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混沌
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こんとん
ふりがな文庫
“
混沌
(
こんとん
)” の例文
博士はまだ意識
混沌
(
こんとん
)
としているので、あのような恰好をしているのであろうが、両眼を大きく明けているのが、ちと
腑
(
ふ
)
に落ちかねる。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
疑っていたわけではないが、まだ自分は明らかな計策がつかないので、数日、
混沌
(
こんとん
)
と思いわずらっていたわけです。——もし君も力を
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしそれは体の感じであって、思想は
混沌
(
こんとん
)
としていた。己は最初は
大股
(
おおまた
)
に歩いた。薩摩下駄が寒い夜の土を踏んで高い音を立てた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼はちょうど自分の頭の中にいだいてる思想が
混沌
(
こんとん
)
としているような場合にあった。彼の脳裏には一種のほの暗い雑踏がこめていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
美の形式はあらゆる種類のものが認識され、その奔放な心持ちは、ゆきつくところを知らずにいまもなお
混沌
(
こんとん
)
としてつづいている。
明治大正美人追憶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
彼等の批判は賢明なのか、愚かしいのか?
混沌
(
こんとん
)
の中からイリアッドやエネイドを選び残した彼等は、賢いといわねばなるまい。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そして實際、
途徹
(
とてつ
)
もなく忙しい一日二日の後に、私達が自分で
釀
(
かも
)
した
混沌
(
こんとん
)
の中から段々と秩序を見附け出して來るのは樂しいことであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
畢竟
(
ひっきょう
)
、認識するということは、この
混沌
(
こんとん
)
無秩序な宇宙について、主観の趣味や気質から選択しつつ、意味を創造するということに外ならない。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
精神の
混沌
(
こんとん
)
としている広巳にはものを考える力がなかった。広巳は
痴
(
ばか
)
のように女の顔を見た。お鶴がそれをもどかしがった。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
中谷孝雄なる
佳
(
よ
)
き青年の存在をもゆめ忘れてはならないし、そのうえ、「日本浪曼派」という目なき耳なき
混沌
(
こんとん
)
の怪物までひかえて居る。ユダ。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
えたいの知れぬ
混沌
(
こんとん
)
を成しており、この上もなく
矛盾
(
むじゅん
)
した感情や、想念や、
疑惑
(
ぎわく
)
や、希望や、喜びや、
悩
(
なや
)
みが、つむじ風のように
渦
(
うず
)
まいていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
もし予にして、たとい一瞬たりとも活動を止めなば、世界は
混沌
(
こんとん
)
のうちに陥りて、予は人生を滅ぼすものとならん……。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
混沌
(
こんとん
)
としてなにもわからない、じっと眼を閉じると「あんなお邸でも闇料理屋なんかしなければやっていけない、たいへんな世の中になったものだ」
四年間
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
してみれば欧米の家庭にしばしば見るような色彩形状の
混沌
(
こんとん
)
たる間に毎日毎日生きている人たちの風雅な心はさぞかし際限もなく深いものであろう。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
「男の子は大学までやることだよ。我輩の若い頃は世の中が
混沌
(
こんとん
)
たる戦国時代だったけれど、これからの人は正式の教育を受けて置かないといかん」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
白昼凝って、
尽
(
ことごと
)
く太陽の黄なるを包む、
混沌
(
こんとん
)
たる雲の
凝固
(
かたまり
)
とならんず
光景
(
ありさま
)
。万有あわや死せんとす、と忌わしき
使者
(
つかい
)
の早打、しっきりなく走るは
鴉
(
からす
)
で。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それと同時に、烈しい力で、狭い車内を、二三回左右に
叩
(
たた
)
き付けられた。眼が
眩
(
くら
)
んだ。しばらくは、たゞ
嵐
(
あらし
)
のような
混沌
(
こんとん
)
たる意識の外、何も存在しなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼
(
かれ
)
の
頭
(
あたま
)
の
中
(
なか
)
を
色々
(
いろ/\
)
なものが
流
(
なが
)
れた。
其
(
その
)
あるものは
明
(
あき
)
らかに
眼
(
め
)
に
見
(
み
