)” の例文
この朝予は吉田の駅をでて、とちゅう畑のあいだ森のかげに絹織のの音を聞きつつ、やがて大噴火当時そのままの石の原にかかった。
河口湖 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
山と雲との影があやに織り出されたり消されたりして、その間を縫って銀光沢を帯びた青緑色のヤンマの一種がのように飛び交うている。
日本アルプスの五仙境 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
所は奈良で、物寂ものさびた春の宿にの音が聞えると云う光景が眼前に浮んでまでこれにふけり得るだけの趣味を持って居ないと面白くない。
高浜虚子著『鶏頭』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小銃の反響する街区では、群衆の巨大な渦巻きが、分裂しながら、建物と建物の間を、交錯するのように駈けていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
はたが行きかふ樣になつた時、義雄はその意味を取り違へたり、ただやかましい噪音が聽えたりする瞬間もあつた。
樫鳥かしどりや、木つつきや、島じゅうを木づたい鳴きかわす鳥のなかでひよどりの声がことによくこだまにひびく。なに鳥か大杉の梢で玉のを投げるように鳴く。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
生命のヤソの顔を見つめていた一人の顔を見た時の私のよろこび! その人は美と不思議と神秘の三本のを上げて、その室内に「虹」のもやを織り出した
最後の晩餐 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
盃が、のように、二人の間を往復する。金五郎も弱い方ではないが、お京の強さはおどろくばかりだった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
おしのように今まで黙っていたほかの漁夫たちの口からも、やにわに勇ましいかけ声があふれ出て、君の声に応じた。艪はのように波を切り破って激しく働いた。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
からりと鳴って、響くとひとしく、金色こんじきはた、一具宙を飛落とびおつ。一同吃驚きっきょうす。社殿の片扉かたとびらさっひらく。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それである時七夕が短気を起して、はたを織っておられたを投付けなされると、犬飼さんも腹を立てて、七夕の作っておられる瓜畠の瓜を真二つに切割ってしまわれる。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
此女らの動かして見せるおさの扱い方を、姫はすぐに会得した。機に上って日ねもす、時には終夜よもすがら織って見るけれど、蓮の糸は、すぐにつぶになったり、れたりした。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
達府ダブリン湾のほとりに十万の家が建つ、愛州アイルランドにもこの繁華なさまをみる。街は縦横に整い、人は織るがごとく往来し、幾百ものはたおりののごとくゆきかうのは電車である。)
西航日録 (新字新仮名) / 井上円了(著)
柿の枝などの年々なつかしい蔭を作るひさしのなかで、織機はたに上って、物静かにかちかちを運んでいる陰気らしい母親の傍に、揺籃つづらに入れられた小さい弟がおしゃぶりをしゃぶって
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
天照らす大御神の忌服屋いみはたやにましまして神御衣かむみそ織らしめたまふ時に、その服屋はたやむねを穿ちて、天の斑馬むちこま逆剥さかはぎに剥ぎて墮し入るる時に、天の衣織女みそおりめ見驚きて陰上ほとを衝きて死にき。
お母様のの音のみが、ひっそりしている家に響き渡っている。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
は往ったり来たりする、1925
桧のの飛び交うひまに
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
鳶尾いちはつなどの青々と繁っている茅葺の家、そことなく洩れ来るの音に交って、うら若い女の歌う声、路のへに飛び交うつばめの群。
秩父の渓谷美 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
シャロットの女の投ぐるの音を聴く者は、さびしきおかの上に立つ、高きうてなの窓を恐る恐る見上げぬ事はない。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一人一人が自分の前にある粥の皿に匙を入れたりパンをちぎったりする前に三本のを卓の上に置いた。
最後の晩餐 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
氷河が青く浮き上ったと見る間にびりびりと震え、のように山から山へ閃光が飛び移った。
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
おい手捌てさばき美しく、にしきを、投ぐるよう、さらさらと緒をめて、火鉢の火に高くかざす、と……呼吸いきをのんで驚いたように見ていたお千は、思わず、はっと両手をいた。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
郎女は、れては織り、織っては断れ、手がだるくなっても、まだを放そうともせぬ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
例えば静かな谷川のふちの中で、機を織るの音をきくといい、または人が行くことも出来ぬような峰の岩に、布をほしたのが遠く見えるというなどはそれで、こういう為事しごとは男がしませんから
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
空は隈なく晴れて陰暦十月十八日の月が照っている。真木では織物に名を得た郡内の地方だけに、電灯の光と共にの音の洩れて来る早起きの家もあった。
初旅の大菩薩連嶺 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
得之これをえたるは、らず、はたもとぶを細君さいくんえんざるによるか、非乎ひか
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
郎女が奈良の御館からとり寄せた高機たかはたてたからである。機織りに長けた女も一人や二人は、若人の中に居た。此女らが動かして見せるをさの扱ひ方を、姫はすぐに会得えとくした。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
二人は美と不思議と神秘のを取っておのおのが無限の形を織り出し、その室からそとの青い世界に出て行かせた、永久にいつまでも人間の耳に歓びのたのしい歌をうたわせるために。
最後の晩餐 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
窓を射る日のまばゆきまで明かなるに、室のうちは夏知らぬ洞窟どうくつの如くに暗い。輝けるは五尺に余る鉄の鏡と、肩に漂う長き髪のみ。右手めてより投げたる左手ゆんでに受けて、女はふと鏡のうちを見る。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其蔭で猫が昼寝していることなどもあった。人通りの少い路の上を、低く燕がすういと飛んで来てはひらりと返して行く。賑やかなの音に交って、歌や笑い声が洩れて来る。
秩父のおもいで (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
郎女は、つては織り、織つては断り、手もだるくなつてもまだを放さない。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
いましがた、永代橋えいたいばしわたつたところで、よしとけて、あの、ひとくるまげて織違おりちがふ、さながら繁昌記はんじやうき眞中まんなかへこぼれてて、あまりそのへんのかはりやうに、ぽかんとしてつたときであつた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女はえりを延ばして盾に描ける模様をしかと見分けようとするていであったが、かの騎士は何の会釈もなくこの鉄鏡を突き破って通り抜けるいきおいで、いよいよ目の前に近づいた時、女は思わずげて
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鬼怒沼の美に憧れて稀に訪い来る里人は、八千草の咲き匂う花の中で姫の機織るの音を聞くのが常であった。里人はそれを衣姫と呼びなしていたが、ついぞ姫の姿を見た者はない。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
びん真白ましろき手を、矢を黒髪に、女性にょしょうの最も優しく、なよやかなる容儀見ゆ。を持てるが背後うしろに引添い、前なる女のわらべは、錦の袋を取出とりいで下よりかざし向く。媛神、半ばかざして、その鏡をる。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
汽車が高田の町に近付いて、後ろに遠ざかり行く此等の山の姿が、の如く飛び交う端山の裾に織り込まれてしまう迄、私達は幾度か窓の外を眺めて、幾度か同じような言葉を繰り返した。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
紀昌きしやうこゝにおいて、いへかへりて、つまはたもとあふむけにして、まなこみひらいていなごごとく。二年にねんのち錐末すゐまつまなじりたつすといへどまたゝかざるにいたる。いてもつ飛衞ひゑいぐ、ねがはくはしやまなぶをん。
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
少しおくれて、童男どうだん童女どうじょと、ならびに、目一つの怪しきが、唐輪からわ切禿きりかむろにて、前なるはにしきの袋に鏡を捧げ、あとなるはきざはしくだり、巫女みこの手よりを取り受け、やがて、欄干らんかん擬宝珠ぎぼうしゅの左右に控う。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)