後の京都では、生活を守るには数寄の生活のほかなかったであろう。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
いずれが、将来を把握はあくするほんものか。——えないのである。混沌こんとんたる動揺をなすばかりで、方向を決し得ないのだ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時主人は、昨日きのう紹介した混沌こんとんたる太古の眼を精一杯に見張って、向うの戸棚をきっと見た。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は混沌こんとんたる状態のおりからも彼れの名を無意識に叫んだが、自分がこの世に生残ったと知ると、心にかかるのは彼れの身の上であった。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
中谷孝雄なるき青年の存在をもゆめ忘れてはならないし、そのうえ、「日本浪曼派」という目なき耳なき混沌こんとんの怪物までひかえて居る。
だからその何か混沌こんとんたるものが一度頭の中に発生したら、いきほひいやでも書かざるを得ません。
店の中は——白い布を、扉の半開きだけあげた店の中は、幕開き前とでもいうように混沌こんとんとしている。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
明治の御世みよも、西南戦争あたりまでの十年間というものは半蔵には実に混沌こんとんとして暗かった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのかおはもはや人間ではなく、真黒な原始の混沌こんとんに根を生やした一個の物のように思われる。
牛人 (新字新仮名) / 中島敦(著)
いても起ってもおれなくなる。なぜだ! 自分にもわからない。混沌こんとんと頭がこんがらかるばかりだ。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
してみれば欧米の家庭にしばしば見るような色彩形状の混沌こんとんたる間に毎日毎日生きている人たちの風雅な心はさぞかし際限もなく深いものであろう。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
夜が明けたのかしら……まだ夢にいるような混沌こんとんたるあたまで、瞬間、そうも感じたのでした。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一つの戦争を描かんがためには、その筆致のうちに混沌こんとんたるものを有する力強い画家を要する。
八際はつさいの地、始めて混沌こんとんさかひでたりといへども、万物いまことごと化生かせいせず、風はこころみに吹き
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
が、それが夢であるか現であるか確める気にもなれないほど、彼女の意識は混沌こんとんとしていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そして、あの風が私の心を悲しませ、この暗がりの混沌こんとんが私の平和をみだすのだらう。
畢竟ひっきょう、認識するということは、この混沌こんとん無秩序な宇宙について、主観の趣味や気質から選択しつつ、意味を創造するということに外ならない。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
要するに現時の詩人は、日本文明の混沌こんとんたる過渡期に於ける、一の不運な犠牲者である。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「天下は蜂の巣の状です。夜の明けるたび各地からいろんな飛報は入りますが、情勢はまだ混沌こんとんです。もすこし見とおしをえてからでも遅くないでしょう」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——そしてここはまだ天下混沌こんとんといっていいところだが、奕々えきえきと天の一方からは、理想の到達に誇ッた凱歌のあしおとが近づいて来つつあった。
彼はちょうど自分の頭の中にいだいてる思想が混沌こんとんとしているような場合にあった。
一つの防寨を守る混沌こんとんたる感情と情熱とのうちには、あらゆるものがこもっている。
しばらくは、たゞあらしのような混沌こんとんたる意識の外、何も存在しなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その奔放な心持ちは、いまや、行きつくところを知らずに混沌こんとんとしている。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ムーア彗星の周囲は、まだ混沌こんとん漠々たる濃密な大気に閉ざされていた。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひるすぎた頃、すでに同勢は葫蘆谷へかかった。肉体を酷使していた。馬も兵も飢えつかれて如何とも動けなくなってきた。——曹操自身も心身混沌こんとんたるものを覚える。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに今彼はその中をのぞき込んで、混沌こんとんたる暗黒をのみ予期していたところに、恐れと喜びとの交じった一種の異様な驚きをもって、星辰せいしんの輝くのを見たのである。
