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毮
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むし
ふりがな文庫
“
毮
(
むし
)” の例文
毮
(
むし
)
り破られることは言う迄もない。大抵の場合、衣類を
悉
(
ことごと
)
く毮り取られて
竟
(
つい
)
に立って歩けなくなった方が負と判定されるようである。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
翌る日平次が谷中の清養寺へ行つたのは、まだ
辰刻
(
いつゝ
)
少し過ぎ、お類が朝の膳を片附けて、寺男の彌十は庭の草を
毮
(
むし
)
り始めた時分でした。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
崖
(
がけ
)
っ
縁
(
ぷち
)
に枝を差しのべていた山百合と一緒に、その辺に咲いている野性の花を
毮
(
むし
)
り取って来て、鉄柵を乗り越えて墓前に供えて置いた。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
見向きもしないで、山伏は
挫折
(
へしお
)
つた其の
己
(
おの
)
が片脛を
鷲掴
(
わしづか
)
みに、片手で
踵
(
きびす
)
が
穿
(
は
)
いた
板草鞋
(
いたわらじ
)
を
毮
(
むし
)
り
棄
(
す
)
てると、
横銜
(
よこぐわ
)
へに、ばり/\と
齧
(
かじ
)
る……
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私はそれを見ると、なんだか急に子供のやうな殘酷な氣持になつて、いま受精を終つたばかりの、その花をいきなり
毮
(
むし
)
りとつた。
燃ゆる頬
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
▼ もっと見る
毮
(
むし
)
るように取った型ばかりの門松や注連繩を、溝板を避けて露地の真ん中へ積み上げた勘次が、六尺近い身体を窮屈そうにしゃがませて
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
毛を
毮
(
むし
)
り取られ、びっこをひきひき自分のおろかさや、大事な時間をむだにしたことを悔みながら、そこから逃げだしてゆくのであった。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お光さんは、腰をおろすとすぐに、それを彼の手の下から
毮
(
むし
)
るように
引
(
ひ
)
っ
奪
(
た
)
くって、四、五枚、ペラペラと見ては
剥
(
め
)
くり返して
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの蝕んだ焼けた莟は、彼が無意識に
毮
(
むし
)
り砕いたのであらう——火鉢の猫板の上に、粉々に裂き刻まれて赤くちらばつて居た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
彼聞きて曰ふ、汝たとひわが髮を
毮
(
むし
)
るとも我の誰なるやを告げじ、また
千度
(
ちたび
)
わが
頭上
(
づじやう
)
に落來るともあらはさじ 一〇〇—一〇二
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
てんでに地べたの上に身を投げ出すと、両手の爪を
蟹
(
かに
)
のように曲げて、すさまじい
号泣
(
ごうきゅう
)
をつづけながら、地の上をかき
毮
(
むし
)
る。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
グウスベリ
毮
(
むし
)
りの私の仕事を終へると、私は二人のお孃さまとお兄さまは、今何處にゐらつしやるかとハナァに
訊
(
き
)
いてみた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
見れば女は、片手で肩のあたりを抑えどうと絨毯の上に倒れたが、もう一方の腕をしきりに動かして、手あたりしだい掻き
毮
(
むし
)
っているのだった。
不思議なる空間断層
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
反絵の身体は訶和郎の胸に飛びかかった。訶和郎は地に倒れると、
荊
(
いばら
)
を
毮
(
むし
)
って反絵の顔へ投げつけた。一人の兵士は鹿の死骸で訶和郎を打った。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
いきなりパラシュートを外すと、飛行帽をかなぐり棄て、飛行服まで
毮
(
むし
)
り取ってしまうと、グット邪慳に、葉子の死骸を抱き上げた、と同時に
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
…鍛冶屋から
鎚
(
かなづち
)
で鉄板を打つ耳を掻き
毮
(
むし
)
る様な音が聞え、鎔鉱炉からは赤く火影が差し、煤が渦を巻いて立昇って居た。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
ああ、二羽が二羽とも、同じ一声の悲鳴と共に、田崎の手に首をねじられ、喜助の手に毛を
毮
(
むし
)
られ、安の手に腹を割かれ、
腸
(
わた
)
を引出されて
了
(
しま
)
