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末期
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まつご
ふりがな文庫
“
末期
(
まつご
)” の例文
その
末期
(
まつご
)
の思ひに、われとわが罪を
露
(
あら
)
はし、思ふ事包まず書残して後の世の戒めとなし、罪障懺悔のよすがともなさむとて、かくなむ。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ところが、そうして父と呼んで、
末期
(
まつご
)
の水を飲ませた尼は、父から見据えられた面を自分も見上げたが、存外、感情が動きません。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
モウバツサンが一面、実際の方から、一面さういふ方から、あゝいふ
末期
(
まつご
)
を得たことなども、私は深い意味があると思つてゐる。
脱却の工夫
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
何しにその幸なものを、人間の手に罰しようぞ。これより
益
(
ますます
)
、『でうす』の
御戒
(
おんいましめ
)
を身にしめて、心静に
末期
(
まつご
)
の
御裁判
(
おんさばき
)
の日を待つたがよい。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
アヌンチヤタが
末期
(
まつご
)
の詞の我に希望の光明を與へしと、おん身のつれなき旅立の我を病に臥さしめしとは、おん身自ら推し給へといひぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
内匠頭が、仄暗い庭の死の座につく迄の一歩一歩から、彼の
末期
(
まつご
)
の
鬢
(
びん
)
の毛をなぶる微風のうごき迄を、今もまざまざ覚えている。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もはや本復は
覚束
(
おぼつか
)
ないと、忠利が悟ったとき、長十郎に「
末期
(
まつご
)
が近うなったら、あの不二と書いてある大文字の
懸物
(
かけもの
)
を枕もとにかけてくれ」
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その紐で
絞
(
し
)
められた
白粉
(
おしろい
)
っ気もない顔は、涙を誘う
初々
(
ういうい
)
しさと、邪念のない美しさを、
末期
(
まつご
)
の苦悩も奪う
由
(
よし
)
はなかったのです。
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、これを
名残
(
なご
)
りの意識のひらめきが、すっと消えると共に、彼女の眼の中でも、
末期
(
まつご
)
の
恐
(
おそ
)
れやおびえの色が、やっと消えたのである。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
「
末期
(
まつご
)
の水だす。……なんでもつと早うおいなはれんのや。」と、お時は道臣の持つてゐる筆を取つて、竹丸に渡した。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
源兵衛も
焦
(
じ
)
れてあせって
滅多
(
めった
)
打ちに打ちつづけると、かれは更に腕を斬られ、足を打落されて、ただものすごい
末期
(
まつご
)
の
唸
(
うな
)
り声を上げるばかりであった。
くろん坊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
したが、不思議と云うのはそこで、繁々その顔を見ると、
末期
(
まつご
)
に悶え苦しんだような跡がないのだよ。真実小式部さんが、歌舞の菩薩であろうともさ。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
とひとことはっきり言った平兵衛は、ごぐっと一つ唾を呑んで、これを
末期
(
まつご
)
の水代りに大往生を遂げたのだった。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
断末魔のもがき、
末期
(
まつご
)
の悲鳴、それが身心に感じられたとたん、
鬱結
(
うっけつ
)
していた血汐が下がり、圧迫されている心持ちが、一時に緩んで生き生きとなった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それを待ってでもいたように誰かが
末期
(
まつご
)
の水を汲んだ茶碗をクニ子のそばへ置いた。
樒
(
しきみ
)
の葉が一枚浮いていた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
花「
心配
(
しんぺえ
)
ありません
末期
(
まつご
)
の煙草だ、死んだら呑めませんワ、一服やりましょう、
誰
(
たれ
)
か火を貸しておくんなせえ」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
池辺君が胸部に
末期
(
まつご
)
の苦痛を感じて
膏汗
(
あぶらあせ
)
を流しながらもがいている間、余は池辺君に対して何らの顧慮も心配も払う事ができなかったのは、君の
朋友
(
ほうゆう
)
として
三山居士