ミルクやクリームの鉢もそなわり、今わたしが数えあげたように、一切がっさい混沌こんとんとしており、しかもその真中からは大きな茶わかしが濛々もうもうたる湯気をまきあげている。
その間に土地の御用聞などが首を突つ込んで來て、事件を益々わからないものにしてしまひました。そして、平次が戻つて來た時は、事件を混沌こんとんたる迷宮入りにしてしまつたのです。
しかしまた妾はこの支那の混沌が単なる混沌でなく、前進するラクダであっていつか彼等の富源を発見し機械的であった過去の人間が生物学的に発達したときの支那の混沌こんとんを思うのです。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
しかしそれは体の感じであって、思想は混沌こんとんとしていた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
粗雑な混沌こんとんたる頭脳あたまに筋道がついてきたのです。
親子の愛の完成 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
そこで幾ら自由の空氣を吸う爲に氣があはて燥ツてゐたとは謂へ、また奈何にお房の匂を慕ツて心が混沌こんとんとしてゐたからと謂へ、彼は此の生活の不安に對する用意だけは忘れなかツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
と、いくら考えつめていっても、同じような混沌こんとん状態と同じような物狂わしさは、いっかな果てしもなく、ただただ彼女だけが、その真っただ中に、取り残されているのを知るのみであった。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
およそ混沌こんとんたるものを砲撃しても何の効があろう。
民衆という混沌こんとんの怪物は、その点、正確である。
けれども、混沌こんとんと、迷いに入るばかりだった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われわれ人間は、はかり知るべからざる混沌こんとんのうちに渾然たる大調和の存する大自然の前に、破壊の威力と建設の威力とを併せ有する大自然の前に、心をむなしくして跪坐きざしなければならぬ。
『グリム童話集』序 (新字新仮名) / 金田鬼一(著)
あるものは混沌こんとんとして雲のごとくに動いた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これがかの混沌こんとんとした物の発する声である。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
すでに充分触れて来たように、公武対立の未曾有みぞうの世となって、廷臣たちの心には、上下おしなべて見透しのつかない混沌こんとんと停滞とその日ぐらし的不安やなげやりの傾向がえ出ておった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
しかも今、混沌こんとん錯綜さくそうとをきわめた現代の世界像を前にして、その内に、必要なものを検出する眼の光は、われわれの無言の魂以外にないではないか。愚かな日本は、明日を信じている…………
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
混沌こんとんやみに明るき時をつくり、
方角も地理も混沌こんとんとしてしまった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そんな考えが混沌こんとんとした一種の感情となって彼の心をかきみだした。そして、そのために、彼はいやでも道江に彼の「恋人」を見出し、恭一に彼の恋の競争相手を見出さないでは居れなくなって来たのである。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
彼は暗黒であり、混沌こんとんを欲する。
広巳の気もちは混沌こんとんとしていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たった今、『破裂』ということばが出たが、しかしこの『破裂』ということばをなんと解釈したらいいのか? このあらゆるものが混沌こんとんとしている中では、最初の一句からして、もう彼にはのみこめないのである。
時代は混沌こんとんとして来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日本の中世的な封建制度が内からも外からもくずれて行って、新社会の構成を急ぐ混沌こんとんとした空気の中に立つものは、眼前に生まれ起こる数多くの現象を目撃しつつも、そうはっきりした説を立てうるものはなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ふたりは、お互いに、ふたり切りになりたくてたまらないのに、でも、それを相手に見破られるのがはずかしいので、空のあおさ、紅葉のはかなさ、美しさ、空気の清浄、社会の混沌こんとん、正直者は馬鹿を見る、等という事を