った。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
穏和な情緒を滅茶苦茶に掻き立てられた彼女は、何もかも
掻
(
か
)
き
毮
(
むし
)
りたい興奮状態にあった。彼女はなおも泣き続けた。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
氈
(
かも
)
の上へ、尉の装束を皺くちゃにして、左の片足を床へ落とし、毛を
毮
(
むし
)
られた鶏のような、毛穴の立った長い細い首を、イスパニア絹の枕へもたせ
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
たましいを
掻
(
か
)
き
毮
(
むし
)
りたいほど退屈なパアム街のなかほどに、109という番号字の
剥
(
は
)
げかかった茶
煉瓦
(
れんが
)
の立体が、赤く枯れた
蔦
(
つた
)
をいっぱいに絡ませて
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
未開のまま外ならぬ生みの親のブルジョア文学者の手で
毮
(
むし
)
られるというめぐり合わせに置かれている如く見える。
文学における今日の日本的なるもの
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
さう言はれると圭一郎は
棘
(
とげ
)
にでも掻き
毮
(
むし
)
られるやうな氣持がした。彼は勤め先では獨身者らしく振る舞つてゐた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
冷吉は最う綴糸も切れないので、少し逆せた唇の皮をぷき/\
毮
(
むし
)
りつゝ、
家
(
うち
)
の朝夕の有樣を考へて見たりした。
赤い鳥
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
一匹の蟻をば砂糖壺の中へ投げ込んだやうに、文吾は
可味
(
うま
)
さうな柿の實に包まれてしまつて、まご/\した。どれから
毮
(
むし
)
り取らうか、と手のやり場に困つた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
ある晩なぞ
枕頭
(
まくらもと
)
においた栗栖の写真を見て、彼はいきなりずたずたに引き裂き、銀子の島田を
毮
(
むし
)
ったりした。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかも、自由な右手は全然運動の自由を欠いていたので、扉を掻き
毮
(
むし
)
ることさえ出来なかったんだぜ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
というので道を迷っているのも忘れて盛んに
毮
(
むし
)
り始めたが、その
中
(
うち
)
に日が暮れて来たので気が付いてみると、荷車が一台や二台では運び切れぬ位、採り溜めていた。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼女の手から紙を
毮
(
むし
)
り取って、それへ眼を馳せ乍ら、祥子は青白んだ皮膚をビリビリ慄わせた。
罠を跳び越える女
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
而
(
しか
)
も顔は興奮に青ざめ、息使いまでがせわしい。女はイベットが再びテーブルに眼を落し平気で勝負に身を入れ出すと、小田島を
掻
(
か
)
き
毮
(
むし
)
るように
急
(
せ
)
き立てて
其所
(
そこ
)
を離れた。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
岩間に根を下ろした米躑躅が旨く手掛りや足掛りを造って
呉
(
く
)
れるが、
其度毎
(
そのたびごと
)
に枝間に咲きこぼれたつつましやかな白い花を
毮
(
むし
)
り取ったり、薄桃色の花を蹈み
躙
(
にじ
)
ったりするのは
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
無茶苦茶に
苛
(
いじ
)
められて、
生命
(
いのち
)
を
毮
(
むし
)
り取られることが、かえってあの人には本望なのか知らと思われることもありますのです。ですから、わたしには、うっかり口は出せません。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
弟は
毮
(
むし
)
られたような淋しい顔をした。そして、ほら向う川岸の崖のところから、川をへだててその行燈のあかりだけが何時もよく見える………と言った。姉は崖の方をながめた。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
幾春秋、忘れず胸にひめていた典雅な少女と、いまこそ晴れて逢いに行くのに、最もふさわしいロマンチックな姿であると思っていた。私は上衣のボタンをわざと一つ
毮
(
むし
)
り取った。
デカダン抗議
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
が、若者はさり
気
(
げ
)
ない調子で、噴き井の上に
枝垂
(
しだ
)
れかかった白椿の花を
毮
(
むし
)
りながら
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あたしは、こんな事をしていて好いのかと、自分の胸を
掻
(
か
)
き
毮
(
むし
)