)
えた。あるものは
混沌
(
こんとん
)
として
雲
(
くも
)
の
如
(
ごと
)
くに
動
(
うご
)
いた。
何所
(
どこ
)
から
來
(
き
)
て
何所
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
くとも
分
(
わか
)
らなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、
夫
(
それ
)
は私にもよくわかりません。唯私にわかつてゐる範囲で答へれば、私の頭の中に何か
混沌
(
こんとん
)
たるものがあつて、それがはつきりした形をとりたがるのです。
はつきりした形をとる為めに
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
粗雑な
混沌
(
こんとん
)
たる
頭脳
(
あたま
)
に筋道がついてきたのです。親に孝行をしなければならないと、書いたり言ったりするだけでは、今日の人間に親孝行ができないでしょう。
親子の愛の完成
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
混沌
(
こんとん
)
といはうか、
渺漠
(
べうばく
)
といはうか、一目
茫々
(
ばうばう
)
たる国土を見おろしたが、その時にも到頭雁が飛ばなかつた。
雷談義
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ガンガンと鳴り響く
混沌
(
こんとん
)
たる彼の頭の中には最前からのいっさいの光景、人物の顔——夢のような墓場の景から茶屋の中でのフェレラとの異様な
邂逅
(
かいこう
)
、青年の顔
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
この
混沌
(
こんとん
)
とした社会の空気の中で、とにもかくにも新しい政治の方向を地方の人民に知らしめ、廃関以来不平も多かるべき木曾福島をも動揺せしめなかったのは
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
大菩薩は半空に腰をかがめて、まだ半ば
混沌
(
こんとん
)
たる地上の雲を
掻
(
か
)
き分けると、二ツの山は躍起となって
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
其方
(
そち
)
の心の奥にも、このあらゆる無意味な物事の
混沌
(
こんとん
)
たる中へ関係の息を吹込む霊魂は据えてあった。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
沈黙した精神を、あらゆる
汚穢
(
おわい
)
と非礼と、無節度との
混沌
(
こんとん
)
の中から洗い上げて立ち上がらせること。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
それだけでもいまから想えば華麗
混沌
(
こんとん
)
たる一大
万華鏡
(
まんげきょう
)
の観あるが、
覗
(
のぞ
)
いて見ると、そのスパイ戦線の尖端に、茶色の肌をした全裸の一女性が踊りぬいているのを見る。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
どこかの懸崖にちがい無かったが、さてこれが、どこのどういう崖であるかは判らなかった。方角も地理も
混沌
(
こんとん
)
としてしまった。何故か、運を天に任せようと思った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
しかしこの『破裂』ということばをなんと解釈したらいいのか? このあらゆるものが
混沌
(
こんとん
)
としている中では、最初の一句からして、もう彼にはのみこめないのである。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
ミルクやクリームの鉢もそなわり、今わたしが数えあげたように、一切がっさい
混沌
(
こんとん
)
としており、しかもその真中からは大きな茶わかしが
濛々
(
もうもう
)
たる湯気をまきあげている。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
夜が明けたのかしら……まだ夢にいるような
混沌
(
こんとん
)
たるあたまで、瞬間、そうも感じたのでした。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
二つの少し込み合った映像の重合したものはただ
混沌
(
こんとん
)
たる夢のようなものにしか見えない。
耳と目
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
空
(
そら
)
は
蒼
(
あを
)
かつた。それは
必
(
きつ
)
と
風雪
(
ふうせつ
)
に
暴
(
あ
)
れた
翌朝
(
よくてう
)
がいつもさうであるやうに、
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
拭
(
ぬぐ
)
はれて
清
(
きよ
)
く
青
(
あを
)
かつた。
混沌
(
こんとん
)
として
降
(
ふ
)
り
狂
(
くる
)
つた
雪
(
ゆき
)
のあとの
晴
(
はれ
)
た
空位
(
そらぐらひ
)
又
(
また
)
なく
麗
(
うる
)
はしいものはない。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
下の
混沌
(
こんとん
)
とした湧きたつ
泡
(
あわ
)
のなかへ、永久にまっさかさまに落ちこんでしまいました。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
支那
(
しな
)
でも政界の