犯人 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そして、宿酔しゅくすいの苦しい意識を辿たどって、ぼんやりと考えてみると、ゆうべ、ごまの蠅の四郎次をつれてこの家へあがると、隣り座敷に混沌こんとん詩社の若い詩人たちが来合せて、遂に一座になったことを記憶している。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なおまた、今の混沌こんとんたる時代の帰趨きすうが、何人なんぴとによって、処理され、統一され、やがて泰平が建て直されるか——そうした時のうしおの行く先も、お見えになっていないわけはあるまいとも存ぜられます。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、まるで熱病にでもかかったような異様な時期で、えたいの知れぬ混沌こんとんを成しており、この上もなく矛盾むじゅんした感情や、想念や、疑惑ぎわくや、希望や、喜びや、なやみが、つむじ風のようにうずまいていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「皮と肉とをはいでは生きられない人間だ。どこまでこね返しても、表裏のない人間と世の中はつくれない。要は、今の混沌こんとんたる暗闇くらやみ政道をただして、まことの天日てんじつを仰ぎたい。それは、万人の要望で、正しい声だ」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸ひと言つては變ですが、まだ表面には、何んの犯罪事實も現れない事件——しかも行先は混沌こんとんとして、容易に見當もつかないこの事件を、八五郎の手に任せて、暫らく平次は靜觀して見ようといふ氣になつたのも無理のないことでした。
欧州大戦には、あらゆる皮膚の色の人種が登場していて、それだけでもいまから想えば華麗混沌こんとんたる一大万華鏡まんげきょうの観あるが、のぞいて見ると、そのスパイ戦線の尖端に、茶色の肌をした全裸の一女性が踊りぬいているのを見る。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「ゆるし給え。決して君の心を疑っていたわけではないが、まだ自分は明らかな計策がつかないので、数日、混沌こんとんと思いわずらっていたわけです。——もし君も力をかして、わが大事にくみしてくれれば、それこそ天下の大幸というものだが」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私が船をとび出してから一時間ばかりもたったころ、船は私よりずっと下の方へ降りてから、三、四回つづけざまに猛烈な回転をして、愛する兄を乗せたまま、下の混沌こんとんとした湧きたつあわのなかへ、永久にまっさかさまに落ちこんでしまいました。
たとえば、ジンタ音楽と「いらっしゃいいらっしゃい」とが同時にオーヴァラップして聞こえていても、われわれはきれいに二つを別々に聞き分けることができるが、二つの少し込み合った映像の重合したものはただ混沌こんとんたる夢のようなものにしか見えない。
耳と目 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
混沌こんとんたるお顔色だな。かくいわれて初めて、真の戦とは何か、御不審を抱かれたであろう。わらうべし。あなたは、この謙信が、九年にわたる信玄との血戦を、ただ其許そこもとに頼まれたための義心一片と思いこんでいられたか。……何で。何で」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この混沌こんとんとした社会の空気の中で、とにもかくにも新しい政治の方向を地方の人民に知らしめ、廃関以来不平も多かるべき木曾福島をも動揺せしめなかったのは、尾州の勘定奉行かんじょうぶぎょうから木曾谷の民政権判事ごんはんじに転任して来た土屋総蔵の力による。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
——そしてその混沌こんとんの中には、彼に微笑ほほえみかくる親しい眼の光、母の身体から、乳にれた乳房から、彼の身体のうちに伝わりわたる喜悦の波、彼のうちにあって自然に積り太ってゆく力、その小さな子供の体内に閉じこめられてとどろき出す湧きたった大洋。
その山に登れば雁の飛ぶのを見ることが出来るだらうといふので、鄭家屯の満鉄支社長宅に一泊し、水害で荒された道を馬車で難行して、オポ山に登り、荒涼といはうか、混沌こんとんといはうか、渺漠べうばくといはうか、一目茫々ばうばうたる国土を見おろしたが、その時にも到頭雁が飛ばなかつた。
雷談義 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
支那しなでも政界の混沌こんとんとしている時代は退しりぞいて隠者になっている人も治世の君がお決まりになれば、白髪も恥じずお仕えに出て来るような人をほんとうの聖人だと言ってほめています。御病気で御辞退になった位を次の天子の御代に改めて頂戴ちょうだいすることはさしつかえがありませんよ」
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一つには、わが混沌こんとんの思想統一の手助けになるように、また一つには、わが日常生活の反省の資料にもなるように、また一つには、わが青春のなつかしい記録として、十年後、二十年後、僕が立派な口鬚くちひげでもひねりながら、こっそり読んでほくそ笑むの図などをあてにしながら、きょうから日記をつけましょう。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)