っている。
郷里
(
いなか
)
へ帰ったからって、好いものは書けやしない。やッぱりあたしは、
美妙
(
せんせい
)
のそばにいなければいけないのだ。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
野良へ追い出しても草原に寝そべって青い空に吸われるように見入っていて草一つ
毮
(
むし
)
ろうとしない。彼が十六の年、彼の親の小作人は「
乾鰮
(
ほしか
)
のように」黒く瘠せ枯れて死んでしまった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
話しているうちに彼女はそれを、こまかい
棘
(
とげ
)
のある小枝のまま、
毮
(
むし
)
り取っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そこへ
瞋
(
いかり
)
の
眥
(
まなじり
)
を
釣
(
つ
)
り
上
(
あ
)
げた、
一人
(
ひとり
)
の
若
(
わか
)
い
女
(
おんな
)
が
現
(
あら
)
われて、
口惜
(
くや
)
しい
口惜
(
くや
)
しいとわめきつづけながら、
件
(
くだん
)
の
男
(
おとこ
)
にとびかかって、
頭髪
(
かみ
)
を
毮
(
むし
)
ったり、
顔面
(
かお
)
を
引
(
ひ
)
っかいたり、
足
(
あし
)
で
蹴
(
け
)
ったり、
踏
(
ふ
)
んだり
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
引き裂き、かき
毮
(
むし
)
りながら緊張しきつた心がまた遣瀬もなく啜泣く苦しさ。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
而もその
痕
(
あと
)
を胡麻化すために
周
(
まわ
)
りの苔を又少しずつ
毮
(
むし
)
り取った形跡がある。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
決
(
けつ
)
して
安泰
(
あんたい
)
ではない。
正
(
まさ
)
に
其
(
そ
)
の
爪
(
つめ
)
を
剥
(
は
)
ぎ、
血
(
ち
)
を
絞
(
しぼ
)
り、
肉
(
にく
)
を
毮
(
むし
)
り
骨
(
ほね
)
を
削
(
けづ
)
るやうな
大苦艱
(
だいくかん
)
を
受
(
う
)
けて
居
(
ゐ
)
る、
倒
(
さかさま
)
に
釣
(
つ
)
られて
居
(
ゐ
)
る。…………………
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私はそれを見ると、なんだか急に子供のような残酷な気持になって、いま受精を終ったばかりの、その花をいきなり
毮
(
むし
)
りとった。
燃ゆる頬
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
また、柵から手を伸ばして、
石楠花
(
しゃくなげ
)
の葉を五枚ほど
毮
(
むし
)
り取った。それは、口のなかで噛みしめていると、何か、非常に力になる気がした。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
押借
強請
(
ゆすり
)
はやらないが、貸金の催促は名人で、刀を
捻
(
ひね
)
くり廻して、無理な金でも
毮
(
むし
)
り取つて來るといふ、大變な二本差ですよ
銭形平次捕物控:200 死骸の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして殊に眼前にただ
木偶坊
(
でくのぼう
)
のように
驚愕
(
きょうがく
)
している兄の様子が、何とも言えず腹立たしくて、私はまた頭を掻き
毮
(
むし
)
りたいような気持であった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そして不思議なことに、翅も六本の足も
毮
(
むし
)
りとられ、そればかりか下腹部が鋭利な刃物でグサリと斜めに切り取られている変な蠅の死骸だった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
金太はそれ程でもなかったが、銀太はやがて
脾腹
(
ひばら
)
が痛くなり、それでも笑いが停止しないために、畳を掻き
毮
(
むし
)
ったり、竹行李に抱きついたりした。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
庄兵衛老、根がお人好しなもんだから、ついひょろりとせしめられ、余程たってから気がついて、また、してやられたぞと膝を掻き
毮
(
むし
)
って立腹する。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
有賀又兵衛……現在の名、飯塚薪左衛門は、昔の、浪人組の頭目だった頃の名を呼ばれ、愕然とし、毛を
毮
(
むし
)
られた鶏のような首を延ばし、声の来た方を見た。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私が
果實
(
このみ
)
を
毮
(
むし
)
り、自分はパン粉を
捏
(
こ
)
ねながら、彼女は
亡
(
な
)
くなつた主人や、主婦や、また彼女が「お子たち」と呼んでゐる若い人たちのことを細々と話すのであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
毮
部首:⽑
11画