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沢庵
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たくあん
ふりがな文庫
“
沢庵
(
たくあん
)” の例文
旧字:
澤庵
「殖えられて
溜
(
た
)
まるものか」と、犬塚は
叱
(
しか
)
るように云って、特別に厚く切ってあるらしい
沢庵
(
たくあん
)
を、白い、鋭い前歯で
咬
(
か
)
み切った。
食堂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
昨夜は私は腹の空いていたせいもあるだろうが、焚きたての御飯とあたたかい汁と鉢に山盛の
沢庵
(
たくあん
)
とで食べた夕めしがとてもおいしかった。
遁走
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
音が味を助けるとか、音響が味の重きをなしているものには、魚の卵などのほかに、
海月
(
くらげ
)
、
木耳
(
きくらげ
)
、かき餅、
煎餅
(
せんべい
)
、
沢庵
(
たくあん
)
など。
数の子は音を食うもの
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「天下を一と呑みにするような大きな事ばかり言やがる癖に、人間を見ると、
沢庵
(
たくあん
)
になり損ねた
干大根
(
ほしだいこん
)
みたいな野郎で——」
銭形平次捕物控:096 忍術指南
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「じゃあ、部屋へはいって寝ますから、ちょいとだけ話しておくれ。……おまえ
沢庵
(
たくあん
)
様の後を追いかけて行ったのでしょう」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
沢庵
(
たくあん
)
にする
干大根
(
ほしだいこん
)
が出た時大根一樽に
糠
(
ぬか
)
六升と赤穂塩一升とを用意して大根を一
側
(
かわ
)
並べたら糠と塩を振って今の塩漬茄子をその上へ一側並べて
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
諸君と共に二列に差向って、
饌
(
ぜん
)
に就く。大きな黒塗の椀に
堆
(
うずたか
)
く飯を盛ってある。
汁椀
(
しるわん
)
は豆腐と
茄子
(
なす
)
と
油揚
(
あぶらあげ
)
のつゆで、向うに
沢庵
(
たくあん
)
が二切つけてある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
このごろ街で売っている
沢庵
(
たくあん
)
が、食べたあと、舌に苦味が残るのは、たぶん苦汁分の多い粗製塩を使うからであろう。
塩の風趣
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
大きな茶碗に山盛りにした上からかけては、黄色な
沢庵
(
たくあん
)
などを忙しく箸で挟み乍ら、何杯も何杯も代えるのであった。
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
日本人が寄れば、なんとなく
沢庵
(
たくあん
)
くさいといわれます。これはつまり日本人の身体からは、食物の特殊性からくる独特の臭いが発散しているのです。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そいつあ知りませんが、なんにしてもあんなけだものは寄ってたかってぶちのめしてさ、
沢庵
(
たくあん
)
石でも重りにして大川へ沈めをかけるのが一番でさあ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
子供はその大人を憎んだ。誰もがいないと、おまんまつぶを持っていってやった。好きな
沢庵
(
たくあん
)
もやった。沢庵を裂いてやるとよく知っていてはさんだ。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
家族のひとたちの様に味噌汁、お
沢庵
(
たくあん
)
などの現実的なるものを摂取するならば
胃腑
(
いふ
)
も濁って、空想も
萎靡
(
いび
)
するに違いないという思惑からでもあろうか。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と
沢庵
(
たくあん
)
禅師の「不動智」にあるが、無念無想の境にあって敵に応じて無より出、無限に働くのを極意としている。
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
これはただ牛肉の後に
沢庵
(
たくあん
)
といいうような意味のものではなく、もっとずっと深い内面的の理由による事と思う。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その
中
(
うち
)
湯が
沸騰
(
わい
)
て来たから例の通り氷のように
冷
(
ひえ
)
た飯へ
白湯
(
さゆ
)
を
注
(
か
)
けて
沢庵
(
たくあん
)
をバリバリ、待ち兼た風に食い初めた。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
さ、
沢庵
(
たくあん
)
かなんかでざくざく茶漬にして
掻
(
か
)
っこむのが好きさ、やわっこいめしだのおじやなんぞ大っ嫌いさ、だからぱあっと心中しちゃう気になったのよ