混沌
(
こんとん
)
としている時代は
退
(
しりぞ
)
いて隠者になっている人も治世の君がお決まりになれば、白髪も恥じずお仕えに出て来るような人をほんとうの聖人だと言ってほめています。
源氏物語:14 澪標
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そこで幾ら自由の空氣を吸う爲に氣が
慌
(
あは
)
て燥ツてゐたとは謂へ、また奈何にお房の匂を慕ツて心が
混沌
(
こんとん
)
としてゐたからと謂へ、彼は此の生活の不安に對する用意だけは忘れなかツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
そして、平次が戻つて來た時は、事件を
混沌
(
こんとん
)
たる迷宮入りにしてしまつたのです。
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかしまた妾はこの支那の混沌が単なる混沌でなく、前進するラクダであっていつか彼等の富源を発見し機械的であった過去の人間が生物学的に発達したときの支那の
混沌
(
こんとん
)
を思うのです。
地図に出てくる男女
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
すでに充分触れて来たように、公武対立の
未曾有
(
みぞう
)
の世となって、廷臣たちの心には、上下おしなべて見透しのつかない
混沌
(
こんとん
)
と停滞とその日ぐらし的不安やなげやりの傾向が
萌
(
も
)
え出ておった。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
われわれ人間は、はかり知るべからざる
混沌
(
こんとん
)
のうちに渾然たる大調和の存する大自然の前に、破壊の威力と建設の威力とを併せ有する大自然の前に、心をむなしくして
跪坐
(
きざ
)
しなければならぬ。
『グリム童話集』序
(新字新仮名)
/
金田鬼一
(著)
と、いくら考えつめていっても、同じような
混沌
(
こんとん
)
状態と同じような物狂わしさは、いっかな果てしもなく、ただただ彼女だけが、その真っただ中に、取り残されているのを知るのみであった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
雹
(
ひょう
)
が降るわけでもない。
稲光
(
いなびかり
)
ひとつせず、雨一滴落ちて来ず……。とはいえ、あの
混沌
(
こんとん
)
たる天上の闇、昼の日なかに忍び寄るこの真夜中が、彼らを逆上させ、にんじんを
縮
(
ちぢ
)
み上がらせたのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
だが僕は相変らず、
妄想
(
もうそう
)
と幻影の
混沌
(
こんとん
)
のなかをふらついて、一体それが誰に、なんのために必要なのかわからずにいる。僕は信念がもてず、何が自分の使命かということも、知らずにいるのだ。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ただ自分も判然とそれを自覚しなければ、世間の人は無論、親さえも明らかに
観察
(
かんさつ
)
することはできない。しかるに、この
混沌
(
こんとん
)
たる
有様
(
ありさま
)
のなかにも、おのずから
輪廓
(
りんかく
)
だけはぼんやりと現れている。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
人この
裏
(
うち
)
に立ちて
寥々冥々
(
りようりようめいめい
)
たる四望の間に、
争
(
いかで
)
か
那
(
な
)
の世間あり、社会あり、都あり、町あることを想得べき、
九重
(
きゆうちよう
)
の天、
八際
(
はつさい
)
の地、始めて
混沌
(
こんとん
)
の
境
(
さかひ
)
を
出
(
い
)
でたりといへども、万物
未
(
いま
)
だ
尽
(
ことごと
)
く
化生
(
かせい
)
せず
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
そんな考えが
混沌
(
こんとん
)
とした一種の感情となって彼の心をかきみだした。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
八が頭の中は
混沌
(
こんとん
)
としてゐる。飲みたい酒の飲まれない苦痛が、最も強い感情であつて、それが悟性と意志とを
殆
(
ほとん
)
ど全く
麻痺
(
まひ
)
させてゐる。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
彼女は
混沌
(
こんとん
)
たる状態のおりからも彼れの名を無意識に叫んだが、自分がこの世に生残ったと知ると、心にかかるのは彼れの身の上であった。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼の知力のうちの
混沌
(
こんとん
)
たるものを突然貫いて、それを消散させ、一方に濃い暗黒と他方に光明とを分かち、その時の状態の彼の魂に働きかけて
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そもそも、汝の宿命は、天にあっては
天間星
(
てんかんせい
)
。地にあっては
草華
(
そうげ
)
の露。人と人との間に情けをこぼす
性
(
さが
)
のものだ。しかし世はまだ
溟々
(
めいめい
)
の
混沌
(
こんとん
)
時代。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“混沌”の意味
《名詞》
混沌(こんとん)
「渾沌」の別表記。
(出典:Wiktionary)
混
常用漢字
小5
部首:⽔
11画
沌
漢検準1級
部首:⽔
7画
“混沌”で始まる語句
混沌界
混沌迷瞑