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「永遠なる再来」は
慰藉
(
いしゃ
)
にはならない。ツァラツストラの
末期
(
まつご
)
に筆をつけ兼ねた作者の情を自分は憐んだ。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
そもそもこの口が開いたときに、墓の彼方に通う
末期
(
まつご
)
の声にも似た一種の音響を発したが、
直
(
じ
)
きに舌が捲くれて
咽喉
(
のど
)
へ
塞
(
つか
)
えたので、その音響はぱったり止まった。
青蠅
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
ただ
末期
(
まつご
)
をらくにするために思いきり注射した麻酔剤がきいてるあいだの
昏昏
(
こんこん
)
とした眠りから
醒
(
さ
)
めたときに母は奇蹟的に元気を
恢復
(
かいふく
)
した、病苦もなく、浮腫もへり
母の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
彼女の着てゐるのは、
末期
(
まつご
)
の床の上に横はつてゐた時に彼女を包んでゐた、リンネルの経帷子である。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
一方にはまた、
末期
(
まつご
)
に及んでもなお助命の
沙汰
(
さた
)
を期した彼であった、同僚の備前藩士から何事かを耳のほとりにささやかれた時はにわかにその顔色を変えて震えた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
仏様のお心にかなうことでございます。
末期
(
まつご
)
の水は必ず善鸞様がおくみあそばさなくてはなりません。この
期
(
ご
)
に及んで私はもう何も申し上げることはございません。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
儲
(
まう
)
け候は則ち藤五郎藤三郎にて是を主税之助の子となし御
家督
(
かとく
)
を
讓
(
ゆづり
)
呉
(
くれ
)
候樣平助
末期
(
まつご
)
に
遺言
(
ゆゐごん
)
仕つりしを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
血は
滾々
(
こんこん
)
と益す流れて、
末期
(
まつご
)
の影は次第に
黯
(
くら
)
く
逼
(
せま
)
れる気色。貫一は見るにも
堪
(
た
)
へず心乱れて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
其割前を貰えるという事だけが、
死水
(
しにみず
)
同様、
末期
(
まつご
)
の望みであるそうな、アワレと云うも
却々
(
なかなか
)
にオロカなりける次第なりけり、近頃の不経済学全集も亦其轍を同うするに到れば
一円本流行の害毒と其裏面談
(新字新仮名)
/
宮武外骨
(著)
じゃが、病人は、ただそれのみを、
末期
(
まつご
)
まで、
嫉妬
(
しっと
)
に嫉妬して、われの
貞操
(
みさお
)
を責め抜いたに、お冬も泣かされれば、尼かて、われの身になって見て、いとしゅうてならなんだ。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これは肉体的に
咽喉
(
のど
)
が渇して、
末期
(
まつご
)
の水を求められたのであろうが、またそれだけでなく
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
お常はとうと
恋病
(
こひやまひ
)
に取つ憑かれた。徳三郎がお初の似顔絵を
抱
(
だ
)
いたまゝ、
焦
(
こが
)
れ
死
(
じに
)
に死にかゝつた。娘の不心得を
怒
(
いか
)
つた両親も、
末期
(
まつご
)
の哀れさに、
伝手
(
つて
)
をもとめて徳三郎を招いた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
かけつけて来た叔母の千寿は、
末期
(
まつご
)
の水をとりながら、例のさばさばした調子で云った。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
遮莫
(
さもあらばあれ
)
永い
年月
(
としつき
)
の
行路難
(
こうろだん
)
、
遮莫
(
さもあらばあれ
)
末期
(
まつご
)
十字架の
苦
(
くるしみ
)
、翁は
一切
(
いっさい
)
を終えて
故郷
(
ふるさと
)
に帰ったのである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
遂に二体合一せる
刹那
(
せつな
)
の物凄い有様は、何人も見たものがなかった、故にそれは未来数億万年後に、新しき世界に人として生れ来る者も、想像に描く能わざるべく、地球の
末期
(
まつご
)
は
太陽系統の滅亡
(新字新仮名)
/
木村小舟
(著)
貴方が
末期
(
まつご
)
にわたくしの事を思い出して下されば好いと思ったばかりでございます。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
それは、実にすばらしいビールのあじだった。モロは、生れてはじめて、ビールがこんなうまいものかと、おどろいた。そうであろう、そのビールこそ、彼の
末期
(
まつご
)
の水であったのだから。