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夜逃げの身では、故郷から戸籍謄本を取り寄せるなど、思いも寄らなかったのである。口入れ屋の二階では、豆腐の糟に、臭い
沢庵
(
たくあん
)
を幾日も食わせられた。
みやこ鳥
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
私と庄亮とは、自分たちの談話室のソファに
凭
(
よ
)
りかかって、それこそ水入らずで、また
沢庵
(
たくあん
)
をかりかり噛んだ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
沢庵
(
たくあん
)
を
噛
(
かじ
)
つて、紙と
木片
(
きぎれ
)
とで出来上つた家に住んでゐる日本人などと比べ物にはならないといふので、日本人が滅多に手も着けない
飛切
(
とびきり
)
の上等品を買込むが
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
パリパリと音のする快い
歯応
(
はごた
)
えの
沢庵
(
たくあん
)
でお茶漬をひとつさらさらッと食いたいなといった欲望のうちに、ノスタルジアの具体的なものを感ずるのに似ていたが
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
沢庵
(
たくあん
)
を買った古新聞に、北海道にはまだ何万町歩と云う荒地があると書いてある。ああそう云う未開の地に私達の、ユウトピヤが出来たら愉快だろうと思うなり。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
人間元より変な者、
目盲
(
めしい
)
てから
其
(
その
)
昔拝んだ
旭日
(
あさひ
)
の美しきを悟り、
巴里
(
パリー
)
に住んでから
沢庵
(
たくあん
)
の味を知るよし。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
物を食うにも
鮭
(
さけ
)
でも
鰌
(
どじょう
)
でもよい、
沢庵
(
たくあん
)
でも
菜葉
(
なっぱ
)
でもよく、また
味噌汁
(
みそしる
)
の実にしても
芋
(
いも
)
でも大根でもよい。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
この時ただ今まではおとなしく
沢庵
(
たくあん
)
をかじっていたすん子が、急に盛り立ての味噌汁の中から
薩摩芋
(
さつまいも
)
のくずれたのをしゃくい出して、勢よく口の内へ
抛
(
ほう
)
り込んだ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
食卓に
就
(
つい
)
て見ると今夜は日本食が特に調理せられ、
鱧
(
はも
)
の味噌汁、鮪の刺身、鯛の煮附、蛸と瓜の酢の物、
沢庵
(
たくあん
)
と奈良漬、
何
(
いづ
)
れも冷蔵庫から出された故国の珍味である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
娘の
情
(
なさけ
)
で内と一所に
膳
(
ぜん
)
を並べて食事をさせると、
沢庵
(
たくあん
)
の
切
(
きれ
)
をくわえて
隅
(
すみ
)
の方へ
引込
(
ひきこ
)
むいじらしさ。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かと思うと、一方には
沢庵
(
たくあん
)
一本が七十二文とか
天保
(
てんぽう
)
一枚とかいう高いものになって来る。
幕末維新懐古談:18 一度家に帰り父に誡められたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
銀明水に達したるは午後七時に
垂
(
なんな
)
んとす、浅間社前の大石室に泊す、客は余を併せて四組七人、
乾魚
(
ほしうを
)
一枚、
麩
(
ふ
)
の味噌汁一杯、天保銭大の
沢庵
(
たくあん
)
二切、
晩餐
(
ばんさん
)
の
総
(
す
)
べては
是
(
かく
)
の如きのみ
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
お
副食
(
かず
)
は干鱈と昆布の煮〆だったが、お浜はそれには箸をつけないで
沢庵
(
たくあん
)
ばかりかじっていた。そして、次郎の皿が大方空になったころ、そっと自分の皿を、次郎の前に押しやった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
夜を越した
手桶
(
ておけ
)
の水は、朝に成って見ると半分は氷だ。それを日にあて、氷を叩き落し、それから水を汲入れるという始末だ。
沢庵
(
たくあん
)
も、菜漬も皆な凍って、
噛
(
か
)
めばザクザク音がする。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
八「
風吹
(
かざふ
)
き
烏
(
がらす
)
の
貧
(
びん
)
つくで女の子に可愛がらりょうとア
押
(
おし
)
が
強
(
つえ
)
えや、この
沢庵
(
たくあん
)
野郎」
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
二の
膳
(
ぜん
)
つきの形式張った宴会を
罵
(
ののし
)
った言葉であろうが、この花やかな、紅白さまざまな弁当の眺めは、ただ綺麗であるばかりでなく、なんでもない
沢庵
(
たくあん
)
や米の色までがへんにうまそうで
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「寝る前に、お茶漬でも食べるんなら、
沢庵
(
たくあん
)
でも上げてやろうかと思うが……」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
カンヅケ いわゆる
沢庵
(
たくあん
)
漬のことを、九州北部では一般に寒漬とそういう。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それからついでに、お
握飯
(
むすび
)
に
沢庵
(
たくあん
)
をつけて三つ四つ差入れてもらいてえ
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
清三は
沢庵
(
たくあん
)
をガリガリ食った。日は暮れかかる。雨はまた降り出した。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
いつかもどうもたべつけたものだから
沢庵
(
たくあん
)
がたべたいとッて。上ったことがあったが。その時いた書生さんが悪口に。令夫人は殿様にかくして。沢庵とまおとこをなさったといったことがあったよ。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
あまりに上品とはいえないが私のような胃病患者から見るとなんとそれは
幸
(
さ
)
ち多過ぎる人であるかと思って
羨
(
うら
)
やましき次第とも見えるのだ、全く何も食えずにいる時、
沢庵
(
たくあん
)
と茶漬けの音を聞く事は
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
水の方は、今でもあんまり変るまいが、森がさっぱりと切りはらわれて、薄っきたない
杣
(
そま
)
や炭焼きの食いかけた、
沢庵
(
たくあん
)
の
尻尾
(
しっぽ
)
が流れるようになっては、いくらさらさらと麓をめぐっても始まらない。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
へえ天国に入れてもらいます……ばか……おやじが
博奕打
(
ばくちうち
)
の酒喰らいで、お袋の腹の中が
梅毒
(
かさ
)
腐れで……俺の眼を見てくれ……
沢庵
(
たくあん
)
と
味噌汁
(
みそしる
)
だけで育ち上った人間……が僣越ならけだものでもいい。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
沢庵
(
たくあん
)
の
香
(
におい
)
、お醤油のこげるにおい、おつゆを
啜
(
すす
)
る盛大なひびき
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
食卓には飯とみそ汁と
沢庵
(
たくあん
)
とが準備されてある。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
沢庵
(
たくあん
)
を一本
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
私は首輪に私とメリーの名前を
彫
(
ほ
)
らせた。私は奮発して、首輪も鎖も上等のを買った。私にはむかしから
羊羹
(
ようかん
)
や
沢庵
(
たくあん
)
をうすめに切るくせがある。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
塗
(
ぬ
)
りの
剥
(
は
)
げた
箱膳
(
はこぜん
)
に、
沢庵
(
たくあん
)
四きれ、汁一
椀
(
わん
)
、野菜の煮しめが一皿ついて、あたりに人はなしといえども、それをあぐらで食うわけにはいかない。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「開けてみな、
貉
(
むじな
)
や
狸
(
たぬき
)
なら、早速煮て食おうじゃないか。酒はまだあるが、
肴
(
さかな
)
ときた日には、ろくな
沢庵
(
たくあん
)
もねえ」
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
さ、
沢庵
(
たくあん
)
かなんかでざくざく
茶漬
(
ちゃづけ
)
にして
掻
(
か
)
っこむのが好きさ、やわっこいめしだのおじやなんぞ大っ
嫌
(
きら
)
いさ、だからぱあっと心中しちゃう気になったのよ
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
殺されたものが這い上がれるはずがない。石を置いた
沢庵
(
たくあん
)
のごとく積み重なって、人の眼に触れぬ坑内に
横
(
よこた
)
わる者に、
向
(
むこう
)
へ上がれと望むのは、望むものの無理である。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ほっこりとたきたてに、
沢庵
(
たくあん
)
をそえてね。それだけの願いなのよ。何とかどうにかなりませんか。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
“沢庵”の意味
《名詞》
沢庵(たくあん)
大根を、主として塩と糠で漬けた食べ物。沢庵漬け。たくわん。
《固有名詞》
沢庵(たくあん)
安土桃山時代及び江戸時代初期の僧(1573年 - 1646年)。沢庵宗彭。
(出典:Wiktionary)
沢
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
庵
漢検準1級
部首:⼴
11画
“沢庵”で始まる語句
沢庵石
沢庵漬
沢庵坊
沢庵樽
沢庵和尚
沢庵桶
沢庵圧
沢庵色
沢庵雑録