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その
末期
(
まつご
)
の
言
(
ことば
)
に、
一四〇
当時信長は
一四一
果報いみじき大将なり。我
平生
(
つね
)
に
他
(
かれ
)
を
侮
(
あなど
)
りて征伐を怠り、
一四二
此の
疾
(
やまひ
)
に
係
(
かか
)
る。我が子孫も
即
(
やが
)
て
他
(
かれ
)
に
亡
(
ほろぼ
)
されんといひしとなり。
謙信
(
けんしん
)
は勇将なり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
されども爾
確乎
(
たしか
)
に聞け。過ちて改むるに
憚
(
はばか
)
ることなく、
末期
(
まつご
)
の念仏一声には、
怎麼
(
いか
)
なる罪障も消滅するとぞ、爾今前非を悔いなば、
速
(
すみや
)
かに心を翻へして、われ
曹
(
ら
)
がために尋ぬることを答へよ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
余はそのビールを
末期
(
まつご
)
の水として飲み、快くこの世を去らん、しこうしてその空瓶にはこの一書を封じて海中に投ずるなり、もしこの瓶
氷塊
(
ひょうかい
)
にも砕けず、海底にも沈まず——オー、オー、オー
南極の怪事
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
愛の
荊棘
(
いばら
)
よ、
末期
(
まつご
)
の苦の時、この罪ある心の
中
(
なか
)
にその針を突き通し給へ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
今迄あまり
煩
(
うる
)
ささうでもあり、又穢く見苦しかつたので、お光は幾度も切つてやらうと勧めたが、お桐は応じなかつたのに、今度は自分から頼んだので、それでもう
末期
(
まつご
)
の近づいたことを知つた。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
ある者は
末期
(
まつご
)
の水を求め、ある者はただ呻いている。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
その
末期
(
まつご
)
は、一層ヒステリックになった。
明治大正美人追憶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
饑
(
うゑ
)
に
堕
(
お
)
ちたる
天竺
(
てんぢく
)
の
末期
(
まつご
)
の
苦患
(
くげん
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
私のヴァイオリンへ伴奏の様に入り
硝子
(
ガラス
)
窓を通して落ちた月の光りが、
末期
(
まつご
)
の人の安らかな
微笑
(
ほほえみ
)
を青白く照して居りました
天才兄妹
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
巡査は故郷に母がある、と云う。署長はまた母の事は心配するな。何かそのほかにも
末期
(
まつご
)
の際に、心遺りはないかと云う。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『ホラ。遣るぞ。
末期
(
まつご
)
の水ぞ。唐人さんドウかいな。もう死によるが。早よう話をばきめんとほかの処へ持って行くがナ』
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
明らかな
末期
(
まつご
)
のさけびがまた一つそこで揚った。するともう二度と陣形を立て直す気力も失って、後の三名はわらわらとつながって逃げ出した。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「永遠なる再来」は
慰藉
(
ゐしや
)
にはならない。
Zarathustra
(
ツアラツストラ
)
の
末期
(
まつご
)
に筆を
下
(
おろ
)
し兼ねた作者の情を、自分は憐んだ。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
自分は立戻って好きな男と勝手な
真似
(
まね
)
をした女——ですから、あれの
末期
(
まつご
)
をごらんなさい、鳥は古巣へ帰れども、往きて帰らぬ死出の旅——おっつけ
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
眼は血走り、息は
喘
(
あえ
)
いで、
台詞
(
せりふ
)
の調子はバラバラであるけれども、今か今かと待つ焦らだたしさは、ひとしお
末期
(
まつご
)
の伊右衛門に、悽愴な気魄を添えるのだった。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
曇る
鑑
(
かがみ
)
の霧を含みて、
芙蓉
(
ふよう
)
に
滴
(
した
)
たる音を
聴
(
き
)
くとき、
対
(
むか
)
える人の身の上に危うき事あり。
砉然
(
けきぜん
)
と
故
(
ゆえ
)
なきに響を起して、白き筋の横縦に鏡に浮くとき、その人
末期
(
まつご
)
の覚悟せよ。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
末
常用漢字
小4
部首:⽊
5画
期
常用漢字
小3
部首:⽉
12画
“末期”で始まる語句
末期養子
末期相